リーダーに向いていないと悩んでいたタツヒコの変化とは……?「ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第41回！

2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと音楽でお届けする連載です。

今回は、劇団アルタイルのリーダー・要タツヒコのストーリーです。いつも優しくメンバーを見守るタツヒコの思いが、彼の親友である渋谷ヨウスケにだけ語られます。

■□■□■□■□■過去の連載はこちらから！■□■□■□■□■
・【第1回】ついに連載スタート！
・【第2回】ヒジリとサクヤの心境は？
・【第3回】今回の主役は東雲ユウリ！
・【第4回】霞サクヤが主人公！
・【第5回】千川リツ視点で描かれる

・【第6回】グループ結成前が語られる！
・【第7回】劇団アルタイルとの出会い
 ・【第8回】劇団アルタイルの思い出
 ・【第9回】面接官は誰だ!?
・【第10回】続・面接官は誰だ!?

・【第11回】最終審査スタート！
・【第12回】オーディションは続く！
・【第13回】三次審査直前の一幕
 ・【第14回】最終審査終了直後の物語
 ・【第15回】劇団アルタイルにようこそ

・【第16回】先輩＆後輩禁止！
・【第17回】お披露目に向けてレッスン開始！
・【第18回】ボイストレーニングをするも……
・【第19回】タツヒコから語られた言葉とは？
・【第20回】知らされたアル劇の新企画とは!?

・【第21回】19人全員でのソロ曲制作の真意とは？
・【第22回】ソロ曲の資料が送られてこない!?
・【第23回】ついにソロ楽曲配信がスタート！
・【第24回】夕焼け空を見上げるトウマの過去！
・【第25回】ユウリの手紙の内容とは？

・【第26回】千川リツが大崎イズモと出会い
 ・【第27回】同級生に再会したリンタロウは……。
・【第28回】ギャップや軋轢を感じるイズモ
 ・【第29回】自身の熱意に気付かされたミカド
 ・【第30回】朝が苦手だったサクヤ

・【第31回】音楽番組のソロ出演が決まったマキ
 ・【第32回】挑発的な態度のモデル仲間にヒジリは
 ・【第33回】ムードメーカー・ヨウスケの悩み
 ・【第34回】オーディションでアクシデント!?
・【第35回】タツヤの心境に迫る！

・【第36回】ノブアキのアル劇に対する思いとは？
・【第37回】ダイスケからの甘い差し入れ――
・【第38回】心ない言葉を耳にしてしまったタイキ
 ・【第39回】カズキとリンタロウの思い出
 ・【第40回】引っ込み思案を変えたいジュンペイ
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劇団アルタイル『運命のScramble』

【あらすじ】
劇団アルタイルのリーダー・要タツヒコ。仕事に学業にメンバーのフォローに……と忙しい日々を送る彼だが、アル劇結成当初、自分はリーダーに向いていないと感じていた。いつも優しく公平無私な彼が抱えていた悩みと、現在に至るまでの変化とは？

【ストーリー】
「おーい、ターツ！」
　聞き慣れた呼び声に、タツヒコはハッとしてまばたいた。
「三十分経ったぞ～」
　昼下がりの共有ルーム。窓から差し込む光を背負ったヨウスケが、ソファに沈み込んだ自分を覗き込んでいる。ああ、そうだ。三十分経ったら起こしてくれと頼んで、仮眠したのだった。
（まぶしい）
　目を細め、何度かまばたいて--ふいにクシャミが出た。
「うわっ。だいじょぶか、タツ。風邪じゃないよな」
「ちがう。まぶしい……」
「それ。タツ、昔っからたまに言うよなぁ」
　目をこすりながら体を起こすと、妙に楽しげなヨウスケが隣に座ってきた。
「てか、ブランケット持ってきて寝てるタツにそっとかけた俺、健気じゃない？」
「……本当だ。いつの間に」
「ほらほら。褒めろー」
「褒めるというか……ここはまず、礼じゃないか？　ありがとう」
「おー。よきにはからえー」
（ああ、これは。大丈夫だ）
　ヨウスケが俺の隣で機嫌よくしているときは、いろいろうまくいっているときだ。自分の感覚よりよほどわかりやすいバロメーターだから、実はこっそりアテにしている。
「ふぁ……よく眠ったよ。いまはみんな出払ってるし、まぁ、少しぐらいだらしなくてもいいだろう」
「おー。いいと思うぜ。ほんとお前、最近うまくなったなぁ」
「うまく？　なにが？」
「なんつーのかなあ。ちょい言い方が悪いかもしんないけど、手ぇ抜くのが」
「ああ、うん」
　なにを言われているのかわかったから、素直に頷いた。
「やっと肩の力が抜けたんだ」
「あーそれだそれ！　肩の力。最初は入ってた、ガッチガチに」
　大げさに言うヨウスケに、苦笑した。
「さてはお前、わかってたくせに言わなかったな。俺がリーダーには向いてないって」
「いやぁ、タツならやれるって思ってましたー」
　そう言ってヨウスケがふいっと目を逸らしたから、軽く蹴飛ばしてやった。
「俺の目を見て言ってみろ？」
「いやいやマジだって！　この間の公演で、チームレッドのリーダーになってみて、タツのすごさが身に染みたんだって！」
「まったく……」
　軽口をたたきあいながら、こんな気安い会話も久しぶりだな、とぼんやり思う。

　思えばここまで無我夢中だった。
　リーダーとしてやるべきことはたくさんある。ざっくり言えばグループ全体の統率--だが、実際は事務所とメンバーの仲立ちに始まり、スケジュール管理のサポート、調整、意見の取りまとめ、いざこざの仲裁や個々のメンタルケアまで多岐に渡る。
　その上で当然、自分の稽古や仕事はきっちりこなさなければならない。
（最初は本当に目眩がしたな）
　我ながらやや几帳面で、隅々まできちんとしていないと気が済まないタチだ。すべてを整然と……などと思っていれば、理想と現実のギャップに目眩を起こすぐらい、当然だ。
（なにしろ、12人だ）
　自分のことだけでも手一杯なのに、個性豊かなメンバーが自分の思い描くとおりに動いてくれるはずがない。
　ぶつかったり、転んだり。すれ違ったり。
　泣いたり、怒ったり、呆れたり--笑ったり。
　全部が全力で、終われば立ち上がって、手を繋いだ。
（ああ、そうか）
　最初は１人で戦おうとしていたから、苦しかった。
　12人になって、楽になった。
　19人になったから、楽しくなった。

「なぁに楽しそうに笑ってんの、タツ」
「ここまでいろいろあったなと思って」
「ありましたねぇ」
「でも、よかった」
　ヨウスケとふたり、思い切って劇団アルタイルに移籍したこと。
　リーダーを任されたこと。
　--いま、みんなと一緒に、ここにいること。
（全部自分で決めて、ここまで来られて本当によかった）
　ソファから立ち上がって、伸びをした。
「さて。そろそろ通学グループが帰ってくる時間だな。揃ったらミーティングをしたいんだが、その前にお前の意見を聞いてもいいか？」
「もっちろん。……しっかしお前、たった三十分でほんとスッキリしちゃうのな」
　ヨウスケが言って、肩をすくめた。
「だいたい、よく起きられるよなぁ。俺ムリ、絶対爆睡しちゃう」
「ヨウスケは、寝ようと思って寝るから起きられないんだ」
「？　なにそれ」
「起きようと思って寝ればいいんだよ」
　ごく当たり前のことを言ったつもりだったのに、ヨウスケがぷはっと勢いよく吹き出した。
「……いま、なにかおかしいことを言ったか？」
「いやいや」
　笑いが収まらないまま、ヨウスケが目許を擦りながら、言った。
「タツさぁ。やっぱ、向いてるよ。リーダー」

今回登場した人物をご紹介！

◆要タツヒコ（CV：大海将一郎）
劇団アルタイルのリーダー。真面目かつ落ち着いた性格で、リーダーシップとカリスマ性に恵まれており、メンバーからの信頼は厚い。

◆渋谷ヨウスケ（CV：小松準弥）
タツヒコの親友にして、メンバー全員のお兄さん的ポジション。ノリは軽いが、面倒見が良く、頼りになる存在。

『劇団アルタイル』最新情報

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・劇団アルタイルユニットドラマ「Twinkling stars RED」