来年のサクラ大戦20周年に向けて、きっとこの夢のつづきを! 「横山智佐のサクラ大戦・ハロウィンの新宿にさくら見参」ライブレポート
1996年にセガサターン用ソフトとして発売された『サクラ大戦』。メディアミックス作品の先駆けとして、ゲーム、コミック、ドラマCD、OVA、テレビシリーズ、劇場版ほか様々なジャンルで展開し、とりわけ担当声優がキャラクターの衣装をまとって役を演じる『歌謡ショウ』は、アニメ・ゲーム作品の舞台化における伝説的な存在となった。
来年はいよいよゲーム発売20周年ということで、記念イベントの開催にも期待がかかるところだが、現時点で具体的な予定はないという。ファンにとってはいささか残念だが、最もやきもきしているのは真宮寺さくら役・横山智佐さんかもしれない。2012年、2013年には自身の企画によるサクラライブ、通称「ちさくらライブ」を主催し、自らサクラシーンを盛り立ててきたが、20周年を来年に控えた今年はさらに強い使命感を持ち、去る10月30日、31日に東京・新宿FACEにて「横山智佐のサクラ大戦・ハロウィンの新宿にさくら見参」を開催した。
そんな横山さんの熱意のもと、今回は神崎すみれ役の富沢美智恵さん、マリア・タチバナ役の高乃麗さん、李紅蘭役の渕崎ゆり子さんがゲスト参加。渕崎さんは『サクラ大戦 武道館ライブ2』以来4年ぶりに紅蘭の衣装を着てのステージということで、横山さんに感化されて帝都花組メンバーが次第に覚醒し始めているのを感じる。
ゲストの出演は、初日の30日が富沢さん、31日の昼の部が高乃さん、夜の部が渕崎さんで、それぞれの持ち歌や横山さんとのデュエット、歌謡ショウの映像を観ながら裏話を暴露しまくったトークコーナーなどで大いに盛り上がった。横山さんも、3回の公演で歌謡ショウの初期の曲、中期の曲、後期の曲とテーマを分け、サクラソングの名曲揃いぶりを再認識させた。またハロウィンということもあって、コスプレで来場する観客も多く、歌謡ショウ華やかなりし頃の劇場の雰囲気が戻ったようだった。
■ 初日はすみれ様登場! さくら&すみれでパラパラや殺陣まで披露!
3公演すべての幕開けともなる初日のオープニングナンバーは、大和撫子・真宮寺さくらのイメージそのものの曲「さくら」。たちまち場内がさくら色に染まり、続く「春が来る」で季節はハロウィンだというのに春の訪れを感じる。
『歌謡ショウ』には、出演者はステージ上では徹頭徹尾キャラクターとして振る舞うという約束事があり、キャスト本人の言葉を語る機会をあえて封印してきた。今回はその縛りを緩め、キャラとキャストが両方の顔を覗かせる「ピンクゾーン」(白黒つけないグレーゾーンを、サクラ流に赤白つけないピンクにしたもの)で行くということで、当時の裏話も盛り込まれていく。
初期のさくらの曲はキャラクターソング、歌謡ショウの劇中歌ともにミディアムバラードが多いが、4曲目の「いざ立ち上がれ」は歌謡ショウが独自路線を進み始めた第4回公演の劇中歌。完全にミュージカル仕立てで、酒場で女が男たちに奮起を促す曲になっている。曲を年代ごとに並べて聴くことで、歌謡ショウがどのように進化していったかも解かりやすい。この辺りは選曲した横山さんの狙い通りという感じだ。
曲間の暴露トークも面白い。「口ずさむ歌」は第5回公演の劇中歌で、観客に一緒に口ずさんでほしいとの狙いが作り手側にはあったそうだ。ところが、さくらの父・真宮寺一馬役の故・野沢那智さんが歌謡ショウに初参加し、唯一の共演となった父娘のシーンがあまりに感動的だったため、歌のパートで観客が声を出すことを自重。結果、「口ずさんでもらえなかった歌」になったしまったとか。
華やかなレビュウナンバーも『歌謡ショウ』の魅力のひとつ。本来は花組総出演+ダンサー隊で豪華絢爛に贈る曲だが、今回は横山さんのみで歌うため、観客にも「そこはイマジネーションで補う」ことが求められる。歌謡ショウに通った「サクラワールドの住人」であれば、曲を聴いた途端に当時の煌びやかなステージの記憶が甦り、横山さんの周りで歌い踊るほかの花組メンバーがきっと見えていたことだろう。
続くゲストコーナーでは、初日ゲストの富沢美智恵さんが「これぞまさに神崎すみれ!」という代表曲「絶対運命のタンゴ」でステージを瞬く間にすみれ色に変える。ゲストとのデュエットコーナーも用意されており、選曲はすべてゲストに任されたそうだが、富沢さんが選んだのは「ユーロ 恋の発車オーライ!」。太正浪漫に溢れたサクラワールドに突如ユーロビートアレンジを持ち込み、当時のブームに乗ってパラパラを踊るという、飛び抜けて異彩を放つ1曲だ。
懐かしの歌謡ショウの映像を観ながら思い出のシーンを語るコーナーでは、今回のためにDVDを観まくったという富沢さんが、立ち回りをテーマにチョイス。最初の花組特別公演「愛ゆえに」での、横山さんの生まれて初めての殺陣から、歌謡ショウファイナル公演「新・愛ゆえに」での伝説の100手の殺陣に至るまでを段階を追って観ていくと、成長ぶりも一目瞭然。横山さんも最初の「腰は据わっていないけれど、目は据わっていた」状態から、「今では人を斬るのが大好き」と語るまでに、殺陣には自信をつけたようだ。
富沢さんが忘れられない演目として挙げた第3回花組特別公演「紅蜥蜴」では、劇中劇で紅蜥蜴が撃たれて階段から倒れるシーンを何十回と演じた結果、お尻が痣で紫色に腫れ上がってしまったという。「いま思えば、あのとき赤くなったお尻を私の勲章として、1枚でもいいから写真に収めておけばよかった」と富沢さんは笑いながら語ったが、各自がいかに体当たりで歌謡ショウに挑んでいたかが伺われる。
ラストスパートはゲームやアニメのOP&ED主題歌ばかりという全曲鉄板ナンバー。そして来年大きな節目の年を迎える『サクラ大戦』への想いを横山さんが語る。
「今日こうして歌わせていただいているのは、私にとっては来年のサクラ大戦20周年に向けての小さな一歩だと思っています」
横山さんの使命感に満ちた顔は、帝都を守る真宮寺さくらそのものだった。
■マリア&さくらで14年ぶりとなる大曲「すべては海へ」!
2日目の昼の部公演は、ハロウィン当日だけにコスプレで来場する観客も多く、『サクラ大戦』総合プロデューサーの広井王子氏が来場してファンとの交流に努めたこともあって、開演前から場内の熱気が高まる。曲目もしっとりと始まった初日とはガラリと雰囲気を変え、「お祭りダンス」「隅田川」とお祭りナンバーでスタートダッシュをかける。
この回のゲストは、横山さん主催の「ちさくらライブ」ではおなじみ、高乃麗さん。高乃さんが演じるマリア・タチバナといえば、帝国歌劇団・花組男役のトップスタアとして二枚目役を一手に引き受けてきたが、その凛々しさと色気はいまだ健在。華麗なステップや佇まいひとつ取っても、手放しでカッコイイというのがさすがトップスタア!
サクラのデュエット曲の中でもマリア&さくらの曲は多いが、劇中劇のクライマックス曲はドラマと密接に関わっており、曲だけ抜き出して歌うとせっかくの雰囲気を壊しかねないということで、歌謡ショウ以来歌われたことのないものもある。
第5回公演「海神別荘」のクライマックス曲「すべては海へ」はその代表格だが、今回のライブで14年ぶりに披露。たとえ衣装や舞台の規模は違っても、曲が放つオーラは相変わらず圧倒的で、歌い終えた後の拍手の大きさは3公演通して随一となった。
映像を観ながら思い出のシーンを語るコーナーで高乃さんが選んだのは、第1回歌謡ショウの幕開け曲として歌った「檄!帝国華撃団」。衣装は全員戦闘服で、アイリスの衣装がオレンジ色だったり、キャラクターデザイン画に忠実にしようとするあまり髪型が不自然だったりと、次々と気になったところを挙げていく。中でも振付の違いが大きく、サビのところで手を前に突き出し、横に持っていって下ろすだけの振りしかついていない。今となっては淡泊すぎるが、当時はそれでも混乱したという逸話が明かされた。
■ 最後は久々登場の紅蘭と一緒に!
2日目の夜の部公演は今回のラストということで、選曲も後期の歌謡ショウを中心にしているため、成熟した曲が多い印象だった。圧巻は3曲目の「野生の雄叫び」で、ケチャとアフリカンミュージックを合わせたような旋律に様々な民族楽器が加わり、獣たちの歌声を表した曲は、アニメソングやゲームミュージックの範疇を明らかに逸脱し、ミュージカル曲としても最上級のレベルに達している。
最後のゲストは、人前で歌を歌うこと自体が4年ぶりということで、相当気合いを入れてライブに臨んだと語る渕崎ゆり子さん。今回は「最も李紅蘭らしい曲」というテーマで選曲をしたそうで、最初のキャラクターソングである「東京的休日」、発明家としてのポリシーを歌った「ひらめきの歌」など、まさしく「ザ・紅蘭」な曲を並べる。
思い出を語るコーナーでは、歌謡ショウでやって来たことをわかりやすく紹介するという趣旨で渕崎さんが選んだ映像が流れる。振付で要求されるレベルが年々グレードアップしていった結果、最後はタップダンスまでやることになった「イッツ ショウ タイム」。新春公演での、コテコテにボケまくるカンナにマリアが銃を突きつけてツッコむお約束に横山さんが「芸人だよね(笑)」。渕崎さんが劇中劇の主役を務め、「私の宝物です」と語った「新宝島」。
その「新宝島」の立ち回りシーンで見せた、横山さんの壁宙返り。そして最後に「我々といえばこれだよね」と渕崎さんが語る、三分間ショッピングの映像も。これは歌謡ショウの第1幕と第2幕の間の休憩時間に、さくらと紅蘭のコンビでライブグッズを販促する名物コーナーで、グッズの売れ行きによって日替わりで内容が変わるのが大変だったことや、思い出のグッズなどについて語られた。
横山さんは物が捨てられない性分であるため、すべてのグッズを残してあるという話からは思い出の大切さが伝わってきたが、数々のドリンク類も冷蔵庫に入ったままだと明かすと、渕崎さんはドン引き。10数年前の飲み物をどうするつもりか問い質す渕崎さんに、横山さんも困り顔で「もちろんもう飲まないですけど、処分のしようがないから。……ヤフオク?」とつぶやき、爆笑を巻き起こした。
「19年前に発売されたゲームの『サクラ大戦』がものすごくヒットして、そのお礼の気持ちを何かでお返ししようという時に、『サクラ大戦』は乙女たちが戦う“部隊”と、歌劇団として舞い踊る“舞台”を掛け合わせたものだから、その舞台の部分をやろうじゃないかということで始まったのが歌謡ショウでした。初めてコスチュームをつけて、全員揃って上野精養軒で記者の方に向けて発表会をしたのですが、最初はお互いの姿を見合って『これは大丈夫なのか……』と小鳩のように震える気持ちでした。でもいざ記者のみなさまの前にずらっと並んだら、『おぉ~!』というようなどよめきが聞こえましたので、不安が一気に希望に変わった思い出があります。
来年『サクラ大戦』は20周年を迎えます。今のところ何も企画されていないじゃないかと不安に思っているファンの方、大勢いらっしゃると思います。私もそんな1人です。せっかく10年、20年と積み上げてきて、こんなに大勢のサクラワールドの住人のみなさんが19年経ってもこうして集まってくださいます。このつながりを大事にしていきたい。私は『夢のつづき』という言葉が大好きなので、この言葉を信じて20周年公演……ライブなのかイベントなのかはわかりませんが、つなげていきたいと思います。そのためには、みなさまの応援が不可欠です。どうぞみなさまも、この夢のつづきを信じていてください! よろしくお願いします!」
回転が速いアニメ・ゲーム界の中で、20年近く人気を保ち続けるのは並大抵ではない。しかも20年といえば、半生あるいは人生のほとんどともいえる時間で、その間ずっと追い続けている作品があるならば、それに関わること自体がライフワークと言っていい。
横山智佐さんにとって『サクラ大戦』は紛れもなくライフワーク。会場に駆けつけた観客も同様であろう。同じ時代に、同じ夢を見ていた者たちが、もう一度大きな夢を見ようと立ち上がる。
このライブは、歌を楽しむのはもちろんだが、サクラワールドがいまだに生きていることを確かめ、住人に決起を促す集会でもあったのかもしれない。舞台を応援する部隊となる。いかにも『サクラ大戦』らしい楽しみ方ではないか!
■ 終演直後のキャストコメント
富沢美智恵さん:今回ちーちゃんのライブにゲストでお招きいただいて、久しぶりにサクラの歌を歌わせてもらい、すごく感動しました。私なりに練習したのに、歌詞は間違えるわ、しくじってばかりでもう、くしゅん……って感じなんですけど、ファンのみなさんが変わらず温かい声援と拍手と笑顔で支えてくださり、改めてみなさんの優しさとかエネルギーを感じることができて、すごく嬉しかったですし、感謝しています。またみなさんとサクラワールドを共有できたら嬉しいなと思います。20周年はぜひ全員揃ってファンのみなさんと一緒に時間を過ごすことができたら、満開のサクラの花をまた咲かせられたらいいなという夢があります。
高乃麗さん:久しぶりにマリアに再会できたという気持ちでいっぱいです。やっぱり仲間との絆のことだったりとか、がんばってきた日々を思い出します。初日のステージでは、私の隣でうるうるしながら観ていた(桐島カンナ役・田中)真弓ちゃんの横顔を見て私もうるっと来たりとか、久しぶりにサクラワールドに浸れたのがとても嬉しかったです。この機会を作ってくれた智佐ちゃんにはとっても感謝しています。たくさんのお客様が忘れずに来てくださったのも、とても嬉しかったです。
渕崎ゆり子さん:幸せでした。私の1年は今日で終わってしまったんじゃないかと思うくらい、燃え尽きました。こうしていまだに『サクラ』の世界にいられて、夢を見させてもらえてハッピーでした。観に来てくださったみなさま、来られなかったけど応援してくださっているみなさま、本当にありがとうございます。これからもサクラワールドをどうぞ応援してください。
横山智佐さん:お客様からは『20周年を楽しみにしています』というメッセージをさっそくいただいております。こんなにも20周年を煽った責任が私にはありますから、しっかりと最後まで旗振り役を務めたいと思います。また20周年にサクラワールドの住人のみなさまとお会いできる機会を必ず設けますので、会いに来てください。
<セットリスト 10月30日>
M-1 さくら
M-2 春が来る
M-3 暁の戦士(第3回花組特別公演「紅蜥蜴」劇中歌)
M-4 いざ立ち上がれ(第4回花組特別公演「アラビアのバラ」劇中歌)
M-5 口ずさむ歌(五周年記念公演「海神別荘」劇中歌)
M-6 サンセットサマー(7年目 スーパー歌謡ショウ「新宝島」劇中歌)
M-7 花組レビュウ
M-8 イッツ ショウ タイム
~七色の虹(7年目 スーパー歌謡ショウ「新宝島」レビュウ曲)
~花のレビュウ(9年目 スーパー歌謡ショウ「新・青い鳥」レビュウ曲)
M-9 絶対運命のタンゴ
M-10 ユーロ 恋の発車オーライ!
他
<セットリスト 10月31日・昼の部>
M-1 お祭りダンス
M-2 隅田川(6年目 スーパー歌謡ショウ「新編 八犬伝」劇中歌)
M-3 夜の海月(五周年記念公演「海神別荘」劇中歌)
M-4 わたしはいま(8年目 スーパー歌謡ショウ「新西遊記」劇中歌)
M-5 花吹雪・白浪弁天
M-6 恋をしませう(9年目 スーパー歌謡ショウ「新・青い鳥」劇中歌)
M-7 花のように夢のように(6年目 スーパー歌謡ショウ「新編 八犬伝」レビュウ曲)
M-8 赤ワニダンス(7年目 スーパー歌謡ショウ「新宝島」劇中歌)
~トランプの裏表(7年目 スーパー歌謡ショウ「新宝島」劇中歌)
~希望の星よ(6年目 スーパー歌謡ショウ「新編 八犬伝」劇中歌)
M-9 センチメンタルな…
M-10 イッツ ショウ タイム
他
<セットリスト 10月31日・夜の部>
M-1 さくら前線
M-2 夜空の花
M-3 野生の雄叫び(7年目 スーパー歌謡ショウ「新宝島」劇中歌)
M-4 ブルーバード(9年目 スーパー歌謡ショウ「新・青い鳥」劇中歌)
M-5 あなたが楽しければ(10年目 歌謡ショウファイナル公演「新・愛ゆえに」劇中歌)
M-6 さくら咲いた(10年目 歌謡ショウファイナル公演「新・愛ゆえに」劇中歌)
M-7 ユンフォア(8年目 スーパー歌謡ショウ「新西遊記」レビュウ曲)
M-8 カモナ浅草(第3回花組特別公演「紅蜥蜴」劇中歌)
~モダンブギ(9年目 スーパー歌謡ショウ「新・青い鳥」劇中歌)
~天竺どこだ(8年目 スーパー歌謡ショウ「新西遊記」劇中歌)
M-9 東京的休日
M-10 旅の空へ
他
>>『ちさくら部』~横山智佐公式ファンクラブ Web Site~
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