映画
『カーズ/クロスロード』共同プロデューサーインタビュー

『カーズ/クロスロード』で届けたい想いは? 日本のアニメとの違いは? 共同プロデューサー、アンドレア・ウォーレンさんにインタビュー

 ピクサー/ディズニーの人気シリーズが再び!『カーズ』の3作品目となる待望の最新作『カーズ/クロスロード』が7月15日より日本での公開がスタートします。『カーズ』シリーズと言えば、スタジオジブリの宮崎駿監督とも親交がある製作総指揮ジョン・ラセターさんが有名です。先日行われたワールド・プレミアでもラセター監督が宮崎監督について言及するなど、お互いをリスペクトし合う姿はたびたびファンを賑わせています。

 今回、そのラセター監督とともに『カーズ/クロスロード』を作り上げた共同プロデューサーであるアンドレア・ウォーレンさんにインタビューを行うことができました。プロデューサーという視点から『カーズ/クロスロード』で届けたい想い、そして、日本とアメリカのアニメーションの違いについてもお伺いしました。

物語が届く、それが最高の瞬間
──まずは『カーズ/クロスロード』の公開を迎えた感想からお聞かせください。

アンドレア・ウォーレンさん(以下、ウォーレン):本当に嬉しいです。映画作りは何年もかかるものですし、細かいディティールにもこだわって製作してきました。こうやって世界のみなさんと作品を分かち合えるのはとてもラッキーなことです。私たちがこの作品を好きなくらい、みなさんにも好きになって欲しいと思っています。


──長い時間をかけて作っていると、作品に対して特殊な感情が生まれてくるものなのでしょうか?

ウォーレン:もちろん抱きます。製作総指揮のジョン・ラセターが言っていたように、製作スタッフたちは、まるで自分の子供を世界に送り出すような気持ちと思い入れを抱えるようになります。特に主人公のマックィーンのような、既に世界中のみなさんが愛してくださっている、みなさんの中に生きているキャラクターに、新しい冒険、新しい一章を加えられるのはすごく嬉しいことです。


──今回の『カーズ/クロスロード』では、ウォーレンさんは具体的にどのようなお仕事をされたのでしょうか?

ウォーレン:今回は共同プロデューサーということで、企画のプランニング、制作費に関すること、スタッフ編成をメインに携わりました。もちろん、究極的にはスケジュール通りに作品を仕上げることが私たちの責任です。大きなパズルを完成させるような感じで、大好きな仕事なんです。


──素人目には、これだけ大きい作品だと大変なことも多いように感じるのですが……。

ウォーレン:すごくごちゃごちゃしたプロセスがあるのは間違いありません。しかし、最高の映画にするためには、そのごちゃごちゃした部分にあえてチャレンジするべきだと思います。例えば、スケジューリングにしても、時間をかけるべきシーンが出てきて、一回決まったスケジュールが変更になることもあります。

単にリストを1番から5番まで「チェック、終わりました。チェック、終わりました」というやり方ではなく、全てのシーンを強くしていきたいんです。ストーリーも同じくクリアーにしてきたい。

だからこそ、パズルのような作業ではあります。しかし、ピクサーでは一つの仕事をやっつけ的にやらずに、一つずつ微に細にしっかり作業していくことを大切にしています。どの仕事も良い判断というのは一つではありません。たくさんの才能ある方々に囲まれながら、ピクサーというスタジオの中で、自分たちがどういう立ち位置なのかを感じながらできる仕事ですね。


──この仕事で一番楽しいと思うことは何でしょうか?

ウォーレン:ストーリーディスカッションに参加するのが大好きですね。「あーでもないこーでもない」と話している中で、誰かがパッと言ったアイデアが「あっ、それだ!」ってみんなが思う瞬間があるんです。それは物語の開発だけではなく、全部の部署で言えることです。“目からうろこ”的な瞬間と言えば良いんでしょうか。みんなが同時に同じことを感じるあの瞬間がとにかく大好きなんです。

そして、作品の世界を観客のみなさんと分かち合うときに感じる感動と報われた気持ちは何物にも代えがたいものです。マックィーンというキャラクターは、作品を見る人にとって意味を持つキャラクターなんです。マックィーンを見ていると、自分の人生の中で何かをなぞらえることができたり、自分でも感じていること苦しんでいることを投影することができたりするんです。

また、子供たちから手紙をもらうこともあります。「キャラクターを通してコミュニケーションができた」という感動する内容もいただきました。どんなに長時間働いても、どんなに大変だった1日でも、どんなに夜中仕事をしていても、みなさんの人生に届く、共感することができるキャラクターや物語を生み出し、分かち合うことができたときに、疲れが全部吹き飛んでしまうんです。それが最高の瞬間です。

日本のアニメの好きなところは「何でもあり」なところ
──ちなみに、日本のアニメはお好きですか?

ウォーレン:大好きです。「ピクサー映画で好きな作品は何ですか?」と質問されることは多いんですが、実は日本のアニメーションでは『となりのトトロ』が好きなんです。考え抜きで答えられるくらい好きです。ジブリにも実際に行ったことがあるんですよ。

ジブリの作品はかなりの数を見ているんですが、他の日本のアニメーションはまだまだ勉強不足です。これからどんどん経験して、見ていきたいと思っています。ただ、私は小さな子供がいるので、『ポケットモンスター』とかにハマってきているんですよ。子供たちと一緒に日本のアニメーションを学んでいけることは素晴らしいことですね。

今回の来日でも、「私を置いて東京に行くなんて!」と娘がすごく怒って(笑)。東京に行くことは言ってなかったけど、バレちゃって。「東京に行くの!? ママ!?」とせがまれました。それで「え〜っと……」と(笑)。いつの日か連れてきてあげたいですね。


──是非、ポケモンセンターに(笑)。

ウォーレン:倒れるくらい、気絶するくらいに喜ぶことでしょう(笑)。


──日本のアニメ作品もいくつかご覧になっているようですが、ピクサーを含めたアメリカのアニメーションと日本のアニメーションは、何が違うと思いますか?

ウォーレン:何だろうな……良い質問ですね。スタイルが違うけれど、両方ともすごく良質なものです。宮崎駿監督の作品を見ていると、発想力が独特だと思います。私もマジカルな部分は好きなトピックスです。ピクサーの監督たちも宮崎さんの作品をとても好きなのは、みなさんもよくご存じだと思います。宮崎作品で感じるような資質をピクサー作品に取り込もうとすることもとても楽しい作業ですね。

そして、特に日本のアニメーションで一番好きなところは「何でもあり」なところ。普通に道を歩いていて、想像してもいなかったようなクリーチャーが突然現れたり、予測不可能なことが何でも起こりますよね。真の冒険、アドベンチャーがあるんです。

人生自体がとてもマジカルなもので、いろんなアニメーションがそれを美しく捉えています。人生を過ごす中で、私たちはたくさんのことを感じますが、日本のアニメーションは「感じること」をとても美しく見せていると思いますね。


──そんなフィールドが違う日本で『カーズ/クロスロード』が公開されることになります。日本で公開される意味合いは何だと思いますか?

ウォーレン:やはりキャラクターに共感していただきたいと思っています。みなさんが自分の人生で一度は経験したことがあるようなものをキャラクターに見い出していただきたいです。新キャラクターのクルーズ・ラミレスが、かつての心が折れた瞬間のことを話している時、作品を見ているみなさんも自分の居場所探しについて考えることだろうと思います。

マックィーンに関しても、「じゃあ次は?」という未来のことに、どう向き合っていけばいいのかと悩んでいる姿は、みなさんが経験される、あるいは経験されたことがあると思います。そうやって全然違う人生を歩んできているけど、何か共感できるもの、何か重ねられるところを、このキャラクターたちに見出してしていただけたら嬉しいですね。


──ありがとうございました。


[インタビュー/石橋悠]


1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。

この記事をかいた人

石橋悠
1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。

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『カーズ/クロスロード』公開情報

タイトル:『カーズ/クロスロード』
公開表記:7月15日(土) 公開
配給表記:ウォルト・ディズニー・ジャパン

『カーズ/クロスロード』トレーラー


前2作を監督したジョン・ラセター氏も太鼓判
ジョン・ラセター氏:ライトニング・マックィーンは最高だ。物語はとても感動的で『カーズ』に少し似ていて、さらに深い感情に入り込んでいくものなんだ。『カーズ/クロスロード』はとても特別なストーリーで、感動的で、マックィーンとドック・ハドソンの関係や、彼のドック・ハドソンの思い出も描かれているんだ。

>>『カーズ/クロスロード』ディズニー公式サイト

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