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- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
日本が生み出した特撮文化を牽引する代表作「スーパー戦隊」シリーズ。ついに2017年7月15日より、アメリカ版『恐竜戦隊ジュウレンジャー』として放送された『パワーレンジャー』がハリウッド映画として日本に凱旋します。
『パワーレンジャー』はアメリカだけでなく、中南米、ヨーロッパ、アジア、中東でも放送され、世界中に特撮パワーを見せつけました。そしてもちろん、日本でも。
日本での公開で注目なのは、吹替えを担当する豪華声優陣です。今回、アニメイトタイムズでは、ザック/ブラック・レンジャー役の鈴木達央さんにインタビューを行うことができました。鈴木さんは何かと特撮に縁があることでも有名。特撮ファンも気になるあのことについてもお伺いしました。
俳優、声優として関わり続ける「スーパー戦隊」シリーズ
──では、『パワーレンジャー』をご覧になった感想をお願いします。
鈴木:5人それぞれに焦点が当たりつつ、なおかつ変身するまでのプロセスをすごく大事に描いているなと感じました。変身する力を持ったとしても、それを扱うには自分なりの鍛錬やコントロールが必要だというところにも焦点が当てられている作品なので、彼らがヒーローとしての一歩を歩む話なんだなと感じました。彼らは、その力を自分たちでどうしていくべきかを大なり小なり考えていきます。
作中では、“ティーンエイジャー”っていう言葉が本当によく出てくるんですけど、それがすごく当てはまっているなと感じます。10代だからできる無茶や、向こう見ずな部分であったり、どこか地に足がついていないような雰囲気だったり、10代らしさがすごく出ているなと思いました。10代独特の、行動に対する理由が全てついているわけではなく、まだその理由を探しているような5人の姿が面白いなと思いました。
──鈴木さんは『特命戦隊ゴーバスターズ』(※1)のウサダ・レタス 役、『帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズVS動物戦隊ゴーバスターズ』(※2)で道明寺アツシ/グリーンヒポポタマス 役、などで声優、俳優ともに「スーパー戦隊」シリーズに出演していますね。ファンからは「グリーンヒポポタマスの人が帰ってきた!」との声もありました(笑)。
鈴木:(笑)。知っていただいている方にはそういう感想を持っていただけるかもしれません。『帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズVS動物戦隊ゴーバスターズ』は他にも藤原啓治さん(チダ・ニック 役)や玄田哲章さん(ゴリサキ・バナナ 役)も俳優で出演していらっしゃったり、本当にご褒美企画のような状態でした。
チームの仲がすごく良かったし、僕が他のレンジャーのキャストとも仲が良かったのもあって、「ちょっと変身してみない?」って提案されたんですよ。ありがたい現場に参加させていただきましたね。
そして今回もザック/ブラック・レンジャーとして、吹替えの演者として変身ができるのはすごく嬉しかったですね。以前、『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』(※3)でキット・テイラー/仮面ライダードラゴンナイトの吹替えをやらせていただいて、こうしてレンジャーでも変身できることってなかなかないですよね。だんだんコンプリートし始めてきたなっていうのはあります(笑)。
本当に色々やらせていただいているので、チームやスタッフに毎回恵まれているんだなと感じています。今回もブラック・レンジャーにキャスティングしていただいて、自分がどういう立ち位置でいなきゃいけないのか、他のキャストさんを見ていたり、ザック役のルディ・リンさんのお芝居を見ていると、自ずと見えてきたりして。毎回毎回、良い方々に恵まれながら東映さんとお仕事させていただいているので、感謝しかないですね。
※1:「スーパー戦隊」シリーズ、第36作品。スパイをモチーフにしている。鈴木さんはウサギ型のロボットであるウサダ・レタスの声を担当した。
※2:『特命戦隊ゴーバスターズ』の特別編のVシネマ。鈴木さんは道明寺アツシ/グリーンヒポポタマス 役として、俳優で出演。変身シーンもファンの間で話題に。
※3:平成仮面ライダーシリーズの3作品目となる『仮面ライダー龍騎』のアメリカ版ローカライズ作品。鈴木さんの他に、遊佐浩二さん、杉田智和さん、梶裕貴さん、櫻井孝宏さんなども吹替えとして参加している。
──ご自身の立ち位置は、具体的にはどういうものと考えていますか?
鈴木:僕らは職業声優として声一本で色々と演技をさせていただいています。ライダーの吹替えをやった時もそうだったんですけど、声だけではなく体を動かして演技をする俳優の方々と一緒にマイク前に立つことがあるんです。我々が体を動かすことに特化していないように、俳優の方々は声だけで何かをすることに特化していないので、お互いにどういう風に調整していくかを考えています。
変にやりすぎて自分が抜きん出てしまっていると、意外とそこが面白く聞こえなかったりするので、いかに普通に喋るかに焦点を当てています。吹替えは、字幕で伝えきれないことをセリフ量で増やすこともできるので、声を聴いている方々にいかに理解していただけるかも大事なポイントです。そのために普通に喋りつつ、ちゃんと相手に伝える、なおかつ観ている人にも言葉を伝えてあげるということを意識しています。なるべく言葉が消えないようにしつつ、ちゃんと皆とブレンドするように心掛けていますね。
今回はバラバラに収録したんですけど、日本でのアフレコは全員で揃って録ることも多いんですよ。「なぜ一緒に録るのか?」ということを紐解いていくと、相手から来たものをどう受け取るのかとか、その中でどういう風に自分が動いたらいいのか、と答えが出てくるんです。
試写でも仕事モードに入っちゃう!
──今回のザック/ブラックレンジャーは、ワイルドでアウトローだけど裏では優しいといった部分が、まさに鈴木さんにハマり役だったと思います。
鈴木:本当ですか? 嬉しいです(笑)。
──演じてみていかがでしたか?
鈴木:楽しかったです。ルディ・リンさん自体が、表現ひとつひとつをとても丁寧に演じられているのが画面越しからも分かったので、それをしっかり受け取ってあげたいなと思いました。また、彼はすごく動ける俳優でもあるので、アクション、機敏さや力強さを、しっかり拾えたらいいなと思いつつ演じましたね。すごく真っ直ぐな方なんだなと思いながらフィルムを見させていただきました。
その中でザックは、ちょっとお調子者だったりワイルドだったりして。そうは言ってもティーンエイジャーなので、地に足がついていない感をどう出せばいいのかなと考えました。すごく自分勝手なところも見えたりするので、あまり自分勝手に見え過ぎないように調整したりしています。お母さんと一緒にいる優しさが見えるシーンも描かれるので、良い意味で差を出しつつ、いかに融合させるかを考えました。
いつも俳優の方の呼吸みたいなものをよく見るようにしています。アニメーションと違って、元に演じていらっしゃる役者の方がちゃんと息をしているので、その呼吸を盗むようにしています。
──呼吸というと、間などでしょうか?
鈴木:そうですね。間であったりその人が息をしたり、叫んだり、体の一挙手一投足で何をしているのかを確認して、そこに自分を当てはめていくんです。俳優の演技を自分が追ってあげる、なぞってあげる、そしてそれにシンクロしてあげるっていうことを考えると、やっぱり呼吸が一番大事かなと思います。
ルディ・リンさんの芝居は真っ直ぐ故に、よりそれを誇張することはできるんですけど、誇張しなくても大丈夫だなと思うところもありました。完成品を試写で見た時に、もう少しそのあたりは抑えても彼の芝居で補完されるなとも思ったので、また演じる機会があったら挑戦してみたいですね。
──試写を見ながらの分析って、どのようなことを考えているのでしょうか?
鈴木:「あぁここ、言葉が消えちゃったなぁ」とか、「ここは立てて良かったなぁ」とか、ですかね。僕達がアフレコをした時って、画が白黒なので表情がつぶれちゃってる時もあるんです。だから、「ここ少し表情乗せすぎたな」って、細かい微調整みたいなことを自分の中で思っちゃいましたね。試写なのに観てるとどうしても仕事モードになっちゃって(笑)。
自分で自分に対してセルフディレクションじゃないですけど、「ここちょっと甘かったな」「ここはハマったな」「もうちょっと相手を気にした方がよかったな」って考えながら見返しています。そういう風に細かく分析してしまいますね。
──今回の映画で好きなシーンはどこですか?
鈴木:5人が変身して初めて敵と相対した時の揃った5人を見た時は、「やっぱり『パワーレンジャー』だな」と思いました。「これがレンジャーの強みだよな」って。5人がカラフルじゃないですか。それがパッケージで見るのと違って、映像でしっかり動いているのを観ると、レンジャー感あるなって思いながら観ていましたね。そこはやっぱり『パワーレンジャー』独自のカラーリングというか、作品としてのカラーがよく出ているなと思います。
「スーパー戦隊」シリーズの魅力は色
──先程もお伺いしたように、鈴木さんは様々な形で「スーパー戦隊」シリーズに関わってきました。シリーズにはどんなイメージをお持ちですか?
鈴木:小さなお子さん、お父さんお母さんの世代、おじいちゃんおばあちゃんまで、本当にすごく幅広い方々の目に留まっている作品だなって毎回思います。それは本当にすごいことだなと思います。
普通の作品だったら観ている層がどこなのかを絞りながら攻めるものですけど、子どもっていう入り口があって、一緒に見る大人やおじいちゃんおばあちゃんでも、ちゃんと楽しめる作品になっているんです。その面白さってこの「スーパー戦隊」シリーズ独特の魅力なんだと思います。子ども向けなようで、子ども向けじゃなかったり、その逆もしかりであったり。毎回毎回形を変えて、様々な方々にエンターテインメントを提供している作品なんだなと思います。
──『スーパー戦隊』シリーズがこれほどまでに愛される理由は何だと思いますか?
鈴木:うーん、なんでしょうね……個人的には色なのかなと思っています。色って視覚的にパッと入ってくるので、いろいろな色が動いてるって、たぶんどんな小さい子が観ていても面白いのかなと。一個の色がいっぱい動いていても子どもってすぐ飽きるじゃないですか。でもたくさんの色がひしめき合っていろんなことをやっていると、ドラマが分からなくても楽しみやすいじゃないですか。そういう入り口があるからこそ面白いのかなと思います。
──では、最後に『パワーレンジャー』を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
鈴木:彼らが一歩一歩パワーレンジャーになっていくまでの過程を描いている作品なので、その一歩を堪能しつつ、なおかつ変身した時の彼らの活躍っぷりを観てください。そして映画として生まれ変わった『パワーレンジャー』の魅力もまたふんだんに盛り込まれています。お子さんと、または友達と、あるいは一人でも楽しめる作品になっておりますので、ぜひぜひご覧になっていただけたら嬉しいなと思っております。よろしくお願いします。
[インタビュー/石橋悠]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。
≪Introduction≫
日米ハイブリッドヒーロー、誕生。日本人は知らない。
20年以上も昔から、アメリカで闘い続けている“ジャパニーズ・ヒーロー”がいることを。
40年以上に渡り、日本を守ってきた“スーパー戦隊”。多くの人々が幼少時代に憧れては卒業し、また新たな世代の憧れの的になる終わることなきヒーロー。絶えず日本人のDNAに刻まれ、受け継がれてきたその歴史・その魂は遠い国アメリカに渡り、
20年以上もの間、人知れず戦い続けていた。それこそが“パワーレンジャー”。
今、映画大国アメリカ・ハリウッドで、日本のヒーローが生まれ変わる。“誰もが知っているヒーロー”が、“誰も見たことがないヒーロー”として生まれ変わる。本作は“スーパー戦隊”であって、”スーパー戦隊”ではない。
しかしそれは、日本人に確実に刻み込まれている、“レッド”への憧れの記憶を呼び起こす。
2017年夏、日本人は思い出す。“レッド”への憧憬を、永遠のヒーローの存在を。
総製作費120億円。
ハリウッドで培われた技術と経験が、日本のヒーローに注がれる。
『パワーレンジャー』 ここに覚醒――。
【監督】ディーン・イズラライト
【脚本】ジョン・ゲイティンズ(『フライト』『キングコング: 髑髏島の巨神』『リアル・スティール』)、アシュリー・ミラー『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』『マイティ・ソー』
【音楽】ブライアン・タイラー(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』「ワイルド・スピード」シリーズ)
【製作総指揮】アリソン・シェアマー(『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『ハンガー・ゲーム』『シンデレラ』)、ブレント・オコナー(『グッド・ウィル・ハンティング』、『ジュマンジ』)
【キャスト】
デイカー・モンゴメリー/ナオミ・スコット/RJ・サイラー/ベッキー・G/ルディ・リン/ビル・ヘイダー(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』)/ブライアン・クランストン(「ブレイキング・バッド」『GODZILLA』『トータル・リコール』)エリザベス・バンクス(『スパイダーマン』、『ピッチ・パーフェクト』シリーズ)
【吹き替えキャスト】
勝地涼/広瀬アリス/杉田智和/水樹奈々/鈴木達央/沢城みゆき/山里亮太/古田新太
>>映画「パワーレンジャー」公式サイト
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