声優・鈴村健一さんが受け継いだ“ヤマトの意思”とは?『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』インタビュー
1974年から読売テレビ系列で放送された伝説のTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(以下、ヤマト)シリーズ。40年近く経った2012年には新作『宇宙戦艦ヤマト2199』(以下、2199)が制作され、新旧ファンを熱中させる一大ムーブメントが巻き起こりました。そして、2017年2月25日、ついに最新シリーズ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(以下、2202)が劇場上映されます。
上映に先駆けてアニメイトタイムズでは、『2199』から引き続き、ヤマトの操舵を務め、主人公・古代進の親友でもある島大介役を演じた鈴村健一さんにインタビューを実施。本作の魅力や見どころを語っていただいきました。
端々に冗談を交え、取材陣を笑わせながらも、『ヤマト』に対する熱い思いをしっかりと語ってくれた鈴村さんの姿が印象的でした。
『ヤマト』の持つ力強さを体現した作品
──約2年ぶりの『ヤマト』の収録だったと思いますが、改めて演じてみた感想をお願いします。
鈴村:「いよいよ来たか!」という感じでしたね。僕自身もこの作品をずっと楽しみにしていたので、アフレコが始まったときに、ついに現実のものになったんだなと実感しました。
──たくさんの方が楽しみにしていました。久しぶりの現場の空気はいかがでしたか?
鈴村:久しぶりなのに違和感が全然なかったんですよ。『2199』までで積み上げていたものが、キャストの中で強固なものになっていました。深く考えずにスッと現場の空気に馴染むことができましたから。
──そんな中、ついに動き出した『2202』ですが、本作の台本を読んでどのような印象を持たれましたか?
鈴村:シンプルに「凄く良い本だなあ」と思いました。前回の『2199』は、地球の命運を背負ってイスカンダルを目指す、というヒロイックなシナリオでした。それが今回は、地球を救ったあのEDからとは思えないとても切ないシーンから始まるんです。地球全体がまだ一枚岩になれていなくて、ヤマトが頑張って地球を救ったのに、早くもいろんな綻びが生まれてしまっている。
今回は、ただヒーローが地球を救っただけではなく、その後のドラマがしっかりと描かれているんですよ。良くない状況を打破するために再び『ヤマト』が旅立つ、といったポジティブイメージに繋がっていくんです。SFでありながらリアリティを追求した作品であり、エポックとしても語り継がれている『ヤマト』の色が凄く出ている脚本だなと感じましたね。
──大ヒットした旧作の『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が現代の解釈でリメイクされるわけですから、その期待も大きいと思います。
鈴村:『ヤマト』らしさを上手く抽出して、現代の脚本に落とし込んでいるんですから凄いことですよね。『2202』は“ヤマトの意思”そのものを受け継いでいる作品なんだと感じていただけると思います。オールドファンはもちろん、『2199』を応援してくださった方も安心して見てもらえますし、本作で『ヤマト』に始めて触れた方にも“日本にはこんな凄い作品があるんだ”と感じていただけるはずです。それだけの大作になると信じています。
──『ヤマト』という作品が持つ力強さ、魅力とはどんな部分でしょうか?
鈴村:キャラクターの心情ぞれぞれにリアリティがあることですかね。『2199』では地球を救う大きな意図を持ってみんな船に乗り込んだわけですが、『2202』では一つの戦いが終わったことで、みんなに少しずつ変化が起こっているんです。僕が演じる島が軍を辞めるという一つの決断を考えている一方で、古代はもう一度ヤマトに乗って宇宙に旅立つべきだと主張している。クルーたちにも、きっとそれぞれ別の考えがあると思うんですよ。そんな中でどんな答えを出して、もう一度宇宙に旅立つことになるのか。考えただけでワクワクしますよね。
収録しながら胸が熱くなった
──『2199』から約2年近く経って続編制作のアナウンスがされました。そのとき、不安や緊張はありましたか?
鈴村:それはもう嬉しさのほうが大きかったですよ! ただ振り返ってみると、『2199』に参加するときは少し緊張しましたね。あのときも僕は「これは凄い作品になる!」とワクワクしながら、スタッフのみなさんを信じてアフレコしていたんです。けれど、いざ世の中に「新しい『ヤマト』を作っています」と発表したとき、正直に言って、ファンのみなさんの不安な気持ちが伝わってきたんですよ。
でも『2199』の劇場上映が始まるとその評価は一気にひっくり返って「凄い作品が誕生した!」と受け入れてもらえたんです。あのときの興奮を僕は忘れられないですね。そのときから「続編はいつやるの?」という声をいくつもいただきましたし、僕自身も絶対にやると信じていました。だからお話が来たときは「キター!」と(笑)。
──『2199』が絶対に受け入れてもらえる、という確信が沸いてきたのはいつごろだったんですか?
鈴村:第一章の収録をしたときにはそう感じてましたね。すぐにでも世の中に発表したいと思いましたから(笑)。収録をしながら胸が熱くなっていくのを感じるんですよ。古代と島がヤマトを見つけるシーンで、誰もが知ってるテーマが流れるところとか最高でした! これならみんなにきっと受け入れられると思ったし、より多くの人に見てもらいたいという気持ちが強くなりました。
だけど、今では『ヤマト』をまったく知らない人のほうが多いと思うんですよ。僕ですらリアルタイムではないですから。そんな中で『2199』は若い世代にも受け入れられて、たくさんの女性の方にも見ていただくことができた。大成功したコンテンツですよね。その続編となる『2202』ですから、プレッシャーよりも絶対に大丈夫だという自信のほうが大きかったです。
──鈴村さんから見た本作の見どころはどんなところでしょうか?
鈴村:『2199』ではヤマトクルーが一つになることでイスカンダルまでたどり着くことができました。そこで地球を救ってストーリーが終わっていれば、それは素晴らしい英雄の物語になったと思うんですよね。それが地球に戻ってきたら、思っていたほど地球の情勢が上手く回っていない。あんなに頑張ったのに、クルーたちが報われないというのは少し悲しいですよね。島なんて軍を辞めるなんて言ってるわけですから。
そんな中でも古代は「まだやれることがある」と行動を起こしていくんです。あの決断する力は本当に凄いなって思いますよ。それがどう島やクルーたちの心を動かしていくのか、注目しながら見ていただきたいです。
──クルーたちが改めて一つになっていくところは見応えがありそうですね。みんな、なんだかんだ軍人なんだなと感じられて、ファンにはたまらない展開になりそうです。
鈴村:燃えると思いますよ。この第一章の短い時間でそこまで持っていくわけですから、やっぱり『2199』という下地は大きかったですね。みんなが悩んで、抑圧されて、それでもまたヤマトに乗るんだと決めていくカタルシスは痛快だし、ドラマとして最高に気持ちいい展開になっていると思います。
──ドラマとして凄くキレイにまとまってますね。
鈴村:複雑な人間関係があるように見えて、そこを気にしなくてもサラッと見れるほどに整理されてるんです。当然描かれていない部分に謎は残っていますが、この人たちはこういう関係なんだなというのが端的に伝わってくるんです。『2202』として新しく物語が始まるのでもっと説明的なシーンが多いかと思ってたんですけど、そんなことはありませんでした。キャラクターの感情の流れもしっかりしているので、いろんな人に共感してもらいながら見てもらえると思います。
島にも大いなる愛を!
──今回は新キャラクターとして神谷浩史さんが演じられているキーマンが登場します。物語にどのように絡んでくると思いますか?
鈴村:謎が多いキャラクターですよね。どういう立ち回りをするかはまだわからないですけど、小耳に挟んだかぎりでは面白いことをしてくれるみたいですよ。その名の通りという感じで。第一章では深く描かれることはなかったので、今後どんな風になっていくのか期待したいです。彼がきっかけになって、人間関係もどんどん複雑に絡み合っていくみたいですから。
『2199』ではそれぞれの立場に芯の通った主張があったんですよ。ヤマトにはヤマトの、ガミラスにはガミラスの。だけど『2202』では、それが初めから混ざり合ってるんです。仲間なんだけど、裏で暗躍してるような存在がいたりして。そういうのは今までの『ヤマト』にはなかった展開だし、それがきっかけになって誰かの思い描いている目標がブレることもあると思います。それがきっと『2202』のドラマをより一層面白くしてくれるんじゃないかなと。
障害を乗り越えるから話が面白くなるのであって、なにも変化がない物語を見てもつまらないですからね。キーマンは波紋を呼ぶというか、一石投じる役割を担うキャラクターになっているようなので、僕自身も期待しています。
──その他、鈴村さんは『2202』が今後こんなふうになってほしいというよう要望や、自分なりの予想はありますか?
鈴村:とりあえず、島にはヤマトに乗ってほしいです(笑)。
一同:(笑)。
鈴村:怖いことに、乗らない可能性もゼロではないんですよ。スタッフさんも、そういう大胆なことを考えてそうで(笑)。でも僕は、ヤマトの操舵ができるのは島しかいないと自負してるんです。今までは補佐的な立場だった南部康雄役の赤羽根健治くんが、「僕、第一章でゆうなぎの操舵をしたんですよ」って話をしてきいて、少し不安になってますが……。彼は『2199』で波動砲を打たせてもらっているのでね。ヤマトの操舵までは譲りませんよ! ……そうじゃないと本当に地球に取り残されかねませんから(笑)。
──確かに不安にはなりますね(笑)。
鈴村:取り残されると言えば、もう一つ。『2199』のときに古代を始めとするモテ男たちがみんな異性と良い感じになってるんですよ。あの真面目な真田(CV:大塚芳忠さん)まで。だから、ちょっとくらい島にもね、相手をね……。『2202』では島の美味しい展開があったら良いなと。キャッチコピーが“この「愛」は宇宙を壊す──”ですから。島にも大いなる愛をと、僕は期待しています。
鈴村さんの『ヤマト』の原点は父親の鼻歌
──そういえば、鈴村さんが『ヤマト』と出会ったのはいつごろなんでしょうか?
鈴村:僕が子供の頃にはすでに『ヤマト』がありましたから、物心ついたときから『ヤマト』の存在は知っていたなあ。あまりアニメを見ない僕の父親が、『ヤマト』の曲を歌っていましたからね。だから、父親の歌が僕にとっての『ヤマト』の原点かもしれません。あとは、テレビでよく再放送を見ていた記憶とかが微かにあるくらいですかね。
やっぱり当時の僕にしてみれば内容が難しかったんですよ。大人のアニメって感じで。そういうのよりは、ドカーンと戦ってガシーンと合体するようなのが僕は好きでしたら。『ヤマト』を見ても、「ロボット出てこねえじゃん」とか思っていた気がします(笑)。だから『2199』をやるにあたって見直してみたんですよ。それで改めて思いました。「やっぱりこれは大人のドラマだな」って。
──過去作を見て、島を演じる参考にしたのでしょうか?
鈴村:実は島って、『ヤマト』(1974年)と『2199』ではキャラクターの造形が違うんですよ。昔はもっと大人の男に描かれてたんですが、僕の演じた島は発展途上の若者風になっていて。だから『ヤマト』(1974年)は見直してみたんですけど、キャラクターとして参考にすることはほとんどありませんでした。
ただ、“ヤマトらしさ”というものは感じましたね。どんなピンチも絶対に乗り越え、それを打破する力を見せつけてくれる。そんな力強さを『2199』では大事にしたいと思って島を演じました。それはこれからの『2202』でもそうですし、特に島は操舵を担っているので彼が諦めたらヤマトは沈みますからね。絶対に諦めないという“ヤマトらしさ”は『ヤマト』(1974年)から学んだ大切なことだと思っています。
──『ヤマト』のどんなところを注目して見てもらいたいですか?
鈴村:壮大な世界観と、キャラクターが生き生きしているところですね。男性はアニメを見るときにストーリーや世界観を見る人が多いと思いますが、女性はキャラクターに焦点を当てている人が多い印象です。見た目がカッコいいとか綺麗とかではなく、バックボーンを大事にしてるんですよね。そのキャラクターのベースになる要素が存在しないと、誰も共感してくれないんですよ。
『ヤマト』はそういう部分もしっかりしていて、SFという大きな世界観の中であえて地球を描くことで、共感性の高いキャラクターをたくさん生み出しているんです。ぜひ劇場でご覧いただいて、ストーリーやキャラクターたちに浸っていただけたら嬉しいです。どのキャラクターのバックボーンも魅力的ですよ。
まぁ、特におすすめのキャラクターは島ですかね(笑)。ぜひ、ご期待ください!
──(笑)。ありがとうございました。
[インタビュー/石橋悠 文/原直輝]
◇第一章STORY◇
時に西暦2202年。
あの壮大な片道16万8000光年にも及ぶイスカンダルへの大航海から宇宙戦艦ヤマトが帰還して、既に3年――。
〈コスモリバースシステム〉により、かつての青い姿を取り戻した地球は、ガミラス帝国とも和平条約を締結。復興の傍ら、防衛のためと最新鋭戦艦アンドロメダを含む新鋭艦隊の整備が進められていた。イスカンダルのスターシャの願いも虚しく、地球は軍拡への道を歩み始めていたのだ。はたしてこれが、かけがえのない数多くの犠牲の果てにヤマトが成し遂げた、本当の平和なのだろうか?
宇宙の平穏を願う女神テレサの祈りが、ヤマトを新たな航海に誘う。
いま、宇宙を席巻するガトランティスの脅威が、地球に迫っていた――。
―各話STORY- ※第一章は第1話、2話で構成されます。
第1話「西暦2202年・甦れ宇宙戦艦ヤマト」
あのイスカンダルへの大航海から3年。〈コスモリバースシステム〉によって蘇った地球は、急速に復興を遂げようとしていた。一方、地球とガミラスの混成艦隊が、謎多きガトランティスの前衛部隊と武力衝突を繰り広げる。その渦中に、元宇宙戦艦ヤマト乗組員・古代進の姿があった――。
第2話「緊迫・月面大使館に潜行せよ」
最新鋭戦艦アンドロメダの観艦式が盛大に執り行われる。新しく樹立された地球連邦政府は、軍備拡大路線を突き進んでいるのだった。沖田艦長の命日に英雄の丘へと集う元ヤマト乗組員は、イスカンダルとの条約を反故にしてまで再軍備を進める地球の現状に、激しい違和感を覚えていた。
<CAST>
古代進:小野大輔/森雪:桑島法子/真田志郎:大塚芳忠/徳川彦左衛門:麦人/南部康雄:赤羽根健治/
相原義一:國分和人/榎本勇:津田健次郎
<STAFF>
製作総指揮:西﨑彰司/シリーズ構成・脚本:福井晴敏/監督:羽原信義/副監督:小林誠/メカニカルデザイン:玉盛順一朗/メカニカルデザイン:石津泰志/キャラクターデザイン:結城信輝/音楽:宮川彬良