戦隊ヒーロー番組のオーディション当日、ショウゾウにアクシデント!?「ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第34回！

2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと音楽でお届けする連載です。

今回は、明るく熱血、ヒーローになるのを夢見る森下ショウゾウのストーリーをお届け。いつだって子供たちの笑顔のためにがんばるショウゾウと、彼を後押しするメンバーたちとのあたたかい絆が描かれています。

劇団アルタイル『Beginning』
【あらすじ】
ショウゾウのもとに、戦隊ヒーロー番組へのオーディション話が舞い込んできた。仲間たちに応援され、昔からの悲願を果たすべくはりきるショウゾウだが、オーディション当日にアクシデントが発生し……！？

【ストーリー】
「戦隊モノのオーディション……！？」
「えっ、うそ。ショウゾウくん、やるじゃん」
　ジュンペイとタイキからストレートな反応が返ってくる。
「すごいね。おめでとう、ショウゾウさん！」
　満面の笑みで言うジュンペイに、慌てて首を横に振った。
「まだ、役が貰えたわけじゃないって」
「うん。だけど、ヒーローはショウゾウさんの夢でしょ？」
　劇団アルタイルのオーディションに、ショウゾウは戦隊モノの変身ベルトをつけて挑んだ。ジュンペイは同じグループだったから、そのときの熱意をよく覚えていた。
「チャンスが貰えたことも、大切な第一歩だよ」
　まるで自分のことみたいに喜ぶジュンペイの笑顔が、くすぐったい。
「で、オーディションに行くの？　いまから？」
　タイキがジッとこっちを見て、訊いた。
「午後からな。けど、落ち着かなくてさー」
「てことは、まだ時間あるんだ？」
「？　おう、まだ全然ヨユー……うわっ！」
　突き飛ばす勢いで肩を押され、ソファに沈められた。ビックリして見上げると、タイキがにっこりと――だが、どこか迫力のある微笑を浮かべている。
「な、なんだ……？」
「まさか、そのボサボサの頭でオーディション行く気？　戦隊モノのメインキャストはイケメンで当然でしょ？」
　ちょっと待ってて、と命令して、タイキが共有ルームから出て行く。ぽかんとしていたら、隣でジュンペイがくすくす笑った。
「タイキくんてすごく面倒見いいよね」

　タイキが髪の毛をセットしてくれて、ジュンペイには励ましてもらって、出がけにはなんだかんだ同期メンバーが全員で見送ってくれた。仲間の声援が嬉しく、ショウゾウは足取りも軽く会場へ向かっていた……のだが。
（まあ、しょーがないよなぁ）
　平日昼、駅前の広場。オーディション会場の最寄り駅を出て五分もしない場所で……会ってしまった。
「おかあさぁん、どこぉ……うぇえええ！」
「イテテテ！」
　肩車した少年が、ありったけの力で髪を引っ張った。
（あー。タイキが格好良くしてくれたんだけどなあ）
　母とはぐれたらしい迷子を見つけて、一緒に親探しを始めてからしばらく経過した。結局ボサボサに戻ってしまった事情を話したら、タイキには呆れられるだろうか。
「おかーさぁん……！」
　ちょっと俯き加減のサラリーマンたちが数人、目の前を通り過ぎていく。誰も振り返らない。誰だって忙しいし、大事な予定がある。だから、しょうがない。
　でも、こんなとき、ヒーローだったら。
「うぇえええ！」
「おかーさーん！　かーちゃん！　ママー！」
　バリエーションをつけ叫んでみたが、振り返る女性はいない。
　隣の通りへ移動してみるか、と横断歩道へ一歩踏み出した。そのときだった。

「あ、やっぱり。ショウゾウさんだ」
「え？　……あ、イツキ」
　信号待ちの車中、助手席から身を乗り出しているイツキの姿が目に飛び込んできた。
「うっわ、偶然！」
「どうしたの、今日はオーディションなんじゃ？」
「あれ、なんでそれ……」
　知ってるんだ？　と言い終わるより早く、イツキが「ふたりとも、乗って」とバンのドアを開けた。
「オーディション、何時から？」
「14時半だけど」
「わ、ギリギリだね！
　すみません。ちょっと寄り道してもらうことってできますか？」
　イツキがドライバーに、オーディション会場のビル名を告げる。
「えっと、イツキ……あの」
「俺は、仕事終わって寮に帰るとこ。ロケ用の車に、ついでに乗せてもらって。オーディションのことは、さっきマネージャーさんに聞いたよ。
　……ね、キミは迷子？」
「おかぁさん……いない」
「じゃあ、俺と一緒におまわりさんの所に行こっか。大丈夫だよ、お母さん、きっと迎えにきてくれるから。ね」
「……うん。行く」
　イツキが頭を撫でると、少し落ち着きを取り戻した子どもが頷く。
「よし、決まり。さ、ショウゾウさんは乗って。この子は俺が代わりに近くの交番に連れて行くから」
「……でも」
　ためらうショウゾウに、イツキは笑った。
「大丈夫。この子は俺に任せて、ショウゾウさんは、オーディションがんばって！　俺、通りがかってほんとによかった。正義の味方、なれるといいね」
「……イツキ……」

（ヤッバい）
　かっこいい。
（ヒーロー、すっげえ近くにいた）
　やっぱり、自分はまだまだ新米だ。
（でも、ちゃんと近づいてる）
　チャンスは巡ってくるし、励ましてくれる仲間だっているし、追いかける背中もすぐそこにある。
「……にーちゃん、正義の味方になるの？」
　真っ赤になった目を擦りながら、キラキラした目で訊かれた。だから、めいっぱい笑ってやる。　
「おう。まだ、見習いだけどな」
　一歩ずつ、一歩ずつ。憧れた道へ。
「ぜったい、なってやる！」

今回登場した人物をご紹介！
◆森下ショウゾウ（CV：田村昇三）
戦隊ヒーローに憧れる熱血漢。竹を割ったような性格で、年上には可愛がられ、年下には慕われる。