「みんなの背中をグッと押してあげられるようなライブにしたい」―― 茅原実里ライブツアー“Minori Chihara Live Tour 2011 ~Key for Defection~”をレポート!
“Defection”“KEY FOR LIFE”の2枚同時シングルリリースを記念した、茅原実里のツアー“Minori Chihara Live Tour 2011 ~Key for Defection~”東京公演が5月2日、ZEPP TOKYOにて開催された。
2月に行われた仙台、大阪、名古屋、福岡の4公演を経て、本来、3月12日に東京公演が開催される予定であったが、東日本大震災の影響で延期に。この日は約2ヶ月振りのツアー再開日ということもあって、ただならぬ熱狂を何度も打ち上げたライヴとなった。
しかも、今回のライヴではスタイリッシュをコンセプトにした“Defection”、ハッピーをテーマにした“KEY FOR LIFE”という、シングルの対比に則るかのように、前半戦ではスタイリッシュでロックなステージを、後半戦ではハッピーでカラフルなライヴを展開。
アコースティック・コーナーや、恒例となった旗振りナンバーもあり、さらには今年の3大ニュースの発表もあり──と“スペシャル”なライヴにならないはずがない一晩であった。
開演時間を少し回ったころ、大歓声を出囃子にバックバンドCMBが登場。会場が鮮やかな青のサイリウムで包まれる中、スタイリッシュな黒のパンツスタイルの茅原が登場。
静かに流れるメロディーに合わせ<繰り返す 光になって 絶望さえ……>とトーンを抑えた歌声から穏やかに立ち上がり、徐々に熱を帯びていくバンドのアンサンブルに合わせてシングル曲“Defection”に一気に雪崩れ込む。
力強い歌声で歌い終えたと思ったら、息つく間もなく“raison pour la saison”“覚醒フィラメント”“FUTURE STAR”というロック・ナンバーで駆け抜け、まだ序盤だとは信じられない熱気を場内に打ち上げていった。
そんな景色を嬉しそうに見つめながら、茅原は「ZEPP TOKYO元気!? 会いたかったよー!今日は一緒に、最後まで楽しんでいきましょー!」と元気いっぱいにアジテートし、 “Melty tale storage”“Last Arden”“蒼い孤島”と今度はファルセットや幻想的なサウンドを多用しながら、オーディエンスの感触をたしかめるようにじっくりと歌いこんでいく。
この日はいつも以上にオーディエンスの心に「何か」を置いていくかのように、まるで一瞬一瞬に生き様を刻むように懸命に歌う茅原の姿が印象的だったが、次のMCを聞いてその姿にも頷けた。
「ZEPP TOKYO振り替え公演、来てくれて本当にありがとうございます。~Key for Defection~ということで、新しい道を踏み出すための鍵……今日、みんなの背中をグッと押してあげられるような、そんなライヴになったら良いなと思って一生懸命歌っていけたらと思います」
──その思いを込めるかのように、次のブロックではお馴染みのカヴァー曲“輪舞-revolution”を間に挟み、自分の迷いや葛藤を全てぶつけた“不確定性原理”、一歩踏み出す勇気を描いた “Final Moratorium”と、メッセージ性の強いナンバーを熱唱し、前半戦をエネルギッシュに駆け抜けていったのだった。ここで、CMBのインスト・ナンバー“Shining Mosh”へ。
それぞれの個性溢れた熱演が終わると、ステージに現れたドアからドット柄のキュートな衣装を身にまとった茅原が登場。
後半戦のファンファーレ“KEY FOR LIFE”を高らかに鳴らし「みんな後半戦は笑顔でいくよー!」と“Happy Kaleidoscope”“too late? not late...”で、軽やかにカラフルな色彩をまき散らしていく。そして久々となるアコースティック・コーナーへ。
今回、ピック・アップされた楽曲は“雨音のベール”と“花束”の2曲。アコースティックならではの伸び伸びとした歌声が印象的で、茅原自身も「良いですね、アコースティック・コーナー。歌っていて気持ちが良いです」と大満足の様子で、そのペースを保ったまま初めてのウエディング・ソング“ひとりにひとつの永遠”、みんなの応援歌“雨上がりの花よ咲け”へと繋いでいった。
ここで一息ついてMC。「どうもありがとうございます!ライヴは最高だぜ~!……でも、みんな何かを忘れてはないですか?」と客席に問いかけると、オーディエンスは黄色の旗を取り出し、恒例となった旗振りソング“Best mark smile”のレッスンへ。2度練習するものの、観客の振りはほぼ完璧!その姿を見て「みんな出来るじゃ~ん(笑)。じゃあ行くよ!」とすぐさま、本番へ。
アッパーなリズムに合わせて会場が一体となって笑顔を作り出していく中、まさかの旗曲2曲連続の演奏で、そのまま“Lush march!!”へ突入!ハッピーなムードで会場をいっぱいにさせ、本編ラスト・ナンバー“Freedom Dreamer”まで、とびきりの笑顔で弾けた茅原だった。
アンコールは黒のラメTシャツに紫色のミニスカート、灰色のニーハイブーツというスポーティなスタイルで登場。「東京サイコー! いくよー!」と客席を煽り、“君がくれたあの日”“Paradise Lost”を熱唱!
中でも“Paradise Lost”のコール&レスポンスは長年のライヴで築き上げてきたファンとの絆があってこその感動的なモノであった。ここで少し長めのMCへ──。
「初めての全国ZEPP TOURということで、東京公演は3月12日に予定していたんですが、3月11日に東日本大震災に襲われました。私は文化放送さんで仕事をしていたんですけど、物凄く揺れて……このまま天井が落ちてきて、潰されて、死ぬんじゃないかなって、初めて思いました。ホントに……生まれて初めての経験で私も動揺していたんですけど、今東北の被災者の皆様は本当に大変な思いをしていて……凄く悲しい毎日を送っているのではないかなと思います。私は地震のあとは正直仕事をする気も、歌を歌う気も、無くなってしまって……みんなに心配をかけてしまった日もあったと思います、本当にごめんなさい。でも、少しずつ時間が経っていくなかで自分に出来ることはなんなんだろうなって考えるようになりました。自分に出来ることは声を通して、歌を通して、みんなに元気を与えること、笑顔をあげること、そうだなって思いました」
と、観客を見つめながら、正直な心境を吐露した。さらに続ける。
「これから、自分の生活のなかの一瞬一瞬が本当に大切になっていくんじゃないかなと思います。こういうことが起こって、大切なひとが笑顔でいてくれることや、家族が元気でいてくれることがこんなにも尊いものなんだなって凄く感じました。だから私はこれから、自分に悔いのないように自分に正直に生きていきたいなと思います。だから、みんなも一瞬一瞬、一日一日を今まで以上に大事に過ごしていってほしいなと思います。今こういう時に自分がこうやって声を通して、歌を通して、みんなと一緒に繋がっていられることがとってもありがたいと思うし、幸せだなと思っています。今日歌いながら、みんなの笑顔を見ていてそう思いました。これからも私に出来ること──自分に正直に選んで、生きていたいと思います。みんな、今日は本当にありがとうございました!」
まっすぐに前を見つめながらこれからの覚悟と決意を語った。
大きな拍手に包まれる中、声のトーンを少しあげて「そんなみんなに嬉しいお知らせが!」と、ニューシングルを7月6日にリリースすること、恒例となった河口湖でのライブ「SUMMER CAMP3」を、今年は8月5日~7日の3日間開催すること、秋頃に写真集「Memories」を発売することを発表し、場内からどよめき混じりの大歓声が立ち上がった。
歓喜の声が止まらないなか「……一緒に歌ってくれるかな?」と伝え、ひと呼吸置いてラスト・ナンバー“純白サンクチュアリィ”へ。
<夢の先甘い香り 包まれた心で 毎日咲く花のように綺麗に生きてみたい>── “音楽で人を幸せにしたい”というメッセージが伝わってくるかのような熱量溢れる歌声に合わせて、観客全員で熱唱。この合唱は特別な意味を持っていたと思うし、この場にいた全員にとっての“明日”に繋がるような希望に満ち溢れた時間になったと思う。まさに“~Key for Defection~”だ。
そんな輝かしいハイライトを飾ったあとは、マイクを通さずに「今日は本当にありがとうございました!みんなだーいすき!」と感謝の気持ちを伝える。
大きな、大きな拍手が会場を包んだのだった。言葉だけではなく“自分に出来ること”を全力でまっとうした茅原の姿はまるで太陽のように眩しく美しかった。
茅原の持つ圧倒的なエネルギーが発揮された、素晴らしいライヴだった。
<TEXT:逆井マリ>
ニューシングル「Planet patrol」
2011年7月6日発売!
1,300円(税込) LASM-4100
茅原実里History Photo Book「Memories」
4,000円(税込) 8月下旬~9月上旬発売!
あの熱い夏祭りが3DAYS開催!
>>MINORI CHIHARA LIVE 2011 “SUMMER CAMP 3”特設サイト
>>茅原実里オフィシャルサイト