TVアニメ『×××HOLiC』が超ゴージャスにDVD-BOX化!発売を記念して侑子役・大原さやかさんに収録当時の想い出などを振り返ってもらいました!
CLAMP作の『×××HOLiC』は2005年に劇場用アニメ、2006年にTVアニメ化され、現在も『別冊少年マガジン』(講談社刊)で連載中の人気作品。そのTVアニメシリーズが遂にDVD-BOX化され、上下巻が発売中。
発売記念企画としてミステリアスな主人公・壱原侑子を演じる大原さやかさんにインタビュー。『×××HOLiC』の魅力と、DVD-BOX上下巻の見どころを話してもらいました。
●メインキャストとして最も長く関わったライフワーク的な作品のDVD-BOX化は幸せ
――『×××HOLiC』のTVシリーズ終了から4年経ってDVD-BOX化が発売されることになりました。感想をお聞かせください
壱原侑子役・大原さやかさん(以下大原):すごく嬉しかったです!私にとっては特別な位置にある作品で、TVシリーズから関わって4年、オーディションからは足がけ7年近くになるんです。声優人生の中でもメインキャストとして7年も関わらせていただいた作品は『×××HOLiC』しかなくて。自分にとって特別な作品を素敵なパッケージと豪華な特典と共にギュッと詰め込んで、再び世に出せるのは宝箱を開けて皆さんにお見せする感覚ですごく幸せです。
――原作は現在も連載中で、OADもリリースされるなど、いまだに続いている感じがするんですよね。
大原:そうですね。私もアフレコとしての作業はひと段落してから随分経ってはいるけど終わった感覚は全然なくて。例え今の原作に侑子さんが出てなくても(笑)。ライフワークとしてずっと生き続けている作品なんです。
●願いを叶えるミセを訪れる人間達を描いたミステリー&ファンタジー作品
――『×××HOLiC』がどんな作品なのか、簡単にご紹介いただけますか?
大原:私が演じる侑子がとある“店”を構え、そこでは何でも願いを叶えてもらえます。一見夢のような店だけど、実は願いと同じ重さの対価を差し出さないといけないという決まりがあって。侑子と、ふらりと来ていつの間にかバイトをすることになる四月一日(わたぬき)、謎の少女・マル&モロ、モコナと一緒に店をまかないながら、四月一日のクラスメイトの百目鬼(どうめき)、ひまわりも絡みつつ、来店する人達の願いや人生を時にシュールに、時にコミカルに描くミステリータッチかつファンタジックな作品です。
第1シーズンは1話完結になっていて、どこから見ても楽しめるし、誰が見ても胸にピリっとくるものがあると思います。お子さんなら不思議な等身バランスの動きを楽しんでいただけるし、大人なら人間の業をえぐるような怖さや自分を振り返りたくなる教訓めいた部分もあって、年齢を問わず、たくさんの方に受け入れていただける世界観になっていると思います。
●材料がないまま不安だったスタート。演じるうちに「枠にハマらないのが侑子」と実感
――侑子はどんなキャラですか? また演じた時の印象深いエピソードは?
大原:最初はすごく困りました。見た目は美しくてミステリアスで大人の女性なんですけど、詳しい個人データや細かい設定がなくて。1話で名乗るシーンがあっても「壱原侑子よ。偽名だけどね」。名前すらないのかと(笑)。イメージだけで演じるのは初めてだったので不安でした。でも演じていくうちに「枠にハマっていないのが侑子なんだ」と思えるようになりました。いろいろな顔を見せる侑子を演じることで自分の中の引き出しも増やしてもらいました。
――スタッフからディレクションはなかったんですか?
大原:水島努監督に「どう演じたらいいですか?」と何度か相談しましたが、「うん! 自由に」って(笑)。水島さんはみんなに対して注文がなくて、ただ「あなたが思う侑子をノビノビやってくれれば、ちゃんとそのキャラになるって僕は信じてるから」と。自由にやらせていただいたことが成功につながった気がします。キャスティングもみんなハマっててベストだったと思います。
――侑子は奔放だけど魅力的なキャラで、ファンも多いですよね。
大原:お話を見ていただくと彼女は人間じゃないことがわかると思うんです。それなのに誰よりも人間くさくて。おいしいものが大好きでわがままで、たまに大人ぶってみたり。そんな表情の変化も楽しめるキャラなので、男性にも女性にも愛されるキャラなんじゃないかと思います。
●プレッシャーを打ち消してくれたCLAMP先生とファンの激励
――アニメ化が決まった時はどう思いましたか?
大原:キャラのデザインにしてもCLAMP作品としては異質な存在感があって。最初にアニメの『×××HOLiC』が世に出たのは映画でしたが、すごくドキドキして、公開初日まで眠れませんでした。映画館にこっそり行って、ファンの方が「侑子さんの声ピッタリだね」と話しているのを聞いた時は嬉しくて泣きそうになりました。受け入れていただけたことはありがたいですね。
――ファンが多い作品だけにプレッシャーも大きかったんじゃないですか?
大原:世界のCLAMP先生の作品ですから。でも先生方からも激励していただきました。密にコミュニケーションをとってくださる先生方で、私がちょっと「ドキドキします」と言うと、「大丈夫! さあやはちゃんと侑子さんだから。私達、大好きよ! 侑子さん」と勇気付けてくださって。それでまた作品にのめり込めて。現場に毎回いてくださったわけではないけど、常にそばにいて見守ってくださっている心強い感覚はありました。
●話数によってカラーが違う『×××HOLiC』をまとめて楽しめるDVD-BOX
――上下巻がそろったので各巻の見どころ、好きな話を挙げてもらえますか?
大原:話数によって、まったくカラーが違うのが魅力のひとつで、おバカなお遊び回があったり、「今日、夜眠るのが怖いかも」というお話があったり。
上巻で好きなお話は「あの話が好き」とよく言われる6話の「タンデキ」です。ハナハナというパソコン中毒の主婦がパソコンをやめたいと侑子に依頼するお話で、侑子は最初と最後にポンと出てきて、実際に行動するのは四月一日と百目鬼というケースが多いんですが、「タンデキ」では侑子がミセの外に出て四月一日と一緒に事件を解決する珍しい回です。やめたいと思っているのにやめられない人間のサガが凝縮されてて、語りかける侑子が演じながらすごく怖くて。パソコンじゃなくても、みんな、何かしら思い当たることがきっとあると思うし、私自身も身につまされて、今でも時々、思い出すことがあります。
あと第1話の「ヒツゼン」は初回なので印象深いんですが、お話自体も衝撃的でした。人の注目を集めたいがために友達を作れない女の子が「私、霊が見えるの」と同情をひいて友達の関心を集めているのを見抜いた侑子が彼女に忠告するんです。その結末と侑子さんが冷静に語った言葉は怖かったです。自分が発する言葉や思う力はプラスでもマイナスでも現実に干渉するんだよとメッセージを投げかけられてインパクトが強いお話でした。
●遊び心の17話&18話、緊張感のある実験作19話、泣ける外伝も収録
――では下巻の見どころと好きなお話も教えてください。
大原:19話の「リフジン」は雪が積もった日に侑子さんのわがままから雪合戦をするんです。それぞれが作った雪だるまに命を吹き込んで、雪だるま同士が戦いますが、侑子の作ったのがProduction I.Gさん制作の別のアニメ作品に登場するロボットで。ちなみに18話「ホオズキ」では侑子さんの宝物庫のアンティークを陰干しするシーンでやはり他のアニメ作品のキャラが横たわってたり(笑)。スタッフさんも遊び心満載で作っているんだなとわかって、おもしろかったです。
17話の「ジショウ」は侑子と四月一日とゲストキャラの塗絵の3人しか登場しなくて、ワンシチュエーションのドラマのように長ゼリフで“かけあう”回でした。BGMもなくて、SEも居間にかかっている大時計の音だけで、いろいろな意味でそぎ落とされてて。動きが多い作品なのでそれに合わせてテンポ感を作ったりしてましたが、この回は舞台にそのまま放り出されて、会話劇を演じるようでした。セリフ量も半端じゃなかったけど、緊張感とワクワク感があって楽しかったのを覚えてます。ちょっと実験的なアプローチなのでファンの方がどう感じてくださったのかもすごく気になりました。
――下巻には本編のほか、外伝の「ツイオク」も収録されています。
大原:このお話は四月一日の子供時代のお話で、とある少年とのエピソードを描いているんですが、現場にいたキャストも涙ぐんでしまったほどの悲しくもいとおしいストーリーです。「23話終わった後にこれを持ってくるのか」と驚きながらも感動しました。
●ずっしり重くて美麗な豪華パッケージ&特典
――アニメの映像だけでなく、パッケージや特典も豪華ですよね。
大原:ぜひ手にとっていただきたいです。この大きくて、ずしっとくる重さを(笑)。まず箱がしっかりした布張りで卒業アルバムみたいですし、実はCLAMP先生の画集と同じサイズなのでぜひ並べていただきたいです。生地や柄も上質で、お着物にしてもいいくらいです。
特典も豪華で、上巻のイラスト集はアニメ誌で描き下ろされたカラーカットがほぼ収録されて、色使いも華やかでキャラの表情も豊か。めくるたびにドラマがあって目が喜ぶ1冊です。侑子が好きだったのは毎回、いろいろな衣装や髪型をしてくれるところで、女子の方にも侑子のスタイリッシュさにうっとりしていただけると思います。ビックリするくらい紙質がいいのでページをめくる時にケガをしないように(笑)。
――下巻の特典はなんと屏風!並べると壮観ですね。
大原:そうなんです! 屏風になるイラストが5組入っていて、こちらはDVDとCDのジャケットのイラストです。CLAMP先生独特の色使いがより楽しめます。開くとキセルの煙が漂ってくるような。1枚1枚しっかりした和紙で作られていて、立てかけるための台紙も入っていますので日替わりでお部屋を『×××HOLiC』の世界で染めていただければと思います。
●侑子は「こんな役とは二度と出会えない」と思える貴重なキャラ
――原作は好評連載中ですし、今後も来年は『×××HOLiC◆継』のDVD -BOX発売、3月には新作OAD付きの限定版コミックの発売が控えています。
大原:コミック17巻に付いたOADで一区切りついた感じだったのですが、OADで出番があって良かったです(笑)。でも「ただいま、四月一日」のセリフを聞いたCLAMPのもこな先生から「さあや、泣いっちゃったわよ」という言葉をいただけて感無量でした。これからの収録になるんですけど楽しみです。
――やっぱり侑子がいないと物足りなく感じちゃいますからね。
大原:そうですよね! 四月一日は侑子の後、よくやってくれてると思うけど、華やかさに欠けるじゃないですか。外伝的なお話もできそうですし、融通がききそうな作品ですからぜひ出たいです。皆さんの声が盛り上がれば、先生も何とかしてくれるのではと心から期待してます(笑)。
――侑子というキャラは大原さんにとってどんな存在ですか?
大原:カテゴライズしにくいキャラだけど、それ故に制約もなく、いろいろやらせることができたのかもしれません。私も毎回成長させていただきましたし。たぶんこんな役は二度とないというほど大切なキャラクターです。
●『×××HOLiC』はパンドラの箱のような作品。ぜひ手元に置きたい宝箱!
――改めて『×××HOLiC』の魅力を挙げてください。
大原:オカルトやミステリーの枠に収まらない奥深さがあります。侑子の存在とイコールなんじゃないかなと。彼女を合わせ鏡のようにのぞくと何重にも世界が広がってて。この作品も身近にありそうなエピソードから人と自然の共存という大きなテーマを扱ったり、ひと言では語りつくせない世界観です。まるでパンドラの箱のよう。箱を開くと怖いものが飛び出してくるけど、最後には希望や心の琴線に触れるメッセージが残ってて。時代に影響されない作品でいつ見ても新鮮ですし、どの世代にも心に響く貴重な作品だと思います。
――あの色彩美や映像美の再現もアニメならではですね。
大原:本当に色鮮やかなだけど、どこかレトロな感じがする美しさですよね。コミックでも背表紙に1巻ごとに違う色使いがされていて、それが着物などで昔から使われている、“もえぎ色”や“あさぎ色”なんです。そんな独特な美しい色彩世界を広げたのがアニメシリーズじゃないでしょうか。
――では最後にメッセージをお願いします。
大原:オンエアは随分前に終わった作品ですが、今もなお息づいてます。今回のBOXリリースでまとめて見ていただくことで、『×××HOLiC』の魅力に改めて気付いていただけると思います。そばに置いておく喜びが希薄な現代ですが、このDVD-BOXは映像を見るだけでなく、手触りを楽しんだり、ずっしりした重さを感じてもらったりできる、価値がある一品になりました。絶対、あなたの宝物になりますよ!
<取材・文:永井和幸>
『×××HOLiC』DVD-BOX
上巻 8月25日発売
下巻10月27日発売
各巻15,750円(税込)
発売:アリオラジャパン
『×××HOLiC◆継』DVD-BOX
2011年1月26日発売予定
15,750円(税込)
発売:アリオラジャパン
DVD付き限定版コミック『×××HOLiC』19巻
2011年1月14日予約締め切り
2011年3月9日発売
3,500円(税込)
発売:講談社
>>『×××HOLiC』DVD BOX公式サイト
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