映画『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』レントン役・三瓶由布子さん×エウレカ役・名塚佳織さん声優対談「新たなものとして作り上げられたのではないかと感じています」
9月16日から『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』が全国ロードショー! スタイリッシュな映像と高揚感を掻き立てるダンスミュージック。いろいろな意味で画期的で革新的だった12年前のTVシリーズに、当時の『エウレカセブン』らしさを残したまま、新規映像をたっぷり加えて再構築したものが本作です。
アニメイトタイムズでは公開を前に、まずは主人公・レントン・ビームス(レントン・サーストン)役の三瓶由布子さんと、ヒロイン・エウレカ役の名塚佳織さんに、当時の記憶と今作への思いを語っていただきました。そして次回はレントンの父・アドロック役で新たに出演する古谷 徹さんも登場! 12年前からのファンも、この機会に『エウレカセブン』に触れようという方も、ぜひお楽しみください。
――エウレカセブンが劇場版になると聞いたときは、いかがでしたか?
三瓶由布子さん(以下、三瓶):やはり求められているから劇場版になったと思うので、エウレカセブンを愛してくださっているみなさんへの感謝の気持ちが大きかったです。
それに劇場でやるという発表があってから、いろんな方から反響もいただきまして。見てましたっていうのを含めて、これで育ちましたとか。これで育ったらまずいんじゃないかなって思ったんですけど(笑)、キャラクターだけでなく音楽的な部分でも、当時の主に男の子たちには刺激を与えていたと思いますね。
名塚佳織さん(以下、名塚):私も音楽はもちろん、ファッションに興味がある方から見ていましたという話をよく聞きます。音楽関係、ファッション関係、あとダンサーの方も見てくれてたり。
――当時はサブカル好きの人は結構夢中になって見ていたと思います。わりと重い内容でしたけど(笑)。
三瓶:よくあれを朝の7時からやってたな!って(笑)。
名塚:途中サッカー回があって、「これが最後の楽しいエピソードだからね」って当時言われたのをすごく覚えてます(笑)。
三瓶:「ここでそれ挟む?」って感じだったよね。
――これを見た方は、朝7時にTVアニメとして放送していたことが信じられないでしょうね(笑)。名塚さんは劇場版の話を聞いたときは、どうでしたか?
名塚:話をいただいたときはただただ嬉しかったです。しかし、これだけ時間が経って、改めて同じキャラクターで新たな作品を作るということで、たぶんキャスト、スタッフともにそれぞれ不安はあったと思うんです。でもアフレコが始まったら、本当に新たなものとして収録することができました。
エウレカセブンのファンの方たちがどう受け止めてくださるかは未知数ですけど、新しいエウレカセブンを作れたんじゃないかなと思っています。
――TVシリーズでの印象や思い出はありますか?
三瓶:今回の劇場版では多くなかったんですけど、テレビのときはすごくキャストの人数が多かったんですよ。だから当時は結構ガヤガヤしてたというか。
名塚:確かに! スタジオでギュッとしてて。あとやっぱりゲッコーステイトのメンバーが常にいたので、本当にアニメのまんまの感じで収録していたというか。ハップ(CV:山口太郎)がいつもいじられて、藤原啓治さん(※TVシリーズのホランド役。本作では森川智之)がまとめてくれて、みたいな感じはあったね。
三瓶:そうだね。年齢差がキャラクターに近かったので、そこはキャラクターとの関係性とも似てくるというか。
名塚:うんうん。みんなそれぞれ等身大のキャラクターをやらせていただいたので、家族みたいな感じでした。
三瓶:初めての主役だったので、すごく緊張してたけど、今回の劇場版はあれから12年経っているので、自分もやっぱりいろいろ経験して成長している部分もあるわけです。でも改めてレントンとエウレカに対峙したとき、当時と違う緊張というかプレッシャーはありましたね。
――ちなみにお二人の絆は、あの時からずっと続いているとか?
名塚:むしろ最近のほうがよく会うよね?
三瓶:確かに。ちょっと生活環境が似ていたりするからね。
名塚:当時はお互い20歳くらいで学生だったこともあって。
三瓶:お酒を飲みに行くこともなかったもんね。
名塚:そうそう。大学に通っていて、そこでの友達もいたり、現場で週に1度しか会わない感じだったから。会えば話すけどプライベートでも会って遊ぶかというと、そうでもなかったかな。
だから逆に今のほうが、大人になってからのほうが時間の使い方も分かってきて、気軽に「今日お茶する?」みたいな感じで誘えたりして。だから今のほうがプライベートで会ってる気がするね。
三瓶:実はね。
――当時のアニメファンからすると、嬉しいです(笑)。では、この作品ならではの大変さと言うと?
三瓶:レントンは、いつも知らない世界、自分の力ではどうにもならない世界に行って打ちのめされるんです。昔は体当りして演じていた部分もあったけど、今だとそういうところが分かってしまう。だから前に進んでぶつかると「ほらね」って思うんです(笑)。でもそこは少年として、レントンと一緒に痛さを経験していかなくちゃいけないなって。
それと今回の映画の構成として、レントンのモノローグが多かったんです。ピックアップされているところが家出をしているレントンの部分だったので、気持ちとしてはちょっと腐っているので、演じている自分としてもしんどかったですね。あとは単純にセリフの量の多さもあったので、気持ちも体力も大変でした(笑)。
――劇場版の内容は、総監督の京田知己さんから説明されていたんですか?
名塚:台本を頂く前に、ご飯を食べに行ったんです。そこでレントンが家出をしている話になるというのと、キャラクターは同じだけど関係性がちょっと違うと、少し教えてもらいました。あと3部作で、最初はレントンのお話になるというのを聞いたんです。
三瓶:レントンの冒頭部分だね。
名塚:すっごい冒頭だね。
三瓶:あとアフレコのときなんですけど、テストで“暗い”って言われました。さっきも話したみたいに、経験してきた分も乗せてしまって。
名塚:大人になっちゃったんだよね。
三瓶:うん。大人すぎるって。噛み砕きすぎて、受け止めすぎているというか。そういう部分で暗いと言われたんだと思います。
名塚:私はレントンに出会う前のエウレカがメインだったので、とにかく感情をまだ表に出せない、出し方を知らない、自分自身を理解できてないという部分だったんです。なので声質は幼めでいてほしいんだけど、とにかく起伏を抑えてほしいと。
でも、戦うシーンでは声を張ってほしいと言われたので(笑)、ちょっと迷いつつ。あまり張っちゃうと感情がある感じに聞こえちゃうから、抑えながらマイクに乗るようにというか。気持ちの部分というよりは技術的な部分で調整しました。
あとはアドロック・サーストン(CV:古谷徹)とのやり取りがメインだったので、そこは密に。感情は持っていないけど、自分では気づいていない部分でアドロックをすごく信頼していたので、引き離されたところでは、少し感情を出そうか、みたいな。そういう細かい調整をしていった記憶があります。
『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を語る
――演じていて印象的だったシーンやセリフはありますか?
名塚:インパクト含めて、レントンの冒頭のナレーション(笑)。レントンの登場のときの、いい感じに腐ってる感じが大好きすぎて! 当時と、こっ恥ずかしさが変わってないんですよね(笑)。
三瓶:このくらいの年齢の子って、すごくポエマーになるよね(笑)。
名塚:そう、超ポエマーな出だし! またそこにかかっている音楽もすごく良いんですよ! 音楽とレントンの感じと、なぜか犬に追いかけられてる冒頭が大好きですね(笑)。
あとはアドロックの最後のシーンですね。「これをレントンに見せてやりたかった」
と言うシーンがあるんですけど、あそこの古谷さんがとても素敵で、すごく印象に残ってます。
三瓶:私は、アドロックが冒頭でゲロを吐くシーンで笑いましたね。別に笑うところではないと思うし、京田さんに聞いたら半分真面目で、半分狙っていたらしいんです。ゲロと言ったらレントンなので、アドロックもゲロ吐いた!と思って、そこは嬉しかったです。
――血は争えませんでしたね(笑)。
三瓶:あとは、私もアドロックの最後のシーンですね。「レントンに見せてやりたかった」って言うシーン。あれがあることによって、そのあとレントンがチャールズの機体(KLF)に乗せてもらって世界の美しさを見せるシーンが、TVシリーズのときよりも心に刺さるなぁって思いました。
当時アニメを見ていたときから本当に美しいと思っていたんですけど、そのシーン含めて、言葉と絵にすごく重みがあると思いますし、エウレカセブンの世界全体が、戦闘をしていても何をしていても美しかったりするんですよね。
――今回、ヴォダラクの話など、宗教の問題、テロの問題も関わってくるので、内容的にはちょっとシリアスな話が多めでしたね。
三瓶:先ほど名塚さんが言ってくれたみたいに絵と音のギャップがあったりして、見終わったあと「あ、エウレカセブンだ」って思ったんですよね。それが嬉しくもあり、またチャレンジなものを作ったなっていう気もしてます(笑)。
名塚:確かに、ただただ前向きで明るいだけの作品ではないですね。社会問題や疑問に思う部分をぶつけている部分もあると思います。
更に劇場版サイズに収めなくてはいけないこともあり、TVシリーズよりは遊びが少ないかもしれない。ただ、重い題材を押し付けたい訳ではなく、もしかしたらアートに近い感覚で作画やセリフとは一見真逆に感じる音楽や空気感を楽しんでもらえたら良いのかもしれないなと思います。受け取り方の自由度は高い作品になったかと……。
一度ではよく分からないという方もいらっしゃるかと思うのですが、興味を持って頂けたなら何度でも見て吟味して頂けたら嬉しいです。
――そうですね。TVシリーズのときから、扱っている問題についてはヘヴィでしたけど、センスの高い映像とサブカル的なテクノサウンドにすごく惹かれましたね。
名塚:そういうテクノサウンドにハマってくれて、そこから見返すごとに「これはこういうことか」って気づいてくれたらいいなって。それでTVシリーズが気になって見ていただいても嬉しいですし。設定は違うけどつながっているので、そんなパズルのピースみたいに今回の映画を楽しんでもらえたら嬉しいなって思います。
――でも、一度やり切っているので演技を再構築していくのが大変そうですね。
三瓶:そうですね。もう一度レントンを演じるのは、すごく大変でした。昔演じたのと同じセリフやシーンがあるので、怖くて見返せなかったんですよね(笑)。若さや勢いでできたものが、もう1回できるのかなっていうのもあったし、今だからできる要素もあるし。「レントンお前大変だよ」って思いながら演じてました。
ただ、今回は断片的ではあるけど、より深く掘り下げている部分を演じたので。最終話まで演じて、もう一回最初に戻るということで、あらためて旅立つ少年というところから、その成長をもう一度演じられたらいいなと思って臨みました。
――見返さなかったんですね! 名塚さんは見返しました?
名塚:私はエウレカの登場シーンのところだけ見ました。そこよりも前のアドロックとエウレカのシーンをやると知ったときに、1話だけ見て、そこにつながるじゃないですけど、そこよりも前だと自覚するために確認する感じでした。
――ビームス夫妻の話がわりと多くて、ゲッコーステイトのメンバーはあまり出てこなかったですよね。
三瓶:どうしてもレントンの独白で描いているから、今はそこに触れたくはないってことなんでしょうね。それはエウレカに対してもそうで、エウレカのことですら、最後の最後になるまで触れたくないことだったのかなって思うと、その気持ちがリアルだなぁというか。
――あぁ、なるほど。確かにエウレカのシーンも少なめでした。設定で言うと、もともとレントンがビームス夫妻の養子だったというのがありますけど、これについては?
三瓶:それはアクセル・サーストン役(レントンの祖父)の青野武さんが亡くなって、いらっしゃらないという事情があったと思います。キャストを替えるのではなく、形を変えようということになったのが一番の理由なのかなと。そういう意味では、すごく愛情を感じますね。
名塚:京田さんたちもかなり悩んだ部分なんじゃないですかね。存在が大きかったですし。大切な存在だったからこその結論なのかなとも思います。
三瓶:今回じっちゃんは描かれていないですけど、じっちゃんは絶対いるはずなので。最初のベルフォレストの街の部分はTVシリーズと同じ映像なんだけど、レントンがいつも練習しているリフ場が使えなくなっちゃうシーンがあるんです。
TVシリーズのときに青野さんがやってらしたアクセルのクセで、鼻を鳴らすというのがあったんですけど、当時あれをやれと言われ、19歳の女の子が真似をしてやってたんですけど(笑)、それと同じシーンがあったので、やりましたね。じっちゃんは描かれていないけど、鼻鳴らしは健在です(笑)!
――3部作で、今後も続いていきますが、その意気込みのほどを。
三瓶:エウレカセブンを愛してくださっているみなさんのために、レントンと一緒に汗水たらしていけたらと思ってます。
名塚:鼻水じゃない?
三瓶:鼻水(笑)。そうですね。ゲロはなるべく吐きません!
名塚:今回1作目を作って、出来上がったものを見て、これは新しいものとして行けるんじゃないかという嬉しさと、やる気が出ました。どう受け止めてもらえるかはわからないので、まだ不安はあるんですけど、ただ物語をつなぎ合わせたものではなく、新たなものとして作り上げられたのではないかと感じているので、この勢いを止めずに作っていきたいと思います。
これ、言っていいかわからないんですけど、最後に予告があって。そこに違う感動を覚えたんです。予告のアネモネがかわいい!
三瓶:あの予告、2018年って書いてあったから、2018年には作らないといけないね。
――2人の「つづく」がすごく良かったです。
名塚:そうなんですよ! 言えたよね。
三瓶:本編の収録のときに、最初忘れられてたよね(笑)。
名塚:そう! 最初、台本になくて。
三瓶:つづくって言う気でいたら、急いでたのもあって終わりそうで。「録らないのかな? 録らないのかな?」「あ、忘れてた、録りまーす!」って言われて、「良かった~!」っていう。
名塚:12年ぶりではありましたが一発で録りました(笑)。なので劇場では最後まで席を立たないでいただきたいなと思います。
[取材・文・撮影/塚越淳一]
作品概要
■『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』
2017年9月16日(土)全国ロードショー
STORY
地球上を覆う情報生命体・スカブコーラルと人類の戦いが巻き起こした世界の危機サマー・オブ・ラブ。
その危機から世界を救ったのは、アドロック・サーストンだった。
英雄と讃えられるようになるアドロック。
だが、その真相を知るものは、最前線で戦ったごく一握りの人間だけだった。
そして10年の時が流れた。
アドロックの残された息子レントンは、ビームス夫妻の養子となり、地方都市ベルフォレストで暮らしていた。
義理の父チャールズは、豪放で色んな意味で“濃い”男。
義理の母、レイは冷たそうに見えて細やかな愛情の持ち主だった。
だが、ビームス夫妻とレントンの間にはどこかぎこちなさがあった。
14歳になり、鬱屈とした日々を送っていたレントンに運命の転機がやってくる。
そして、家を飛び出すレントン。
そこからレントンは様々な人との出会い、別れを経験する。
レントンが出会ったひとりは、ファシリティ・ガード隊長のホランド・ノヴァク。
一時、ホランド率いるファシリティ・ガードに身を寄せていたレントンだが、ホランドとの相性は最悪。
徹底的に悪かった。
結局レントンはそこからもわずかな時間で飛び出してしまった。
彼が出会ったもうひとりは、少数宗教ヴォダラクの少女。
死に瀕した彼女を救うため、レントンは、再会したビームス夫妻の心配をよそに奔走する。
人々との出会いと別れは、レントンに大事なことを気づかせる。
自分はなぜ、家出をしたのか。
自分はなぜ今、この道を走っているのか。
【キャスト】
レントン:三瓶由布子
エウレカ:名塚佳織
デューイ:辻谷耕史
ホランド:森川智之
タルホ:根谷美智子
チャールズ:小杉十郎太
レイ:久川 綾
アドロック:古谷 徹
【スタッフ】
総監督:京田知己
脚本:佐藤大
キャラクターデザイン:吉田健一
アニメーション制作:ボンズ
音楽:佐藤直紀
挿入曲:Hardfloor 、HIROSHI WATANABE
主題歌:「Glory Days」尾崎裕哉(TOY'S FACTORY)
配給:ショウゲート
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