『プリズマ☆イリヤ』と共に成長してきたからこそ届けられる繊細で力強いうた──ChouCho 15thシングルインタビュー
2017年8月26日に公開される『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』の主題歌を彩るのは、実力派シンガー・ChouChoさん。同日に発売される初の両A面シングルには、同作の主題歌2曲が収録されており、両曲ともChouChoさん自身が作詞・作曲を担当されています。
ChouChoさんはアニメシリーズ『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』OP主題歌『starlog』、『プリズマ☆イリヤ ドライ!!』のOP主題歌『Asterism』も歌ってきました。1曲目のタイトル=『kaleidoscope』は「万華鏡」「絶えず変化するもの」の意味。キャラクターの心の成長を誰よりも近くで見守り、そして共に進化してきた彼女だからこそ表現できる言葉とサウンドが今作で光っています。どんな想いを込めて制作されたのかChouChoさんに訊きました。
――これまでのキャリアの中でも『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』(以下『プリズマ☆イリヤ』)は思い出深い作品の1つだと思うのですが、その劇場作品を歌うことが決まった時はどんな気持ちでしたか?
ChouChoさん(以下、ChouCho):そうですね。 1期と4期の主題歌を担当させていただいたんですが、アニメシリーズでイリヤはどんどん成長していったんですよね。私自身も『プリズマ☆イリヤ』と共に成長してきた感じがあって、それを作詞と歌で表現してきました。今回は劇場版を書かせていただけることになって、作曲もできることになって。イリヤが成長しているからこそ出てきた表現が今回の歌詞のなかにいっぱいあります。イリヤに力強い言葉を引き出してもらえました。
――イリヤとそこまで共鳴する理由はなんだと思います?
ChouCho:イリヤも最初は本当に普通の女の子で。ルビー、美遊と出会って、守りたいものができて、試練を乗り越えてどんどん成長していく。私もニコニコ動画に投稿していたときはただ歌を歌うことが好きな人だったので。そこからたくさんの人に歌を聴いていただける職業につくことができたんですけど……デビューして1年目で『プリズマ☆イリヤ』と出会って、最初からイリヤを見守っているので、イリヤが私と同調しているわけではなく、私がすごくイリヤのなかに入り込んでしまうというか。……思い入れが強いですね。
――先ほどおっしゃっていた「イリヤが成長しているからこそ出てきた表現」という部分について、もう少し詳しくお伺いしたいです。
ChouCho:第1期ではまだまだ子どもで、弱い部分や逃げていた部分があったと思うんですけど、4期では美遊と離れ離れになってしまって。必ず探しに行くからねという気持ちを(4期主題歌の)『Asterism』の歌詞で表現したんです。そしてまた手を握ることができて。そこからの物語を『kaleidoscope』では書きたいなと思っていました。一度掴んだ手をもう二度と離さないという2人の絆、イリヤの成長した心を表現したかったんです。
――それを表現するためにも強い言葉が必要だったというか。
ChouCho:そうですね。いろいろな試練があったからこそ、イリヤのなかで強い気持ちが生まれていて。イリヤの強い気持ちに引っ張られて、私も歌詞を書くことができました。そういう(強い)言葉がふさわしい女性なんじゃないかなと。
――それは<繋いだこの手をもう二度と離さないと>という歌詞などから顕著に伝わってきますね。
ChouCho:そうですね。あと<涙も痛みも運命さえも超えていく>というところとか。世界の平和か美遊かを選ばなきゃいけないときに、どちらも選ぶという答えを出せたイリヤはすごく強い心の持ち主で、運命さえも越えていく力を持っている女の子だと思っているんです。だからそれを歌詞で表したいなと。
「作詞作曲で主題歌を歌うことが初めてなので、想いが強くて」
――制作側から要望みたいなものはあったのでしょうか?
ChouCho:劇場版は過去のお話ということもあって「今までのストーリーを踏まえた上で第一期に繋がるような作品にして欲しい」とお願いされました。『starlog』に繋がるイメージだったので、『starlog』の歌詞に含まれている『kaleidoscope』というワードをタイトルにしたいってことをそこで決めて。
――それで歌詞のなかにも星にまつわるワードも散りばめられているんですね。
ChouCho:そうですね。星の世界をそこでリンクさせたいなという気持ちがあって。そこの繋がりも楽しんでほしいです。
――曲の制作はどのように行っていったのでしょうか?
ChouCho:曲を先に作りました。曲を作りながらも、言葉が浮かんでメロディに乗せてる時もありました。でも基本的には歌詞を後からつけましたね。イリヤの成長、2人の絆をテーマに曲を作ろうということは決めていたので、そのテーマを色々な言葉で膨らませていきました。
――歌い方などの音楽的な面も含めて新しい挑戦を感じたんですが、そのあたりはどうですか?
ChouCho:歌い方に関しても「強さ」を意識しています。でもイリヤは強いだけの女の子ではないのでそういったところも表現したく、柔らかさや繊細さを意識して歌ったところもあります。
――その繊細さを際立てるかのようなコーラスと壮大なストリングスがとても美しくて。
ChouCho:ストリングスは『starlog』、『Asterism』でもストリンスグアレンジをしてくださった川本(新)さんにお願いしていて。劇場版ということでスケール感を出したいと思ってたんです。『プリズマ☆イリヤ』の世界観は繊細な部分とキラキラした部分があって、アレンジャーの村山☆潤さんにそういうイメージを伝えて、それを具現化していただきました。イメージ以上のものができたなと思っています。
――疾走感のあるキャッチーな曲なんですが、音程は難しい曲ですよね。レコーディングはいかがでしたか?
ChouCho:そうなんです(笑)。自分で作ったメロディなのに難しくて。でも表現したいことは決まっていたので、すごく苦労したという感じではないです。コーラスをたくさん入れたので、そこには時間をかけました。スケールの大きな曲にしたかったということもありますし、村山さんがコーラスワークにこだわる方なので、「ここも」「ここも」みたいな感じでどんどん増えていって(笑)。結果的にいいものができました。
――特に気に入っているフレーズはありますか?
ChouCho:1番では<重なる心はやがて絆へと変わっていくんだね>と歌っているのですが、2番では<確かな絆はやがて暗闇を照らしていくんだね>に変化していくんです。これがまさに『プリズマ☆イリヤ』を表現した言葉ですね。2人がいたからどんな道でも切り開くことができた。そして、その絆が自分たちの世界を照らしていく──そんな絆を感じる作品なので、そこはすごく気に入っています。これまであったものを肯定していくような強い思いを込めました。
――改めて『kaleidoscope』を聴かれたときはどんな印象でしたか?
ChouCho:自分の作詞作曲で主題歌を歌うことが初めてなので、想い入れが強くて。いろいろなアーティスト、ミュージシャンの方に演奏していただいて、アレンジしていただいて、1つの作品になったので……完成したものを聴いたときは本当に感動しました。これが映画で流れているのを観たときにまた感動するんだろうなって思ってます。
(『薄紅の月』は)「大きな愛で、大きな心を歌で表現しました」
――もう一方の『薄紅の月』に関してはいかがでしょうか?
ChouCho:こちらも劇場版主題歌なのですが、もともと、特定のシーンをイメージして作ってくださいというご依頼をいただいて、台本をじっくり読みながら情景を想像して書いていった作品です。
――『kaleidoscope』とはまた違った視点と感情の曲ですよね。
ChouCho:士郎の視点で書いたんです。士郎が美遊と出会ってこころの中が変化していく。その繊細な気持ちを表現したくて、曲と歌詞を書きました。
――それで<初めて見つけ出したんだ 小さな宝物>という言葉が登場するんですね。
ChouCho:そうですね。劇場版を見ていただけると分かるんですけど、すごく切ない気持ちになるストーリーで。士郎にとって美遊は初めての特別な存在だけど、立場上ずっと一緒にいることはできないし…。でも、ただまっすぐ守りたいというか……。
ChouCho:ああ、本当にそうですね。実際の兄弟でもなく、難しい立ち位置で、それを表現することもすごく難しいんですけど、大きな愛を、大きな心を歌で表現しました。
――静かなストリングスアレンジの中で、歌から始まる表現方法にもこだわりを感じました。
ChouCho:広い情景を思い浮かべて、そこにポツンと立ってて……「ここから始まる」という気持ちを表現したかったんです。それは歌から始めることでいちばん伝わるのかなって。静かなんですけど、感情はしっかり表現したいなと思っていました。
「自分にとって歌うことが一番の表現方法」
――キャラクターの気持ちに寄り添ってはいるんですけど、内容を知らない人にも響く歌詞ですよね。
ChouCho:そうですね。キャラクターの視点で歌詞を書いてはいるんですけど、キャラクターソングでは決してないので。聴いた人がどういう印象を持つかは自由だと思ってて、映画を観る人しか聴いてはいけない曲じゃないというか。狭くならないようにはいつも心がけています。
――ChouChoさんの心境に重なる言葉もいくつもあるんだろうなと。例えば<生まれたばかりの光がずっとずっと輝くように>という歌詞からは、歌に対する覚悟も感じて。
ChouCho:ああ、そうですね。私のなかにある気持ちはいろいろなところに表れているんじゃないかなって思います。去年でビュー5周年を迎えて、そこで1つ区切りを迎えることができたんですけど……自分にとって歌うことが一番の表現方法なんだなって再確認したというか。そこで1つステップアップすることができたなと5周年のツアーを終えて感じたんです。そういう覚悟も自然と楽曲には出てるんじゃないかなと思います。
――ところで、先ほど映画の台本を読まれたというお話をされていましたが、その時はどんな印象でしたか?
ChouCho:台本がとにかく面白くて。すごくシリアスなストーリーなので、一気に読めました。映像になったらさらにのめり込んで観てしまうんじゃないかなと。劇場で早く観たいですね。本当に楽しみです。
「5年の間にイリヤも私も成長して、その想いをすべて込めた」
――作詞作曲としては初となるシングルの両A面、それが『プリズマ☆イリヤ』の主題歌と、ChouChoさんにとっても、ファンにとっても思い入れの深いシングルですよね。
ChouCho:アルバムではちょっとずつ作曲はしていたんですけど、いつか作詞作曲で主題歌を歌いたいなと思っていたんです。それがずっと関わらせていただいている『プリズマ☆イリヤ』で叶って、言葉で言い表せないほど嬉しいです。
――このバックジャケットはイリヤちゃんを意識したんですか? すごく可愛いです。
ChouCho:はい。今までピンク色の衣装は着たことがなくて、青系や白が多かったんですけど、「薄紅」というワードも入ってますし、イリヤもピンクの衣装ですし……ここでイリヤとリンク感を出していきたいなって。でもプライベートでもピンクは着ることがないので、最初は少し照れくさかったです(笑)。
実際に写真になると、透け感もあって。イリヤの繊細さのようなものがジャケット写真から表れているんじゃないかなって思っています。こだわってたくさんの方に協力して作っていただいたので、ぜひジャケットも含めて楽しんでいただきたいです。
――今後のライブでどんな風に表現されるのかが楽しみです。
ChouCho:作品をリリースしたあとにリリースイベントを控えているんです。この2曲が全然違う雰囲気なので、リリースイベントでお届けできることを自分自身も楽しみにしています。
――ライブに関しても「伝えたい」という気持ちは、どんどん強くなっていますか?
ChouCho:そうですね。最初の頃は自分の想いを伝えていくことがよく分かっていなくて。与えられた楽曲を自分なりに表現してきたんですけど、年数を重ねるごとに伝えたいという気持ちが強くなってきてます。先日入院したこともあって、歌える場があること、待ってくれている人がいることのありがたさを強く感じています。もっと1つ1つのことを大事にしていきたいなって。
――映画の公開日にシングルがリリースになりますが、そこに向けてメッセージをいただければ幸いです。
ChouCho:『プリズマ☆イリヤ』に関わらせていただいて5年目になるんですけど、5年の間にイリヤも私も成長して、その想いをすべて込めた楽曲になります。ぜひ映画も観ていただきたいですし、この楽曲も繰り返し聴いていただければと思います。
――ありがとうございました!
[インタビュー・文/逆井マリ]
リリース情報
■ChouCho 15th single「kaleidoscope」/「薄紅の月」
『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』主題歌
【アニメイトオンライン】【主題歌】劇場版 Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い 主題歌「kaleidoscope」/ChouCho
発売日:2017年8月26日(土)
品番/価格 :LACM-14656 / 1,200円(税別)
発売元:株式会社ランティス
販売元:バンダイビジュアル株式会社
【INDEX】
1.kaleidoscope(『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』主題歌)
2.薄紅の月(『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』主題歌)
3.kaleidoscope(off vocal)
4.薄紅の月(off vocal)
>>ChouCho公式ホームページ
>>『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』公式ホームページ