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『キラキラ☆プリキュアアラモード』脚本・田中仁&神木優Pインタビュー

大好きと大嫌い、心の光と闇に少しずつ踏み込んでいった――『キラキラ☆プリキュアアラモード』シリーズ構成・田中仁さん&神木優プロデューサーに聞く『プリアラ』の1年間

個性豊かな宇佐美いちかたち6人の「大好き」を丁寧に描いてきた『キラキラ☆プリキュアアラモード』(以下、『プリアラ』)も、残すところは最終話のみ。虚無との戦いの末に、エリシオとある約束をしたいちか。彼女もほかの5人のように、「大好き」の先にあるものを見つけられるのか――。放送を前に期待が高まっています。

今回はそんな同作から、シリーズ構成の田中 仁さんと、神木 優プロデューサーにインタビュー! 『Go!プリンセスプリキュア』、『映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!』でもタッグを組んだおふたりは、どんなことを考えて『プリアラ』のお話を構成していったのか。最終話のアフレコを終えたタイミングで、たっぷり語っていただきました。

▲シリーズ構成・田中 仁さん(写真左)、神木 優プロデューサー(写真右)

▲シリーズ構成・田中 仁さん(写真左)、神木 優プロデューサー(写真右)

 

キャラクターを見たときの感情を6人それぞれ違ったものに

――ちょうど最終話のアフレコを終えられたそうですが、いまのご心境はいかがですか?

シリーズ構成/脚本・田中 仁さん(以下、田中):長いようで短かったです。メインキャラが6人いたり、プリキュアにスイーツという新しい要素を盛り込んだりと、それらをどうまとめるのかに1年間ずっと向き合ってきました。でも最終話を書き終わる寸前に、ふと、もういちか達を書くことがなくなるのかと思って、突然、寂しくなりましたね。


 
神木 優プロデューサー(以下、神木):企画段階から振り返ると、私の想像を大きく超えてくれた作品でしたし、お客様の反響と一緒に成長してきた作品だったなと感じています。特に、6人のキャラクターそれぞれの姿や、ほかの5人に影響されて化学反応が起きる様子がすごく面白かったです。

あと個人的には、スイーツ監修の福田(淳子)先生をはじめ、スイーツ界の華やかな方々のお話を聞くことができて……女子力を学びました(笑)。デコレーションひとつとっても、本当に細かいところまでかわいらしさを追求してくださいますからね。「神木さん、黒い服ばっかり着てたら気持ちがアガらないわよ!」なんて、ご指摘いただいたりもして(笑)。

――なるほど(笑)。田中さんの女子力も上がりましたか?

田中:第1話を書くときに「うさぎショートケーキ」を作りましたね(笑)。

神木:(田中)仁さんが「うさぎショートケーキ」を初めて作った人なんですよ。まだデザインが決まる前のタイミングです。

田中:スポンジが膨らまないケースって実際どんな感じなんだろうと、検証するために作ったんです。ショートケーキ自体も初めてなのに、無謀にもチョコペンも買ってデコレーションにチャレンジしました。なるべく立体的にデコレーションしてみようと思ったんですが、デローっとした不格好なうさぎになりました(笑)。実際の「うさぎショートケーキ」は、とても魅力的に作っていただけて良かったです。

神木:いま考えると、ホイップクリームの泡立てが足りなかったのかもしれませんね……(笑)。

▲田中仁さんの作による、世界で初めて作られた「うさぎショートケーキ」。たくさんのキラキラルを含んでいそうなかわいらしさ。

▲田中仁さんの作による、世界で初めて作られた「うさぎショートケーキ」。たくさんのキラキラルを含んでいそうなかわいらしさ。


 

――それでは、田中さんがチームに加わった立ち上げ当初のお話からうかがえればと思います。まず、お題であるスイーツをテーマに絡ませるにあたっては、どんな議論があったのでしょうか?

田中:最初は本当に手探りでした。例えばグルメ漫画的に毎話、店にお客さまが来て、その人のためにスイーツを作るなんてパターンも模索してみましたが、プリキュアとしては毎回それだと難しいのかと思ったり……。

神木:「プリキュア」と「スイーツ」の掛け合わせ方には、いろんな議論がありましたよね。スイーツ要素を日常パートだけに託すのも違うし、プリキュアがスイーツを敵にぶつけて戦うのも違う。そもそも日常パートと戦闘パートのつながりが薄くてはいけないので、両方にスイーツ要素を盛り込む必要がありました。日常パートでスイーツを作っていたキャラクターたちが「戦う」という選択をする、その気持ちの道筋も考えていくなかで、キラキラルを奪われる・取り戻す、という発想が出てきたんです。

田中:たしか貝澤(幸男)監督だったと思いますが、スイーツに込める気持ちはなんだろうと考えたときに、それは「大好き」だろうとおっしゃったんです。スイーツは、食べてもらう相手がいて、その人のことが大好きだから作るもの、想いを相手に届けるもの。その「大好き」を奪う存在には、やはり立ち向かうはずだろうと。そこから、「大好き」を「心の栄養」と言い換えたりして、キラキラルが生まれました。

▲第7話『ペコリン、ドーナツ作るペコ~!』(2017/03/19放送)より

▲第7話『ペコリン、ドーナツ作るペコ~!』(2017/03/19放送)より


神木:そのうえで抽象的だという自覚はあったので、お子さまに伝えるうえでは、目に見える粒状のビジュアルにしようと。なんとなくでもわかってくれたら……と思っていたんですが、実際に放送が始まってみると、そこは大丈夫だったみたいです。きちんと観てくれてるなぁと感じましたね。

田中:子供たちは1話から、「スイーツにキラキラルが入ってるんだよ~」と、受け入れてくれたみたいですね。

光っている物質が「キラキラル」。第17話『最後の実験!変身できないキュアホイップ!』(2017/05/28放送)より

光っている物質が「キラキラル」。第17話『最後の実験!変身できないキュアホイップ!』(2017/05/28放送)より


 

――プリキュアたちの戦い方も、これまでのシリーズのような肉弾戦ではなく、キラキラルを操る形になりました。「プリキュア」の脚本を長く書かれている田中さんとしては、作劇面で違いを感じる部分などありましたか?

田中:僕としては今までの「プリキュア」と同じ意識で取り組もうと思いました。プリキュアは拳に気持ちを乗せて戦いますが、キラキラルそのものが「大好き」という気持ちなので、「相手に気持ちをぶつける」という意味では同じなんです。

▲第12話『敵は…モテモテ転校生!?』(2017/04/22放送)より

▲第12話『敵は…モテモテ転校生!?』(2017/04/22放送)より


 

――もうひとつ企画に関して、6人の個性を前面に押し出すというのも、初期から共有されていたそうですね。

神木:その点は、『ゴープリ』(『Go!プリンセスプリキュア』)の経験から思ったことでした。『ゴープリ』では、「プリンセス」という存在を見たときの憧れに近い感情を、お子さまに持ってほしかった。それが描くべきポイントで、実際にやりきることができたと思っています。


ありがとう『Go!プリンセスプリキュア』! はるかとゆいがくれた、子どもの夢へのあたたかいエール

一方で見方を変えると、お子さまに持ってもらうその感情が、キャラクター間で近いとも言えたんです。『ゴープリ』においてはそれが正解だったわけですが、今回は、キャラクターごとにお子さまから持ってもらえる感情を、全然違ったものにしてみたいと思いました。

いちかを見たときの感情や、ひまりを見たときの感情、それぞれのキャラクターの違った魅力を(子どもに)「理解」してもらう、違った感情を持ってもらう。それがひとつ、『プリアラ』でやりたいことでしたね。個性が直感的に感じられる「アニマルスイーツ」をキャラクターそれぞれに当てはめたのも、そういった理由が大きいです。

▲第7話『ペコリン、ドーナツ作るペコ~!』(2017/03/19放送)より

▲第7話『ペコリン、ドーナツ作るペコ~!』(2017/03/19放送)より


田中:『Go!プリンセスプリキュア』は本当に素晴らしい作品だと思っていて、シリーズ構成としても全く悔いがないんですけど、神木さんがおっしゃったような「多様性」をテーマのひとつに据えたなら、たしかに『ゴープリ』に共感してくれた方々とはまた違う方々にも届けられるんじゃないかと思いましたね。

キャラをとにかく個性的に、魅力的に描いてほしいという点は、各話のライターさんにも特にお願いしました。観てくださる人が、このキャラクターを大好きだって思えることが一番ですから。

▲第35話『デコボコぴったり!ひまりとあおい!』(2017/10/08放送)より

▲第35話『デコボコぴったり!ひまりとあおい!』(2017/10/08放送)より

自分の大好きを貫いた結果、未来が見える

――今回はメインキャラが6人いながら、お当番回を多く設けて、丁寧に各キャラの成長を追っていましたよね。

田中:そうですね。まず作品のフォーマットとして、各話ごとのアニマルスイーツをお話に絡める必要があったり、1分間クッキングがあったりと、本作は例年よりもドラマを組める尺が短い話数がありました。やりたいことを全部やろうとすると終わらない。その取捨選択をするなかで、やはりプリキュアになった女の子たちの感情や1年間を描いていくのが「プリキュア」だろうと思ったので、そこを重点的に描くべきだと早い段階で提案しました。その流れで、お当番回の割合が大きくなっています。

▲第31話『涙はガマン!いちか笑顔の理由!』(2017/09/10放送)より

▲第31話『涙はガマン!いちか笑顔の理由!』(2017/09/10放送)より

――ちなみに、田中さんがあきらのお当番回をよく担当されているのは、何か理由があるのですか?

田中:あきら/ショコラを出したいと提案したのが僕だったんです。最初に個性的な5人を出すと聞いたときに、子供たちにとって憧れのひとつとなるような中性的でかっこいいお姉さんは入れたいと。言った以上は自分が責任持って書こうと思いました。こういうキャラを書いたことはなかったんですけど、だからこそやれた気がします。

▲あきら登場回、第6話『これってラブ!?華麗なるキュアショコラ!』より

▲あきら登場回、第6話『これってラブ!?華麗なるキュアショコラ!』より

――ファンも多いキャラクターになりましたね。

神木:今回はグループとしてではなく、個人単位でファンを作ってもらうのがコンセプトでした。それぞれに違うモチーフをつけて、お当番回に注力して、キャラクターソングを作って。細かいところだと、後期エンディングテーマ(シュビドゥビ☆スイーツタイム)にも、「ホイップ、ジェラート、カスタード♪」っていうお当番カットがあるんですよね。

『プリアラ』は商品の売上を見ても、みんなが共通で使うアイテムはもちろん、お洋服やお人形などのキャラクターをモチーフにした商品がよく出ていて、キャラクターを深掘りして見せていった効果があったんじゃないかなと思っています。

――毎週のオンエアを観ていても、6人の物語というよりも、ひとりの物語が6つ交わった物語……といったような印象を受けます。

田中:イメージとしてはありましたね。6人で集まるけれど、何もかも同じ考え方になるわけではない。それぞれの個性は尊重すべきものとして考えました。そのうえで、女の子たちが『大好き』を守るために行動を共にしていく。その1年間を切り取ろうというコンセプトでした。

――それぞれの個性は、何が「大好き」なのかで特に表されていました。40話台の最後のお当番回では、それが夢やこれからやりたいことつながるという形で着地しましたね。

田中:そうですね。最初から明確に「夢」というテーマが存在していた『ゴープリ』は、その想いをどう貫いていくのかというお話でした。「強く、やさしく、美しく」ですね。今回はもう少しその前の段階、夢が生まれるまでの段階を描いています。

神木:みんなが「大好き」に向き合うお話なんですよね。

田中:いろんな人がいていい、いろんなものの考え方があっていいんだよというなかで、それぞれが自分の「大好き」を貫いていった結果、未来の形が見えたのかな……と。

第41話『夢はキラ☆ピカ無限大!』(2017/11/26放送)より


第42話『歌えWOW!あおいラストソング!』(2017/12/03放送)より


第43話『かくし味は勇気です!ひまりの未来レシピ!』(2017/12/10放送)より


第44話『雪に秘めた想い!愛をさけべ、あきら!』(2017/12/17放送)より


第45話『さよならゆかり!トキメキ☆スイーツクリスマス!』(2017/12/24放送)より


第46話『ノワール大決戦!笑顔の消えたバースデー!』(2018/01/07放送)より

徐々にシビアに、心そのものを描く展開へ

――作品全体の流れを振り返ると、想いを込めたスイーツのキラキラルを奪われる・取り戻すところから始まって、人の心から直接キラキラルを奪われる話になり、心を闇に染められる「光」と「闇」の話へと、どんどん深化していきましたね。

田中:基本的にはポップでかわいく、子どもたちに楽しんでもらおうという作風で間違いないんですが、そのうえで徐々に「心」そのものに踏み込んでいきたいという意識がありました。そのトリガーとして敵勢力も心そのものに干渉していくようになる。少しずつステップを上げていった形です。

▲第23話『翔べ!虹色ペガサス、キュアパルフェ!』(2017/07/16放送)より

▲第23話『翔べ!虹色ペガサス、キュアパルフェ!』(2017/07/16放送)より


▲第47話『大好きをとりもどせ!キュアペコリンできあがり!』(2018/01/14放送)より

▲第47話『大好きをとりもどせ!キュアペコリンできあがり!』(2018/01/14放送)より

――脚本家としては通常、早めに明確な対立軸を出したいところはありますよね。最初の1クールでいえば、敵勢力の全容も明かされませんでした。

田中:モチーフがスイーツということもあり、最初から主人公たちにシビアな使命感を与えずに、徐々に彼女たちの視野が広がっていくようにしたいという監督からのオーダーが根本にあったんです。なので最初は敵が何者なのかも分からない。そういう構成ならば、新しい敵が出てくるにしたがって、徐々に心そのものを描いていける。キャラクターそれぞれのパーソナルな部分に踏み込むことにもつなげられると思いました。

神木:だんだんわかっていくという構成にすれば、観ているお子さまが世界を知っていく過程にも、より近づけられるんですよね。最初から敵の大義名分があると、わかりやすい反面、実際の世界とは違うものになってしまう。今回は、そうしないチャレンジをしてみましょうという話になったんです。

▲第9話『キラパティがあなたの恋、叶えます!』(2017/04/02放送)より

▲第9話『キラパティがあなたの恋、叶えます!』(2017/04/02放送)より

――そこから第11話(決戦!プリキュアVSガミー集団!)で最初の区切りがついて、ジュリオが登場しました。全体のお話をワンステップ進めるという意味では、ジュリオにどんな役割を託したのでしょうか?

田中:心の光と闇をダイレクトに描く終盤への橋渡しを考えたときに、ひとつの物事に対して良く思う人と悪く思う人がいるということを描く必要があって、ジュリオはそういったことを描き始めるための存在でした。誰かの「大好き」なものは、別の人の「大嫌い」なものかもしれない。だから、いちかやキラリンたちはスイーツが大好きだけど、ジュリオはスイーツが(表向きは)大嫌いなんです。人によって捉え方や気持ちの違いがあることを、あえて双子という形で描きました。

▲ジュリオ(左)。第12話『敵は…モテモテ転校生!?』(2017/04/22放送)より

▲ジュリオ(左)。第12話『敵は…モテモテ転校生!?』(2017/04/22放送)より

――キラリンとピカリオの力でキュアパルフェが誕生して、3クール目には、グレイブと、とにかく心をえぐってくるエリシオが出てきましたね。

田中:20話くらいのタイミングで、全体構成をエンディングまで完成させる作業がありましたね。当然、第1話の前から青写真を描いて書いてはいるんですが、集団制作なので何もかも当初のまま進むことはなくて、打ち合わせを進める過程でいろいろなものを落としこんでいきました。そのなかで個性を描くことからスタートしたこのお話は、大好きと大嫌い、気持ちの表と裏、光と闇などがテーマになってくるだろうと改めて思えて。それを強化するための存在として、エリシオとグレイブを出すことにしたんです。

▲エリシオ。第24話『転校生は妖精キラリン!?』(2017/07/23放送)より

▲エリシオ。第24話『転校生は妖精キラリン!?』(2017/07/23放送)より


▲グレイブ。第24話『転校生は妖精キラリン!?』(2017/07/23放送)より

▲グレイブ。第24話『転校生は妖精キラリン!?』(2017/07/23放送)より

――グレイブがディアブルの力を使っていちご坂の人たちを粘土人形にした第39話(しょんな~!プリキュアの敵はいちご坂!?)は特に衝撃でした。心を完全に支配しちゃっていますよね。

神木:小出しにしてきたものを一度、第39話で出し切ることにしたんです。

田中:このあたりでさらに驚きを積んで、話をもう一弾跳ねさせたいという監督からのリクエストもありましたし、最終局面で無の世界を作るなら、このタイミングでいちご坂をパニックにするのもアリだと思いました。いちご坂は、そもそもノワールとルミエルが100年前に戦った場所で、今回の戦いが始まった場所でもありますしね。

神木:第11話(決戦!プリキュアVSガミー集団!)で街のみんなから力をもらって戦う展開をやっていたからこそ、粘土人形になってしまう展開も活きると思いました。

▲第39話より

▲第11話より

――身近な人が襲ってくる様子なんかはゾンビ映画のようで、けっこう怖さもありますよね。

神木:そこは演出や画作りで、不気味だけどプリアラの世界観をギリギリ保っているラインを慎重に探りました。街中の人が憑依されてしまうのは怖いけれど、粘土人形のデザイン自体はコミカルで、「ネンネン!」のかわいい感じも活かしつつ。闇のイメージも、完全な暗黒ではなく紫色を強めにしました。

「怖くなりすぎないようにお願いします」というのは、合言葉のように各所で共有していましたね。実際のお子さまの反響も、もちろん個人差はありますが、ここまでなら受け入れられるんだなと思えるものでした。

田中:シリアスな展開ができたのは、最初に構築していたビジュアルに助けられた部分も大きいです。すごくシリアスな絵柄でやったら、本当に怖かったはず……。

 

ひとつの大好きでぶつかっても、別の大好きでつながることもできる

――――第47話でペコリンが「キュアペコリン」になったのには驚きました。これは早い段階から考えていたことなのでしょうか?

田中:それぞれの個性を描くというテーマから考えても、ペコリンがいわゆる妖精ポジションで終わらずにプリキュアになるというのは初期段階から考えていて、メインスタッフのみんなと話していました。ピカリオは途中パティシエ修行をやめていたり、眠っている時期があったので間に合いませんでしたが……。
余談になりますが、昨年末に、東京駅でオモチャの「いただきますペコリン」を大事そうに抱いた女の子とすれ違いまして……。そのときには全話分のシナリオを書き終わっていたんですが、「オモチャを買ってくれた子供たちがキュアペコリンを見て喜んでくれたらといいな」と思ったりしました。

▲第47話『大好きをとりもどせ!キュアペコリンできあがり!』(2018/01/14放送)

▲第47話『大好きをとりもどせ!キュアペコリンできあがり!』(2018/01/14放送)

――光でも闇でもない「虚無」(エリシオ)がラスボスになるという展開も、1クール目を観ていたころからは想像もつきませんでした。これは、どんなふうに発想していったのでしょうか?

田中:エリシオがラスボスになること自体は彼の初登場時からなんとなく考えていて。ノワールの帰結も探っていくなかで、ふたりを同一の存在にしようと思いました。

▲第46話『ノワール大決戦!笑顔の消えたバースデー!』(2018/01/07放送)より

▲第46話『ノワール大決戦!笑顔の消えたバースデー!』(2018/01/07放送)より


「虚無」に関しては、心の光と闇の対決には決着がつかないだろうという考えがもとになっています。「大好き」と「大嫌い」で考えてみてもそうです。たとえばジュリオは「スイーツが大嫌いだ」と言っていましたけど、それ自体はひとつの個性であって別に悪いことじゃないんですよね。個性には、たしかに良い印象を持たれるものと、悪い印象をもたれるものがあるかもしれないけれど、どちらも悪ではありませんから。

神木:いまの時代、違っていいんですよね。

田中:その考えを突き詰めると、ノワールが持つに至った感情、彼の好きも嫌いも決して否定できるものではないんです。もしも「正義はこうだから、あなたは倒す!」みたいな決着を書いたら、それは今の時代にそぐわないし、プリキュアたちにとっての都合の良い話にしかならないなと。

そこで本当に悪いものってなんだろうと考えたとき、両者の考えや想い自体を否定してしまうもの、すべての感情を否定してしまうものだろうと思いました。それは個性を失うに等しいので、一番悲しいことだろうなと。……ただ、エリシオはそれを善意でやっているから、ややこしいんですけどね。

いまの時代って、みんなが心から納得できる答えが出ないことの方が多いと思うんです。それぞれ考えや立場が違うから、ひとつの概念で染めることで解決はできない。『プリアラ』ではそれをありのまま描くべきだろうと思いました。

▲第39話『しょんな~!プリキュアの敵はいちご坂!?』(2017/11/12放送)より

▲第39話『しょんな~!プリキュアの敵はいちご坂!?』(2017/11/12放送)より

神木:いちかが第48話「さいごの戦い!世界まるごとレッツ・ラ・まぜまぜ!」で言った、「大好きはいっぱいあるから一つの大好きでぶつかっても、別の大好きでつながることもできる…」っていうセリフが、私の一番好きなセリフで。いま仁さんがおっしゃってくれたことが、ギュッと詰めこまれていますよね。ぶつかりあった末に、ほかのところで結びつこうなんて、大人でも難しいことだと思いますけど、それでもプリキュアはやってくれた。この歳になった自分自身から見てもプリキュアはすごいなと、ヒーローだなと改めて思えましたね。

田中:監督からのリクエストだったんですけれど、『プリアラ』の世界って歴代シリーズのような「妖精界」がなくって、ひとつの世界なんですよね。だからこそ、こういうことが描けたのかもしれません。基本的な価値観が同じひとつの世界だから、好きな人、嫌な人がいても、好きなもの、嫌いなものがあっても、生きていくしかないし、関わっていくしかない。ぶつかり合う前提のなかでどうしていくのかということを、ずっと考えて書いていました。

▲第48話『さいごの戦い!世界まるごとレッツ・ラ・まぜまぜ!』(2018/01/21放送)より

▲第48話『さいごの戦い!世界まるごとレッツ・ラ・まぜまぜ!』(2018/01/21放送)より

――大人にも響くわけだ……のひと言です。

神木:お子さまにも、それがほんの少しでも伝わると嬉しいです。

田中:3歳から見るアニメだと考えると、わからない描写、わからない心の動きというのは当然あるわけですが、僕らが心配していたキラキラルの概念ですら伝わったので……。キャラクターの魅力を楽しんでもらえればもう十分にうれしいんですが、観てくれた子どもたちのなかになんとなく残って、大人になって「あのとき言っていたのはこういうことだったんだ」なんて気付いてくれたら本当に嬉しいですね。

――それでは最後に、放送を間近に控えた第49話(最終話)の見どころを、ひと言お願いします。

田中:第46話から描いてきたいちかの長い誕生日が終わって、エリシオの話も帰結して、ひと区切りついたようではありますが……まだあります。最終話は、新プリキュア登場のバトンタッチ回でもありますが、ただのバトンタッチではなく、いちかがどういう未来を歩んでいくのかにフォーカスした、『プリアラ』の本当のエピローグになっていますので、最後まで楽しんでご覧ください!

神木:第49話のサブタイトルは「大好きの先へ!ホイップ・ステップ・ジャンプ!」です。「大好き」という感情に向き合ってきた一年間の締めくくりにふさわしい、『キラキラ☆プリキュアアラモード』を凝縮した内容になりましたので、ぜひ観てほしいなと思います。総括だけど、らしさもある。寂しいけど、寂しくない。きっと素敵だよねと思っていただけるエピソードだと思いますので、ぜひ楽しみにしていてください!

[取材&文・小林真之輔]
 

各話場面カット

各話を時系列に紹介です。リンクの先には、さらに詳細ページに飛びます。


第1話『大好きたっぷり!キュアホイップできあがり!』(2017/02/05放送)


第2話『小さな天才キュアカスタード!』(2017/02/12放送)


第3話『叫べライオン!キュアジェラート!』(2017/02/19放送)


第4話『3人そろってレッツ・ラ・まぜまぜ!』(2017/02/26放送)


第5話『きまぐれお姉さまはキュアマカロン!』(2017/03/05放送)


第6話『これってラブ!?華麗なるキュアショコラ!』(2017/03/12放送)


第7話『ペコリン、ドーナツ作るペコ~!』(2017/03/19放送)


第8話『キラパティオープン…できません!』(2017/03/26放送)


第9話『キラパティがあなたの恋、叶えます!』(2017/04/02放送)


第10話『ゆかりVSあきら!嵐を呼ぶおつかい!』(2017/04/09放送)


第11話『決戦!プリキュアVSガミー集団!』(2017/04/16放送)


第12話『敵は…モテモテ転校生!?』(2017/04/22放送)


第13話『ムリムリ!ひまり、まさかのデビュー!』(2017/04/29放送)


第14話『お嬢さまロックンロール!』(2017/05/07放送)


第15話『愛ゆえに!怒りのキュアショコラ!』(2017/05/14放送)


第16話『キケンな急接近!ゆかりとリオ!』(2017/05/21放送)


第17話『最後の実験!変身できないキュアホイップ!』(2017/05/28放送)


第18話『ウワサの主は強敵ビブリー!』(2017/06/04放送)


第19話『天才パティシエ!キラ星シエル!』(2017/06/11放送)


第20話『憧れまぜまぜ!いちかとシエル!』(2017/06/25放送)


第21話『なんですと~!?明かされるシエルの正体!』(2017/07/02放送)


第22話『やめてジュリオ!憎しみのキラキラル!』(2017/07/09放送)


第23話『翔べ!虹色ペガサス、キュアパルフェ!』(2017/07/16放送)


第24話『転校生は妖精キラリン!?』(2017/07/23放送)


第25話『電撃結婚!?プリンセスゆかり!』(2017/07/30放送)


第26話『夏だ!海だ!キラパティ漂流記!』(2017/08/06放送)


第27話『アツ~いライブバトル!あおいVSミサキ!』(2017/08/13放送)


第28話『ふくらめ!ひまりのスイーツ大実験!』(2017/08/20放送)


第29話『大ピンチ!闇に染まったキュアマカロン!』(2017/08/27放送)


第30話『狙われた学園祭!ショコラ・イン・ワンダーランド!』(2017/09/03放送)


第31話『涙はガマン!いちか笑顔の理由!』(2017/09/10放送)


第32話『キラッと輝け6つの個性!キラキラルクリーマー!』(2017/09/17放送)


第33話『スイーツがキケン!?復活、闇のアニマル!』(2017/09/24放送)


第34話『小さな大決闘!ねこゆかりVS妖精キラリン!』(2017/10/01放送)


第35話『デコボコぴったり!ひまりとあおい!』(2017/10/08放送)


第36話『いちかとあきら!いちご坂大運動会!』(2017/10/15放送)


第37話『サリュー!シエル、フランスへ去るぅー!?』(2017/10/22放送)


第38話『ペコリン人間になっちゃったペコ~!』(2017/10/29放送)


第39話『しょんな~!プリキュアの敵はいちご坂!?』(2017/11/12放送)


第40話『レッツ・ラ・おきがえ!スイーツキャッスルできあがり!』(2017/11/19放送)


第41話『夢はキラ☆ピカ無限大!』(2017/11/26放送)


第42話『歌えWOW!あおいラストソング!』(2017/12/03放送)


第43話『かくし味は勇気です!ひまりの未来レシピ!』(2017/12/10放送)


第44話『雪に秘めた想い!愛をさけべ、あきら!』(2017/12/17放送)


第45話『さよならゆかり!トキメキ☆スイーツクリスマス!』(2017/12/24放送)


第46話『ノワール大決戦!笑顔の消えたバースデー!』(2018/01/07放送)


第47話『大好きをとりもどせ!キュアペコリンできあがり!』(2018/01/14放送)


第48話『さいごの戦い!世界まるごとレッツ・ラ・まぜまぜ!』(2018/01/21放送)


第49話「大好きの先へ!ホイップ・ステップ・ジャーンプ!」(2018/01/28放送)

 

放送終了後のメッセージ

放送終了後に、神木プロデューサーよりファンの方への感謝のツィートがありました。

そして、プリキュアはキュアホイップからキュアエールへバトンを引き継ぎました。

 

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作品情報


【あらすじ】
主人公の宇佐美いちかはスイーツが大好きな中学2年生。海外で働く母が帰ってくるときいてショートケーキを作っていたところ、おなかがぺこぺこのペコリンに出会います。いちかの作ったショートケーキには想いがつまっており、スイーツに宿るエネルギー「キラキラル」があふれ出ていました。そこへ「キラキラル」を狙う悪い妖精が現れ、ショートケーキを真っ黒にしてしまいます。「大好き」という想いがつまったショートケーキを守るため、いちかは伝説のパティシエ・プリキュア「キュアホイップ」に変身するのです……!

【声優】
キュアホイップ/宇佐美いちか:美山加恋
キュアカスタード/有栖川ひまり:福原遥
キュアジェラート/立神あおい:村中知
キュアマカロン/琴爪ゆかり:藤田咲
キュアショコラ/剣城あきら:森なな子
キュアパルフェ/キラ星シエル:水瀬いのり
ペコリン/かないみか

【スタッフ】
シリーズディレクター:暮田公平、貝澤幸男
シリーズ構成:田中仁
キャラクターデザイン:井野真理恵
美術デザイン:飯野敏典
音楽:林ゆうき
スイーツ監修:福田淳子

公式サイト(東映アニメーション)
プリキュア公式YouTubeチャンネル
プリキュア公式instagram

(C)ABC-A・東映アニメーション
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