じいさんのかっこよさに女性陣大はしゃぎ!? 安済知佳さん、瀬戸麻沙美さん、山路和弘さん、大橋誉志光監督が語るTVアニメ『刻刻』
2018年1月7日(日)からTOKYO MX、BS11ほかで放送開始されたTVアニメ『刻刻』。
本作は、時間が止まった世界「止界」や、その世界に入ることが出来る「止界術」を巡り、刻々と状況が変化する堀尾省太先生の連載デビューのSFサスペンス作品です。
今回のアニメ化ではこの独特な世界をCGを駆使して完全再現! 中でも神ノ離忍(カヌリニ)という、止界に現れる謎の存在の映像化は、原作者もその出来栄えを絶賛したほど。原作ファンにとっても大いに期待できるアニメ化となるでしょう。
2017年12月20日には先行上映イベントも実施。アニメイトタイムズでは、イベント出演を控えた大橋誉志光監督、佑河樹里役・安済知佳さん、間島翔子役・瀬戸麻沙美さん、じいさん役・山路和弘さんにインタビューを行いました。
大橋誉志光監督プロフィール
1965年4月1日生まれ。様々な作品に原画、絵コンテ、演出として参加し、2001年に『ギャラクシーエンジェル』で初監督を務める。
監督作品として『ウィッチブレイド』(2006年)、『セイクリッドセブン』(2011年)、『AMNESIA』(2013年)などがある。
佑河樹里役:安済知佳さんプロフィール
12月22日生まれ。福井県出身。エイベックス・ピクチャーズ所属。TVアニメ『あにゃまる探偵 キルミンずぅ』の御子神ナギサ役で声優デビュー。
主な出演作に『棺姫のチャイカ』(2014年、チャイカ・トラバント役)、『響け! ユーフォニアム』(2015年、高坂麗奈 役)、『クズの本懐』(2017年、安楽岡花火 役)などがある。
間島翔子役:瀬戸麻沙美さんプロフィール
4月2日生まれ。埼玉県出身。シグマ・セブン所属。TVアニメ『放浪息子』(2011年)の高槻よしの 役で声優デビュー。
主な出演作に『ちはやふる』(2011年、綾瀬千早 役)、『ウィッチクラフトワークス』(2014年、火々里綾火 役)、『マクロスΔ』(2016年、ミラージュ・ファリーナ・ジーナス役)などがある。
じいさん役:山路和弘さんプロフィール
1954年6月4日生まれ。三重県出身。劇団青年座演技部所属。舞台、ミュージカル、映画、ドラマ、声優として幅広く活動中。第36回(2010年度)菊田一夫演劇賞・演劇賞、第59回(2017年度)毎日芸術賞を受賞している。
声優としての主な出演作に『PSYCHO-PASS サイコパス』(2012年、雑賀譲二 役)、『ONE PIECE FILM GOLD』(2016年、ギルド・テゾーロ役)、ジェイソン・ステイサムの吹替えなどがある。
時間が止まった世界とキャラクターの印象
──時間が止まった世界というのは、マンガという表現方法にはうってつけだと思うのですが、アニメーションで描くとなるとかなり難しいのではないでしょうか?
大橋誉志光監督(以下、大橋):この仕事を受けるときに、まずその話に至ったんですね。会社の上の人は「絵が止まっているなら、コストもかからないし楽なんじゃないか」と思ったと思うんですけど、「実際に作るのは大変ですよ」と話しました。
アニメーションというのは集団作業で仕事をするので、同じものを2人で描けば2つの解釈が生まれるわけです。そうすると、なかなか同じものにならない。マンガのように少数の人間が全部コントロールしているなら描けるけど、アニメの作り方の場合はいくつかのチームが一度に作業をするので、動かない世界を違和感がないようにコントロールして描くのは非常に難しいんです。
──主人公の佑河樹里が、原作では長女だったのが、アニメでは次女に変更されています。これはなぜですか?
大橋:企画時の視聴者層のターゲットが20歳前後なので、原作での30歳近い女性よりも、大卒で、よりターゲットに近い年齢のほうが共感を得やすいだろうという判断です。
また、ラストシーンにも関わることなんですけど、この年齢のほうが最後の選択がより重たい決断になるかなという狙いもありました。もちろん原作サイドにも「こういう意味で変えています」と確認を取った上でやっています。
──最初に原作を読んだときの感想を教えてください。
安済知佳さん(以下、安済):小さな世界のはずが、すごく大きなことになるなという感じでした。時間が止まるという非日常の中で、家族など身近なものと戦っていくとか、家が舞台になっているといったギャップが、非日常の中のリアルを際立たせているように感じました。それと家族がすごく肝になっているなと思います。
読めば読むほど先が気になる感じで、途中で「続きは明日読もう」とはなかなかできない作品でした。いろんな人の思惑とか、考えが渦巻いていて、こちらも「どうするの!?」「こうなったらどうしよう……」って一緒に考えていくような作品だなって思いました。
──とある変化が起こるまでは、樹里はごく普通の人じゃないですか。それがああなるというのは驚きました。
安済:やっぱり樹里が強いんですよね。アフレコのときも、「どうしてこういう行動を取るんだろう」って考えていたんです。でも考えれば考えるほどわからなくなったので、考えることを放棄したら、すごいスムーズにみなさんと会話できたり、ディレクションにも応えられるようになったんです。
きっと何か通ずるものがあるからこそ、私も樹里役に選ばれたと思ったので、最後までわからないのが面白い子だったなというのが樹里の印象です。
──続いて謎の女・間島翔子さん、お願いします。
瀬戸麻沙美さん(以下、瀬戸):第1巻を読ませていただいたときに、独特な世界観にとても魅力を感じて、面白そうだなと思ったのが最初の印象でした。私も子供の頃に「もしも世界の時間が止まったら」なんて考えたことはあったんです。
でも、止まった世界の中に神ノ離忍(カヌリニ)という存在がいたりとか、世界を自分の私利私欲のために利用しようという人が存在しているなんてことは、イメージしたことがなかったので、自分の中にはなかった刺激的な物語だなって思いました。
──この作品はメタボ中年である貴文(樹里の父)を筆頭に、容姿が冴えなかったりガラの悪い連中が多い中、間島翔子だけが美人として扱われているように感じました。
瀬戸:女の子が2人しかいないし、たぶん彼らって「綺麗だから」というより「女か男か」みたいな部分でしか見ていない気がするんですよ。最初は言葉数が少ないから、「もしかして…」という下心が働くというか。
ああいう状況で偉そうに立っている女を、貶めたい、上に立ちたいっていう男性欲みたいなものが渦巻いた結果なのかなと私は思っていました。
大橋:手が届くところにいる女のひとり、ということですよね。
──男目線で見ると、間島は魅力的な女性キャラとして描かれているように感じました。
大橋:アニメのキャラの造形でも、見た目と内面の男っぽさ女っぽさは逆にしているんですよ。樹里のほうがパッと見にはいわゆる女の子っぽいんだけど、メンタルは男で。
間島さんは革ジャンを着てバシッと決めて、強い女を演じているんだけど、実は女の子っぽいという。途中で服を脱ぐシーンがあるんですけど、脱ぐと中は意外とフェミニンな格好をしているんです。
安済:たしかにキャミソールかわいかった。
瀬戸:物語が進むと、内面のことも見えてきて印象が変わるキャラなのかなと思いますね。
──次にじいさんですが、老人キャラといえば普通は人生経験を活かしたアドバイザー役が多いのに、作中で最もアクションが派手なエースキャラクターがじいさんというのが、非常に珍しい作品だと思います。
山路和弘さん(以下、山路):笑っちゃいますよね。しかも、考えていることは一番浅い感じがします(笑)。
一同:あははっ!
山路:誰よりも浅い。あれは衝撃的ですよね。でもすごい好きですけどね。
──瞬間移動をして霊回忍(タマワニ)を……というあのアクションが、作中でも一番かっこいいと思うんです。そのおかげでじいさんもえらいかっこよく見えるんですよ。
山路:でも、瞬間移動した後は必ず空中で浮いて、逆さになってたりするってのがね(笑)。よくまぁこんなこと考えつくなっていつも思いますね。
──作品の最初の印象は?
山路:僕はとにかく、絵がすごい好きだったんですよ。一番好きなのは神ノ離忍ですけどね。第1巻を読んで、最初は「なんだ、普通の家族の話じゃないか」と思ったら、突然じいさんが中心になって話が動くでしょ。
「あ、そういうことなのか」と思いながら読んでいったら、色の濃いヤツらがどんどん出てくるから、段々とじいさんも埋もれて行く感じで。そうしたら一番最後にすうっと家族の話で終わっていくというのが、すごい洒落た話だなと思いましたね。
──じいさんの「絶対に全員で帰る」という信念あってこその話じゃないですか。まさしくキーマンだと思います。またそれをじいさんにさせているのがこの作品のすごさだなと。
山路:名前もくれないんですよ(笑)。そこが作家のひっかけなのか、なんなんですかね。
大橋:アニメのほうでも名前は作らなかったですし。
瀬戸:実は中国人で“ジイ=サン”だったりして。
安済:えー(笑)。
大橋:この間、原作者の先生と話したときに聞いたんですけど。マンガでは最初、じいさんを早い時期に殺しちゃう予定だったらしいんですよ。
山路:へぇぇ〜っ!
大橋:あの世界に放り込んでおいて、真っ先に死んじゃうのがじいさんで、誰も何もわからない状態からスタートする、みたいな。
安済:ヒントも何もないままってことですよね。
山路:それじゃすぐ終わっちゃうじゃない、俺の出番!
瀬戸:お話もあっけなく実愛会の勝利で終わりますよね。
大橋:結局それだとどうにも勝てないってことになって、じいさんを残して話をつなぐことにしたようです。
山路:でもじいさんを残すことによって、余計ややこしい話にはなっていますよね(笑)。
脇役に光る人材多数! 気になるキャラクター
──印象的なキャラクターは?
安済:貴文!(笑) アニメでは辻谷(耕史)さんの熱演もあって、「お父さんヤバイ!」ってなったんですよ! マンガだと、私はやっぱり佐河が印象的ですね。
途中の行動もそうですし、最後はああなるじゃないですか。命を狙い合っていた間柄が……っていうこともあって、佐河はすごい引っかかっています。
瀬戸:気になるキャラクターはたくさんいるんですけど、パッと思いついたところで、飛野。
──わかります!
瀬戸:あ、わかっていただけます?
──あの人がいなかったら、あれも起こらないですからね。
瀬戸:監督にもお聞きしたかったんですけど、第1話で「第一刻」って出たときの「カシャカシャ!」っていう音って飛野ですか?
安済:あー! でもあれ、飛野じゃないんじゃない?
大橋:違うと思います。(※谷 洋幸さん)
瀬戸:あ、違うんだ……。残念でした。でも、そうなんじゃないかなって思うくらい、印象に残っています。彼もすごい変貌を遂げていくんですけど、物語の最後までいる、存在し続けているのが、「いつも傍にいたな」って印象になっているんですよ。
──そういえば、アニメでは最初からあの女性が出ているんですよね。あれは思い切った展開だなと思いました。
大橋:実は原作を読んだときに、あそこが一番引っかかる部分ではあったんですよ。僕は面白いと思ったんだけど、物語のテーゼとして嫌う人もいるかもしれないなと思ったので、ド頭に出したんです。
山路:そういう意味では彼女も気になるんですけど、現場でどんどん気になっていったのは迫ですね。迫の存在がどんどん太くなっていくのが面白かったな。
大橋:僕は間島さんが迫を推すかなと思ったけど、迫じゃないんだ。
一同:あははっ!
瀬戸:今たぶん「迫って言うだろうな」って思われていると思ったから、やめようと思って(笑)。もちろん迫も気になってますよ。でも間島はそんなに気にしてないから、気にしないようにしています。
──あんなチンピラみたいなヤツが、こんな役回りになるというのは驚きました。
山路:案外聡明なんですよね。
安済:まともですよね。すごいまとも。
大橋:潮見と迫は冷静ですね。潮見はコンピュータみたいな人で、迫は頭は切れるけどちゃんと情があるというのも対比になっていますね。
安済:あの2人のあの会話もいいですよね。
──ネタバレにご配慮いただいた会話をありがとうございました(笑)。最後に見どころを教えてください。
安済:時が止まるという題材は、色々なエンターテイメントの中にあると思うんですけど、その中でもまた一味違った世界観を楽しんでいただきつつ、ひとりひとりの関係性や家族というものにも注目してほしいと思います。いろんなことを考えさせられる展開になっていくので、固唾を飲んで見守っていただけたら嬉しいです。
──アフレコ現場では佑河家のキャラクターが多かったと思いますが、家族感みたいなものはいかがでしたか?
安済:山路さんがめちゃくちゃかっこよくて! 私、おじいちゃんが生まれたときから父方母方ともいなくて、おじいちゃんっていう存在が身近じゃなかったんですよ。最近はほかの作品でも、おじいちゃんがいる孫娘の役が増えてきて、そのタイミングで樹里がおじいちゃんと行動する役だったから、「おじいちゃんとは?」ということをすごく考えていたんです。
そんな時期に山路さんのおじいちゃんを見て「超かっこいい! おじいちゃんってこんなかっこいいの!?」と思って(笑)。
──あのシーンとか、まるでカップルですよね。なぜおじいちゃんと孫娘なんだろうという(笑)。
山路:カップルみたいなセリフ、けっこうあったもんね。
安済:ありましたよね。音響監督さんに「恋人みたいで良かったです」って言われたときは、「それはいいんですか!?」って聞いちゃったくらい(笑)。
瀬戸:私、あそこちょっと「いいなぁ」と思って見てました。
──続いて見どころをお願いします。
瀬戸:「神ノ離忍って一体なんなんだぁ!?」ってところに注目! 私、1話には出ていないんですけど、完成した1話の映像を観たときに「神ノ離忍って何!?」という想いが一番残ったので、そこを視聴者のみなさんと共有したいと思います。
山路:じいさんは瞬間移動ですね。そこと、時間を止めるということのキーマンになっているというところかな。
大橋:やっぱり時間が止まっている世界に尽きるかなと思います。登場している人間が普通の人なので、視聴者目線で感情移入しやすいんじゃないかなと。いろんなキャラクターに思い入れとか、「こいつには絶対なれないな(笑)」とかいろいろ考えながら観ていただけると楽しいかなと思いますね。
[取材・文・写真/設楽英一]
作品情報
2018年1月7日よりTOKYOMX、BS11にて毎週日曜24時30分より放送予定
Amazonプライム・ビデオにて日本・海外独占配信
(第1話はテレビ放送に先駆け1月6日(土)24時頃より先行配信)
■イントロダクション
永遠の6時59分……
佑河家に代々伝わる止界術。止界術を使うと、森羅万象が止まった“止界”に入る事が出来る。ある日、主人公樹里の甥と兄が、誘拐犯にさらわれてしまう。
救出の為にやむを得ず“止界術”を使うが、そこにいるはずのない自分以外の“動く”人間たちに急襲される。彼らは、止界術を崇める「真純実愛会」。止界術を使用する際に必要な“石”をめぐり、止界の謎、佑河家の謎が徐々に解明されてゆく……
■スタッフ
原作:堀尾省太「刻刻」(講談社『モーニング・ツー』所載)
監督:大橋誉志光/シリーズ構成:木村暢/キャラクター原案:梅津泰臣
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:日向正樹
音楽:未知瑠/主題歌:「Flashback」MIYAVI vs KenKen
エンディング・テーマ:「朝焼けと熱帯魚」/歌:ぼくのりりっくのぼうよみ
制作:ジェノスタジオ/製作:ツインエンジン
■キャスト
佑河樹里:安済知佳
間島翔子:瀬戸麻沙美
じいさん:山路和弘
佑河真:岩田龍門
佑河貴文:辻谷耕史
佑河翼:野島裕史
佐河順治:郷田ほづみ
潮見:内田夕夜
迫:吉野裕行
原作公式サイト
テレビアニメ『刻刻』公式サイト
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