「本当に歌いたい曲に出会えた」――『Lasei』で自分を開放した彼女が、さらなる内面的成長を経て世に送る現時点での集大成にして新たな1歩!それが「Invisible Message」 ELISAロングインタビュー
07年のデビュー以来、天使のようなクリスタル・ボイスと愛くるしいキャラクターで多くのリスナーを魅了してきたシンガー、ELISAが8thシングル「Invisible Message」をリリースする。
「Invisible Message」(作詞:岩里祐穂 作曲:森谷敏紀 編曲:大久保薫)は「ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH」挿入歌に抜擢された壮大なピアノ・バラード。シンプルながらも力強いメッセージを美しく繊細なストリングスで彩った、珠玉の名曲である。また、今回のシングルと同時に2011年4月16日@Shibuya O-EASTでの公演を収録した初の映像作品『LIVE"Birth of my Lasei"』もリリースされることが決定──と、人気・実力を伴いながら、順調なアーティスト活動を行っている彼女だが、今回のシングル、およびライヴDVDを制作したことで、アーティストとして、いち人間として、大きな一歩を踏み出すことが出来たという。
それは彼女にとってどんな出来事だったのだろうか。また、どんな新作に仕上がっているのだろうか。ELISAにゆっくりと応えてもらった。
──アルバム『Lasei』リリースから約半年が過ぎましたが、この半年を振り返ってみるといかがでしょうか。
ELISA:今年に入ってからいろいろと変化があったんですけど、その変化が良い方向に向けばいいなと思いながら私自身探りながら活動していたように思っています。でも、今回のシングルで、その変化が"進化"に変わったことを、今、実感しています。
──その変化、進化というのは、ELISAさんの中で具体的にどんな出来事だったんでしょう?
ELISA:今回のカップリング曲「忘れられない記憶は、キミの物語」の作詞をさせていただいたことや、「劇場版ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH」挿入歌となる「Invisible Message」に出会えたこととか……。私の歌わせてもらう曲はいつも「良い曲だなぁ」って思っているんですけど、今回の「Invisible Message」を歌ったとき、「忘れられない記憶は、キミの物語」の作詞をしたときっていうのは、今までにない手ごたえを感じたんです。「あ、本当に歌いたい曲に出会えた!」って実感しました。
あと、今回「Invisible Message」と一緒にライヴDVD『LIVE"Birth of my Lasei"』がリリースされるにあたって、自分のライヴ映像を何度も見る機会があったんです。普段、ライヴの映像を見ることはあるんですけど──そこまで過去に執着しない性格と言うか、ライヴを見ちゃうと「ああ、ここもっとこうすれば良かった……」ってマイナス面に落ちてしまうタイプなので、あまり積極的に見ないようにしているんです。でも、今回はライヴ映像を見る機会がすっごく多かったんですよね。イヤでも見ていくうちに(笑)、「あ、ELISAってこういう歌手なんだ」って気付いたんですよね。
──初めて客観的にELISAさんがELISAさんを見る機会があったっていうことですか?
ELISA:そうですね。ELISAってひとりだと思っていたんですよ……オンオフがない世界に生きていたので、全部"自分"だと思っていたんですけど、「歌手のELISAってこういう風に見られてるんだ」って客観的に見ることができました。
──それはELISAさんのアーティスト面において具体的にどんな影響を及ぼしました?
ELISA:歌手・ELISAを客観視することで、普段のELISAを客観視することも出来るようになりました。例えば、「これまでELISAがこだわってきたところを壊していっても良いんじゃないかな」って思ったんです。今回のジャケットでは初めて前髪を上げて、今までとは雰囲気を演出しているんですけど、これまで私の中で「髪の毛は長くて、巻いて、前髪はこう!」みたいなこだわりがあったんです。でも、それってバカバカしいなって(笑)。
──じゃあ、今、本当により『Lasei』(裸の声)になっていったというか。
ELISA:そうですね。次のアルバムのタイトル、決まりましたね。『Lasei 2』です(笑)。
──早くも決定で(笑)。今回のジャケットは本当に印象的で、これまでのELISAさんとは違ったイメージを与える写真に仕上がっていますよね。
ELISA:そうですね。これは……本当はもっともっとたくさん載せたい写真があったんですよ。同じシーンでも泣いてるシーンや眼を開けている写真があったりもするんですけど、この瞬間ってすごい瞬間で──ちょっと長い話になるんですけど、良いですか?(笑)
──ぜひお願いします。
ELISA:今回、北海道の北見にあるチミケップ湖に3日間撮影をしにいったんです。周りに森が広がる、すっごくキレイなところなんですけど、携帯の電波も入らないし、雨も降ってくるしで、コンディション的にはあまりよく無い状況で。雨に濡れては、髪の毛を乾かして、巻きなおして、晴れるのを待って……っていう繰り返しの中、雨が止んだ間に写真や撮影をしていたんですけど……このジャケット写真で着ているウェディング・ドレスは雨に濡れてはいけないドレスだったので、(アーティスト写真で使用している)ロングのドレスをずっと着ていたんです。もちろん、両方好きなドレスなんですけど、どうしてもこのウェディング・ドレスを着たかったんですよね。でも、結局3日間ずっと雨が降ってしまって……私、晴れ女なのに(苦笑)。
それで最終日、あと1時間でこの場所を出なきゃいけないって時に雨が止んで──ムリを言って、いっそいでこのドレスを着て、急遽髪の毛のセットをして、撮影することになったんです。あと20分しかないっていう状態だったんですけど、ものすごく集中して撮影して。私、このドレスを着たら泣けてきちゃって……ウェディング・ドレスなので、なんだか自分の結婚式の気分になっちゃったんですよね。お父さん、お母さんのことをいきなり思い出したりして……しかも、動物や鳥の声が聴こえてくるような大自然で、凄く生命力みたいなものを感じて「生んでくれてありがとう!」みたいな気分になって……。
その時にカメラマンさんが「森を入れないで、湖だけをバックにELISAだけを撮りたい」って言ってくれて、撮った写真が今回のジャケットなんですよ。実は、そのときの撮影の様子をスタッフさんに頼んで私の携帯で撮影してもらっていたんですけど、後からその映像を見たら、私の姿を見ているスタッフさんも泣いてて、メイクさんが真剣な表情で私のことを見つめていて、カメラマンさんが集中して撮影をしていて……「みんなそうやってELISAに真剣に向き合ってくれているのに、私、気付いていないことが多かったんだな」って思えてきたんです……。
──この半年の変化、その撮影などを経て、アーティストとしてのELISAさん、人間としてのELISAさん、どちらもすごく成長したんですね。
ELISA:そうなのかもしれないです。今年に入ってから、本当にいろいろなことがあったんです。ちょっと個人的な話になっちゃうんですけど……私、今まで家族が全てっていう生活を送ってきたんです。そんな中、兄が結婚したんですよね。それはすごく嬉しいことですし、私も心から「おめでとう!」って思っていたんですけど──兄は結婚して家族を作って新しい未来を作っていくわけじゃないですか。なんだか……自分たち家族が過去になっていくことが恐くて。私、本当に、親も友達もすっごく大好きで、毎日が幸せで……だからこそ、忘れられたり、置いてかれたり、変わっていってしまったり、っていうことが人一倍恐かったんです。だから、そういうことを考えないようにして生きてきたんですよね。でも、その一連の出来事で気付いたのは……人ってそんなに弱くないっていうこと。私はいままで周りの人の心配ばかりをしていて、自分のことには気をつかって無かったんだなというか……そうすることで、私自身が変わることを拒んでいたんですよね。それを気付けたことで、"自分のことを、当たり前のことを、もっとちゃんとしなきゃな"って。すみません、ちょっと上手く言えないんですけど(苦笑)。
──(笑)むしろ、言葉にしにくいことを話していただいて嬉しいです。今のお話を聞いていると、今回の「Invisible Message」がより響いてくるモノがあります。例えば<僕たちは決してひとりじゃない>っていうラスト一行も今のELISAさんが歌うからこその力強さがあるというか……。
ELISA:ありがとうございます。そう言って頂けたら嬉しいですね。この曲は "見えないメッセージ"をテーマにした曲なんです。後悔もあるんだけど、それを乗り越えて──人間として成長した自分から送っているメッセージなんです。だから、歌詞を読んでいると、悲しいのかな、切ないのかなって思うところもあるんですけど、悲しい、切ないって乗り越えるための感情なんで……今の自分にリンクするものを感じたんです。そういうイメージの曲だったので"すごく器の大きな人"じゃないですけど(笑)、私自身、曲の主人公になりきって曲に挑むことができたんです。、今回の曲は歌詞がスッと入ってきたし、いらない文字が一文字もないし、足りないものもないっていうくらい要約されているし、歌詞の内容も理解しやすかったです。
──レコーディングも今までとは違ったものになったんじゃないですか?
ELISA:そうですね。レコーディングの前の、仮歌の段階から、今まで感じたことのない感触がありました。仮歌を録る場合はまだ歌詞がない場合が多いので「歌いやすい」「キーが高いな、低いな」とかそういう大雑把なイメージで歌うんですけど、「Invisible Message」の仮歌の時は、"曲"として仮歌を録りたかったので、自分で英語を入れて、きちんと歌って……。ディレクターさんがそれを聴いてる時に泣いてくれていて……そういうことがあってから、レコーディングに望んだので余裕を持って歌えたし、"ELISAが主役"じゃなくて、"曲が主役"っていう風に考えて、ことばのひとつひとつ、曲の流れを大切にしながら歌っていきました。私としても成長できた1曲になったんじゃないかなって思います。
──ELISAさんが作詞を手がけているカップリング「忘れられない記憶は、キミの物語」(作曲・編曲 菊田大介/Elements Garden)に関してはいかがですか?
ELISA:気がつくと私のなかにある『ハヤテのごとく!』の印象が」広がってしまった曲なんですけど、そのイメージを忠実に表せたんじゃないかなって思います。例えば、<君が好きです>っていう言葉を『ハヤテのごとく!』風のニュアンスの言葉を変えていって……っていう作業を今回の作詞ではしたんですけど、中でも私の一番好きなフレーズは<変わりたいと うなずけたなら 自分らしさを飛び越えていく旅に出よう>っていうところなんですけど、ハヤテくんがナギちゃんの手を引いていて、ナギちゃんは俯いているんだけどニコってしてて──そんな自分なりのイメージをつくって書きました。これを書いているときは、ずっとハヤテくんとナギちゃんのことをイメージしていたので、この曲を聴いて『ハヤテのごとく!』の絵が浮かんでくれたら嬉しいです。
──分かりました。では、最後にELISAさんからファンにメッセージをお願いします。
ELISA:4月のライヴの映像が入っているDVDが同日に出るので、こちらも楽しみにしていてもらいたいですね。10月には私が前々からやりたかったクラシカルなコンサートが出来れば良いなと思ってます。きっと良い方向にこれからも向かっていくんじゃないかなって今は思っています。その気持ちが少しでも伝わったら嬉しいですね。<Text: 逆井マリ>
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