音楽
アニメの道が開けた『ナルト』の存在―FLOWの軌跡と新たな挑戦

『NARUTO –ナルト-』との関わりがひとつのターニングポイントに――FLOW15周年の軌跡と新たな挑戦/インタビュー前編

 デビュー15周年を控えた百戦錬磨のロックバンドであり、今やアニメシーンに欠かせない存在となった5人組・FLOWがミニアルバム『Fighting Dreamers』をリリースします。

 FLOWの代表曲であり、ライブ定番曲の『GO!!!』(『NARUTO –ナルト-』第4期OP/2004年発売)を象徴する歌詞のフレーズからつけられた今作には、その名の通り、『GO!!!』の再録を収録。しかし、そこは我らがFLOW。ただのセルフリメイクではありません。

 これまでFLOWが主題歌を担当してきたアニメ作品から、『NARUTO –ナルト-』のナルト役の声優・竹内順子さん、『コードギアス 反逆のルルーシュ』のルルーシュ・ランペルージ役の声優・福山潤さんをはじめとした、総勢11名もの豪華声優陣が作品の垣根を越えて集結しコーラスに参加。さらなる輝きが放たれたスペシャル・バージョンとなっています。

 さらに、メンバー5人それぞれが作詞・作曲を手掛けるという初の試みに挑んだ5曲を収録(KEIGO、KOHSHI、IWASAKIにとっては今回が初の作曲!)。“闘う夢追い人=Fighting Dreamers”と自ら称するFLOWならではの姿勢、メッセージが伝わってくる傑作です。

 取材にお伺いしたところ「なんでも聞いてください!」と両手を広げて歓迎してくれたメンバー。前編では、これまでのキャリア、そして名曲『GO!!!』ができたときの心境などを振り返っていただきました。そのなかで、アニメ、アニメファンに対する真摯な想いも伝わってきました。

【「GO!!!」新録ver.コーラス歌唱参加声優】(作品ごとに記載)
竹内順子 「NARUTO –ナルト-」:ナルト役
杉山紀彰 「NARUTO –ナルト-」:サスケ役
中村千絵 「NARUTO –ナルト-」:サクラ役
森久保祥太郎「NARUTO –ナルト-」:シカマル役
福山潤 「コードギアス 反逆のルルーシュ」 ルルーシュ・ランペルージ役
三瓶由布子「交響詩篇エウレカセブン」:レントン・サーストン役
名塚佳織 「交響詩篇エウレカセブン」:エウレカ役
増田俊樹 「サムライフラメンコ」:羽佐間 正義役
梶裕貴 「七つの大罪」:メリオダス役
豊永利行 「デュラララ!!×2 結」:竜ヶ峰帝人役
谷山紀章  友情参加



「今もやり続けてるし、求められてるって意味でも『GO!!!』は大切な作品」(GOT’S)
――まずは15年を振り返って、ターニングポイントや思い出に残っていることなどを教えていただきたいです。

TAKEさん(以下TAKE/ギター):デビュー15周年、このメンバーになってからは17年なんですけど、ターニングポイントは岩ちゃん(IWASAKI)が遅刻しなくなったところかなぁ……。

GOT’Sさん(以下GOT’S/ベース):ターニングポイント、すげぇはじめのほうだね(笑)。デビューする前の話です。確かにね、あのまま遅刻されてたらなかったもんね。

――そんな状態だったんですか?(笑)

GOT’S:ヤル気が一切なかった。

TAKE:遅刻というより、こなかった(笑)。あのままだと自然分解してたよね。

――なんでこなかったんですか?

一同: (笑)

IWASAKIさん(以下IWASAKI/ドラム):まぁしんどかったんでしょうねぇ……(笑)。雨に濡れるし、無理やなぁみたいな。

GOT’S:なんの連絡もないんですよ(笑)。

――IWASAKIさんのやる気を起こしたものがその後あったんですか?

IWASAKI:「練習です」って呼び出されたんですけど、そのときミーティングすることになって、あれこれ怒られて……。

KEIGOさん(以下KEIGO/ボーカル):そりゃそうだ(一同、爆笑)。でも最年長ですけどね。

TAKE:岩ちゃんはその時はまだサポートメンバーだったから、正式メンバーになってよくここまでやってこれたなって。ちょっとジャンプアニメっぽいですよね。一人ずつ仲間にしていってね。あいつだけはパーティに入らなそうだぜ!みたいな感じだったのが、参加してくれて……。

KEIGO:無理やりまとめた感がすごい。

GOT’S:やだなぁ、そんなターニングポイント。

――他のターニングポイントってありますか?

GOT’S:『贈る言葉』(2003年/インディーズ時代にリリース)かな? それまではお客さんが少なかったから。

TAKE:アニメ的に言うと、やっぱり『GO!!!』。 『NARUTO -ナルト-』があったからこそ海外にも行けたし、こんなにアニメの主題歌をやらせていただけている。

GOT’S:確かに。今もやり続けてるし、求められてるって意味でも『GO!!!』は大切な作品だよね。15年経ってもまだまだできる。あれがはじめてのアニメの曲だったんで。

KOHSHIさん(以下KOHSHI/ボーカル):『GO!!!』がなかったら、今はないよね。それこそ『贈る言葉』で終わってたかもしれない。アニメの扉を開いたのがそこだよなぁ。


「あの曲ができたことに今すごく感謝してます」(TAKE)
――『GO!!!』ができたときってどんな心境だったんですか?

TAKE:自信はありましたね。良い曲ができたなって。それを一番感じたのが……今は無き渋谷AXで行われたイベントで、発売前に初めて演奏したんですけど、ドッカンドッカン盛り上がったんですよ。「この曲は力があるな」って思った記憶があります。でもまさかこんなに……リリースしてからは13年経つんですけど、演奏し続けて、ましてやバンドの代表曲に成長するとは1ミリも思ってなかった。あの曲ができたことに今すごく感謝してますね。

――いまだに色あせない名曲で。

KEIGO:しかも間違いなく、一番やってる曲なんでね。もう外せないよね。

TAKE:ライブに欠かせないというか。ライブでの破壊力が凄まじいので、みんなと楽しむための武器として必要なんですよね。3コード強えなぁって。循環コードで、コールアンドレスポンスが入って、シンプル極まりない構成なんですよ。でもその強さってあるなって。いま同じ物を作っても同じようにならないんですよね。

一時期『GO!!!』みたいな曲を作れって言われたんですけど、『GO!!!』があるからいいんじゃないのって(笑)。代表曲として喜ばれているから、そこを求められるんでしょうけど、そういう曲がバンドとしていくつも出せたというのが今に繋がってるんじゃないですかね。


「いろいろな扉を開けさせてくれたのはアニメだった」(KOHSHI)
――アニメの道が切り開いたときは、どういう心境だったんですか?

TAKE:『GO!!!』が2004年か。今みたいにアニソンがこれだけ盛り上がって、そこにバンドが参入するという時代ではなかったですから。「俺たちアニメの曲なんかやらねーよ」ってひと人たちのほうが多かった時代でしたけど、我々は出会いの中でやらせてもらうことになって。そこに抵抗はなかったですし、やらせてもらったことは今でもよかったなって思ってます。いまだに「『NARUTO -ナルト-』決まったぞ!」ってマネージャーから言われたときのこと、覚えてますからね。

KEIGO:当時はアニメの曲がバンドにつくことも知らなかったですし。

TAKE: 『NARUTO -ナルト-』に関しては、最初はHOUND DOG先輩で、そうそうたるミュージシャンがその歴史に登場していて。子供たちの初めてのロック体験を『NARUTO -ナルト-』でして欲しいというテーマがあったらしいんです。で、その世代で聴いていた人たちがまたバンドを組んで……。

IWASAKI:時代がそういう風になってきたというか。 2000年以降にジャパンアニメーションと言われているものがカルチャーとして海外に出ていって、そのうち「アニメってすごいんだ」ってことも日本人も思い始めて市民権を得て。サブカルチャーだったものがメインストリームに上がって、分母の数が上がってきて「アニメタイアップが欲しい!」ってバンドも増えていったよね。

TAKE:時代が変わっていった。

――その最先端にFLOWは立ってますよね。今も昔も。

TAKE:結果ですよ(笑)。我々は意図せずやらせてもらってたことが、「急にこの剣、すごいよく切れるんだけど」みたいな。それを感じたのが2007年のときにアメリカのダラスのイベント(Anime Fest)で。デビューして3、4年でまさかアメリカで我々の音楽を知ってる人なんていないだろうって思ってたら、ドッカンドッカン盛り上がって。

KEIGO:『GO!!!』を海外の人がみんな歌ってたんですよ。ビックリして。海外に行くようになってアニメの凄さをまた知ったというか。アニメを見て日本語を勉強して、日本語を喋れたりするんですよね。アメリカのみならず世界で。

IWASAKI:インターネットがそこまで整備されていない時代なので時差はあるんですけど、でもちゃんとジャパンカルチャーを理解してくれているなって。

KOHSHI:当時はまだ事務所の中でも海外に行ってる人いなかったもんね。海外はまだ見てなかった時代だった。そういう意味でもいろいろな扉を開けさせてくれたのはアニメだった。全部意図はしてなかったけど。

TAKE:ビックリしちゃったよね。そういう出会いをくれたアニメにも、スタッフの皆さんにも感謝ですし。そこで真摯に向き合って作品を作り続けられたことが繋がってきたんだと思うんですよね。1、2回で終わってしまう可能性も大いにあったと思うんですけど、そこをちゃんと楽曲で返せたのかなって。


「(アニメファンの)応援の力がすごく強いんです」(IWASAKI)
――そんな真摯な姿勢で向き合ってきたからこそ、アニメファンにも受け入れられていると思うんですけど、そこに関してどう自己分析されてますか?

TAKE:違うものは違うってかぎ分けられる、敏感な方たちだと思うんですよね。しかも今はそこに対する嫌悪感も拡散される時代じゃないですか。だからよく受け入れてもらえたなって。

IWASAKI:受け入れられた理由は分からないんですけど……応援の力がすごく強いんですよ。

TAKE:最初のアニサマ(Animelo Summer Live 2013)、ビビったよねぇ。

KEIGO:すげぇビビりましたね(笑)。初出演だったから絶対アウェイだろうって思いながら行ったんですよ。そしたらすごい盛り上がってくれて。

――去年の『テイルズ オブ オーケストラコンサート 2016』の東京フィルハーモニー交響楽団との異色のコラボレーションもすごい盛り上がりを見せましたよね。百戦錬磨のFLOWならではのステージでした。

KEIGO:あれもビビったー!(笑) オーケストラコンサートだから皆さん座って聴き入っているところに僕らは登場して、ぜひ体を動かして聴いてほしいと思ったので客席を煽ったんです。嬉しかったのが、ライブが終わったあとに指揮者の栗田博文さんから「ああいう姿勢で臨んでくれたのが嬉しかった」と言ってもらえたこと。ロックバンドとのコラボレーションという形だからオーケストラではできないことができるはずだから、こういう形でできてよかったって。

TAKE:とは言え、まさか東京フィルの皆さんと演奏できると思ってなかったので、非常に素晴らしい体験になりました。


「『GO!!!』はアニメの曲でもありますけど
自分たちがライブで培ってきたライブ曲」(KEIGO)

――『テイルズ オブ』シリーズの楽曲制作のときは、製作側と密にやりとりをされたとお伺いしました。

TAKE:アニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』ではufotableの近藤(光)さんと密にやりとりをさせていただいて、『テイルズ オブ ベルセリア』のときはプロデューサーさんとお話させていただきました。まずゲームのお話をいただいて、さらに1期、2期の楽曲までやらせてもらって。この間の“テイフェス”(テイルズ オブ フェスティバル2017)に出させていただいたんですけど、このシリーズの思い出が詰まったライブになりましたね。

GOT’S:そこでも『GO!!!』をやったんです。自分たちの持ち時間があったから、『GO!!!』も入れさせてもらって。お客さん的には喜んでもらえたみたいでよかったです。そういう感じでやってるから、(アニメファンに)受け入れてもらえてるのかなぁっていうのもありますね。

KEIGO:本当にありがたいですよね。『GO!!!』はアニメの曲でもありますけど、自分たちがライブで培ってきたライブ曲なので、ライブそのものを受け入れてくれる感じがして。

――やはりライブで育った曲なんですか?

KEIGO:まさに。ライブでやりつつ、さらにアイディアが出てきて、形になっていって。

TAKE:最初はあんなにコール&レスポンスはしてなかったよね。途中から「ギターソロ長いから、ウェーブしちゃう?」みたいな感じになって。来てくれた人と一緒に楽しむためにはどういう表現ができるんだろうって考えながらやっていくうちに、どんどん固まっていった曲ですね。

★インタビュー後編では制作裏話をお伺いします!

>>インタビュー記事 後編はこちら



[インタビュー・文/逆井マリ]

リリース情報
■Mini Album 「Fighting Dreamers」
 2017.06.28 (水)

※ 全6曲収録予定/初回・通常盤共に同一曲を収録
▽ 初回生産限定盤(CD+DVD)2,222円 +税

▽ 通常盤(CD)1,852円 +税

ライブ情報
■15周年突入記念 全国6大都市ツアー開催
FLOW 15th Anniversary TOUR 2017「We are still Fighting Dreamers」


2017.07.01(土) 恵比寿LIQUIDROOM
2017.07.02(日) 恵比寿LIQUIDROOM
2017.07.08(土) 札幌cube garden
2017.07.17(月・祝) 仙台CLUB JUNK BOX
2017.07.28(金) 大阪BIGCAT
2017.07.29(土) 名古屋ダイアモンドホール
2017.08.06(日) 福岡DRUM Be-1


>>FLOW OFFICIAL SITE
>>FLOW (@FLOW_official) - Twitter

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