OVA『クビキリサイクル』伊吹かなみ役・川澄綾子さんは、どのようにして“天才画家・伊吹かなみ”を構築したのか
一癖も二癖もあるキャラクターたちによって繰り広げられる戦慄のミステリーと会話劇が話題のOVA『クビキリサイクル』。孤島で起こった殺人事件の謎、その全てが明かされる最終巻の発売と連動し、アニメイトタイムズではインタビュー連載企画として出演キャストをお招きしてのトークをお送りしています。
連載第12回は、伊吹かなみ役の川澄綾子さんです! 数年前まで盲目だった彼女の目は、何故今は見えているのか。謎の多い役どころについて、現場での雰囲気なども合わせて幅広く伺いました。お楽しみください。
■□■□■ 連載バックナンバー ■□■□■
【第 1回】玖渚友 役・悠木碧さん
【第 2回】逆木深夜 役・浜田賢二さん
【第 3回】千賀てる子 役・後藤邑子さん
【第 4回】赤神イリア役・伊瀬茉莉也さん
【第 5回】班田玲 役・桑島法子さん
【第 6回】姫菜真姫 役・遠藤綾さん
【第 7回】千賀ひかり 役・新谷良子さん
【第 8回】千賀あかり 役・桑谷夏子さん
【第 9回】園山赤音 役・嶋村侑さん
【第10回】佐代野弥生 役・池澤春菜さん
【第11回】哀川潤 役・甲斐田裕子さん
イマココ⇒【第12回】伊吹かなみ役・川澄綾子さん
――伊吹かなみはが、極めて重要な役どころでした。
伊吹かなみ役・川澄綾子さん(以下、川澄): 第1話収録のときは原作を読んでいなかったんですが、鶴岡音響監督から伊吹かなみについての真相を伺って、これは読んだ方がいいと思って、2話の収録の前に読ませていただいたんです。
――原作を読んでどのように思われました?
川澄:姫菜真姫(CV:遠藤綾)は怪しいですし、赤神イリア(CV:伊瀬茉莉也)もトリックが多いので、いったい誰が犯人なのか推理しながら読んでいくのは面白かったです。すごく読みごたえがありますし、サスペンスとしての上質さと、緻密な人物描写が上手く融合しているなと思いました。
普通の小説では紙の色とか瞳の色とか肌の色ってほとんど描写しないですよね。でも印象的な髪の色を描写するのは、成功するとすごく文学的になるんだなと思いました。
最終話のあたりでの哀川潤(CV:甲斐田裕子)さんと「ぼく」の間での会話のシーンは、言葉の意味も語り口も面白いなと思いながら読んでいました。玖渚ちゃんも微妙な彼女自身の造語を使ったりしていて、そういうのも独特な世界感だなと。
――どのような演技をしようと心掛けていたのでしょうか。
川澄:1話でたくさんしゃべるのは伊吹かなみと園山赤音(CV:嶋村侑)、姫菜真姫くらいで、この3人が次々と「ぼく」に話しかけて翻弄していくという感じだったと思うんです。このときは、3人で「ぼく」に対してどういうアプローチをしていくのか、どういう違いを出していくのか相談しつつ演じていました。
天才たちは「ぼく」や玖渚ちゃんより一回り年齢が上なので、ぼくと玖渚ちゃんを囲む、年配のお姉さま方という感じになるんです。なので演技が似てしまってはいけないんですよ。しゃべり方とか物言いが、ちょっと人を食った感じなのか、ものすごい上から目線なのか、全然そういうことを感じさせないのか、そこを決めるのが難しかったですね。
かなみも天才と称されるひとりと紹介されてますけど、次に出てくる人も天才で、その次に出てくる人も天才なので難しいですよね。普通ひとつのストーリーに天才ってそんなにいないと思うんですよ(笑)。私も含めてキャストの皆が役作りは苦労していたと思います。
――川澄さんはどのように役を作りこんだのでしょうか?
川澄:まず自分が最初に提示したのは、全てを分かっていて、誰に対してもマウントを取りに行くという、上から目線で対峙するというスタイルでした。いわゆるありきたりな天才像ですね。でも鶴岡さんから、そういうのではなく、もっと捉えどころがない感じにして欲しいと言われたんです。
シャフトさんの映像って、あごを上げて斜め上から見下ろすようなインパクトのある絵が良く出てきますよね。鶴岡さんからは「あの首の角度だぞ」と言われたのが特に印象に残っています。
――シャフトさんがよく使ういわゆる「シャフ度」ですね。
川澄:「ああいう雰囲気で言っている感じが欲しい」と言われたんですよ(笑)。そこで私は、この人は何を考えているのか分からないという空気が出ればいいなと思って、他人とはしゃべっているように見えるけど、実は一方的に言葉を吐いているだけで、会話はしていない。どこか歌を歌いあげるような話し方をするように意識しました。
――かなり考えて演技を構築されていたのですね。ところで、ご自身のセリフの中で、特に印象に残っているものはありますか?
川澄:「一週間でできることに三ヵ月も四ヵ月もかけるのはバカのすることだからね。バカでなければ怠け者よ」というところですね。このシーンではまだ「シャフ度」のことを知らなかったので、車椅子に乗っているかなみが、なんでそんなに首を曲げるのかと思っていました(笑)。
「台本の文字を一言一句違えずに演じて欲しい」と言われたんです。
――収録現場の雰囲気はいかがでしたか?
川澄:一番覚えているのは1話の収録前に、鶴岡さんから「『〈物語〉シリーズ』でもずっとそうしてきたんですが、台本の文字を一言一句違えずに演じて欲しい」と言われたことです。
西尾先生の作品は、アニメのときはいつも一言一句違えずに、読み方やアクセントなども西尾先生に訊いて作り上げるというのは他の方からも聞いていたんです。流石西尾先生の作品だなと思いました。
――現場ではどのような話をされましたか?
川澄:私は2話の収録のときにはもう原作を読んでいたので、誰が犯人か知っていたんです。でも読んでいない方や、まだ読んでいる途中という方もいたので、最後どうなるのか言えなかったんですよ。なので、もう原作を読んでいる人間同士で、「あいつ本当に酷い奴だよね(笑)」みたいな話をしていました(笑)。
――西尾先生の作品はかなり台詞量が多いと思います。実際に演じてみていかがですか?
川澄:西尾先生は台詞で人となりを表すことにすごく長けていると感じました。天才たちひとりひとりがセリフをしゃべっているだけで、この人はこういう人だと分かるんです。姫菜真姫なんて、多分全部の謎を知っているのに、「ぼく」の質問には答えずにどんどん追い詰めるじゃないですか。このアプローチ方法が、意地悪な人なのかなっていう印象をすごく強く与えているのが面白かったです。
でも梶くんは大変ですよね。みんながみんな好き勝手しゃべっているものに、常識ある人間として対応するって、実はすごく難しいんじゃないかな。
――梶さんは台詞も多いから大変だったと思います(笑)。現場で梶さんの演技を見てどう思われました?
川澄:鶴岡さんがおっしゃってたんですが、天才に囲まれた普通の人として、フラットな、装飾を省いたお芝居をしてらっしゃるなという印象がありました。
西尾先生の作品の主役を演じるっていうことは、西尾先生の世界観を全部背負うってことだと思うんです。それってすごく重いんだろうなと。でも、梶くんならそれを全部背負えると判断されたってことなんですよね。
――西尾先生の作品の主役を演じるというのは大変なことだと思います。
川澄:声優としての基本的なスキルも高度なスキルも必要です。台本をそのまま読むからと言ってたどたどしくてもだめ。『〈物語〉シリーズ』は何度か拝見したことがありますが、神谷さんの淡々とした演技を梶くんも自分で作り上げようとしてるんだろうなと。
梶くんは鶴岡さんにも「お前は本当に大変だからな」というプレッシャーを最初からかけられていました。他のキャスト陣も素晴らしい方ばかりですけど、主役とは立場が違いますから。ひとりひとり好き勝手にやっているキャスト陣との演技の全てに対応する「ぼく」の立ち位置は凄いなと思います。
――梶さんと悠木(碧)さんは、新房総監督が最初から起用を決めていたそうです。
川澄:悠木碧ちゃんの玖渚友は、天才なんだけど身体を思うように動かせないというアンバランスさを持っていますよね。ものすごい可愛らしい言い方で核心を突いたことを言ったりするキャラクターの作り方がすごく素敵だなと思って演技を聞いていました。
西尾先生は凄い深さで物事を見ているのかもしれません。
――西尾先生から何か話を伺ったりは?
川澄:1話の収録のあとに西尾先生とスタッフの方々、キャストのみなさんと一緒にお食事に行ったんですよ。西尾先生とはそこでお話をさせていただいたんですが、やっぱりひとつのことへのこだわりがすごくて、天才ってこういう人のことなのかなと素直に思いました。
――どのようなことにこだわられていると感じましたか?
川澄:あまり沢山お話をする時間はなかったんですけど、西尾先生を交えて数人でディズニーランドの話をしていたんです。私もロスアンゼルスのディズニーランドに行ったことがあるくらい好きなんですけど、西尾先生がお話をされると、知識の広さ深さが違いすぎて、みんな聞き入ってしまうんです。
西尾先生のお話は本当に「知らなかった!」「そんなことがあったんだ!」の連続で、きっとディズニーランドだけではなく、沢山のことに興味を持って、ものすごい深さで物事を見ているのかもしれないなと感じました。
――では最後に、ファンの方へのメッセージをお願いします。
川澄:OVA8本という長いスパンの作品なので、西尾先生のデビュー作を、じっくり堪能して頂ける素晴らしい形で皆様にお届けできました。ファンの方にアニメ化をすごく望まれている作品だったと思うので、関われて私も嬉しく思います。私自身、あの現場にいられたことは良い経験になりました。ひとつだけじゃない答えが広がるような、すごく深い作品になっていますので、是非お手元に置いて、何度も見直していただけたら幸いです。
[取材・文/早川清一朗]
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【第 1回】玖渚友 役・悠木碧さん
【第 2回】逆木深夜 役・浜田賢二さん
【第 3回】千賀てる子 役・後藤邑子さん
【第 4回】赤神イリア役・伊瀬茉莉也さん
【第 5回】班田玲 役・桑島法子さん
【第 6回】姫菜真姫 役・遠藤綾さん
【第 7回】千賀ひかり 役・新谷良子さん
【第 8回】千賀あかり 役・桑谷夏子さん
【第 9回】園山赤音 役・嶋村侑さん
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【第11回】哀川潤 役・甲斐田裕子さん
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■「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣いSound Collection」:10月25日(水)発売
▲アニメイトオンラインショップでの購入はこちら
価格:3,500円+税
収録曲:全34曲
仕様:◆CD2枚組 ◆描き下ろしジャケットイラスト
パッケージ情報
★「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」全巻購入特典
渡辺明夫さん&okamaさん描き下ろし”全巻収納BOX”をプレゼント!
※応募〆切:2017年11月30日(木)
※2~8巻巻封入の応募券を集めて、1巻封入の台紙に貼り付けてご応募ください。
※画像はokama氏によるイメージラフです。実際の商品とは異なりますので、ご了承ください。
■第一巻:2016年10月26日(水)発売
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Blu-ray完全生産限定版: 3,600円+税
DVD完全生産限定版: 3,600円+税
【完全生産限定版特典】
○原作者:西尾維新書き下ろしキャラクターコメンタリー
脚本:西尾維新
出演:哀川潤(CV.甲斐田裕子)、長瀞とろみ(CV.折笠富美子)
○キャラクターデザイン:渡辺明夫描き下ろしデジジャケット
○特製ブックレット12P
○全巻連動購入キャンペーン応募台紙
(キャラクターデザイン:渡辺明夫描き下ろし全巻収納BOX)
○クリアケース
■第二巻:2016年11月30日(水)発売
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Blu-ray完全生産限定版: 3,600円+税
DVD完全生産限定版: 3,600円+税
【完全生産限定版特典】
○原作者:西尾維新書き下ろしキャラクターコメンタリー
脚本:西尾維新
出演:哀川潤(CV.甲斐田裕子)、因原ガゼル(CV.神田朱未)
○キャラクターデザイン:渡辺明夫描き下ろしデジジャケット
○特製ブックレット12P
○全巻連動購入キャンペーン応募券
○クリアケース
購入
■第三巻:2017年1月25日(水)発売
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Blu-ray完全生産限定版: 3,600円+税
DVD完全生産限定版: 3,600円+税
【完全生産限定版特典】
○原作者:西尾維新書き下ろしキャラクターコメンタリー
脚本:西尾維新
出演:哀川潤(CV.甲斐田裕子)、軸本みより(CV.野中藍)
○キャラクターデザイン:渡辺明夫描き下ろしデジジャケット
○特製ブックレット12P
○全巻連動購入キャンペーン応募券
○クリアケース
■第四巻:2017年2月22日(水)発売
▲アニメイトオンラインショップでの購入はこちら
Blu-ray完全生産限定版: 3,600円+税
DVD完全生産限定版: 3,600円+税
【完全生産限定版特典】
○原作者:西尾維新書き下ろしキャラクターコメンタリー
脚本:西尾維新
出演:哀川潤(CV.甲斐田裕子)、石丸小唄(CV.浅野真澄)
○キャラクターデザイン:渡辺明夫描き下ろしデジジャケット
○特製ブックレット12P
○全巻連動購入キャンペーン応募券
○クリアケース
■第五巻:2017年3月29日(水)発売
▲アニメイトオンラインショップでの購入はこちら
Blu-ray完全生産限定版: 3,600円+税
DVD完全生産限定版: 3,600円+税
【完全生産限定版特典】
○原作者:西尾維新書き下ろしキャラクターコメンタリー
脚本:西尾維新
出演:哀川潤(CV.甲斐田裕子)・佐々沙咲(CV.佐藤利奈)
○キャラクターデザイン:渡辺明夫描き下ろしデジジャケット
○特製ブックレット12P
○全巻連動購入キャンペーン応募券
○クリアケース
■第六巻:2017年5月31日(水)発売
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Blu-ray完全生産限定版: 3,600円+税
DVD完全生産限定版: 3,600円+税
【完全生産限定版特典】
○原作者:西尾維新書き下ろしキャラクターコメンタリー
脚本:西尾維新
出演:哀川潤(CV.甲斐田裕子)・長瀞とろみ(CV.折笠富美子)・因原ガゼル(CV.神田朱未)
○キャラクターデザイン:渡辺明夫描き下ろしデジジャケット
○特製ブックレット12P
○全巻連動購入キャンペーン応募券
○クリアケース
■第七巻:2017年8月30日(水)発売
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Blu-ray完全生産限定版: 3,600円+税
DVD完全生産限定版: 3,600円+税
【完全生産限定版特典】
○原作者:西尾維新書き下ろしキャラクターコメンタリー
脚本:西尾維新
出演:哀川潤(CV.甲斐田裕子)・佐代野弥生(CV. 池澤春菜)
○キャラクターデザイン:渡辺明夫描き下ろしデジジャケット
○特製ブックレット12P
○全巻連動購入キャンペーン応募券
○クリアケース
■第八巻:2017年9月27日(水)発売
▲アニメイトオンラインショップでの購入はこちら
Blu-ray完全生産限定版: 3,600円+税
DVD完全生産限定版: 3,600円+税
【完全生産限定版特典】
○原作者:西尾維新書き下ろしキャラクターコメンタリー
脚本:西尾維新
出演:哀川潤(CV.甲斐田裕子)・ぼく(CV. 梶裕貴)
○キャラクターデザイン:渡辺明夫描き下ろしデジジャケット
○特製ブックレット12P
○全巻連動購入キャンペーン応募券
○クリアケース
作品情報
【INTRODUCTION】
日本海に浮かぶ孤島、鴉の濡れ羽島。
そこに建つ屋敷には、島の主の赤神イリアによってあらゆる分野の天才たちが客として招かれていた。
だがある朝、屋敷の中で、首斬り死体が発見される。
そして事件は、それだけでは終わらなかった――
原作は、西尾維新のデビュー作にして第23回メフィスト賞受賞作『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』。〈物語〉シリーズを手がけてきたシャフトによって、西尾維新の原点とも言える作品が映像化される。
【STAFF】
原作:西尾維新「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」(講談社ノベルス・講談社文庫)
キャラクター原案:竹
総監督:新房昭之
監督:八瀬祐樹
シリーズ構成:東冨耶子・新房昭之
脚本:木澤行人・中本宗応
キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫
総作画監督:鈴木博文
イメージボード:okama
美術設定:大原盛仁
美術監督:内藤健
色彩設計:日比野 仁・渡辺康子
3DCGディレクター:越田祐史
3DCG制作:オレンジ
撮影監督:江上 怜
編集:松原理恵
音響監督:鶴岡陽太
音楽:梶浦由記
アニメーション制作:シャフト
製作:アニプレックス・講談社・シャフト
【CAST】
ぼく:梶裕貴
玖渚友:悠木碧
園山赤音:嶋村侑
伊吹かなみ:川澄綾子
逆木深夜:浜田賢二
姫菜真姫:遠藤綾
佐代野弥生:池澤春菜
赤神イリア:伊瀬茉莉也
班田玲:桑島法子
千賀あかり:桑谷夏子
千賀ひかり:新谷良子
千賀てる子:後藤邑子
哀川潤:甲斐田裕子
【THEME SONG】
オープニング・テーマ:三月のパンタシア「群青世界」(コバルトワールド)
エンディング・テーマ:Kalafina「メルヒェン」
>>OVA『クビキリサイクル』公式サイト
>>西尾維新アニメプロジェクト公式Twitter(@nisioisin_anime)