野望渦巻く戦国に咲く愛情と友情を描いた舞台に涙。劇団ヘロヘロQカムパニー第22回公演『カラクリ雪之JOE変化』レポート
関智一さんが座長を務め、長沢美樹さん、小西克幸さんが所属する劇団ヘロヘロQカムパニーの第22回公演『カラクリ雪之JOE変化』が12月13~19日、東京・前進座劇場で行われた。
チケット発売日に完売する人気劇団のヘロQだが、今回は櫻井孝宏さんと入野自由さんのダブルキャストに、福圓美里さんという魅力的な声優が客演することもあってより入手困難になった。その人気の舞台をレポートしよう!
●14年前の人気作品を完全リニューアル。魅力的な客演陣を迎え、パワーアップ!
『カラクリ雪之JOE変化』は関さんが作・演出を担当し、14年前に公演された人気作品のリニューアルバージョン。「再演というよりモチーフにした新作に近い」と語っていた関さん。脚本もかなり熱が入ったそうで時間ギリギリまで粘ったらしい。
また毎回豪華な客演でも話題だが、今回は櫻井孝宏さんと入野自由さんのダブルキャストに、福圓美里さんという舞台でも定評がある声優陣が参加。「うちの劇団に初出演でも舞台経験者が多いだけあってみんな勘がいいですね。いい舞台になりそうな予感がします」と公演前、手応えを感じている様子だった。
●戦乱の時代に絡み合う陰謀・愛憎劇。その中に咲いた友情と愛の物語
物語は戦乱の時代、未来を予見することができる能力を持つ母を持つ幻十郎(関智一)とスミレ(松本和子)兄妹はある日、天下奪取を目論む亀垣家の人間に母を殺され、同じ能力を持つスミレと幻十郎は亀垣家に捕らえられた。
それから程なく亀垣家は天下をとり、平穏な時が訪れる。しかしそれもつかの間、戦部軍太夫(べろ武田)が謀反を企て、亀垣家への復讐の機会をうかがっていた幻十郎とスミレと共に城主・貞明は殺される。
父から短剣を授けられた、りん姫(福圓美里)は忍者・楓と共に脱出を試みるが、軍太夫のしもべと遭遇。危機一髪の二人を救ったのはからくり師の葛江順之助(櫻井孝宏・入野自由)と、彼が作ったからくり人形の雪之丞(小西克幸)。雪之丞のはかりしれないパワーで敵を蹴散らし、窮地を脱したように見えたがこれが大いなる、そして悲しき物語の序章に過ぎなかった……。
●笑って泣いて、最後は力がみなぎる舞台。それがヘロQイズム
様々な人間関係と愛憎が入り組んだ戦国絵巻にSF的な要素も盛り込んだ意欲的な作品で、コメディ部分は爆笑し、研きをかけた剣劇やアクションでは息をのみ、最後にホロリ。特に順之助と雪之丞の交流は『鉄人28号』を思わせ、温かくもせつなかった。しかし最後は前向きで終わるのがヘロQイズム。すがすがしく元気をもらえた舞台だった。
●次回公演は2010年4月に代表作『電波ヒーロー』
さて2010年のヘロQだが2009年を上回るハイペースの活動になるらしい。4月に行われる『電波ヒーロー~夢みるチカラ~』ほか、公演予定が詰まっている。更に関さんをはじめ、劇団員も他劇団への客演にも精力的に進出。芝居力を鍛えながら、魅せる1年になるだろう。まずは春、最多上演を誇る代表作『電波ヒーロー~夢みるチカラ~』。「今回で最後」と語る関さん率いるヘロQのメンバーが作り上げる、最高の『電波ヒーロー』を観るしかない!
劇団ヘロヘロQカムパニー次回公演『電波ヒーロー~夢みるチカラ~』
2010年4月21~25日 東京・新宿シアターサンモール
>>劇団ヘロヘロQカムパニー公式サイト『ヘロQTV』