川田まみが2年ぶりのツアーでみせた新たな決意!“MAMI KAWADA LIVE TOUR 2008「SAVIA」”にみた、川田まみの“これまで”と“今”、そして“未来”!
聴けば「I'veサウンド!」とすぐにわかるその音、そして天空まで突き抜けそうなほどに伸びゆく高音が神々しいボーカル。北海道から世界にその名をとどろかせる音楽制作ユニット・I'veが誇る“歌姫”の1人として、川田まみの名前は、ゲーム・アニメソング界ではその名を知らない者はいないだろう。芯がしっかりしていながら、その繊細かつ巧みにコントロールされる川田のボーカルは、この春ついに実写映画界に進出。「翡翠 -HISUI-」が映画『お姉チャンバラ』において主題歌に起用された。そして3月26日には同曲が収録された待望のアルバム『SAVIA』も発売。およそ2年ぶりとなるニューアルバムをひっさげ、これまた2年ぶりとなる全国ツアー・“MAMI KAWADA LIVE TOUR 2008「SAVIA」”を敢行した。8月2日(土)の福岡公演からはじまり、広島、名古屋、大阪、仙台と、国内をまさに縦横無尽に飛び回った今回のツアー。そのファイナルとなったのが8月17日の東京、新木場・STUDIO COASTだった。
●川田まみの“今”を見せつける1曲目「JOINT」
2年ぶりの単独ツアー、そのファイナルに選ばれた東京。その東京が彼女とそしてファンのために用意したのは、自称雨女(?)の川田らしく雨だった。だが酷暑が続いた都内。むしろファンには優しい雨だった。某巨大イベント最終日の新木場に、続々とファンが集まりだす。そして開演。
今回のライブはアルバム『SAVIA』を中心にした構成。その合間にゲーム主題歌やシングルのカップリング曲と、彼女の代表曲になった「緋色の空」が織り交ぜられている。さらにいえば冒頭においては曲順もアルバムと同じく、「JOINT」、「Beehive」、「TRILL」。川田がMCで「『SAVIA』は曲順にこだわってライブ感を出したアルバム」と語っているように、この構成は聴く者の感情の高ぶりを見事にコントロールしてくれる。ここで最高潮に達しすぎてもいけないが、助走をつけておく必要もあるからだ。そして何より、今回のセットリストのほとんどが『SAVIA』の楽曲で占められている。これは今回のライブを川田が、さらに進化し、成長した自らのアーティストとしての最新形を見て欲しいという思いの表れとも感じられる。
MCでは今日がまた雨になったことに「四国でライブをやったらどうかなと思った」と、“恵みの雨”ライブ案を披露し、ファンからも「そう思う」と声が。これまで雨とライブが重なってきた川田。「今回は台風なんですよね?私のせいじゃないよね?でもあやまっとく!ごめん!!」と会場を爆笑させる。「2年ぶりの東京!この時間を埋める勢いで頑張ります!」と言う川田。2年という期間をあけてのツアー。川田のなかでは待たせたという思いも強いのだろう。
「アルバム通りの曲順でも……」と次に川田が歌ったのはPCゲーム『そして明日の世界より-』の主題歌「For Our Days」。この楽曲も昨年リリースされたゲームのもので、前回からの2年の間の川田の軌跡をたどるような構成だ。続く「最後の約束」は再び『SAVIA』から。アルバム制作中に飼っていた犬が亡くなったという川田。その悲しみを乗り越えるなかで「感謝の気持ちがあふれてきた。私が台湾でライブ中で倒れて、帰国まで持たないと言われたけど、帰ってくるまで待っててくれた」。そして感謝の思いはファンに対しても向けられ、「次のアルバムはもっと早く作ります」と話す川田。ここから劇場版『灼眼のシャナ』挿入歌の「赤い涙」と、そして映画『お姉チャンバラ』の主題歌になった「翡翠 -HISUI-」と、おなじみの曲で中盤の山場を作る。
●100歳記念ライブ宣言。セットリストには「緋色の空」が内定だ
「sense」までを歌っていよいよ後半戦。「主題歌を作るとき、普通はシナリオを読んでから作る」という川田だが、「翡翠 -HISUI-」は全くのオリジナル曲が、映画のイメージとマッチしていたことから主題歌に起用されたという。「ちょっと前にカラオケに行って、JOINTを歌ったんですが、全国ランキング195位だったんです。3位ぐらいまでの人は、ぜひ名乗り出て欲しいです。聴きたいです!」と、プライベートネタも明かして盛り上がったところで、「この興奮冷めやらぬまま、後半戦はたたみかけます」とMCを切り上げ、「triangle」、「intron tone」そしてMCで「お待ちかねの曲行きます」と川田が話していた「緋色の空」へ。この曲で川田を知ったファンも多いだろうシンボリックなサウンド。「この曲は本当に盛り上がります。私も100歳まで生きるから、そのときはみんなで集まろう。そしてスローな緋色の空で盛り上がろう。だから100歳まで生きてください」と、ファンへメッセージ。続く「portamento」(12)がラストの楽曲。「みんなそれぞれにそれぞれの道があります。今日、互いの道がここで交差しました」
アンコールにパンクスタイルで登場。「05年にメジャーデビューしましたが、それ以前から私を知っているファンの方は手を挙げて」と川田が言うと、ファンが手をあげる。その“古参”に感謝の意味を込めて、そして新たにファンになった観客には自らのルーツを紹介するために、これまで“今”の川田を見せてきた今回のライブは、彼女の本当のデビュー曲をここで演奏することになる。それは「風と君を抱いて」。PCゲーム「miss you」のテーマ曲だ。イントロと同時にファンの大歓声。PCゲームの歌姫としてファンに認知されるところとなった川田だけに、ファンもこの選曲に沸く。川田いわく「『JOINT』などで私を知ったファンには、こんな私の姿も見せられたら……という感じです。初心に帰れます」と川田。「今、この曲を歌って幸せだった」と語るように、表情に喜びにも似た安堵が浮かぶ。続く楽曲「Get my way!」「DREAM」はともに『SAVIA』から。ラストは再び今の川田まみで締めた。
と、ここでファンの熱い思いに答え、ダブルアンコールへ。「みんなのおかげですごくいいライブになりました。今、すごく前向きにアーティスト活動しています。最近は(思いを)素直に言葉に表すようになりました。昨日のライブで父母が来てくれたんですが、2人にありがとうと言ったとき、心から気持ちが良かったです」と話し、「Get my way!」のカップリング曲「青空と太陽」を歌う。雨に「青空と太陽」。すでに夜だったが、目を閉じれば夏のコントラストが眼前に広がるようだった。歌い終わり、スタッフから花を渡され涙を見せた川田。「また帰ってきます。もう2年待たせません!」とファンにメッセージを送り、ステージを後にした。
最後の宣言どおりなら、次回作、そして次のライブを見られる日は意外と近いのかもしれない。実写タイアップ、海外進出。眠りから覚め本気でスパートをかけはじめた川田。彼女の未来を見届けてみたいと改めて思った今回のライブだった。(敬称略)