ミニアルバム『金色イルミネーション』発売記念・大橋歩夕さんインタビュー【後編】
『ストライク・ウィッチーズ』のエイラ役や『境界線上のホライゾン』のアデーレ役、『ガールズ&パンツァー』のおりょう役でお馴染み、声優の大橋歩夕さん。彼女は役者と同時に、歌の面でも定期的に作品をリリースし続けてきました。これまでにも、「ちっく」3部作と呼ばれる作品群を含む4枚のミニアルバムと1stフルアルバムを制作。
このたび大橋歩夕さんが、前作から1年半ぶりとなる新作ミニアルバム『金色イルミネーション』を発売しました。歌とリーディングで構成。素敵な物語仕立てになった本作。この作品に詰め込んだ想いを、前編と後編の2回に分けて紹介します。後編となる2回目では、『金色イルミネーション』の曲解説後半部と、ライブやインストア・イベントに向けての想いを語っていただきました。
★1回目では、ミニアルバム『金色イルミネーション』を制作するまでのエソピード話や、作品に収録した曲たちの全曲解説の前半部をお届けしました。2回目の掲載では、全曲解説の後半からスタートします。まだ1回目を読んでない方は、まずは1回目を読むことをお勧めします!!
●『Yuki』
――『Yuki』では、ダンスミュージック的なアプローチも見せてきました。
大橋歩夕さん(以下、大橋):『イルミネーション』よりもちょっとビートが弾み出した、曲の中でもリズムをきっちり刻んでいるように、ダンスミュージックにも近い感じの曲調になっています。まさに、冷たい……寒い冬のイメージにもピッタリの楽曲だから、『Yuki』ではあまり感情を出さずに唄いました。とくに、冒頭の英詞の部分はあえて感情を抑えて唄ったように、冷たい冬の印象を、歌でもいろんな形を取って表現させてもらいました。
――何故、感情を抑えたのかも気になります。
大橋:「人と人との心の繋がりが絡まってしまう」という部分を強調したかったことから、その上手くいかない感情を出すうえでは、あえて冷たい雰囲気で唄うのがいいのかな?!と思ってそうしたんですけど…意外と、その表現には苦労しました。
――先にも言ってたように、楽曲が全部出揃ってからリーディングを作りあげたということでしたが。こうやって『イルミネーション』『仲違い』『Yuki』と流れで聞いてると、すべて繋がりを持った、一人の女性の搖れる感情を綴ったドラマとして胸に響いて来ていたんですよね。
大橋:確かに、あらかじめ一つの物語を作ろうとしていたかのように聞こえますよね。『Yuki』という曲は、9月に行ったイベントで初披露していたように、今回収録した楽曲の中一番最初に生まれた歌でした。あの当時から「これは冬の歌にしたい」と思い、"雪と人の心"を重ねながら。「温かいものと冷たいものは上手く交じり合わないなぁ」という情景なども想像しながら、この歌詞を書きました。
――切ない歌詞になったのは、曲調に導かれてのことだったんですか?
大橋:普段は、楽曲が出来上がったうえで歌詞を書かせていただいてるんですけど。この曲に関しては、曲調を耳にして「冬の歌にしよう」と思ったのではなく、以前からズッと「冬の歌を作りたい」気持ちを持っていたことから、その想いを形にしようと、あらかじめいろいろ用意していた言葉をメロディーの中へはめていきました。
――その言葉たちが気になります。
大橋:儚さやふんわりとした表現、つかみづらい想いなどをいろいろ書き出していました。その中から、"雪"と"心が空回りする"二つの印象に共通する言葉を取り上げていった形だったんです。なので、『Yuki』の中には心つかみづらい感情を記した言葉も入っているかと思います。
●『仲直り(リーディング)』
――『仲違い』のときにも語っていましたが。『仲違い』『仲直り』二つの物語の流れをあらかじめつかんだうえで、この『仲直り』のリーディングにも望んだわけですよね。
大橋:そうです。だから二つの物語を通して、「女の子のほうが、男の人よりも一枚も二枚も上手なのかなぁ」と感じてたっていう(笑)。このリーディングを収録しているときも、わたし、なんでそう発言したのか理由がわかんないんですけど、「男は子供ですから」とスタッフさんに言ってたんです(笑)。
――大人な発言だなぁ。『仲直り』では、二人馴染みの場所で、ついさっき喧嘩別れした二人が再会。寒空の中、ベンチに一緒に座りながら、互いの心の距離を縮めてゆく様が語られます。もう何にズキュンときたかって、ベンチに座ったときの、けっしてベッタリくっつくわけでもない、二人の微妙な距離感なんですよ。
大橋:このリーディング・ドラマの粋なところは、この男女「果たして恋人どうしなのか? それとも、恋人になる前の段階なの?」と、それをいろいろ想像させてくれるところなんです。そこに関しては、ニヤニヤしながらみなさんにいろいろ想像してもらえたらなと思います。
――大橋さん自身は、二人の微妙な距離感にドキドキを覚えるタイプ? れとも、もどかしさを感じてしまう性格?
大橋:わたしの中で二人は恋人関係ではなくて。でも、ある程度何でも言い合える関係であって。そんな中、ポロッと出てしまったひと言で『仲違い』に記したような喧嘩になってしまったわけなんですけど。わたしが女の子の気持ちを表現していく際に意識していたのが、「女の子が持つ、ちょっとした心の余裕」でした。正直わたしも、二人が付き合っているのか、そこは濁された表現になっているのか、その真相はわからないんですけど。わたし自身は「もう付き合ってるんだよねぇ?」くらいな心の感覚を持って表現させていただきました。
――互いに、相手の気持ちへズケズケと入り込まない。その微妙さがまた好きなんです。
大橋:うんうんうん、確かに。
●『Center Of Your Heart』
――最後は、キラキラとした輝き放つエレクトロな楽曲『Center Of Your Heart』の登場です。
大橋:この歌は、一番作品の置き場所的に変動を繰り返した楽曲でした。最終的には「ライブで表現するときも含め、最後に持ってきたほうが映えそうだね」ということから、この作品でも、最後を飾る歌にしました。『Center Of Your Heart』は、1曲の中で次々と歌の雰囲気がドラマチックに変わっていくように、すごく贅沢な楽曲に仕上がったなぁと感じています。
――冒頭の♪La la~♪の部分からすでに、とても開放的な空気が楽曲全体を包み込んでいきますからね。
大橋:どこか開放されてゆくような……。この曲の持つ強さにわたしは惹かれたこともあって、ひと皮剥けた…もう一人の新しい自分になってくみたいな気持ちを表現したかったんです。『Center Of Your Heart』の歌詞を書いてくださったのは、プロデューサーの山村さんなんですけど。歌詞の(表現)内容も含め、『イルミネーション』や『Yuki』とは異なる表現をしてくださったこともあって、楽曲も含めたフューチャー感が一気にグーンと上昇していった、この作品の中でも一番の要となる楽曲になりました。
――ライブで表現したときも、最後を飾るに相応しい楽曲になりそうじゃないですか?
大橋:みんなでパーッと一緒に盛り上がっていける。ライブでも、そんな感じを作り上げてゆく楽曲にしていきたいですね。
●まるで一本の映画を観ているような。聞いてくださるみなさんが主人公の気持ちを感じながら楽しめる作品であり、わたしにとっても大事な一枚になりました。
――完成したミニアルバム『金色イルミネーション』、歩夕さんにとってどんな一枚になりましたか?
大橋:楽曲やリーディングどうしが引き寄せ合っていたのか、本当に自然な流れで楽しめる作品になりました。一枚通して聞くと、まるで一本の映画を観ているような。浮き沈みしてゆく気持ちの波さえも綺麗に繋がって出来ているように、聞いてくださるみなさんが主人公の気持ちになって楽しめる作品であり、わたしにとっても大事な一枚になりました。
――以前から作品には積極的にリーディングを入れてるように、楽曲とを繋ぐリーディング・スタイルは、歩夕さんのCDには欠かせない要素になっている印象も強く感じてしまいます。
大橋:ホント、気がついたらそうなっていた感じですよね。
――1月18日(土)には、下北沢・風知空知を舞台にしたワンマン・コンサート「*アユタリスク*Vol.6」の開催も決定。
大橋:この『金色イルミネーション』に収録した曲たちを、またみんなの前で歌えることがすごく楽しみなんです。前回のワンマン・コンサートのときは、『みにアコ』というアコースティックな作品を出したことから、ゆったり心地好く聞けるライブを作り上げたのですが。今回はバンド・サウンドながら、でも生音重視だけではない楽曲も『金色イルミネーション』には入っているように、どんなコンサートの風景が広がってゆくのか? そこは、わたしも楽しみにしています。とくに『Center Of Your Heart』は、みんなで一緒に歌える楽曲なので当日が楽しみです。
――同じく、渋谷・八王子・天王寺のアニメイトを中心に、「金色イルミネーション」発売記念インストア・イベント」の開催も決定しています。
大橋:きっとインストア・イベントの前には、みなさん『金色イルミネーション』をたくさん聞いていただいてると想像します。みなさんがこの作品を通して感じたイメージが、いろんなアニメイトさんの店舗へわたしが足を運んで唄うことで、また新しい印象を重ねてもらえるように。そして、みなと一緒に唄いたいとも思っているので、みなさん楽しみにしていてください。わたし自身も、すでにドキドキした気持ちで、インストア・イベントを楽しみにしています!!
――ありがとうございました!
2回に渡ってお届けした大橋歩夕さんのインタビュー。まだまだインストア・イベントは続きますから、ぜひ、直接彼女との触れ合いを楽しんでくださいね。
■『金色イルミネーション』/大橋歩夕
発売日:2013年12月18日(水)
価格:1,575円(税込)
【収録曲】
01. イルミネーション
02. 仲違い
03. Yuki
04. 仲直り
05. Center Of Your Heart
06. イルミネーション (Off Vocal)
07. Yuki (Off Vocal)
08. Center Of Your Heart (Off Vocal)
[インタビュー&文・長澤智典]