■新アニソン通信 File.9 上坂すみれ[前編]
毎回、アニソンやゲーソンを歌うアーティストをクローズアップしていく『新アニソン通信』。今回ご登場いただくのは4月24日(水)に『七つの海よりキミの海』でアーティストデビューする声優・上坂すみれさん。4月からスタートしたテレビアニメ『波打際のむろみさん』の主題歌で、ハイスピード&ナンセンスギャグコメディの作品同様の衝撃度で話題になっています。
そのデビューシングル発売を記念して前後編に分けてお届けします。この前編では主題歌になっていて、自身も出演する『波打際のむろみさん』について、そして気になるデビューシングル『七つの海よりキミの海』についてお話ししていただきました!
●デビュー曲は話題のアニメ新番組『波打際のむろみさん』主題歌!
――4月24日に『七つの海よりキミの海』でアーティストデビューされますが、決まった時はどう思われましたか?
上坂すみれさん(以下、上坂):歌は歌うことも聴くことも大好きだったけど、お話をいただいた時は、人前で歌ったり、自分から発信したりできるのかなという不安もあったのですが、純粋にうれしかったし、皆さんにも祝福していただけて嬉しかったです。
――しかもご自身が出演するアニメ新番組『波打際のむろみさん』の主題歌です。
上坂:アニメが好きな私にとって、主題歌を歌わせていただくということも本当にすごいことで、恐れ多いのではと。実際に放送が始まって、自分の曲が流れると不思議な気分でしたけど、感慨深いものがありました。
――『波打際のむろみさん』はすごいスピード感のギャグアニメですね。キャラ達がかわいく、おもしろいけど、パロディなどちょっと危険な香りも(笑)。
上坂:あまり方言を使うアニメに触れてこなかったので、博多弁や小倉弁が飛び交うこと自体がまず新鮮でした。しかも登場キャラのほとんどが人間でなく、人魚やカッパ、ツチノコなど。そんなキャラ達が15分間にハイスピードでハイテンションなギャグを繰り出す過激な作品です。寝る前にちょっとのんびり見ようかと思ったら、見た後眠れなくなっちゃうかも。
――ご自身が演じる隅田さんはどんなキャラですか?
上坂:すぐ恋しちゃう女の子で、お酒飲んだり、合コンに行ったりとちょっとギャルのようなところもあって。人魚界も進んでいるんですね(笑)。作品の中では隅田さんは常識人的な立ち位置です。怒ったり、泣いたりなど感情の揺れは少ないほうかもしれません。むろみさんがハイテンションなので、対照的で作品の中の一服の清涼剤みたいな存在かなと思います。私の中にない要素がいっぱいなので演じていて楽しいです。
――テンポの速いギャグアニメは収録も大変そうですね。
上坂:15分作品なのに台本は30分アニメと同じくらいの分厚さとセリフ量で。ブースの中でも息もつかせぬ、セリフの応酬が繰り広げられています。そんなキャスト陣の熱量の高さが画面に伝わっていればいいなと思います。
●『七つの海よりキミの海』はテトリスっぽいサウンドなど音の釣り針がいっぱい!?
――「七つの海よりキミの海」は、スチールギターのイントロからなかなか歌が始まらないので、もしかしたらノーボーカル版を聴いてるのかなと不安になりました。
上坂:そうですよね。 私も最初、だまされました(笑)。ギターが刻むスカっぽいビートに、にぎやかで不思議な、プログレッシブなイントロが1分続いて。
――Aメロに入るとテンポがいい演奏にのって、かわいくてちょっとコミカルなすみれちゃんの歌声が聴こえて、体がリズムにのっていると突然……。
上坂: “むろみ!ここだ!”とデスボイスが。あっちに行ったり、こっちに行ったり、曲調が定まらなくて。前半はニューウェイブっぽい雰囲気なのに、昭和歌謡っぽい節まわしがあって、サビでは開けていく壮大な中にかわいさもあり、いろいろな要素が入っていて歌っていても楽しいです。
――間奏には落ちゲーの名作『テトリス』を思い出すフレーズも。
上坂:テトリミノが頭の中で落ちてきますよね。あれは『テトリス』のBGMの原曲「コロブチカ」のメロディで、この曲の振り付けもロシアフォークダンス的な感じになってるんです。
――上坂さんの音楽的な趣味も多岐に渡っているので、こういう様々な音楽がクロスオーバーする曲はピッタリだなと思いました。
上坂:ありがとうございます! 私がこういう曲がいいですとオーダーしたわけではないんですけど、「普段どんな音楽を聴いているんですか?」と聞かれて、自分が好きな音楽を羅列してお伝えしたら、そこから神前暁さんが採用してくださったような。それもすごくうれしかったです。どんなジャンル、カテゴリーの音楽が好きな人でもどこかフックになる要素、釣り針もしかけられていて。
――人魚のむろみさんだけに?
上坂: (笑)。そんな気持ちいい、サウンドのトラップに皆さんもハマってほしいです。
●コミカルとシニカルが混在する海のように広く、深い歌詞
――詞は作品のコミカルさとシュールさが前面に出た内容ですね。
上坂:深いのか、不条理なのか、意味がないのか?(笑) “むろみ! やめて!”で曲が終わっちゃいますから。
――作品名やキャラ名が出てくるのがアニソンの王道かなと思いますが、この曲での出方はちょっと……。
上坂:出てくる回数は多いんですけどね。歌い出しの“波打ち際に漂う神秘のサ・カ・ナ!”から“むろみ!ここだ!”とデスボイスが追いかけてくる展開は大好きです。“ずっと待ってた奇跡より目の前の笑顔が正解だ”など素敵なメッセージも込められていて。サビの“人間はみんなタイヘンだ”は『むろみさん』のかわいいキャラたちがこんな意味深なことを言うところはシニカルですね。
――でもラブソングにも聴こえるんですよね。
上坂:ロマンティックなタイトルもそうですし、“どんな海よりキミだけ見ていたい”や“心から叫ぶあいらぶゆー”などもかわいいですよね。私は、ポップさやかわいさの中に毒が入っている電波ソングが好きなんですが、この曲もただかわいいだけでなく、人生、哲学、愛なども詰まっていて、電波ソングとしても素晴らしいし、七つの海のように広大な曲なのかもしれません。
●赤一色となった会場で初披露!?
――他にこの曲の聴きどころと言えば?
上坂:これまでお話しした以外では、1コーラス最後の“むろみ!やめて!”から急に“今日も海はどんぶらこ”と平和な光景に変わって。その落差にいつもビックリしちゃうんですけど、皆さんにもビックリしていただきたいです。
――聴くとテンションが上がって、楽しい曲ですが歌うのは難しそうですね。
上坂:すぐ曲調が変わるので、確かに大変でした。でもステージで赤いライトの下で歌うと気分も高揚してだんだん楽しくなってきました。
――2月11日にニコファーレで行われた決起集会で初披露されていますが、その時のお客さんのレスポンスもすごかったですね。
上坂:皆さんが赤いサイリウムや赤い旗を振ってくださって、赤一色で歓迎ムードになっていてビックリしました。そのおかげで緊張しがちな私も気持ちよく歌えました。また、私でさえ初めて聴いた時は戸惑ったほどトリッキーな曲なのに、皆さん初めて聴いた曲なのにのって盛り上がってくださって、感激しました。
●「我旗の元へと集いたまえ」は“革命的ブロードウェイ主義者同盟”のフラッグソング
――カップリング「我旗の元へと集いたまえ」は、ロックなギターがフィーチャーされたアッパーなアニソン、キャラソンらしい曲だなと思いました。
上坂:『ロマンシング サ・ガ』シリーズなどの音楽を手がけられている伊藤賢治さん作曲で、イトケン節が詰まったRPGサウンドですね。レベルがまだ高くないのに、やってくる中ボス戦みたいに、緊張感とワクワク感が入り混じって。2月の決起集会で、革命的ブロードウェイ主義者同盟を発足したばかりですが、そのテーマ曲にピッタリな曲です。レコーディングでは勇ましく、かっこよくを心がけて歌いました。
――ここで“革命的ブロードウェイ主義者同盟”についてのご説明を。
上坂: “ブロードウェイ”はおたくの聖地、中野ブロードウェイのことで、中野ブロードウェイのようにどんな趣味でも受け入れられる、素敵なパラダイスをみんなで作れたらと思って。
――畑亜貴さんの歌詞も熱いですね。大義を果たすために突き進んでいく強さも出ていて。
上坂:Aメロでは“熱い 熱い”、2番では“強い 強い”と高揚させて、サビでは“奇跡に照らされた革命へと戦士なら戦士なら恐れずに進め”と力強く進んでいくようで。このまっすぐ過ぎるメッセージが大好きで。ライブやイベントで歌う時はみんなを指差しながら歌うんですけど、同志と目が合うとついドキっとしてしまうんです(笑)。
●行進曲『我らと我らの道を』で同志と共に前進!
――通常盤のみに収録の、もう1曲のカップリング『我らと我らの道を』は吹奏楽のオケ、途中で“行進 行進”の掛け声も入っていて、行進曲そのままですね。
上坂:それもロシア帝国時代っぽい行進曲ですね。ソ連ではない感じ(笑)。ソ連軍歌のようなわびしさはなく、“往き往きて遥か~例え血の汗を流すとも迷いはないさ”と迷いなく進む感じで気持ちいい曲です。
――確かに“往き”や“行進”がたくさん出てきて。あと“猛る戦車よ唸れ唸れ唸れ”とすみれちゃんの戦車好きな部分もしっかり入ってます。
上坂:資料にも「上坂すみれらしさ爆発」と書いてあって(笑)。詞全体を見ると遂に祖国の勇者になっちゃったなと(笑)。聴いてくださる同志諸君ももちろん“君も祖国の勇者”です。軍歌っぽいけど、まじめ過ぎず、ところどころに幼女が出てきたりとコミカルなところもあって楽しい曲です。何か大切なことに挑む前に聴くと士気が高まるけど、寝る前に聴くのは注意が必要です(笑)。
――3曲共、畑さん作詞ですが、すべて畑さんらしいキャッチーさと毒があって。
上坂:ウィットやひねり、シニカルさなど私が好きな要素が入っていて本当に素晴らしいです。畑さんとは直接お話しはできなかったんですけど、私の描いたイラストなどを見てくださったみたいで、イメージにぴったりな素敵な歌詞を書いて頂きました。
●PVとジャケットはアバンギャルドで衝撃的なアートワーク
――ジャケットはポップなロシアンアバンギャルド風で。
上坂:どちらかといえば横尾忠則さん、丸尾末広さんのような感じですかね。画集を集めるほど大好きなんです。だから私から「こんな感じがいいです」と資料を用意したら、デザイナーさんが私のイメージしていたど真ん中のジャケットを作ってくださって。歌詞カードも私の描いたイラストがアイコンみたいに使われていますのでお楽しみに。
――ジャケットのサブカルっぽさは、ヴィレッジバンガードによく置かれているCDのような(笑)。
上坂:私、よく行くので、ぜひ置いてほしいです。私を知らない方もCDショップでジャケ買いしてくれたら嬉しいですね。曲を聴いて合わなかったとしても、ジャケットだけでも買った価値があると思います。
――そんなこと言わないで(笑)。『七つの海よりキミの海』のPVが先日、公開されましたが1分あまりの演説から始まる衝撃的な映像でした。
上坂:歌い出すまで2分あまりありますからね(笑)。あれは2月11日にニコファーレで行われた決起集会の映像で、ブロードウェイ主義者同盟の演説や歌っているシーンなど、その集会での模様を中心に構成されています。
――ライブシーン以外ではジャケットと同じく横尾さん風のアバンギャルドなアートになっていて。赤い旗を振っての行進など共産圏の革命プロパガンダみたいなのに西郷隆盛がいたり、東京っぽさも見えて。
上坂:真っ赤かで集中線もいっぱいで、飛行機が飛んだりして本当に楽しいですよね。電気グルーヴなどのPVを手がけている田中秀幸さんにプロデュースしていただいたので、ポップで斬新な映像になったと思います。また途中に私が描いた絵がインサートされていたりしますが驚かないでください(笑)。
●自分の“好き”を包み隠さず、詰め込んだシングルに
――上坂すみれを音楽、詞、映像、アートすべてで表現して1枚になりましたね。
上坂:自分を偽れないまま大きくなってしまったので、アーティストデビューさせていただく時も私自身を包み隠さずCDにしてしまった感じです。スターチャイルドさんの寛容さにも大感謝です! 私に興味や感心を持ってくださった方はぜひお手に取って下さい。そして上坂すみれを知らなかった方は怖いもの見たさで聴いてみてください(笑)。
――現在、全国各地で“集会”が行われてますね。
上坂: “革命的ブロードウェイ主義者同盟”拡大のために東奔西走しております。先日のACE2013の会場でカップリング曲を初披露させていただいたり、侵攻中です。今後も勢力を徐々に拡大していくつもりですので、ご期待ください。
――今回の3曲をリリースした後は何をやっても変化球みたいに思われるから大成功かもしれませんね。
上坂:かわいいラブソングやJポップみたいな曲でも受け入れてくれますかね?クラフトワークみたいなテクノとかもいいかな。大人の人ってすごいですね(笑)。
――上坂さんのデビューで、スターチャイルドレーベルにも強力な飛び道具が加わった気が……。
上坂:今回、好きなことをやらせていただいたので、今後もできる限り、昭和から名曲を掘り起こしてきたりとか、いろいろなことができたらと思ってます。
[後編へ続く]
◆『七つの海よりキミの海』/上坂すみれ
発売日:2013年4月24日(水)発売
価格:
[初回限定盤] 1,700円(税込)
[アニメ盤] 1,500円(税込)
[通常盤] 1,200円(税込)
発売:キングレコード
>>上坂すみれスターチャイルド公式
>>上坂すみれ公式ブログ
>>テレビアニメ『波打際のむろみさん』公式サイト