「ハーレム物+メカで、何が悪い!」“美少女+ロボット”日本アニメの“王道”復活!――『IS<インフィニット・ストラトス>』菊地康仁監督が語る“IS”のデザインに隠されたCG描画での大きな苦労とは?
主人公を取り巻く魅力的な美少女たちと、彼女たちが駆る飛行パワードスーツ"IS"によるバトルが魅力のTVアニメ『IS<インフィニット・ストラトス>』(以下、『IS』)が、2011年1月より放送中だ。
『IS』は、弓弦イズル氏が手がける同名ライトノベルをTVアニメ化。原作は累計85万部を突破している人気作品だ。作品の核になるのは、操縦者が身にまとって戦う“IS<インフィニット・ストラトス>”と呼ばれる飛行パワードスーツ。“IS”は世界の軍事バランスを書き換えてしまうほどの威力を秘めているが、それを動かすことができるのは女性だけ。それゆえ女尊男卑が当たり前になった世界で、ただ一人、男でありながら“IS”を動かせる織斑一夏(CV:内山昂輝さん)が主人公だ。
物語の舞台となるのは、一夏以外の生徒は全員が女性の“IS”操縦者育成学校“IS学園”。一夏の幼なじみである篠ノ之箒(CV:日笠陽子さん)をはじめとした魅力的なヒロインたちとの恋愛模様と、主人公たちが持つそれぞれに個性・特性が異なる“IS”が繰り広げるバトルが、この作品の二本柱となっている。
そんなアニメ『IS<インフィニット・ストラトス>』の監督を務めるのが、菊地康仁監督だ。菊地監督はアニメ『マクロスF』で監督を務めた、いわば本格メカバトル+美少女のスペシャリスト。1980年代に『超時空要塞マクロス』で“リアルなロボットバトルと美少女たちとの恋愛”のストーリーがブレイクして以来、“メカと美少女”は常にアニメの王道だった。人気作品が数多く作られ、徐々に王道からちょっとひねった作品が増える中、久々に“主人公以外は全員美少女! 美少女が乗ったメカが華やかにバトル!”という直球を投げ込んできたのが本作『IS<インフィニット・ストラトス>』だ。今回、菊地監督に作品に関するインタビューを行なったので、紹介しよう。
――まずは放送が開始されての感想をお願いします。
菊地康仁監督(以下菊池):やっと放送かという感じです。CGのモデリングなどを早めに準備しないといけないので、去年の2月ぐらいから、かなり時間をかけて準備しているんです。脚本など初期段階はスムーズに進んだんですが、やはり“IS”のCGモデリングに非常に時間がかかりました。ここ6年くらいメカ物の作品をやらせてもらってるので、こういった作品が得意だろうということで『IS』のお話を頂いたのだと思います。
――『IS』の作品の魅力を教えてください。
菊地監督:やはり、かわいい女の子の中に男が一人っていいですよね。そして全ての要素を集約したところに“IS”という存在がある。バトルシーンをなるべく華やかに、女の子をかわいく描くことを心がけています。
――原作を見た感想はいかがでしたか?
菊地監督:女の子のかわいさが印象的でした。しかしアニメにする目線で見ると、“IS”のテザインで、搭乗者の顔などが外に露出しているのが気になりました。CGで人物のキャラクターとメカを同時に描写するのは難題で、どう表現するか、そもそもできるのかという話し合いからスタートしました。
――制作で苦労したのもやはりそこでしょうか。
菊地監督:そうですね。実際の作業としては、まず“IS”全体を、通常のメカ物ならそのまま使えるレベルでモデリングした上で、胸とか頭とかの取り外し可能なパーツを別に作るんです。それをセル単位で置き換えていきます。今まで作品でCGメカをやる時は、CGオンリーのパートと、キャラオンリーのパートを分けて、なるべく作業が二度手間にならないようにやってきたんですね。その意味ではこの作品は、全てが二度手間、三度手間です(笑)。バトルシーンのタイミングや、CGメカと搭乗キャラのパーツの置き換えについては、CGチームと相談を繰り返して調整しています。
――1クール12話と話数が限られた中で、バトルとラブコメの比重はどのように振り分けていますか?
菊地監督:シリーズ構成の段階で、メカ中心の回は何話と何話、ラブコメ中心回は何話と何話といった具合に、あらかじめある程度色分けをして配置してるんです。メインとなるキャラクターや、物語の山場が固まらないように気をつけています。そういった構成は原作の物語の構造に近いんですが、やはり12話の中での配置は気を使います。
――ロボット物では1話で主人公の初めてメカに乗るシーンが定番ですが、『IS』は主要キャラが全員登場するバトルシーンを見せた後、教室での自己紹介から本編が始まりました。
菊地監督:設定の多い作品では、1話は設定の説明回になりがちで、それは僕も見ていて楽しくないと思うんです。最初に派手なシーンを持ってくることでまずつかみにするというか、楽しんでもらおうと考えました。『IS』に乗り込むシーン、一夏が学園にやってくるまてのくだりは、2話と3話の間に挟み込む形になっています。1話はバトルシーンと、クラスメートやヒロインとの会話の中で、一夏と視聴者に世界観を伝えていく作りです。
――一夏やヒロインが搭乗する“IS”ごとに動かし方や描写の違いはありますか?
菊地監督:原作者の弓弦さんから、この機体は遠距離戦闘型なのでこの武器があって、この機体は近接強襲型だからこの武器でといった特徴を伝えてもらっているので、表現を全部変えていってるんです。機体の重さによって動きに重量感を出したり、この武器は実弾なので煙を出す、といった個性化は、絵コンテの段階で行なっています。中でも大変だったのは、シャルルの“IS”《ラファール・リヴァイヴ・カスタムII》です。この“IS”は武装が換装式で、非常に武器の種類が多彩なんです。武装を全部並べて、ゴツゴツしすぎた外見になると、ぱっと見た絵がわかりにくくなってしまうので、どうすればシンプルになるか、かなり頭をひねりました。
――“IS”を描く上で、原作の絵からデザインの調整はありますか?
菊地監督:動かしやすいようにデザインの掘り込みを深くしたり、足首を作ったりといった、動きをメインに考えた微調整しています。ラストに近づくと“IS”がパワーアップしていったりもありえるので、オプションパーツを加えたりといったことも考えています。
――各キャラクターの魅力や見せ方について教えてください。
菊地監督:篠ノ之箒は剣道道場の娘なので、大和撫子風に気は強いけど素直になれない感じで。セシリアはエリートのイギリス人なので押せ押せですね。凰鈴は中国人ですが、一夏の日本での幼なじみでもあるので、日本人的に描いてますね。シャルはやさしい、すごく気がつく子です。ラウラはドイツの軍人なので戦闘しか頭にないのですが、それ以外の一般常識は小学生という感じです。個人的に描いていて一番かわいいのは、セシリアですね。彼女は動かしやすいのですが、髪の毛の作画は大変なんです(笑)。一夏については、かっこよくなりすぎないように、戦闘シーンの直前までぼーっとしていてくださいと、一夏役の内山君には伝えています。
――主人公が美少女ヒロインに囲まれてメカがあって…という90年代的王道は最近逆に少ないですね。
菊地監督:そこはもう、開き直っちゃおうと思っています。ハーレム物+メカで、何が悪い! という心境です(笑)。物語では、キャラクターたちの心がどんどん素直になっていく姿を描いていきたいと思っています。その中でも一番成長するのは箒ですね。精神的な成長はもちろん、いずれ登場する箒の専用“IS”にも期待してもらっていいと思います。
――バトル以外の、学園物としてのこだわりはありますか?
菊地監督:舞台は現代なので、構内のポスターとかは“廊下は走るな”とかリアルな感じで作っています。“IS”という最先端技術が集まる学園だけに、各企業も力を入れていると思うので、たとえば動くポスターになってたりします。原作では学校内の描写はそれほどないので、原作の弓弦先生とも相談しながら、アニメ化にあたって一から作っています。
――主人公以外、学園全員が女の子という環境はいかがですか?
菊地監督:現実じゃなくて、アニメなら楽しいんじゃないかと思います(笑)。アフレコスタジオでは女の子たちがキャッキャッとしている中、一夏役の内山君がぽつんとしていることもあります(笑)。アフレコスタジオの空気は最初は固い感じだったんですが、最近打ち解けてきましたね。スタジオで声優が演じている姿を見ると、本当にキャラクター本人にしか思えないです。
――4話以降の見所などを教えてください。
菊地監督:これからまずシャルルが来て、ラウラが一夏たちにすごくケンカを売ってくる感じになって、そのあとが…水着回です! みんなでラブラブな感じです。キャラクターが本格的に出揃って、いわゆるサービスシーンもあるので楽しみにしてください(笑)。
――ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
菊地監督:ハーレム物+メカという王道を、これでもか!という感じで一生懸命に描いていますので、よろしくお願いします!
(取材・文:中里キリ)
『IS<インフィニット・ストラトス>Blu-ray&DVD 第1巻』
3月23日発売予定
価格:Blu-ray7,665円(税込)、DVD6,615円(税込)
発売・販売元:メディアファクトリー
【初回生産特典】※BD&DVD共通
(1)弓弦イズル氏書き下ろし小説
(2)「IS」機密設定資料集 Vol.1(50p予定)
(3)独占封入!キャラクターソングCD《箒》
(4)<購入者限定>スペシャルイベント応募券
※初回生産分は数量に限りがございます。お早めのご予約をお勧めいたします。
【毎回特典】※BD&DVD共通
(1)キャラクターデザイン倉嶋丈康氏描き下ろしジャケット
(2)撮り下ろし動画ラジオ「RADIO IS」出張版(パーソナリティ:日笠陽子&下田麻美)
(3)デジパック&クリアスリーブジャケット仕様
(4)ノンクレジットOP
(5)ノンクレジットED Ver.1
(6)CM&PV集
(7)スーパーピクチャーレーベル
※商品の仕様、及びジャケットの絵柄等は変更になる可能性がございます。予めご了承下さい。
>>TBSアニメーション『IS<インフィニット・ストラトス>』公式ホームページ