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『山賊の娘ローニャ』完成試写会で宮崎吾朗監督らが挨拶に登場

『山賊の娘ローニャ』完成試写会が開催! 宮崎吾郎監督やキャスト陣のトーク&インタビューをお届け

 2014年10月11日(土)より毎週土曜日19時からBSプレミアムにて放送開始予定のテレビアニメ『山賊の娘ローニャ』。本作は、アストリド・リンドグレーンさんのファンタジー小説『山賊のむすめローニャ』を原作とし、『ゲド戦記』や『コクリコ坂から』などを手がけた宮崎吾朗さんが監督を務める作品だ。宮崎吾朗監督がTVアニメシリーズに初めて挑む作品でもあり、来月の放送開始に向けて注目が高まっている。

 そんな本作のオンエア開始に先駆け、9月2日(火)に関係者向け完成試写会が開催。今回の試写会はアニメ1話と2話の連続上映となっており、山賊の頭・マッティスの一人娘としてローニャが誕生し、山賊たちに見守られながら成長していく姿、そして住処としていた城を出て初めて森に出かけるシーンなど、物語冒頭を視聴することができた。

 物語のあらすじとしては、今後ローニャは美しいと同時に恐ろしい一面を持つ森で生きる術を学び、ある日ビルクという名の少年と出会う。当初はビルクとぶつかり合ってばかりだが、森の中で助け合ううちに「きょうだい」と呼ぶほどに仲良くなっていく…。という、ローニャの成長を通して家族の物語が描かれる。

 試写会の後は宮崎吾朗監督をはじめ、本作のプロデューサーであるドワンゴの川上量生さん、ローニャ役の白石晴香さん、ビルク役の宇山玲加さん、NHK大型企画開発センター・エグゼクティブプロデューサーの有吉伸人さんによるトークと、取材陣による質疑応答の時間が設けられていたので、その模様をお届けしよう。

●『山賊の娘ローニャ』はアニメーションの枠を超えた作品!?

 試写会後は、宮崎吾朗監督、川上量生さん、ローニャ役の白石晴香さん、ビルク役の宇山玲加さん、NHKの有吉伸人さんが登壇し、挨拶を行った。まず有吉さんは、宮崎駿監督が監督としてデビューした作品であり、NHKのテレビアニメシリーズの始まりでもある「未来少年コナン」から30年以上が経った今、こうして宮崎吾朗監督にアニメ作品を作ってもらえることに縁を感じているという。

 本作は、そのNHKテレビアニメシリーズの歴史の中で、かつてないスケールで作っている作品であるとも述べており、「吾朗監督が非常にクオリティにこだわられるので、当初は放送開始時に26話全て完成している予定でしたが、現在は3話が完成したところです(笑)」と、裏話を披露。そのかいあってか、「テレビアニメーションの枠を超えたものになっているのではないかと思います」と、大きな自信を見せていた。

 続いて川上さんは、現在日本の作品で海外に販売できるものが少なくなっている現状に触れつつも「『山賊の娘ローニャ』はリンドグレーンさんの児童文学作品ということで、かなり期待できるじゃないかと思っています」とコメント。実際、ジブリスタジオの鈴木敏夫プロデューサーに3話まで見せたところ、「この絵と音楽で最後までやるの?」と驚かれるほどのクオリティに仕上がっているようだ。

 また、本作は手書きによるアニメーションではなく、3DCGによって制作されていることにも触れられた。「手書きの場合は時間や予算の問題で、最後のほうにクオリティが下がってしまうこともあると聞きますが、CGの場合はモデルを動かす経験が蓄積されるので、クオリティが下がることはありません」と述べ、可能性があるとしたら完成しないことだと笑いを取っていた。

 宮崎吾郎監督からは、3DCGでアニメーションを作る経緯について語られた。以前、鈴木敏夫さんから、ジブリの外で武者修行をしてきては、というアドバイスをもらった際、同時に「どうせやるならCGで」と言われたことがあるようだ。五郎監督自身、新しいことに取り組むのが嫌ということもなく、あえてCGでやってみようとなったとのこと。

 ただ、背景などは手書きの2Dで描かれているようで、「2.5Dぐらいの方が正しいのかなと思います」ともコメントしていた。実際、CGに挑戦した手応えとしては「結構いけるじゃん」との印象を抱いているようで、アニメーションのクオリティは話数を重ねるごとによくなっていくのではと話していた。

 キャストの白石さんは、「たくさんの方の愛が詰まっている作品になっていると思います」と、出演しての感想を述べた。たくさんの子供たちに見てもらいたい気持ちはもちろんのこと、その子供たちが大人になったときも、心に残っているような作品になって欲しいとの願いを持っているようだ。

 同じくキャストの宇山さんはからは、「私はアニメのアフレコのお仕事は経験が浅いほうで、ましてや男の子役をレギュラーでやるのは初めてでした」と、今回演じるにあたって自身の境遇についてコメント。その一方で、ほかの出演者の演技を間近で見られたり、吾朗監督をはじめ、多くのスタッフに指導してもらえる環境にあり、「ビルクと共に成長していけたらいいなと思っています」と、今後の意気込みも語っていた。

●少女を通して描かれる「家族」が魅力。登壇者たちへのインタビュー

――リンドグレーンさんの作品のなかで「山賊のむすめローニャ」と出会った経緯や、この作品を選んだ理由をお聞かせください。

宮崎吾朗監督(以下、宮崎):『山賊のむすめローニャ』に出会ったのは、以前映画の企画を考えるために児童文学を読み漁っていたときです。ちょうど自分にも子供ができて日が経っていない頃だったので、マッティス父さんの喜びっぷりに非常に共感して「いい話だなあ」と思ったところがまず最初です。それを映画化しようと試みたんですが、挫折してしまい、結局『コクリコ坂から』になりました。

 本を読んだときは、リンドグレーンさんの作品であることはほとんど意識していませんでした。『長くつ下のピッピ』を書いた人であることは知っていましたが、その繋がりで『山賊のむすめローニャ』を選んだというわけではなく、たまたま読んでいた中で出会ったのが『山賊のむすめローニャ』でした。

――どういったところがこの作品の魅力だと思いますか?

宮崎:『山賊の娘ローニャ』のお話は、お父さんお母さん、娘、それから兄弟の誓いをしあう男の子も出てきますが、女の子と男の子の恋愛話ではありません。この二人はまだ10歳ぐらいで、互いのことを兄弟だと、仲のよい離れがたい二人なんだと思っているだけです。むしろこの話の中にラブストーリーがあるとすると、お父さんと娘の間のラブストーリーなんですよ。

 ローニャという娘は自分とお父さんの関係、それから兄弟になったビルクとの関係、そうしたいろんな関係の中で成長していきます。ローニャを通してものを見ることもありますが、親の側から見て子供たちがどう見えるか、爺さんが出てきたりしますので、さらに年上から見るとどうなるか。3世代ぐらいの視点が入り混じってお話が進んでいきます。結局それは家族の物語だろうと、大きな意味で少女を通して家族を描いていくところに魅力を感じました。

――映画化しようとした際に挫折したとお話がありましたが、当時と今回は何が違いアニメ化までこぎつけられたのでしょうか。

宮崎:映画というのは2時間ぐらいの中に物語を収めなければいけないんですが、『山賊のむすめローニャ』は長い話で、季節が二順します。その間の出来事に意味があるので、それを2時間に収めようとすると、どうしても切り捨てなければいけない部分がたくさん出てきます。そうすると、原作が持っているよさ、僕が原作から受け取ったよさみたいなものを枠の中に入れ込むのが難しかったのです。無理に収めようとしても主題を見失いがちになってしまうところがあり、映画化には至りませんでした。

――テレビアニメーションの枠を超えた作品になっているとお話がありましたが、具体的にどういったポイントでそう感じたのでしょうか。

有吉伸人さん(以下、有吉):やはりアニメーションが持っているのは絵のクオリティでしょうか。これだけ絵を動かして感情表現含めて繊細に行われている、そして背景のクオリティなど、全体的に映像としてのクオリティが映画級だという意味合いです。何を持ってというと線引きが難しいところですが、通常のアニメーションと比べると掛けている時間、人の多さ、スケールという意味では、NHKのテレビアニメーションの歴史の中でも破格のスケールだと思っています。

――オープニングや物語の中で流れているBGMが絵と非常にマッチしていると感じました。そういった点でのこだわりがあれば教えてください。

宮崎:今回音楽は『コクリコ坂から』でもご一緒させていただいた武部聡志さん、音響も僕の映画でずっと一緒にやってきた方とやっています。気心知れているのもあり、僕が欲しいところに上手く音楽を入れてくれているという感じはありますね。オープニングは絵を作る前に曲が出来上がっていましたので、音楽が持っているものに合わせて絵をつけていきました。最初の1、2話ぐらいまでですが、贅沢ながら絵に合わせて音楽を収録するといったこともしています。

――今回テレビシリーズということで準備されたことや、いつもと違った作業などがあれば教えてください。

宮崎:準備はほとんど変わらないですね。ただ、長いシリーズですから、シリーズ構成は川崎ヒロユキさんに監修いただいたりしています。一番違うのは僕が26話分の絵コンテを描かなければいけない物量の多さに参っているだけですね(笑)。基本的なところは映画とテレビであっても内容は変わらないと思います。

――武者修行ということでジブリを離れての制作ですが、ジブリにこの結果から何を持って帰ろうと思っていたり、現時点でどのような成果が手応えとしてあるかお聞かせください。

宮崎:本当にジブリに帰れるのかが最近の心配でして(笑)。前も一回鈴木さんに騙されているんですよね。ジブリ美術館の館長をやっていて、映画をやることになったとき「絵が終わったらまた美術館に戻ればいいんだよ」と言われたんですが、戻れなかったんですよ(笑)。今回も武者修行に出っぱなしになるか心配ですね。

――オープニングは宮崎吾朗監督が作詞も手がけられていますが、その点への思い入れをお聞かせください。

宮崎:作らなければいけない段階にきてから考えることが多いんですが、今回もどうしようとなって、今までと同じように、とりあえず僕が詩を書いて、それを谷山浩子さんに曲をつけてもらっちゃおうと。曲ができてから誰に歌ってもらうか考えればいいじゃないかと、乱暴なやり方でした。誰に歌ってもらおうとなったとき、結局葵ちゃん(手嶌葵さん)しか思いつかなかったんです(笑)。それと同時に今回谷山さんに作っていただいた曲を葵ちゃんが歌ったらさぞ面白いだろうと感じ、やっぱり彼女に頼むべきだと思いました。出来上がったものは期待以上で、新しい手嶌葵を見た感じです。

――川上さんは以前にご自身で何もしないプロデューサーなんて仰っていましたが、今回の作品ではどのような役割を担っているのでしょうか?

川上量生さん(以下、川上):プロデューサーとしてですが、何もやっていません(笑)。そもそも僕自身、アニメ制作のことを全く分かっていませんので、制作において僕が寄与できる部分はないと思うんですよ。なので今回は、吾朗監督が制作に集中できる環境をどうやって構築するのかというところで、何かできないのかなと。あと、これは心情的なものになるんですが、アニメ業界と関係のない僕がプロデューサーをやっていいのか悩む部分もあったんですが、考えてみれば吾朗監督も同じだなと(笑)。アニメ業界の外からアニメの監督をいきなりやって、その中で苦労されているところに、シンパシーを感じることは僕にはできるんじゃないかなと。

――制作・著作の中で川上さんの名前ではなくドワンゴとありましたが、今後ドワンゴのサービスと連携して何かする可能性はあるのでしょうか?

川上:せっかくアニメの世界に関われましたので、アニメ業界に寄与できるような形でドワンゴが今やっているインターネットのビジネスと絡められないかなということは考えています。ただこれは、最近になって考え始めた感じですね。

――ローニャを演じる上で苦労された点や、あるいは自分と似ているかなと感じた点などあれば教えてください。

白石晴香さん:ローニャはすごく元気で、森の中で一人で遊んでいても大声で笑うような声で笑うような子なんですが、最初は大声で笑うというだけでも難しかったです。ただ、どんどんマッティス父さんに似ていくのが可愛らしくて、最近の収録でお父さんの後に笑い声を録ると息が続かないぐらい笑ったりすることもあります。

 吾朗監督からは「新橋のおじさんのつもりでやってね」なんて言われたりしながら(笑)、どんどんドスを利かせて、小さい子がこんな声を出すんだと思ってもらえたら面白いかなと思います。ローニャと似ている点は、私もわんぱくだったので、小さい頃から公園とかで大声で笑いながら走っていた子なので、小さいときの私に似ているじゃないかなと思います。

――宇山さんはアニメのアフレコ経験が浅いとのことでしたが、男の子を演じる上で難しく感じたことなどを教えてください。

宇山玲加さん:そもそもアニメで男の子の役のオーディションを受けたのも初めてですし、今回まさか決まるとは思っていなくて、ビルクという役以前に、どうやったら男の子らしく聞こえるかで頭がいっぱいでした。原作のセリフを尊重して、そのまま使っている場面もあるので、言い回しが古いものも出てくるんですが、それを気にして一生懸命やるとキザな男の子に聞こえてしまって、青山のお坊ちゃんと言われたこともありました(笑)。ただ、どちらかと言うと、ビルクもローニャに比べて思慮深い男の子という設定ですが、同じように山賊の息子なので、わんぱく坊主なところを出すのに苦労しています。

――「子どもたちに見てもらいたい。」というキャッチがありますが、ここに込めたものについてお聞かせください。

川上:世界の名作の児童文学のアニメ化ということで、昔はたくさん作られていたんですが、ここのところは作られていなかったんですね。アニメというと子供たちの作品ですから、原点に戻って、質の高い子供たちに向けたアニメ作品を丁寧に作ろうというのが今回の企画の一番根本になる部分です。

◆NHK BSプレミアム「山賊の娘ローニャ」概要
【放送予定】NHK BSプレミアム 2014年秋~
【原作】「山賊のむすめローニャ」
(アストリッド・リンドグレーン 作/大塚勇三 訳)
【監督】宮崎吾朗
【シリーズ構成】川崎ヒロユキ
【アニメーション制作】ポリゴン・ピクチュアズ
【制作協力】スタジオジブリ
【制作】NHKエンタープライズ
【制作・著作】NHK、ドワンゴ

【あらすじ】
 物語の舞台は、中世ヨーロッパ風の世界に広がる雄大な森。主人公の少女・ローニャは、その森の巨大な古城に暮らす山賊マッティスの一人娘として生まれます。父、母、そして山賊仲間たちの愛情を一身に受けながらすくすくと成長したローニャは、ある日、一人で森に出ることを許されます。

 初めて足を踏み入れた森には、不可思議な生き物たちが棲んでいました。自分の力で、時には両親の助けを借りながら徐々に森で生きる術を学んでいくローニャ。そして、ビルクという名の少年との運命的な出会い・・・子どもたちの未知なるものへの憧れと成長の喜び、子の成長を願う親の愛情、親子の葛藤と和解・・・。本作では、ローニャという一人の少女の成長をとおして、家族の物語を描いていく。


>>NHKアニメワールド「山賊の娘ローニャ」公式サイト

(C)NHK・NEP・Dwango, licensed by Saltkrakan AB, The Astrid Lindgren Company
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