鈴村健一さん、神谷浩史さん、松山鷹志さんが語る『仮面ライダークウガ』〜ファンの心を掴んで離さない大人の“正しい”正義とは?
月刊ヒーローズにて大好評連載中『仮面ライダークウガ』のコミックス第3巻が、2015年12月4日(金)に発売されました。
『仮面ライダークウガ』は2000年にテレビ放送が行われ、現在の『仮面ライダーゴースト』(2015年)にもつながる平成仮面ライダーシリーズの偉大なる「原点」となった作品です。
そのストーリーをベースに、井上敏樹氏が新たにシナリオを執筆した、まったく新しい『クウガ』の物語を構築している点にも注目が集まっています。
コミックス第3巻発売を記念し、アニメイトTVではスペシャルインタビューを決行しました。
文化放送『東映公認 鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー』の12月4日放送回にゲスト出演された俳優・声優の松山鷹志さん(『クウガ』では警視庁刑事・杉田役でレギュラー出演)と、パーソナリティーを務める鈴村健一さん、神谷浩史さんによるスペシャルな『クウガ』トークをお届けします。
■3人の関係性と『クウガ』について
――番組収録の直後ということですので、まずは収録のご感想などをお聞かせください。みなさんは声優として、以前からのお知り合いだったそうで。
神谷:松山さんとは僕がデビューしたころからのお付き合いで、いまだに仲良くさせていただいています。
松山:いえいえ、こちらこそお世話になっています。
神谷:そんな方をゲストにお迎えするということで、最初は僕も緊張していたんですけれど、楽しくお話ができてよかったなと胸をなでおろしています。
鈴村:『クウガ』時代の裏話や、松山さんの作品にかける思いなどがうかがえて、すごく濃厚な内容になりましたよね。僕も『クウガ』放送当時からのお付き合いなんですけれど、アニメの収録現場で松山さんにお会いすると、よく「あのときの撮影はどうだったんですか?」なんて訊いたりしていました。
松山:そうそう。わりと突っ込んだことをよく尋ねられましたね。
鈴村:『クウガ』では石田秀範監督が変わった演出をされるって話を、よく覚えてるんです。
松山:床一面に水をまいて、反射なども込みで撮るとかね。
鈴村:雨のシーンでもなんでもないのに! って。
松山さんって僕にとっては、声優として仕事をご一緒する方でもありますが、それ以上に「映像」の人……俳優の印象が強いんです。だから今回は、同業の方がゲストに来てくださったという感覚じゃなかったですね。
神谷:ほんと。『クウガ』の杉田刑事だ~って(笑)
鈴村:ふだん、現場で松山さんとしていた『クウガ』の話が、オフィシャルの場でちゃんとできる喜び(笑)。今日はワクワクしながら収録に来ました。
――番組では『クウガ』コミック第1巻の一場面を、ボイスドラマとして再現されました。五代雄介を鈴村さん、一条刑事を神谷さん、そして杉田刑事を松山さんが演じられました。
松山:わりとしっくりいった感じでしたよね?
鈴村:僕は緊張した。
松山:ホントに? そんな風には思えないけど。
神谷:声優としてセリフを読むのは、仕事ですから割と冷静にやれているつもりだったんです。けれど今回はね……。「そのケガじゃ無理ですよ」のセリフ以降、一条刑事は出てこなくなるので、そこからは自分の中でもスイッチがオフになるんです。でも、直後に松山さん=ホンモノの杉田刑事の声で「おい、一条!」と言われたときの衝撃たるや! その瞬間、突然ものすごい感情が押し寄せてきて。
鈴村:いきなりファン心理が生まれてきたんだね。
神谷:そう! 急にね。自分でも意外で、ちょっとビックリした。
松山:嬉しいねえ(笑)。でも、ほんとに2人は特撮やヒーローが好きなんだなって思ったな。とても楽しかった。番組の中でも言ったけど、ラジレンジャーブラックとしてセミレギュラーでいいから出させてほしい!この思い、あながちウソじゃないんですよ。
鈴村:もし今後、ブラックを名乗りたい人が現れたら戦う姿勢を見せていますから。
神谷:ブラックは松山さんの為に永久欠番にしておきましょう!(笑)。
■作品が持つヒロイック性
――平成ライダーという大きな流れの基礎となった『クウガ』はいまだに熱心なファンが存在しています。その人気の秘密とはなんだと思いますか?
鈴村:たくさんありますけれど、一つは「ライダーと怪人のいる世界」を努めてリアルに描き上げたことでしょうね。たとえば、昔の『仮面ライダー』でも刑事が出てくる回があったんですけれど、たいていは秘密捜査官とかさ。
松山:表向きには出ないってやつだね。
鈴村:そうですね。刑事といってもキャラが立ちすぎているというか、ヒーロー作品だから極端なキャラなんですね。『クウガ』の場合、松山さんをはじめとする役者さんたちが、ふつうの刑事ドラマのリアルなお芝居をされている。
神谷:そんな部分が『クウガ』という作品のリアリティを支えていると思います。
鈴村:「怪人なんているわけないさ」と言って怪人に殺されてしまうような警察官、刑事なら過去にたくさん出てきましたけれど、『クウガ』における警察は、あくまでもリアルに「現実にこんな怪人が出てきて人を襲っている。だったらどうすればいいか」を対策するんです。それまでの特撮ヒーローだと、そういう部分は意識的に避ける傾向にあった。
松山:『クウガ』における警察のありかたって、作っているうちにどんどんあんな風に変わっていったんじゃないかって思うんです。杉田刑事や後輩の桜井刑事って、当初は早いうちに怪人の襲撃にあって殺される、って話もあったみたいです。
鈴村:そうなんですか!
松山:でも、回を重ねるごとに彼らの重みが増していったように思います。
神谷:番組でいただいたメールの中にあった言葉ですが、『クウガ』は「大人の“正しい”正義」というものが込められていたと思うんです。警察でも何でも、組織になってくると融通が利かなくなりますよね。いくらクウガ=五代を支援したくても、一条刑事1人だけだとどうしようもない。組織を描くにあたっては、一条のほかにももう1人、2人……とキャラクターを深く描いていかなくてはならない。そんな中で、杉田の役割がどんどん増していくってのは、理解できますよね。
鈴村:五代と一条を中心としつつ、脇のキャラクターをレギュラー、ゲスト問わず魅力的に描いていくという『クウガ』では、杉田の存在感が増していったのは必然のように思いました。
松山:そういうところ、作り手の方たちが上手かったんでしょうね。
鈴村:さっき浩史が言った『クウガ』には「大人の“正しい”正義がある」って話だけど、当初は警察の中でも一条1人が頑張っていて、それが次第に「『クウガ』を援護しよう」、「五代を助けよう」みたいな気持ちが警察内部にも広がっていく、そこに感動するんです。
松山:現実の世界ではいろいろな厳しいことがあり、みんなで一致団結なんてできない状況が多い。だからこそ、テレビドラマの中でそういうものを見せて、みんな現実にもこんなことがあればいいなって思ってもらえたらいいよね。
鈴村:『クウガ』では、敵であるグロンギは人間にとって決して分かり合うことのない、絶対的恐怖として描かれています。対する人間側、特に警察サイドはすべていい人、性善説に基づいた人物造形がなされています。それだけに、ヒロイックなんです。
■テレビ版と異なる楽しみを生んでいる
――第3巻が発売された漫画版『クウガ』について、お話をおうかがいしたいと思います。第2巻で「アギト」という言葉が出てきた上に、第3巻では意外な形でアギトが姿を現わしました。また、警察の内部でも、一条に反発して何かと横やりを仕掛けてくる「駿河徹也」という人物が登場しました。
鈴村:第1巻を読んだときは、以前のテレビ版『クウガ』の印象に近かったのですが、第2巻になってくると、シナリオの井上敏樹さんが虎視眈々と独自の世界を入れて来ようとしているのが分かってきます(笑)。
神谷:井上さんならではの展開になってきてるよね。
鈴村:まさに井上節! 警察の中にも「悪い人たち」が出てきて……。
松山:テレビと漫画とは、まったく違うものとして楽しめればいいですね。でも、『アギト』って名前が『クウガ』の作品世界に出てくると、ちょっと驚くね。
神谷:松山さんは『クウガ』の次にやった『仮面ライダーアギト』はご存じでしたか?
松山:僕『アギト』は観てなくて、まったく知らないんです。でもね、『クウガ』の撮影が終わりに近づくころ、僕ら警察関係の人間だけ『アギト』に引き続いて出演するんじゃないか、って噂があったんですよ。
神谷 へえ!
鈴村:ファンとして言いますと、平成ライダーは一作一作が独立した作品なんだけど、唯一『クウガ』と『アギト』だけは作品世界に若干つながりが見られるんですよ。だから松山さんがおっしゃった「警察関係だけは連続して出演」ってのは、ぜひ見たかったですね。
松山:もしもそうだったら、面白かっただろうね。
鈴村:そういった「もしも」の部分を拡げて、今回の漫画でクウガとアギトの世界観を融合させようと考えていたら、すごいよね。
神谷:テンション上がるね~。
鈴村:松山さんがかつて演じた杉田刑事と比べて、今回の漫画版の杉田はどう思われました?
松山:そうだねえ。テレビで演じていた杉田は、幼い娘がいるお父さんの設定がだんだん強くなっていきましたけれど、現在の漫画版ではそういったところがなく、義理人情に厚い武闘派刑事っていう部分を強く押している。そういった部分でキャラの狙いが違うんだろうなあって思います。
――最後に、漫画『仮面ライダークウガ』の今後について、一言お願いします。
神谷:「漫画」ということを活かして、造型では再現が難しいデザインも自由な発想で描いてますよね。実写の『クウガ』でも本当はこういうビジュアルを描きたかったんじゃないかな、みたいに考えつつ漫画を読んでいくと、また実写版を観るときに想像力が膨らんでくる。そういった、実写と漫画との相乗効果なんてのも期待しますね。
鈴村:番組でも言ったけど、アニメ化やボイスドラマ化とかに発展していったら楽しいなあって思います。
神谷:一ファンとして、観てみたい!
鈴村:ふつうに視聴者として、アニメ化してほしい!
松山:俺は、声優として杉田を演じたい!(笑)さっきも言ったけど、テレビの杉田とはキャラクターが違うので、漫画版の杉田を演じるときは武闘派っぽい部分を押し出して作っていきたいです!
>>【漫画】仮面ライダークウガ|月刊 ヒーローズHEROS
>>東映公認 鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー
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