ハリウッド初 フルCG映画 『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』荒牧伸志監督インタビュー
7月21日公開される映画『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』。世界的に有名なSF作家ロバート・A・ハインラインの名作『宇宙の戦士』を実写映画化した『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズの最新作だ。監督は、これまでに映画『APPLESEED』やOVA『Halo Legends』などのフルCG作品を監督した荒牧伸志氏。ハリウッドのメジャータイトルでもある今作を引き受けた理由、そして見処などを語っていただいた。
■ せっかちなので、すぐ作りました(笑)
――監督を引き受けた切っ掛けは?
荒牧:2009年のサンディエゴのコミコンに行った時、『バイオハザード』の3DCG作品を売っていたソニーピクチャーズの方とお会いして、「フルCGで作った映画作品の可能性を追求したい」「一緒に何か出来ないか?」という話をしたのが最初ですね。その後お互いに「こういうタイトルが幾つかあるんだけど?」となり、その中で「ソニーさんといえば『スターシップ・トゥルーパーズ』がありましたよね? あれってリスタートできないんですか?」と相談をしたら、先方もそれは考えていたらしく調べていただき、「基本的にクリアになりそうです。ぜひやりましょう」となって動き出しました。
――コミコンで出会ってから動き出すまでどのくらい経ったんですか?
荒牧:意外と早かったですよ。コミコンが終わった1、2月後には「『スターシップ・トゥルーパーズ』をやりたいね」という話をしていました。その年末には「色々権利的にもクリアーになったからやりましょう」となり、翌年の春にはプロット案を出して、その年内には脚本が固まって、11年の頭にこのスタジオ(SOLA)を作って、その後1年半で完成しました。
――映画の製作期間としては短いですね。
荒牧:基本せっかちなので(笑)。フルCGだと時間がどうしても掛かってしまうものですが、スタートから2、3年先って今は本当に読めないじゃないですか。せいぜい1年半か2年がギリギリかな。ゲームとか色々なもので新しい技術が凄い勢いで出て来る中で、2年先を見越して世の中で色褪せないものを作るというとなかなか大変です。そんな技術的な進歩を含めて5年後、7年後を見越してやるとなると、自分のモチベーションを保つのも大変ですね。ですから、できるだけ早くやりたいんです。
そういう部分では、ソニーさんとのやりとりが非常に上手く行ったというのも、気持ちの中でも高いテンションのままやれたという大きなポイントだと思います。
■ パワードスーツが活躍する映画にしたい
――実写シリーズに対して、荒牧監督のどんな感想を持っていましたか?
荒牧:単純に、派手で楽しい作品だなと思っていました。戦争の描き方やバイオレン描写は凄いですね。でも、僕にとって『宇宙の戦士』(『スターシップ・トゥルーパーズ』原作小説の邦題/早川書房刊)の3分の2はパワードスーツなので。それがない中では頑張ったなと(笑)。
――すると、今作の最大のポイントはパワードスーツに。
荒牧:そこに尽きるしかないですよね(笑)。パワードスーツというと、最初の刷り込みとしてはやはり『宇宙の戦士』がありますので、「これをなんとか出来ないものか」というところから始まりました。
しかし、映画『スターシップ・トゥルーパーズ』の世界観の流れとして作りたい部分もある。そんな中、脚本のミーティングを含めてロサンゼルスに行った時、ソニーピクチャーズのアーカイブ(倉庫)を覗かせていただいたんです。
そこには『スターシップ・トゥルーパーズ』で使用されたプロップやミニチュア、3mぐらいの宇宙船までいっぱい置いてありました。当時のブループリント(美術設計図)もいっぱい残っていて、制作側の熱量を映画とは別に感じることができました。……人間て分かりやすいもので、やっぱりモノを見ると「カッコいいな」「これいいじゃん」となるんですね(笑)。そこで、コレを活かさない手はない。ではそれをどう混ぜるか、どうアップデートするかという方向に大きく動き、この路線でいけるんじゃないかという手応えになっていきました。
――ストーリーについて監督から出した要望は?
荒牧:でかい宇宙船の中での戦いにしたいというのは最初に出しました。それはCGで作りやすいという部分も含めてで。それとこれまでのシリーズとはかぶらない戦闘シーン、アクションにしたいからです。また、できるだけ群像劇にしたい。後はオリジナルキャラでもあるリコ、カール、カルメンを出したいと。他にも、ストーリーの流れも含め幾つかメモ書き的なものを出しています。今考えるとトンデモなものも含めアイデアはいっぱい出しましたね(笑)。
――今作は実写シリーズの流れでありながら、新解釈がプラスされているんですね。
荒牧:新型のバグを出していることも含め、そこは目玉としても欲しかった部分です。といっても、どこまで前シリーズから逸脱していいのかというのは、最初僕らにもわからないところでもあったので、色々アイデアを出した中には「ちょっとこれは…」というリアクションになったモノもありました。でも、意外と受け入れてもらえましたね。
■ 自分の作りたいものを作れるツール
――荒牧監督は、どういうスタンスでフルCG作品を作られているのでしょうか?
荒牧:時間もお金もかかるもの確かなんですが、僕としては非常に作りやすい、コントロールしやすいツールです。メカ(のデザインや作画)をやっていたこともあって、その質感にはこだわりがあります。そういうディティールの細かい物は性来好きだということもあるんでしょうね。そういったものを描くには「CGっていいな」というところから始まっています。
でも、映像作品を作る上でネックだったのがキャラクターの部分。それをアニメっぽく描けばなんとかなるんじゃないかと始めたのが『APPLESEED』です。ですが、人間というのは段々欲が出て来るもので「じゃあもっとリアルに近づけたらどうなんだろう」と『EX MACHINA』など色々やってみました。今作は、観て欲しいコアになるファンが『スターシップ・トゥルーパーズ』という実写映画のファン。その期待に答えるために、なら「フォトリアルなキャラがどこまでできるのかやってみよう」というのが、今回のスタンスですね。
振り返ってみると、フルCGではいろんな絵柄にチャレンジできる楽しみがあります。実写っぽいルック(見栄え、見え方)にもできるし、アニメっぽいルックにもできる。その選択肢の多さを自分は面白いと思っているし、またこういう作品のオファーがあればフルCGで作ってみたいと思います。
じつは、今回の作品をベースにキャラだけを実写にするというのもできるのかな? と考えたりもしています。発想としてはフルCGの中に実写のキャラが出て来る感じですよね。それもそれでありかな。デジタルって今更大騒ぎするようなものでもないし、表現能力はより自由になっていると思います。
――アニメだ実写だCGだという言葉での区別ではなく、映像作品という大きな枠でとらえているんですね。
荒牧:映画って、きっとアニメだから観るという人より、タイトルで選んで観る方の方が多いと思うんです。もちろんルックは大切ですが、ネゲティブな意味で、映画を見ている間ずっと「CGだ」と思って観られてしまうようではダメですよね。途中からそんなことが気にならずストーリーに入れる作品が一番良いわけで、それが制作者側の狙いでもあります。2Dで描いているアニメだってどこかにCGが入っていますし、基本的な演出面での得意不得意はあるので違いはありますが、ドラマ部分でも、実写、アニメ、フルCGで大きな差はなくなっていますよね。
■ CGとしてでなく、映画として楽しんで欲しい
――荒牧監督はアニメ出身ですが、アニメ的な演出は出ているのでしょうか?
荒牧:そうですね。コンテの書き方としては完全にアニメ時代と変わっていないので(笑)。カメラワークが少し自由に使えるなというのはありますが、カット割はいわゆる実写的なものではあまりないと思います。そういう点では、ルックと演出で不思議な感覚があるかもしれませんね。
――実写シリーズが好きだったファンの方に喜んでもらえそうな仕掛けは?
荒牧:予告編でも使っていますが、「DO YOU WANT TO KNOW MORE?」など、以前の作品で使われたセリフが違った形で使われていたり。「これは前の作品のあそこのことだな」とわかる会話とかが結構入っています。もちろん、原作と重複する部分もあります。それはシリーズを観ていた方には喜んでいただける部分ではありますが、観ていないと分からないなんていうことはありませんので、安心してください。
――そういう意味でも、シリーズの続編であり、リスタートでもある作品なんですね。
荒牧:いろんな方に観ていただき、喜んでもらえれば嬉しいです。
『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』は2012年7月21日(土)より新宿ピカデリー他で全国ロードショー!
<STAFF>
監督:荒牧伸志
脚本:フリント・ディル
プロデューサー:ジョセフ・チョウ
ストーリー:荒牧伸志、ジョセフ・チョウ、河田成人
製作総指揮:エドワード・ニューマイヤー、キャスパー・ヴァン・ディーン
CGIプロデューサー:河田成人
音楽:高橋哲也
提供:STAGE 6 FILMS
制作:SOLA DIGITAL ARTS
2012年 アメリカ作品 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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