『たまこまーけっと』牧野かんな、『中二病でも恋がしたい!戀』七宮智音を演じた長妻樹里さんインタビュー デビュー曲『言えないアイスクリーム』に込めたアーティストとしての想いとは!
アニメ「たまこまーけっと」の牧野かんな役で一躍脚光を浴び、「お姉ちゃんが来た」の水原一香役、「中二病でも恋がしたい!戀」の七宮智音役とヒロインを演じてきたのが、長妻樹里さん。つかみどころのない不思議っ子から活発な女の子まで、幅広い性格の子を印象付け演じてゆく表現力が高い評価を獲得。演技派としての支持もさることながら、彼女は准看護師の資格を持ち、実際に現場で働いてきた経験も持っている才女。演技力も含め、まさに"人を癒す力を備えている女性"だ。
その長妻樹里が、トムス・ミュージックとZERO-Aの協力のもと、8月27日(水)に1stシングル『言えないアイスクリーム』を発売し、デビューを飾ることが決定した。デビューへ到るまでの道のりも含め、デビュー・シングル『言えないアイスクリーム』や、みずからMCとしても参加する「トムスFes」の話まで、いろいろと伺いました。
■ 声優になる夢を、誰にも告げることが出来なかった高校時代。そして樹里は、看護学校へ。
――樹里さんは、准看護師の資格を持っていれば、実際に看護師としても働いていたそうですが。何故、声優の道へ転身を??
長妻:看護師から、とつぜん声優になろうと決めたわけではなく、「声優になりたい夢」は、高校生の頃から持っていたことでした。
わたしは北海道出身。心の中にはずっと「声優になりたい」という夢を抱きながら。それを友達にも、家族にも一切話すことなく、心の中へ仕舞い込み続けてきました。その頃は、学校のボランティア・サークルに参加していて、よく独り暮らしのお年寄りの家へ訪問してはお話をしたり。地元のお祭りのお手伝いをしたりなどの活動をしていました。だから両親も友達も、わたしは介護師や看護師などのお仕事につくものだと思っていたようなんです。わたし自身も、「声優になりたい」という夢を友達に話そうにも、身近に興味を持っている人もいなければ、そんな簡単になれる職業ではないように、どこかあきらめた気持ちを持っていました。
――でも、一つの転機が訪れたわけだ。
長妻:将来のことを考えなきゃいけない時期。わたしは、思い切って両親に「声優になりたいから、その勉強をしたい」と本心をぶつけました。ところが、両親には猛反対され。わたしも、何処か自信を持ちきれなかったことから、結局は、地元の看護学校に進学しました。もちろん、看護のことも好きだったから夢中で勉強もしました。それでも声優になる夢をあきらめきれず、就職と同時に上京。看護師として働きながら、同時にプロ・フィット声優養成所へ通い、そこで1年間勉強を始めました。
――養成所に行くと、同じような夢を持っていた人たちがたくさん居たんじゃない?!
長妻:そうなんです。しかもわたしの場合、アニメ好きな人や声優になりたい夢を持っている人と会うのが初めて。「あっ、わたしのような夢を持ってる人たちが、こんなにもたくさんいるんだ」ということが嬉しかったんです。お互いに磋琢磨しながらも、授業が終われば、同じ趣味を持つ仲間としてご飯を食べに行ったり、カラオケをしたりという時間を持つことも出来ました。しかもわたしは、養成所での1年間のレッスンを経て、現在の事務所へ所属する夢も叶いました。そこから、今へと至っています。
■ 「たまこまーけっと」や「中二病でも恋がしたい!戀」など、長く支持される作品に出会えたのは本当に嬉しいこと。
――養成所で習い始めるまでまったく演技未経験だった樹里さんが夢をつかんだ、その要因って何だと思います?!
長妻:一つ言えることは、「夢をあきらめなかった」ことです。わたし自身、養成所で学びながらも、自分の思い描いてるビジョンへ近づけず、「本当にこのまま続けててもいいのかな?!」と思い悩んだこともあれば。プロダクションに所属して以降も、一週間何もお仕事がなく、上京後から続けてきた病院でのお仕事をしながら、「本当にこのままでいいのか??」苦悩したことも多かったんです。それでも「あきらめなかったからこそ、今の自分でいれてるんだろうなぁ」と感じています。
――樹里さんにとって大きな転機となったのが、「たまこまーけっと」の牧野かんな役をつかんだこと。
長妻:その前から、少しずつですけど役をいただけるようになり、声優としての活動は行っていたんですけど。なかなかレギュラーの役をつかむまでには至らず、活動していくうえでのつらさを覚えることもありました。でも、「たまこまーけっと」の牧野かんな役という初のレギュラー役をつかんだことで、それまでの苦悩が全部吹き飛び、ようやく大きなチャンスをつかめた喜びがありました。とくに「たまこまーけっと」は、作品を支持してくださる方も多ければ。今年は劇場版「たまこラブストーリー」が上映になったりと、久しぶりに牧野かんな役を演じることが出来て嬉しかったんです。こうやって、長く支持される作品に出会えたのは、ホント嬉しいことですよね。
――一つの作品へ長く関わっていけるのは、とても素敵なことだと思います。
長妻:作品との出会いはご縁があってのこと。しかも、一つの作品に深く関わるのは責任を背負うことにもなります。同時に その世界観をスタッフさんと一緒に作りあげてゆく過程の中、いろんな想いが芽生えてもいくんですね。それに、作品を「好き」と言ってくださる方々の気持ちに応えたい想いも強く生まれていきます。
いまだに反響が高いと言えば、「中二病でも恋がしたい!戀」の七宮智音役もそう。あそこまで感情を爆発させてゆくキャラクターを演じることがなかったせいか、七宮智音役を通して、わたし自身の引き出しも広げてもらえました。今でも「中二病でも恋がしたい!戀」の話をすると、いろんな温かい言葉を投げかけてくださる方が本当に多いんです。
■ 臆病だから、やっぱし言えないという彼女の想い…それが『言えないアイスクリーム』
――声優としても、印象深い作品との出会いを重ね続けている樹里さんですが。これから、長妻樹里としてアーティスト活動もスタートします。
長妻:今もそうですけど。わたしが「声優になりたい」と思った当時に活躍していた声優さんたちは、よく個人名義でCDを出したり、コンサート活動も行っていました。それを見て、「あっ、素敵だな」と思えば。わたしも、「声優として歌も唄いたい」という憧れも抱いてきました。だけど、養成所に入ってお芝居を学んでいく中、「歌も唄いたいなんて言ってる場合じゃない。お芝居がしっかり出来なきゃ事務所にだって所属出来ないし。それが出来ないのに、歌を聞いてもらえるチャンスなんて巡ってくるわけがない」という現実に気づき、唄いたい気持ちをしばらく封印したんですね。だから、役柄を通してキャラクター・ソングをいくつか歌うチャンスが巡ってきたときも、唄える喜びはあったけど。「そのキャラクターが唄ってることが何よりも大事なんだから」という気持ちで向かっていました。同時に、キャラクター・ソングを歌うことで、より役柄を演じることが好きになっていけば、役を通して歌うことにも喜びを覚えていたんですけど…まさか、長妻樹里名義でCDデビュー出来るなんて!!
アーティスト活動していくことに関しては、それまで何の前触れもなかったこと。本当に、突然舞い降りてきた嬉しいニュースでした。こうやってチャンスをいただけたのなら、ありがたくお受けしようということで、お話を受け止めました。ただ…。
――いろいろ迷うことがあったんですか??
長妻:今回はキャラクターとしてではなく自分名義なわけですから、「どういう歌をみなさんに発信できるのか?!」は、自分なりにいろいろと考えましたし。スタッフさんたちともいろんなお話をしながら、方向性を見い出していきました。
わたしがお願いしたのは、「宇宙を救う」とか「大地に恵みを」など、壮大な世界観を歌うのではなく。「あっ、わたしもそういう気持ちになったことがある」など、「身近な題材を歌にしたい」ということでした。だから、上がってきた『言えないアイスクリーム』を聞いたときは、「あっ、その気持ちわかる!!」とすぐに共感を覚え、一気に好きになりました。
――樹里さんの、『言えないアイスクリーム』に対する印象も聞かせてください。
長妻:「ノリやすいリズムで、爽やかな楽曲」「キュンとした乙女心を唄った可愛らしい歌詞」という印象と、「わたしが唄うことで、この可愛らしい歌がどんな風になっていくんだろう??」という期待を持ちました。
この歌、6月1日に行われた@JAMというイベントで初披露したんですけど。そのときのお客さんが、すごく熱狂的にこの歌を受け止めてくれたんですね。それもあって、レコーディングでは、ライブで感じたときの熱も頭の中に思い描きながら唄いました。
――『言えないアイスクリーム』は、「好き」と言いたいけど言えず、渦巻くアイスクリームのように、好きな人に対しての妄想と切ない現実とをグルグル頭の中で巡らせてゆく歌。樹里さんも、この気持ちに共感する面は強かったですか??
長妻:わたしが主人公の女の子に対して感じたのが、「すごくシャイな子」という印象なんです。でも、こんなにも大好きな気持ちを心の中ではっきり言葉にしているよう、「じつは行動力もある子なのかな?!」とも感じていました。結局この子は、「内緒話はやっぱりあなたには言えない」と心の中でつぶやくように、「好き」という想いを言えず仕舞いなんですけど。ゆくゆくこの先に、言える日がきっと来るよという風にも思わせてくれる。そういう前向きな女の子の印象を受けたからこそ、わたしも明るく唄いました。
――告白したいけど勇気がなくて出来ない気持ち、すごくわかります。樹里さんは、この心のもどかしさを、どのように感じました??
長妻:女の子ならとくに、「わかるー」ってなるんじゃないかな?!と思います。わたしがこの子と同じ立場だったら、わたしも「言えない」と思います。
こういうお仕事をしている以上、自分の意志や意見を言うべきときはしっかり言うようにはしているんですけど。みんなが「これがいい」と思ってるときは、割と自分の意見は後まわしにしてしまう性格ですからね。
――樹里さんなりの、『言えないアイスクリーム』の聞きどころもお願いします。
長妻:わたしが、「この歌の一番大切な心の部分」と思ったのが、「あなたのその右手ギュッとしてみたいな」からの五行の歌詞なんです。好きなんだけど、臆病だから、やっぱし言えないという彼女の想いを、とくに大切にしながらわたしは唄いました。『言えないアイスクリーム』は、その想いへ到るまでの想いを巡らせてゆく歌。物語のように進んでゆく恋心の様を感じながら聞いて欲しいなと思います。
■ 「心の中は、想いを寄せる君のことでいっぱい過ぎて、とてもつらい」。それが『嫌いになれるかな』。
――C/Wには、『嫌いになれるかな』を収録。こちらも、恋の歌じゃないですか?!
長妻:『嫌いになれるかな』は、一聴すると明るい歌のように聞こえるんですけど。じつは「心の中は、想いを寄せる君のことでいっぱい過ぎて、とてもつらい」という、切なくも甘酸っぱい歌なんです。彼女は心苦しいんだけど。でも、「この気持ちは大切」とも思っているし、それも本心なんですね。その辺りに共感して聞いていただけたら嬉しいです。
あと、『嫌いになれるかな』の歌詞には、( )のついた部分が記されています。そこを、イベントやライブのときみなさんに唄って欲しいんです。そうすることで、みなさんたちとも心の距離を近く感じれるし。一緒に唄ってこそ、この歌が完成するとわたしは思ってます。
――「初回版」には、『言えないアイスクリーム』のMusic Videoも収録。こちらの内容も気になります。
長妻:唄うシーンはもちろんですが。わたしがキッチンでアイスクリームを作っている場面も収録になっていたり、ちょっと切ない表情を浮かべているカットがあったりなど、いろんなわたしの表情も映像を通して味わってください。
――完成した1stシングルの『言えないアイスクリーム』、樹里さんにとって"どんな作品"になりましたか??
長妻:ここには、等身大のわたしが詰め込まれていると思います。
■ 50年間の歴史を振り返ってゆく「トムスFes.」、10月12日によみうりホールu て、開催!!
――現在、樹里さんは、ニッポン放送のアナウンサーである吉田尚記さんと一緒に「TMSアニメ制作50周年×音泉10周年記念番組「マダ、ナイ、ラジヲ。」でラジオ番組のパーソナリティを担当しています。この番組では、トムス・エンターテイメント(東京ムービー)作品の紹介や、その作品に出演していた声優さんたちを交え、50年間の歴史を振り返ってゆくトークを行っています。
長妻:わたしは今、25歳なんですけど。トムスさんがアニメを制作し始めて50年ということは、わたしの人生の2倍。50年間の作品の一覧表を見せていただいたときにも、わたしが生まれる前のアニメでも知ってる作品がたくさんありました。生まれた年代も、場所も、環境も違ってさえ、一つのアニメ作品を通して同じ気持ちを共有できたり、そのアニメについて語り合えるのは本当にすごいことだと思います。そんなトムスさんの50周年にわたしも関われることができて嬉しいどころか光栄過ぎるあまり、自分の力をすべて出し切ってでも応援したいという気持ちでいます。
実際にラジオ番組では、古谷徹さんなど、アニメの歴史を担ってきた役者さんに登場していただき、いろんな当時のお話を聞けるのも、とても貴重な経験になっています。
――10月12日(日)には、よみうりホールを舞台に、昼夜二公演のもと「トムスFes.」も開催になります。
長妻:50周年を彩るイベントだけあって、参加される方々がすごく豪華なんです。今からどんなイベントになっていくのか、わたし自身もすごく楽しみにしています。きっと、メモリアルなステージになると想像出来るように、トムスさんの歴史を振り返りながら、様々なアニメ作品を通して新しい出会いや発見もしていけたらなと思います。
――樹里さんも、今年からトムスさんの新しい歴史を担う一人として参加し始めたように、これからのトムスの歴史を作る声優やアーティストになっていくことを期待しています。
長妻:わたしたち人間は、月日と共に年齢を重ねていくわけですけど。作品の中に生き続けるキャラクターたちは、ずっとその世界の中の年齢のまま、これから50年後も100年後も生き続け、その時代ごとの人たちに夢を与えていくんだと思います。私たち声優は、その作品の中へ声の演技を通して遺伝子を残していく職業。そのお仕事に付けていることは、本当に光栄なことだと思います。
わたしもこの先10年後や20年後に、こうやって歴史を振り返ったとき、そこを彩る一人になっていられたら、そんな嬉しいことはないように、これからも頑張ります!
TEXT:長澤智典
◆CD発売情報
●言えないアイスクリーム【初回限定盤】
ZERO-A
初回限定盤CD+DVD
組み枚数:2
2014-8-27
POCE-9408
1,944円(税込)
【CD】
01. 言えないアイスクリーム
02. 嫌いになれるかな
03. 言えないアイスクリーム(Instrumental)
04. 嫌いになれるかな(Instrumental)
【DVD】
01. 言えないアイスクリーム(Music Video)
●言えないアイスクリーム【通常盤】
ZERO-A
通常盤CD
組み枚数:1
2014-8-27
POCE-1411
1,296円(税込)
【CD】
01. 言えないアイスクリーム
02. 嫌いになれるかな
03. 言えないアイスクリーム(Instrumental)
04. 嫌いになれるかな(Instrumental)
<長妻樹里プロフィール>
10月27日生まれ プロ・フィット所属
主な出演作品
「たまこまーけっと」牧野かんな役
「中二病でも恋がしたい!戀」七宮智音役
「お姉ちゃんが来た」水原一香役
「真剣で私に恋しなさい!!」松永燕役
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