「さっそく共演させていただけて、しあわせでした」――井上喜久子さんと井上ほの花さん、母娘で声優のお仕事【井上喜久子&ほの花連載第4回】
案の定というか、母娘二代で声優になったからには共演を見たいと誰もが思うようで、ゲームやイベントなどでさっそく共演の機会を持つことになった井上喜久子さんと井上ほの花さん。デビューしてすぐに、ゲームのヒロイン役や主題歌の歌唱、今をときめく超人気声優との共演など、ほの花さんの活躍ぶりには目を見張るものがありますが、母の喜久子さんとしてはありがたいと思うと同時に、やはり相当心配もある様子。数々の修羅場を潜ってきた喜久子さんだからこそ、色々と覚悟も決まっているとか……。
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●井上喜久子(いのうえ きくこ)
9月25日生まれ。神奈川県出身。主な出演作は『らんま1/2』天道かすみ役、『ああっ女神さまっ』ベルダンディー役、『しましまとらのしまじろう』しまじろうのおかあさん役、『ふしぎの海のナディア』エレクトラ役、『おねがい☆ティーチャー』風見みずほ役、『サクラ大戦3』ロベリア・カルリーニ役、『魔法少女育成計画』カラミティ・メアリ役、『METAL GEAR SOLID』ザ・ボス、ローズマリー役ほか。オフィスアネモネ所属。
●井上ほの花(いのうえ ほのか)
2月9日生まれ。神奈川県出身。アーケード版『太鼓の達人』関連曲「恋幻想(LoveFantasy)」でデビュー。出演作は『月がきれい』田中さくら 役、『終末なにしてますか? 忙しいですか?救ってもらっていいですか?』フィラコルリビア・ドリオ役、『ダンガンロンパ3 -The End of希望ケ峰学園-絶望編』如月かれん役、ニンテンドー3DS『ぷよぷよクロニクル』アリィ役(ED曲「みんなみんなだいすき」歌唱)、ニンテンドー3DS『太鼓の達人ドコドン!ミステリーアドベンチャー』ティア役(主題歌「世界はミステリー」歌唱)、『青空アンダーガールズ!』椿瑠璃花役、8月のシンデレラナイン』河北智恵役ほか。ファーストアルバム『ファースト・フライト』クリンクレコードより発売中。オフィスアネモネ*ジュニア所属。
――『太鼓の達人ドコドン!ミステリーアドベンチャー』では、ほの花さんがヒロインのティア役、喜久子さんが魔導結社のデボラ役で共演されましたが、いかがでしたか?
井上喜久子さん(以下、喜久子):いやぁ~、びっくりでしたね。『太鼓の達人』って、ほっちゃんにとっては?
井上ほの花さん(以下、ほの花):たからもの!
喜久子:それでデビューって言ってもいいくらいだっけ? あんなにいっぱいしゃべったのは初めてだよね。だからもうそれだけでもドキドキだったのに、同じ作品でお仕事ができたのはもう感無量です。
ほの花:だけど私はそのときはまだ、「ママといっしょ! やったー!」って思っていました。
喜久子:え?
ほの花:今だと母といっしょのお仕事ってなると、「えー、ママいるの?」ってなるんです。
喜久子:なんでなんでぇー!?
ほの花:なんか母がいると、家でのダラダラした私に戻っちゃうんですよ。母とくっついていたいから、隣に座ったりしちゃいたくなるんです。今は「もっとちゃんとしなきゃ!」って思うんですけど、あのときは「ママがいる! 良かったー!」って思っていました。
――自分的に、出来はいかがでしたか?
ほの花:そのときは「すごい楽しい!」ってばっかりでした。
喜久子:また、ありがたいことにスタッフさんがみなさんとても親切で……あったかい現場だったんだよね。
ほの花:みんな優しかったから、歌録りも声の収録も本当に楽しいというのしかなくて、うまくできたとか、そういうことはあんまり考えなかったんです。でも後から自分でゲームをやって、聴いてみたりすると、「あ、ここがちょっとな」とかは今だからわかるのかなって思うんです。
――今のところは歌にせよ芝居にせよ、聴き返して悶絶するようなことはないわけですね。
喜久子:悶絶(笑)。
ほの花:「やらかしたぁー!」みたいなのはないかも。
喜久子:私なんて昔の作品が流れていると、椅子からずり落ちそうになるときあるよ。「ええ~!?」って(笑)。
――『ぷよぷよクロニクル』のアリィは、挨拶が「愛し合いましょう」というのが、若干イタい子なのかなという気がします(笑)。
ほの花:私はかわいいなって思いました。名前とかも、私が大好きなアリアナ・グランデがアリって呼ばれているから、同じアリィっていう名前の役ができるなんて嬉しいっていうのもあったんです。
喜久子:確かに「愛し合いましょう」っていうセリフは、そこにニュアンスが乗っちゃうとちょっと意味深に聴こえるけど、逆にすごく子供っぽく、幼い子が無邪気に言っている感じだからいいのかも。もしも私があのセリフだったら、ちょっと別のものになっちゃうと思うんですよ(笑)。そういうところは、もう私なんかでは表現できないんですよね。自然な幼さのままだから。
ほの花:「愛し合いましょう」とは言わないですけど、けっこう私も好きな子には「好き好き」ってなっちゃうんですよ。特に女の子には。ベタベタしていたいというか、人にくっついていたくて、それをそのままキャラに乗せられたのかなって思います。
あと、アリィは年令を少し低めにしてくださいっていう指示だったんですけど、私がお友達とかによく「子供っぽい」って言われていたので、そこも自然な感じでできたかなって思います。
――東京ゲームショウ2016での『ぷよぷよクロニクル』のステージはいかがでしたか?
ほの花:最初にステージに出るときはすごい緊張したんですけど、楽しかったです! お客さんが目の前にたくさんいて、「うわーすごーい!」みたいな。
喜久子:あんなに大勢の前に出るの、初めてだったんじゃない?
――あの時はお客さんから「ほっちゃーん!」とか掛け声などもあった?
ほの花:ずっと母を応援してくださっている方が来ているのを見て、「あっ、いつもの方だ!」って安心できたりとかはありました。
喜久子:ありがたいねぇ~。
――喜久子さんのファンが集まる場なら、確実にホームですからね。喜久子さんなりの、アウェイでの切り抜け方はありますか?
喜久子:アウェイでの切り抜け方ですか?(笑)
ほの花:ママって落ち込んじゃうタイプだよね。
喜久子:そうなの……。私はすごい落ち込み症で、娘はちょっと違うんですよ。アウェイでの切り抜け方は、ないですね。ズタボロになって耐え抜いて、回復していくしかない。
――これまでで最もトラウマ級の経験は?
喜久子:ちょっとアウェイなイベントに出たときに、つらかったけど、もう仕方ないなって思うしかなかったですね。ごめんなさい、詳しくは言えないんですけど(笑)。
――同じく東京ゲームショウ2016の『スターリーガールズ』のステージが、オフィスアネモネのイベント以外では初共演でしたか?
喜久子:その前にマジ音フェスティバルっていう、新人アーティストさんがいっぱい出るイベントに出させていただきました! 『スターリーガールズ』のステージは、いやぁもうしあわせでしたねぇ。
ほの花:ものすごいしあわせだったし、楽しかったです。
喜久子:こんな出演の仕方をさせていただけて、もうどうしようっていう。
ほの花:本当に感謝です! 『スターリーガールズ』は母だけだったらわかるんですけど、私なんて新人じゃないですか。
喜久子:ほかのキャストの方たちが本当にすごくて、その中にひとり知らない子がいる感じなんですよ。
ほの花:水樹奈々さん、早見沙織さん、M・A・Oさん、竹達彩奈さんとか。
喜久子:今の最前線の方たちの中に「井上ほの花」って入っていて、ひとりだけ「どこの国から来た人ですか?」みたいな(笑)。
ほの花:そんなところに立たせていただけたのが、信じられない感じでした。
――そんな場所で横に喜久子さんがいたのは、すごい安心感になったのでは?
ほの花:そうですね。私がなにか失敗しちゃっても、絶対にフォローしてくれるじゃないですか。『ぷよぷよクロニクル』のときの園崎未恵さんもすっごい優しかったんですけど、そういう方としかステージでいっしょになったことがないんです。
喜久子:子役の子が出ているようなイメージなんですよね。子役さんとか、ちょっと違う意識で接するじゃないですか。まだそういうところにいる感じなんですよ。でもあと数ヶ月か、1年もしたら、全然別世界でやっていかなきゃいけないだろうから、そのときにいろんなことを知るんだと思います。
でもこの世界って、いろんなところで受けた傷だったり、つらいことも、表現で返せるじゃないですか。だからそれさえも自分の力とか糧にしていくことが、お芝居に役立つと思って乗り越えてほしいですね。
――母娘揃っての制服コスプレが話題になりましたが、今後も2人でのコスプレはしていきますか?
喜久子:メイド服はオフィスアネモネのイベントでいっしょに着てるけど、ほっちゃんはコスプレは――
ほの花:あまりしたことないです。
喜久子:私は娘の制服とかよく着てるから(笑)。
――やりたいという気持ちがない?
ほの花:いえ。撮影でこの間、制服を着させていただいたんですけど、「高校生のときって制服着れていいな」っていう想いが甦ってきたんですよ。「制服での取材」って聞いたときから、それがすごい楽しみで、コスプレするっていうのはそういう感覚なのかなって思っているんです。
喜久子:コスプレもいろいろあるからね! キャラもの、職業ものとか。ママ、コスプレ語らせたらすごいから!
ほの花:それになれるのが嬉しいっていうのが魅力なのかなとは、そのときに思いました。
喜久子:やっぱりコスプレには愛があるから! 楽しいよ~!
――もしも何か着ることになったら、何にしますか?
ほの花:クマ。
喜久子:それ、コスプレかなぁ(笑)。着ぐるみじゃない? でも、着ぐるみもいいと思うよ。
ほの花:あとは魔法使い系とかやりたいです。ハリー・ポッターみたいなのやりたい!
――喜久子さんは魔法少女も経験済みですよね。
喜久子:おかげさまで、いろいろ(笑)。
――これからどんな仕事がしてみたいですか?
ほの花:声優をやりながら、歌も歌っていきたいです。
――喜久子さんもたくさんの歌を作ってきましたから、今度は2人で作ってみるというのは?
喜久子:本当にそうですよね!
――最後に、これからの意気込みをお願いします。
ほの花:今は声優になりたい方が本当にたくさんいて、みなさんすごいがんばっていらっしゃるじゃないですか。だから、この世界に入ったからにはそれ以上にがんばらないとと思っているので、誰よりもがんばります!
喜久子:今回このような場で、また2人で話させていただけたのが本当にうれしくて、これを読んでくださったみなさまもありがとうございます。私たち親子で同じ世界で、これから声優としてお互いやっていく中で、いろいろと「おいおい」って思うこととかあると思うんですけど、どうかひとつ大きな心で、笑ってゆるしてください(笑)。
[インタビュー・文/設楽英一 撮影/Re-Zi]
>>井上喜久子 オフィシャルサイト @manbow
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