「映画好きだったら観ておくべきという作品」と確かな自信をのぞかせた、実写映画『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』の緋村剣心役・佐藤 健さんにインタビュー
1994年より『週刊少年ジャンプ』で連載されていた、和月伸宏作『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』。この作品の実写映画が2012年8月に公開され、世界的なヒットを記録した。
そして、熱狂から約2年が過ぎた今年8月1日。二作目となる『るろうに剣心 京都大火編』公開。『るろうに剣心 伝説の最期編』(9月13日公開)と2作連続で全国のスクリーンに登場する。
そこで、主演の佐藤 健さん(緋村剣心 役)にインタビューを敢行。撮影を振り返っての感想や『京都大火編』より新たに加わったキャラクターについて、さらに主役を演じる佐藤さんだからこそ語れる、実写版『るろうに剣心』への想いなど、様々なお話を伺った。
■ 「あの一週間は、僕の25年の人生のなかでもかなり特別な一週間でした」
――前作は世界的にもヒットしました。それを受けてご自身はどうでしたか?
佐藤 健さん(以下、佐藤):もともと「海外にも行きたいね」っていうのはずっと言っていたんですよ。だから海外のいろんな人たちにも観てもらえてよかったですね。
――二作目まで少し間があきましたが、自分の中に再び剣心を戻す感覚ってどういう感じだったんでしょう?
佐藤:うーん……自分でもよくわからないですけど、体に染み付いてるもんなんですよね。自転車に乗れるようになったら、ずっと乗れるじゃないですか。あれとおなじ感覚です。あと今回は、アクション練習をクランクインの3カ月くらい前からはじめられたのも良かったかもしれない。この準備期間で、徐々に徐々に戻っていくことができましたね。
――そもそも漫画原作を実写化する場合、どこを意識して役作りしていますか?
佐藤:まず、漫画原作の実写化って一括りにはならないんですよね、やってる側からすると。作り方は、作品ごとにいろんな形があると思ってるので。ただ『るろうに剣心』に限っていうと、僕自身原作から大好きな作品なので、原作をかなり意識している方だとは思います。忠実とはまた違うんですけど、役になるうえで漫画を読んだしアニメも観たし、そこからいいセリフを引っ張ってきたりしました。
――「セリフを引っ張ってきた」というと?
佐藤:台本を読んでいる段階で、「このシーン、なんかしっくりこないな」って思ったとするじゃないですか。そうしたら「例えばこういうとき剣心ってどう言ってるんだろう?」って漫画の中から探したりするんですよ。それに、原作のままとまではいかなくとも、「こういう状況なら剣心は……」と僕なりに想像して、セリフを提案したシーンはあります。とくに『伝説の最期編(三作目)』は、原作がかなり長いこともあって、映画はオリジナル要素がかなり強いんです。そうすると、原作のセリフがどんどんどんどん当てはまらなくなってくるので、そういった場面はよくありましたね。
――それを経て芝居に落としこんでいくわけですが、アクションをはじめ苦労の連続だったかと思います。実際にはどうやって乗り切っていったんでしょう。
佐藤:それはもう「がんばる」しかないんですよね(笑)。アクションの撮影は冗談抜きで怪我と隣合わせ。怪我をして最後まで撮影できないとか、大げさじゃなく普通に有り得る場なんですよ。でもそんなこと絶対に起こすわけにはいかないので。どうするかというと、とにかく集中して「がんばる」しかない。そのモチベーションを半年間キープし続けるのは、しんどかったように思いますね。
――では、キープできた秘訣はなんだったのでしょうか?
佐藤:「たくさんの人が楽しみに待ってくれているんだ」とか、「前作を観て興奮して、続編に期待してくれてる人たちがいるんだ」っていうことを考えて、自分を奮い立たせることですかね。これはキレイ事じゃなく、本当にそうでした。どんなにキツい撮影でも「やってやろう!」って気持ちになれたので、撮影中はかなり助けられましたね。
――なるほど。次に新キャラのお話も。『京都大火編』からは、瀬田宗次郎、四乃森蒼紫、志々雄真実という3人の剣客が登場しますが、彼らを演じるキャストが決まったとき、佐藤さんご自身はどう思われましたか?
佐藤:率直に素晴らしいと思いました。剣心も含めですが、この男たちはみんな悲しい過去を持っているんですよ。ただ、原作では悲しさの理由を回想しながら見せることができましたけど、映画ではそれがどうしてもできなかったので。俳優さんが出すオーラの“説得力”に頼る部分も大きいんですよ。それで言うと、今回のキャスティングは完璧すぎるものでした。例えば、瀬田宗次郎役のリュウ(神木隆之介さん)なんかも、普通に話していても「こいつイジメられてきたんだな」って泣けてくるし。描かなくても“匂わせてくれる”俳優さんばかりだったので。原作ファンとしても幸せです。
――「アニメイトTV」では、神木さんにもインタビューさせてもらったんですが、宗次郎役に決まる前から役作りをしていて、佐藤さんに見せていたとおっしゃっていたんです。そんな神木さんが晴れて宗次郎役に決定したときはどうでした?
佐藤:ホッとしました(笑)。当時はまだ二作目すら決まってない段階だったので、僕も「続編やらないかもよ?」って言ってたんですけど、「いや、絶対やるでしょ!」ってノリノリで縮地してましたし。
――そうそう、縮地を見た佐藤さんの顔が、神木さん的には「呆れた顔」のように見えたそうですが。
佐藤:呆れたって(笑)。そりゃあリュウが宗次郎に決まったら素敵だなと思いましたけど、まだ続編がやれるかどうかもわからない段階でしたからね。それでもマネージャーのデスクに『るろうに剣心』の資料をスッと置いて、宗次郎やりたいアピールをしたりもしてたんですって。そこまでやって、リュウが宗次郎にならなかったらどうなるんだアイツ!?って不安だったので。本当に、ホッとしたに尽きますね。
――なるほど。あとは、大友監督にもインタビューしていまして。佐藤さんが、過酷な撮影のあとシャワーで倒れたというお話がありました。
佐藤:はははっ!! 『伝説の最期編』のラストですね。いやもうすごかったですよ。一週間くらいスタジオで撮ってたんですけど、最終日は朝から晩までホントに長い時間撮影していて。だからもう、最後のほうなんて剣心も志々雄も髭が生えてたんですけど(笑)。あの一週間は、僕の25年の人生のなかでもかなり特別な一週間でした。なんて言えばいいのかわからないけど、とにかくアドレナリン!って感じで。で、その撮影が終わったとき、はじめて監督と握手したんです。「ひとまずいけたね、これは」って。僕自身も、自分が設定したハードルは超えられたなと思いましたし。この時点ではまだクランクアップじゃないのであれですけど、「俺はこの瞬間のために5カ月がんばってきたんだな」って思えましたね。ほんと、そのシーンは……観て欲しいです。
――この作品への想いの強さが伝わってきます。佐藤さんは、以前この作品について「日本映画の歴史が変わる」とおっしゃっていましたが、具体的にはどのへんでそう思いましたか?
佐藤:まず映画としての雰囲気の話なんですけど、日本のエンターテインメント作品で、こんなに映像に“力”がある作品って、僕あんまり見たことないんですよ。わかりやすく言うとハリウッドに近いというか。でも、日本の美もちゃんと映しだされていて、ハリウッドの真似事になってないという点はありますよね。あとは、アクション。アクション部の方たちが最高の技術を持ってきてくれたおかげで、これまでの日本映画以上に“リアル”を表現できています。例えば、リアルに当たる距離のをよけたりという動きですね。これはもう、ソードアクションを扱ったアクション映画のなかでも革命的だと思います。だから、「とりあえず観とけ」って作品あるじゃないですか。好き嫌い抜きにして、とくに映画好きだったら観ておくべきだ、みたいな。そういう映画になったんじゃないかなと思います。
――では最後に。公開を楽しみに待っているファンのみなさんへ「ここに期待してほしい」というポイントを教えてください。
佐藤:いちばんは「まっさらな気持ちで見てもらいたい」なんですけど、あえて言うならやっぱりアクションですかね。漫画やアニメってかなり非現実的な動きをしているので、それをどう実写に落としこんでいるか。これは僕らにとってかなり重大なテーマなんですよね。必殺技とかも「実写だったらこうなるかな?」っていい大人たちが一生懸命考えていたりするので。そういう点も含めて、この作品を楽しんで欲しいです。
――ありがとうございました!
ちなみに、『るろうに剣心』以外で好きな漫画はあるか聞くと、「いまだに自分でコミックスを買っているのは『ONE PIECE』と『HUNTER×HUNTER』」とのこと。とくに昔は漫画にもアニメにも多く触れていた様子で、「サンデーとマガジンは親父が買っていたので、実家で親が買ってます」、「アニメは最近は観なくなっちゃいましたけど、小さい頃はもう全部観てましたね。ドラゴンボール、コナン、金田一、ONE PIECE、ポケモン……もう全部」と楽しそうに語ってくれた。
ともあれ、仕事への意識の高さは、同世代の役者のなかでも群を抜くといった印象。芝居に対しては、感覚的な部分と論理的な部分を持ち合わせ、じっくり、淡々とインタビューに答えてくれた。ちなみにインタビュー中にもあった通り、本作に関連しては、瀬田宗次郎役の神木隆之介さんと、本作監督・大友啓史氏にもそれぞれインタビューを行っている。そちらもあわせて読んでみてもらいたい。
[取材&文・松本まゆげ]
◆作品情報
<公開情報>
『るろうに剣心 京都大火編』
8月1日(金)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他全国ロードショー!
『るろうに剣心 伝説の最期編』
9月13日(土)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他全国ロードショー!
【作品ストーリー】動乱の幕末で「最強」の伝説を残した男、緋村剣心。かつては“人斬り抜刀斎”と恐れられたが、新時代を迎えて仲間たちと穏やかな日々を送っていた。そんな時、新政府から、剣心の後継者として“影の人斬り役”を務めた志々雄真実を討つよう頼まれる。新政府に裏切られ焼き殺されたはずが、奇跡的に蘇った志々雄は、日本征服を狙っていた。必死で止める薫に「今までありがとう」と別れを告げ、一人京都へ向かう剣心。<不殺の誓い>を破ることなく、日本を守ることができるのか―――。
<CAST&STAFF>
佐藤 健 武井 咲 伊勢谷友介/青木崇高 蒼井 優
神木隆之介 土屋太鳳 田中 泯 宮沢和史 小澤征悦/滝藤賢一 三浦涼介 丸山智己 高橋メアリージュン
江口洋介・藤原竜也
原作:和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」(集英社ジャンプ・コミックス刊)
監督:大友啓史
製作配給:ワーナー・ブラザース映画
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