『ラブカレンダー』発売記念! DECO*27×悠木碧 対談レポ
動画共有サイト上で大きな注目を浴びたことをきっかけに、今やJ-POP界へ新風を巻き起こす希代の音楽家として高い注目を集めているDECO*27さん。彼の3rdアルバム『ラブカレンダー』が2012年7月25日(水)にリリースされた。
同作品は、8月25日発売の月刊ビッグガンガン誌上にて、漫画家の水瀬マユさんの手によってコミカライズ化も決定している。1枚のアルバムから、素敵な物語が広がってゆく様にも注目だが、同時にいろんなシンガーを迎え制作したアルバム『ラブカレンダー』に詰め込んだ多彩な心模様にも、しっかり目を向けて欲しい。
ここでは、『ラブカレンダー』収録曲『帰想本能』のボーカルを担当した声優の悠木碧さんを迎え、DECO*27さんと悠木碧さんのおふたりによる『ラブカレンダー』を軸に据えた対談の模様をお届けしよう。ふたりの会話の中から、アルバムに詰め込んだ想いのカケラがいろいろ心へ刺さってくれたら本望だ。
●初恋って、一番初々しくてキラキラしているし。初めてだからこそ、どうしていいのかわからなかったりもするじゃないですか。(DECO*27)
――初めて恋に落ちた高校生の男女の1年間の日々を描いたのが、3rdアルバム『ラブカレンダー』ですが。まずは、今回のテーマを決めたきっかけから教えてください。
DECO*27さん(以下、DECO*27):3枚目のアルバムを作る話をしているときに、先に「12曲にしよう」と決めて、そこから「12」という数字をヒントに「1年は12ヶ月だし」っていうところへ意識を発展させました。そこへ、僕が以前からよく書いていた「恋」や「愛」のテーマを組み合わせ、「アルバムで1年を通した物語を描いてみよう」というところへと繋がりました。
――そこで描いたのが、『初めての恋』。
DECO*27:初恋って、一番初々しくてキラキラしているし、初めてだからこそ、どうしていいのかわからなかったりもするじゃないですか。しかも高校生の頃の恋って、とくにキラキラと輝きを放っている時期だとも思うんです。さらに実は大好きな少女漫画の影響もあったりするんですけど。
――悠木さん、その話を聞きながら「うんうん」頷いていましたが。
悠木碧さん(以下、悠木):その頃って、男の子も女の子も、恋愛することにも夢をみてるって言うか。少女漫画を読んでると、そういう気持ちがすごく物語の中へ詰め込まれてるじゃないですか。だからわたしも、「確かにすごいキラキラしてる頃だなぁ」と、DECOさんのお話を聞きながら、心の中で頷いてました。
――初恋って、お互いにドキドキとワクワクな気持ちが揺れ動いてる、そんな初々しさを心に抱いてく経験ですからね。
DECO*27:高校生の頃の初めての恋の物語なので、まだ小学生や中学生の子なら「こんな恋をしたいなぁ」という気持ちになれるだろうし。その時代を過ぎてしまった人たちなら、「そんな時期もあったなぁ」「懐かしいなぁ」という気持ちにもなってもらえるかな?っていうのがあって。そういう「あの頃を思い出すきっかけや、憧れ」になってもらえるかなという意識もありました。
●DECO*27さんの描く、優しい気持ちや甘い感情の中に、痛みみたいなものも混じっている世界観がすごく好きなんです。(悠木)
――今回、歌い手の一人として悠木碧さんを起用。その理由も聴かせてください。
DECO*27:以前から…アニメ『紅』へ出演していた頃から声優としての悠木さんのことは知ってましたし。悠木さんが出した『プティパ』というアルバムで、僕は2つ楽曲を提供させていただいたんですけど。悠木さんの歌を聴いたとき、「その歌の中の主人公の気持ちをとても上手く表現している方だし、すごく歌詞を大事にしている方なんだ」と感じたんです。
僕は「歌詞を伝えたい」という気持ちを大事にしてるんです。だからこそ、悠木さんの歌詞を表現するパワーにはすごい感動を覚えていたんですね。その経験があったからこそ、「この『帰想本能』を唄うには悠木さんしかいない」と言うか。主人公たちがいろいろ過ごしてきた時間の経験があったうえで、ふたりの気持ちが高まったり揺れ動いたりする様を悠木さんなら上手く表現してくれる」と思ってお願いをしたら、本当に素晴らしい出来になって嬉しかったです!!
悠木:ありがとうございます。わたし「何時かご一緒できたらいいなぁ」と某雑誌のアンケートにも書いてたくらい、以前からDECOさんの楽曲が大好きで。それが、まさか自分のアルバムに楽曲を提供をしていただけることになるなんて夢のような出来事だったのに。今度はDECOさんのアルバムへ呼んでいただけたことだけで、かなり感動してたのに、こんなにすごく褒めていただいて……。明日からも頑張れます!!(笑)
――悠木さんは、DECO*27さんが作る楽曲のどの辺が好きなんですか?
悠木:優しい気持ちや甘い感情の中に、痛みみたいなものも混じっている世界観がすごく好きなんです。わたしのアルバム『プティパ』へ提供していただいた楽曲にも、優しい気持ちだけじゃなく、そこには痛い気持ちもありました。そこへリアルな感情をわたしは覚えてしまうんです。
――DECO*27さん自身が、心に痛みを抱えた優しい人なんですか?
DECO*27:どうなんでしょうね…。何かがあると、すぐにマイナスな面を見るところがあって。それで、ひとりで「うーん」となってしまったり。その反面、人の話を聴かずに自分の世界へ急に入り込んでしまい、よく「話聴いてる?」と怒られてしまうこともあります(笑)。そんな「気使い屋でマイペースな人」だと思います。
●『帰想本能』は、わたしの歌声を通して、あったかさや苦い気持ちも伝わったらいいなと思いながら取り組ませていただきました。(悠木)
――おふたりは、もう何度もお会いしているんですか!?
悠木:じつは、『帰想本能』のレコーディングのときに初めてお会いして、直接会ったのは、今回の対談を通して2回目になります。だけど、「気使いなマイペース」と表現されていたように、そのペースに優しく巻き込んでくださる方だから、勝手に「すごく仲良し」みたいな気分になれるんです。レコーディングのときも、一緒にゲームをしながら遊んでもらってました(笑)。
DECO*27:ありがとうございます。
悠木:じつはわたしもマイペースだけど気にしがちな性格だから、あのとき「ああしとけば良かった」と反省することも多いんですけど。そうなりません?
DECO*27:なりますね(笑)。
悠木:そういう性格ってA型の人に多いらしいんです。
DECO*27:僕、A型ですよ。
悠木:えっ!? わたしもA型ですっ!!だから似てたんですね!!
――悠木さんは、『帰想本能』を唄うときにどんな風に想像を巡らせてました?
悠木:『帰想本能』のサビの歌詞で、女の子が、カフェラテの入ったカップを持って「アタシ安上がり(笑)」って文句を言ってくじゃないですか。そこのシーンがリアルに浮かんでいました。DECOさんの歌詞は、一つ一つのシチュエーションや気持ちを一緒に想像していける歌詞なので、臨場感を持って唄えましたし。わたしの歌声を通して、あったかさや苦い気持ちも伝わったらいいなと思いながら取り組ませていただきました。
――暖かさと苦みを持った相反する感情が、1曲の中で混じり合ってゆく。そこにDECO*27さんの作る楽曲の魅力がありますからね。
悠木:そうなんです。わたしがDECOさんの楽曲が好きな理由も、そこにあるんです。
――聴いた人の心をキュンとときめかせつつ、チクッともさせてゆく。そこがいいですよね。
DECO*27:僕、けっこうひねくれているので、明るい曲調へ暗い歌詞を乗っけていくのが好きだったりもするんです。そういったバランスで作品に仕上げていくことはあると思います。
●もちろん、(恋が)実ることも幸せだけど、別れることにも意味があると思っています。(悠木)
――ふたりが相合い傘の中で初めてのキスを交わす。『甘宿り』に描いた物語に胸が熱くキュンと高鳴りました。
DECO*27:あの歌では、2人を最高に幸せなシチュエーションにしてあげようと思って。そのほうが、後で喧嘩した歌が流れてくるときに、(ふたりの感情が)すごく活きてくるなぁと思って。
――初恋って、ほとんどが別れの結果で終わります。この歌でも、形としてはハッピーエンドになることはありませんでした。
DECO*27:最初はハッピーエンドにしてたんですよ。でも、キャラクターの設定をしっかりと決めながら、その中で物語を作っていく中、「このふたりはいったん離れ、お互いのことをよく考え、そのうえでもう一度答えを出せばいいんじゃないか?!」と思って、一度離れる環境を作り、ふたたび出会い、そして…という流れで物語を作りました。
悠木:別れることが必ずしも不幸なことかと言ったら、けっしてそうではないと思うから、この物語の結末はすごく納得いきました。それに初恋って、おそらくなんですけど「初めて、一生懸命自問自答や自己葛藤を繰り返す経験」だと思うんですね。自分自身の「ここが汚い心の部分だ」とか、相手の「本当はこうだったのかな?」と心の意図を疑ってみたり。そういう自己葛藤をするタイミングにも初恋の時期はなると思うんですね。もちろん、(恋が)実ることも幸せだけど、別れることにもわたしは意味があると思ってるし。そんなことを、このアルバムを聞きながらいろいろと考えてました。
――DECO*27さん自身、完成した『ラブカレンダー』に対してどんな想いや手応えを覚えてます?
DECO*27:ふたりが出会い、恋をして、傷ついて、そして初めて相手の痛みをわかるようになって、そうしてふたりが成長していったことを振り返ると、あの結末にして良かったなと思いました。ふたりを産み出したパパとしては(笑)。結果、ふたりは別れてしまったけど、僕の知らないところで、もう1回付き合っているかも知れないし(笑)。そこは、聴いた人たちそれぞれに想像を膨らませて楽しんでもらえたらなと思ってます。
実際このアルバムでは、ふたりが付き合いだすところから物語が始まりますけど、その前のふたりの心模様を想像してもらうのだって楽しいだろうし。間もなく連載の始まる漫画でも、アルバムの中には描ききれなかった部分が描かれていくかも知れないので。
●「あったかいもの」って、喧嘩して仲直りするときの常套手段ですからね。(DECO*27)
――『帰想本能』の中、相手へのお詫びとして、彼は彼女にカフェラテをご馳走します。悠木さんだったら、どんなお詫びが欲しいですか?
悠木:そうですねぇ……「あったかいもの」を出されると許しちゃう気がします。わたしはコーヒーが飲めないので、ホットミルクとか出てきたら「仕方あるまい」となるかも知れないです(笑)。
DECO*27:「あったかいもの」って、喧嘩して仲直りするときの常套手段ですからね。「いったん、これ飲んで落ち着こうよ」って。それを僕は雑誌で読みました(笑)。
―― 一度、訳あって遠距離恋愛をしていたふたりが、いろんな心の葛藤を乗り越え、ふたたび出会ったことで、互いの「好き」な気持ちを再確認してゆく。そのときの深い心模様を綴ったのが『帰想本能』ですが、悠木さんは、その深い心情を見事に歌の中へ描き出していますよね。
悠木:わたし、決して歌の技術があるわけじゃないので、気持ちを汲み取って表現していくことが、自分に出来る精一杯だと思い、がんばりました。
DECO*27:声で演技するお仕事をされているので、楽曲に登場する主人公の気持ちを膨らませ、その感情を歌声に乗せてくという表現がすごく上手いんですよね。とくに僕の書く歌詞は、セリフのよう会話で成り立っていたりもする。その様がリアルに響いてくるから、聴いててドキッとします。
――DECO*27さんの歌詞は、お互いの感情を巧みに描写していくことが多いですよね。
DECO*27:ひとりだけの感情で書いてしまうと、ある程度答えが出ちゃうと言うか。「自分はこう思ってる」で完結してしまうんですけど。その感情の中へ相手の気持ちも入ってくると、ひとつの答えでは終わらないというか。聴く人にも、いろんな選択肢が生まれていくんです。そこが良いなーと思ってて。
――アルバムはすでに発売になっていますが、いろんな反響の声は届いていますか?
DECO*27:嬉しいのは、僕が意図していた以上に、聴いてくれる人たちがふたりの気持ちを汲み取ってくれていることなんです。「えっ、自分はそこまで考えていなかったけど、この人は、こんなにも深く考えてくれたんだ」など、自分が想い描いた以上の物語が膨らんでいってるんですね。むしろ、いろんな人たちに聴いてもらって、初めて『ラブカレンダー』というアルバムが完成したような気持ちでいます。
――聴いた人の一人一人が、自分の感情を重ね合わせ楽しんでいける。それが、DECO*27さんの楽曲の魅力ですからね。
DECO*27:そうしてくれたら嬉しいですね。
――アルバムの13曲目として『愛言葉 feat.とぴ-Piano Parallel Mix-』をBonus Trackとして収録しました。
DECO*27:12曲目に収録した『声声』で一度物語は終わっているんですけど。『愛言葉』をParallel Mixという形にしたように、ふたりのその後の物語として。本編がバッドエンドで終わっているからこそ、そこへ救いを与えてゆくような。そんなふたりの物語のパラレルワールド的な歌として『愛言葉』を収録しました。だから、歌詞の最後もちょっと書き変えてあるんです。
●その人自身の気持ちと重ね合わせ、いろいろ想像を巡らせながら聴いて欲しいなと思っています。(DECO*27)
――最後に、アルバム『ラブカレンダー』に対して、ひと言ずつ想いをいただけますか?
悠木:まだ初恋まで至ってない人は、「ちょっと恋愛してみたいかも」って恋に憧れる気持ちになれると思うし、一度でも恋を経験したことのある人なら、誰もが通る「恋の甘さと痛み」を感じながら、いろいろ想い巡らせてゆくきっかけになったりするんじゃないのかなぁとも思います。わたしは、このアルバムを聴くと、人恋しくなるというか、(ここへ綴られた想いに対して)いろんな人とお話をしたくなるんです。ぜひ、このアルバムを聴いて、あったかい気持ちになってもらえたら嬉しいなーと思います。
DECO*27:じつは、ここまでしっかり細かく設定を設けてアルバムを作ったのは初めてのこと。その中へ、自分の中にあった感情を吐き出すことによって、客観的に自分で自分の気持ちに新たに気づくこともありました。なので聴いてくれる人たちも、その人自身の気持ちと重ね合わせ、いろいろ想像を巡らせながら聴いて欲しいなと思っています。
――ありがとうございました!
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◆DECO*27 3rdアルバム『ラブカレンダー』
発売日:2012年7月25日(水)
価格:
【初回生産限定盤(CD+DVD)】3,000円(税込)
【通常盤(CD)】2,700円(税込)
イラスト:坂本ヒメミ
デザイン:草野剛デザイン事務所
【収録曲】
●Disc1 / CD
01. 1+1=1 フタリ feat. とぴ
02. RT feat. とぴ
03. 甘宿り feat. 中川翔子
04. エゴママ feat. marina -Album Mix-
05. ライトラグ feat. とぴ -Album Mix-
06. 27 ニーナ -DECO*27 Vocal Mix-
07. 砂時計 feat. とぴ -Album Mix-
08. お留守番人 feat. marina
09. 恋距離遠愛 feat. とぴ -Album Mix-
10. 帰想本能 feat. 悠木碧
11. フタリ座 feat. とぴ
12. 声声 feat. とぴ
13. 愛言葉 feat. とぴ -Piano Parallel Mix- [BonusTrack]
●Disc2 / DVD(初回生産限定盤)
01. ライトラグ feat. とぴ -Music Video-
02. エゴママ feat. marina -Music Video-
03. 恋距離遠愛 feat. とぴ -Music Video-
04. 甘宿り feat. 中川翔子 -Music Video-
05. 甘宿り feat. 中川翔子 -Music Video- (Rainy Quartet Ver.)
06. 帰想本能 feat. 悠木碧 -Music Video-
07. 砂時計 feat. とぴ -Live Clip-
08. RECO*27 -Documentary & Commentary
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[インタビュー&文・長澤智典]