『境界線上のホライゾンII』EDを歌う奥井雅美さんに直撃

　デビュー20周年という記念すべきアニバーサリー・イヤーを迎え、先月アルバム『Love Axel』をランティスよりリリースした奥井雅美さん。その勢いを加速させるかのように、早くもニュー・シングルをリリースする。

　今作は『境界線上のホライゾンII』のエンディング・テーマ。『境界線上のホライゾンII』には2種類のエンディングがあり、奥井さんは"-Side SunRise-"なる『ソラノウタ』を歌っている（"Side SunSet"は結城アイラさんが担当）。奥井さんらしい前向きなパワーに溢れた底抜けに明るいポップ・チューンに仕上がっているが、どんな想いでこの曲を作ったのだろうか。奥井さんに直撃した。

奥井雅美さん

●ここ何年もド明るい曲っていうのは歌ってなかった

──アルバム『Love Axel』に引き続きランティスからシングル『ソラノウタ』がリリースされます。

奥井雅美さん(以下、奥井)：アニメタイアップを歌うのは久しぶりだったので、今回ランティスさんで『境界線上のホライゾンII』（以下ホライゾン）のエンディングを歌わせていただけることになってすごく嬉しいです。今回の曲は何回も書き直したんですよ。

　でも最終的にとても良い曲ができあがったので良かったです。昔も何回も書き直しをして良い曲になった……っていうことがあって。『アキハバラ電脳組』というアニメのOPになった『Birth』って曲なんですけど──。

──名曲じゃないですか！

奥井：あれは当時のレコード会社の大月（俊倫）さんから何度も書き直すように言われて。みんなが年末年始で休んでるときに、プライベートな予定のないひとりぼっちの人同士でそのやり取りをした記憶があります(笑)。そのときのことを思い出しましたね。

──何回も書き直した理由はなんだったんでしょうか。

奥井：ホライゾンのエンディングは、"Side SunRise ""Side SunSet"という2種類があって私は明るいほうを担当したんですけど、ここ何年も底抜けにド明るい曲っていうのは歌ってなかったんですよ。大人になってメッセージ性が強い曲を歌うことが多かったから、いつもどこか切ない部分が出てきちゃうんですよね。

　だから今回は「もっと明るく！」「もっと明るく！」って何回も曲を書き直して。で、歌詞も「もっと明るく！」「もっともっと！」って言われたので、一度ものすごぐはじけた歌詞を書いたら「これだと奥井さんの良い部分が無くなっちゃうので、ここまでしなくて良いです」って(笑)。そんなやり取りがあったんですよね。

　でも、それだけアニメサイドの皆さんがこだわりを持たれてるっていうのは良いことですよね。『少女革命ウテナ』って作品も幾原(邦彦)監督がこだわりを持っていたので歌詞を書くときに何度もやりとりをしたんですけど、タイアップのひとつとして作るんじゃなくきちんとしたこだわりを持って作れるのはいいなって。そのほうが絵が入ったときにユーザーさんに伝わりやすいと思うんですよ。

──明るい曲を書くって実は物凄く難しいことだと思うんですけど、具体的にどうやって書いていったんですか？

奥井：ランティスの斎藤(滋)プロデューサーと組んで作っていったんですけど、なんて言うんだろうな……。これはベテランになるとありがちなことなんですが、ある程度キャリアを重ねると「もっとこうして下さい」っていう人が自分の意思とは関係なく周りにいなくなるじゃないですか(笑)。

　でも、斎藤さんだったら言えるだろうということで、斎藤さんに担当していただけることになって。自分だけだったら視野が狭くなってできなかったことだなってことをやらせていただいたし、そこはランティスさんでお世話になり、一番良かったことだと思います。

　アルバム『Love Axel』も20年の歴史のなかで良いなと思うサウンドを全部詰め込んで、結果的に聴いたひとの背中を押すようなモノになったし、「俺流」を持ちながらもある程度周りにいる人の意見を聞くことも長くやるには大事なのかなって。それができないとずっと歌は歌えないんじゃないかなぁって思いました。


●「明るい歌詞を書くことって本当に難しいんです」

──歌詞は本当にストレートで、サビの「100のピンチだって乗り越え突き進むんだ」という部分を始め、「100」って言葉が散らばっているところも伝わりやすくて良いですよね。これは意図的に？

奥井：これはね、パッと聴いたときに覚えやすいワードを入れたくて。アニソンってある程度キャッチーさも必要だと思うので、この曲を思い出すときに「あのさ、ホライゾンの100のなんとかのさ！」って言われるようにしたかったっていうか(笑)。なにが良いかな～と思ったときに「100」って数字がパッと浮かんだんですよね。歌いながら作るのでハマりの良いものを入れたんですけど。

──あと「飛び立った"夢"は希望へ」という一節にもグッときました。明るい言葉ですけど、それだけではない深さも感じる言葉ですよね。

奥井：歌詞を書く前にホライゾンの1期を全部観たんですよ。で、2期のアフレコ台本を全部読んでから歌詞を書いたんです。それがものすごく時間が掛かって(笑)。で、台本を読んだあとに出てきた言葉なんですけど……。さっきも話しましたけど、明るい歌詞を書くことって本当に難しいんですよね。

　ただ明るいだけじゃもちろんダメだし。何をこのアニメで言わんとするかってところを曲に入れようと思ったけど主人公はあんまり喋らないし(笑)、第2期はまた違うキャラクターが出てくるからそこの要素も入れたいし……どこに焦点を合わせればいいのかなってすごく悩んだんですよね。

　で、ガーッと考えたときに……「全体的に、みんな頑張ってる！」って思って(笑)。みんなで頑張って闘ってピンチをチャンスに変えて勝っていくって部分が私は印象的だったので、そこに焦点を当ててこういう歌詞にしたんです。……まあ難しかったです。メッセージを入れようとしちゃうとちょっと暗くなっちゃうし。

──そういう部分は斎藤プロデューサーからアドバイスがあったんですか？

奥井：「こういう言葉を入れてみたら？」みたいなアドバイスはいただきました。斎藤さんのほうが年下なんですけど、斎藤さんが私の曲ですごく好きな曲があるらしくて「ああいう背中を押すような曲を歌って欲しい！」って。つまり自分の音楽を聴いてくれた人のなかで、「こういう感覚の人は結構いるんじゃないかな？」って思って。

　だけどやっぱり大人だからただただ明るいペラッペラなのを歌うのは違うと思うから、そうじゃない部分を出したかったっていう気持ちがありましたね。アルバムにもそういう部分がはいっているのでぜひ『Love Axel』も聴いてもらいたいですね。


◆『ソラノウタ』／奥井雅美
発売日：2012年8月8日(水)
価格：1,200円(税込)

◆『Love Axel』／奥井雅美
発売日：2012年7月4日(水)
価格：
初回限定盤　3,800円(税込)
通常盤　3,000円(税込)

●Masami Okui Live Tour 2012「Love Axel～20th Anniversary～」
2012年9月28日（金）福岡「DRUM SON」
2012年10月5日（金）広島「ナミキジャンクション」
2012年10月6日（土）大阪「OSAKA MUSE」
2012年10月12日（金）札幌「PENNY LANE 24」
2012年10月14日（日）名古屋「E.L.L」
-TOUR FINAL-
2012年10月20日（土）東京「日本青年館」
チケット一般発売中〜

-追加公演-
奥井雅美 20th Anniversary LIVE〜まだまだやるぜ！めざせ８０才(ハート)〜
2012年10月21日（日）東京「日本青年館」
チケット一般発売〜2012年9月15日


>>奥井雅美 official website -makusonia-

[インタビュー＆文・ 逆井マリ]

『ソラノウタ』／奥井雅美
発売日：2012年8月8日(水)
価格：1200円(税込)