前作から2ヶ月、早くもリリースされるニューシングルは映画『豆富小僧』のテーマ曲――SCANDALが新境地となった新曲「ハルカ」を語った!
音楽シーンでひときわ輝く存在として注目を集める進化系ガールズ・バンド、SCANDALが、前作「Pride」(MBS・TBS系 TVアニメ『STAR DRIVER 輝きのタクト』エンディング・テーマ)から約2ヶ月という短いタームで新作「ハルカ」をリリースする。
「ハルカ」は2011年4月から公開される話題のアニメーション映画『豆富小僧』(京極夏彦原作の小説『豆腐小僧双六道中ふりだし』をアニメ化したもの)の主題歌を飾るスプリング・ソング。未来への旅立ちを予感させる歌詞や、センチメンタルなメロディーと壮大なストリングス、優しく包み込むような歌声が印象的で、これまでのロックな曲調とは一転したミディアムなポップ・ナンバーに仕上がっている。この曲に対してどんな気持ちでチャレンジしたのか、近況や『豆富小僧』の話を交えながらメンバー全員に訊いた。
●「どう自分たちらしさを出そうかっていうところから始まりました」(RINA)
──今回の「ハルカ」は心にじんわり染みるスプリング・ソングですが、どんなテーマで制作されたのでしょう?
HARUNA:映画『豆富小僧』の主題歌のお話を先に頂いていたので……豆富ちゃんがお母さんを探しながら自分探しの旅に出るんですけど、色々な体験をしてもがいている豆富ちゃんの姿を照らし合わせて、今は卒業シーズンだったりもするので"別れと旅立ち"をテーマに書きました。世の中にいる人たちにとって常に"旅立ち瞬間"があると思うんですよ。卒業に限らず、常にそういう旅立ちを繰り返していると思うので……そういう機会に直面した人たちから「元気もらった!」って言われるような曲にしたいなって。
──作曲は前作「Pride」(2011/02/09)を始め、高橋瞳さんの曲なども手がけている田中秀典さんですが、田中さんから楽曲をもらったときはどんな印象を受けましたか?
HARUNA:今の時期にピッタリの曲だなって。楽曲をもらった時に仮歌も入っていて、そこから歌詞のインスピレーションを得たんですけど、あんまり……自分たちの中でこういう暖かい曲ってなかったんですよ。今までは攻める曲が多かったので、新しいアプローチが出来れば良いなって思って。
MAMI:今までも「涙のリグレット」を始め、こういうミディアムな曲はあったんですけど、仮歌詞の時点でメッセージ性が強くて……歌詞の面でHARUNAは色々と悩んでいたようだったんですけど、彼女の中には言いたいことがあるんだなって楽しみに待っていたんですよ。色々な人にもちろん聴いてもらいたいんですけど、同世代の人や、大人と子供の中間のような色々葛藤もある世代の人たちに特に聴いてもらいたい曲になったと思います。
TOMOMI:「聴いていて気持ちの良い曲やな」っていう印象だったんですよ。個人的にBメロの切ないフレーズが好きで……今はそれをどう表現するかっていうことを考えています。
──確かに、Aメロとは違った切なさがありますよね。
TOMOMI:美メロですよね! Bメロが美メロ…………。
一同:アハハハハ(笑)。
──そのフレーズいただきました(笑)。では、RINAさんはどうでした?
RINA:オシャレで綺麗やなっていう印象ですね。色に例えるとパステルカラーっていうか……メロディーだけ聴いても柔らかい印象を受けるし、今までとは違った雰囲気の曲だったので、どういう風に歌詞を乗せて、どう自分たちらしさを出そうかっていうところから始まりましたね。
●「100人おったら100通りの聴きかたが出来る曲だなって」(TOMOMI)
──さっきMAMIさんが「ハルカ」の歌詞作業について「HARUNAは色々と悩んでた」っていう発言をされてましたけど、具体的にどの辺りで悩まれたんですか?
HARUNA:どういう想いを伝えたいのか、何を大切にしたいのかっていうところで凄く悩みました。自分たちで歌詞を書く時は、"今感じていること"を中心に書くんですけど、"今感じている"ってことは──大切な思い出があるからこそ、今感じられることがあるわけで。っていうことは、未来も"今"が重要になるので、無駄な瞬間ってないんだなって。そういうことを書きたいなと思ってたんですけど、なかなか……音にハマらなくて。あと、歌詞の中にストーリーも作らなきゃって思っていたので、その辺りも凄く悩みました。
──実際に書き上げてきてどんな気分になりました?
HARUNA:すごく心が晴れました(笑)。ある意味、自分にとっての旅立ちの曲だったのかもしれません。これを書けたことでひとつ乗り越えられたというか……勇気をもらえたなって。転機のような曲になりましたね。
MAMI:共感できる歌詞が多いんですよね。自分たちから発信するものって、強いメッセージというか……背中をグッと押す曲が多いんですけど、「ハルカ」は隣にいて肩をポンポンって叩いてあげるような曲だと思うんです。何をしていいか分からないときや、不安な気持ちでいっぱいのときにそういう風にしてもらえると心が安らぐなって思うし……。あと"夢はいつも儚いもの/風が吹けば消えそうで"っていう歌詞も心に響きましたね。夢の大事さって人それぞれだと思うんですけど、歌詞にもあるように夢って儚いんだなって思ったんですよ。でも、同時に夢を見続けること、大切に思うことが夢に近付く第一歩なんだなって……そんなに焦らなくても良いんだなって思いました。
TOMOMI:「ハルカ」を聴いて……TOMOは卒業っていうよりかは、もっと広い意味の"卒業"だと思って。例えば、SCANDALの「DOLL」やったら「DOLL」でしかないんですよ。ひとつのテーマでしかないというか。やけど、「ハルカ」は聴く人によって色々な捉え方が出来る曲やなって。HARUが「旅立ちをテーマに書いた」って言っても、聴く人によったら卒業に聴こえるかもしれへんし……100人おったら100通りの聴きかたが出来る曲だなって思います。
RINA:私は歌詞を見た時に、主人公が2人いるのかなって思いました。でも、それは1人の心と言うか──その人が明日に進む瞬間の歌。2年、3年っていう長い時間じゃなくて、瞬きの瞬間の歌だなって。次に行く希望を持てる曲やなって感じましたね。
──うんうん。今4人から正に4通りの答えが返ってきて。TOMOMIさんの言う通り100人いたら、100通りの答えが返ってきそうですね。
一同:そうですね。
HARUNA:「ハルカ」ってすごく広い意味があるし、目にみえないものなので、自分たちでその意味を作っていけるようになりたいなって。
──そういう思いも含めて新しい一面が押し出された曲になりましたよね。強いエネルギーはあるんだけど、今までの雰囲気とは違う柔らかさや穏やかさがあるというか……さっきHARUNAさんが言ってた通り、攻めの曲のイメージが強いですもんね。
MAMI:そう! 女子が強い!みたいな(笑)。格好よくて、強くて……っていう印象が多いと思うんですけど、前作の「Pride」のC/Wに「CUTE!」という可愛らしい曲が入っていたりとか、「Emotion」という曲調の少し変わった曲があったりとか……最近は、枠に捉われず自分たちのやりたいことを優先にして曲に挑めていますね。
──今回のC/Wの「サティスファクション」は凄くポップで、「Want You」はバンドマンなら誰もが一度は経験する気持ちを描いたロックな曲で、ある意味"らしい"テイストですよね。
MAMI:ガツガツ系ですね(笑)。でも「ハルカ」も含めてライヴで演奏することが凄く楽しみで……音色もこだわったし、ブースで「いっせーのせ!」の一発で録音した曲もあるし……全体的にすごく楽しめたんですよ。そういうのをライヴで見せれればなって。
──楽しんでプレイしている感じはすごく伝わってきますよ。
MAMI:最近ね……そうなんですよ(笑)。去年くらいからなんですけど、ライヴの制作にも自分たちから加わるようになっていって。前は言いたいことも言えなかったんですけど "してもらうのが当たり前"じゃないんだなって気付いて、自分たちからもっと意見を発信したいって。曲ももっともっと作っていきたいし、恥ずかしがらずにやっていかなきゃって思ったし……。
──おっ! 良い状態じゃないですか。いざ"自分たちらしさを出したい!"って思っても、"じゃあ自分たちらしさってなんだろう……?"って思ってしまうバンドもやっぱりいると思うので、行動するのは素晴らしいことだと思います。
MAMI:そうなんですよね。"らしさを、らしさを"ってずっと言ってきたけど、SCANDALらしさって何かなって。そう思った時に、自分たちがやりたいことをやるのが"らしさ"なんだろうなって。やりたい音楽、使いたい機材、ライヴしたい気持ち──そういうのを全部ひっくるめてSCANDALらしさが出てくるんだろうなって。色々と変わってきてますね。
RINA:一番大きいのは、どう見られたいか、バンドとして何がやりたいかっていう思いが出てきたことだと思うんです。"楽器始めて何年です"っていう状態でもないし、今となってはもう普通のバンドだから、もっとバンドやりたいっていう気持ちにもなれたし……。最近は制作のスケジュールの配分も分かってきたよね(笑)。
TOMOMI:日ごろから音楽のことをもっと考えないとあかんと思うようになったよね(笑)。歌詞のことも常に考えておかなきゃダメだなって。書こうと思って書くものじゃなく、日ごろから考えている言葉がフッと出てくるのが理想なので……。
●「見ていて"頑張れ!"って応援したくなりました」(HARUNA)
──さきほどから少し話はあがっていますが、「ハルカ」は映画『豆富小僧』の主題歌になってます。『豆富小僧』は見られましたか?
一同:見ました!
HARUNA:この間みんなで試写会に行ってきました。ネタバレになっちゃうかもしれないんですけど(笑)、豆富小僧っていう、人間を脅かすことが苦手な小さくて可愛い妖怪が主人公なんですけど、あることがきっかけになって元いた江戸時代から現代にタイムスリップしちゃうんです。そんな中でお母さんを探す旅に出るんですけど、その様子やお母さんを思う気持ちがすごく切なくて……見ていて「頑張れ!」って応援したくなりました。感情が豊かになるというか。
MAMI:今 HARUNAが言ったとおり、自分探しの旅でもあり、お母さん探しの旅でもあるっていうのがポイントだと思います。今までの自分を捨てて一歩踏み出す勇気を持ってアクションを起こすんですよ。そこが心にきたというか……親御さんたちは、自分の娘や息子を見ているような気分になるらしくて。それで「泣いた!」っていうスタッフさんもいました。
TOMOMI:3Dなので見ていて引き込まれる感じがありました。自分もその世界にいるみたいな感覚になるので、感情移入もしやすかったです。
RINA:映像ももちろんなんですけど、間に入ってくる音楽がすっごく豪華で場面にマッチしてて。アーティストそれぞれの色が濃いんですけど、全部で1つになってるんです。だから、音楽が好きな人が観に行ったら楽しめるんじゃないかなって思います。
──でもSCANDALがその中に入っていて。客観的に見ていてどうでした?
RINA:ビックリですよね(笑)。照れました。でも、やっぱりすっごく嬉しかったですね。
──映画のお話を聞いてから改めて「ハルカ」の歌詞を読むとグッとくる部分がありますね。例えば〈涙なんて流さないよ/「終わり」じゃない「始まり」さ〉の一節とか。
MAMI:やっぱり映画を観てから聴くと印象が違いますね。もちろん、自分たちの思いもあって作詞作業やレコーディングをしたんですけど、映画を観ることによって違う感情がこみ上げてきました。
●「今までで一番マネしやすいと思います、今回の衣装(笑)」(MAMI)
──ところで今回の衣装は、「ハルカ」のイメージにピッタリな爽やかな衣装ですね。
HARUNA:春らしい衣装ですよね。
MAMI:前回の「Pride」は今回の衣装とは違ってかなりイカつい感じだったんですけど(笑)、制服というよりかはスーツでいわゆる戦闘服に適してるというか……今回も制服と言うよりかは、パステル・ピンクをそれぞれ使った春らしい衣装で。全員、ジャケットの形も小物、裏地も違うんですよ。TOMOの衣装の場合は腕の部分をめくらないと、(裏地が)分からないんですけど。
TOMOMI:こんな感じです(と見せてくれる)。
──あ、ホントだ! すごく可愛い!
MAMI:今までで一番マネしやすいと思います、今回の衣装(笑)。
──アハハ(笑)。でも、アクセサリー類は難しそうですけどね。
RINA:いや、意外と出来ると思いますよ。似たものを探せると思うので。
──アハハ(笑)。では、SCANDALの今後の展望というか、野望みたいなものはありますか?
HARUNA:何が見えてるってわけじゃないんですけど、今出来ることを一生懸命やりたいなって。近いところではツアーもあるので、そういう輪を広げていけたらいいなって。やっぱり、色々なところでライヴをしたいし、もっと大きい会場でもやってみたいし……キリがないんですけど、ひとつひとつ消化していけたら良いなって。
MAMI:自分たち主催のライヴをもっとやっていきたいなって思います。同世代のコたちともっと対バンしていきたいし、ジャンルの違う人たちももっと呼びたいし、その中でセッションしたりもしたいし……仲間たちでたくさん色々なことにチャレンジしたいなって。でも、それには今はまだ技術が足りてないのでたくさん練習していきたいですね。
TOMOMI:ライヴが一番魅力って言われるバンドになりたいっていうのは、いつも思っててるんですけど……。これがあるからSCANDALのライヴって楽しいよねって言われるような、絶対的なものが見つかればいいなって。それが何かは探しているところなんですけど、CDでは絶対できへんようなことをライヴで与えられるような存在になりたいですね。
RINA:もっとメンバー同士ひとつになれるところがあると思うので、いろいろ話し合いながらお互いを理解していければなって思いますね。今でも十分分かり合えてはいるんですけど、人間だから知らない部分が増えてくるだろうし……。だから、常にお互いを分かり合えるような距離でいたいなって。
──今後が楽しみですね。では最後に言い残されたことはありますか?
MAMI:実際にレコーディングしてみて思うんですけど……こういう曲調に慣れていないこともあって、自分たちの中でこの曲を消化するまでに時間が掛かると思うし、ストリングスがバンバン入っている曲なのでそことの兼ね合いもライヴでは取っていかなきゃと思うんですけど、研究しがいのある曲だと思うのでみんなで試行錯誤しながらバンドとしてやっていければ良いなって。
HARUNA:「ハルカ」は、自分たちにとって挑戦の曲なんです。ライヴでもポイントになるような曲になると思うし、この曲をきっかけに自分たちも成長していきたいなって思います。
<インタビュー:逆井マリ>
『ハルカ』/SCANDAL
2011年4月20日発売
【初回生産限定盤A】1,575円(税込)/ESCL-3660~ESCL-3661
【初回生産限定盤B】1,575円(税込)/ESCL-3662~ESCL-3663
【通常盤】1,223円(税込)/ESCL-3664
>>SCANDAL 公式サイト
>>『豆富小僧』公式サイト