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マーティ・フリードマンが語るアニメ『B: The Beginning』音楽の世界

『B: The Beginning』マーティ・フリードマン インタビュー|日本の音楽を全世界に伝える“架け橋的な存在”を目指しました

2018年3月2日(金)より全世界同時配信となる、Netflixオリジナルアニメ『B: The Beginning』。3月7日に発売される本作のイメージアルバムには、世界的ギタリストとして知られるマーティ・フリードマンさんがプロデューサー、ギタリストとして全曲参加しています。

本作の主題歌「The Perfect World」を手掛けるのは、人気ロックバンドMAN WITH A MISSIONのボーカルのジャン・ケン・ジョニーさんと、KenKenさん(RIZE、Dragon Ash)。その他楽曲をアイナ・ジ・エンドさん&セントチヒロ・チッチさん(BiSH)、Koieさん(Crossfaith)、菅原卓郎さん(9mm Parabellum Bullet)、上田剛士さん(AA=)などが担当しています。

そんな超豪華ロックアルバムをプロデュースした、マーティさんにインタビューを実施。アーティストのキャスティングや、楽曲に込めた思い、さらには曲作りに関するルーツについて語っていただきました。

マーティのアルバムに、超豪華アーティストが参戦!

――マーティさんは過去に『マリア様がみてる』(※1)の楽曲「きれいな旋律」も担当されています。普段からアニメをご覧になられているのでしょうか?

『マリア様がみてる』は男性向けか女性向けなのかが曖昧な部分があったのが興味深くてハマっちゃって(笑)。作品を読んでいる時に「きれいな旋律」のメロディーが浮かびました。アニメを観た時の気持ちを、直接メロディーに表現したケースでしたね。

――『B: The Beginning』のイメージアルバムの話が来た時の印象を教えてください。

マーティ:話を聞いてすぐ、誰と一緒にアルバムを作ろうかを考えました。とりあえず僕が思いつく、理想的なアーティストたちをリストアップしていって。みんなOKしてくれたのは驚いたし、嬉しかったですね。僕自身みなさんのファンでしたし、自分が好きな人たちと一緒にアルバムを作る機会なんて、めったにないですから。

――今回のアルバムにはBiSHのアイナ・ジ・エンドさんや、セントチヒロ・チッチさんも参加されています。「Wasted Tears」のソロパートでは2人がトークをするパートがあったのですが、あれは全てアドリブだったのでしょうか?

マーティ:そうですね。関西弁バリバリのアイナさんに「一番強烈な関西弁で、僕に文句を言っているようなナレーションをして下さい」とリクエストしたら、「マーティンめちゃめちゃ“いちびっとる”やん!」と言われて(笑)。スタジオで爆笑が起こりましたね。

――BiSHっぽさを残しつつも普段と違う一面もある、面白い曲だと思います(笑)。他にもコンポーザーとして、AA=の上田剛士さんも参加されていますね。

マーティ:僕は本当に昔から上田さんのファンで。このプロジェクトを通して、ようやく一緒に仕事をすることができました。「Spirit Never Fading」という曲は、僕と上田さんのイメージがたっぷりと融合しているような、珍しい曲になっていると思います。

※1:今野緒雪氏原作のライトノベル作品で、2004年にTVアニメ化された。マーティは本作のOVA第3巻~第5巻のエンディングテーマ「きれいな旋律」(歌:KOTOKO)の作曲を担当している。

ファンの人たちが絶対に驚くような楽曲を目指した

――次に、楽曲制作の流れについて教えてください。

マーティ:主題歌「The Perfect World」の楽曲に取り掛かる前に、まず僕とMAN WITH A MISSIONのジャン・ケン・ジョニーは、アニメを全話観たんです。それから、それぞれのアニメの印象を僕は音楽に、ジャン・ケン・ジョニーは歌詞に表現して。それらを組み合わせて、1つの楽曲を作りました。

それぞれのアニメの解釈を曲に表現するといったプロセスをみんなが気に入ってくれたので、それから全曲同じ工程で作っています。特にCrossfaithのKoieさんはアニメが好きで、深い印象を作品から受け取っていたみたいです。

――アニメを観終わって主題歌を聴いた時に、カチッと組み合うような印象がありました。

マーティ:ここまで存在感のある主題歌というのを、僕は今まで経験したことが無いんですよ。普通の主題歌はタイアップ的なものですが、これは全く違う。アニメの最後の方に流れるから印象がとてもディープだし、非常に責任のある部分ですよね。

だから監督がデモを聞いて「これはアニメのイメージとそっくりだよ、大丈夫だよ」と言ってくれたときは安心しました。アニメのおかげで、楽曲の深みが増した印象もあります。

――現在主題歌のMVも公開されていますよね。アニメとの組み合わせもあり、物語を深く楽しめた印象がありました。

マーティ:主題歌を「The Perfect World」に決める前に、僕は8パターンほど別のアイディアを出していたんです。最終的にスタッフのみなさんにデモを気に入ってもらえたので、この曲に決めました。

――お互いに信頼しあって楽曲を作り上げたのですね。ところで、全体的に英語の歌詞が多いのは、Netflixで世界配信されるのを見越していからでしょうか?

マーティ:そうですね。もう一つの理由は、全世界に日本の音楽の良さを伝えるといった、架け橋的な存在になりたいというのもありました。今は海外の邦楽ファンって、僕みたいなマニアの人たちしかいないんですよ(笑)。このアルバムを日本の音楽への入り口にするならば、英語で歌ってもらった方が入り口を広げることになります。

プラス、日本にいるファン達に向けて、アーティストたちの新しい面を見せたかった。例えば、主題歌でジャン・ケン・ジョニーが超低音のボーカルをしたり。今まで聞いたこと無いジャンルにも挑戦していますし、ファンの人たちは絶対に驚くと思います。

そういう考え方をみんなで一人ずつ、色々試しながら楽曲を作っているので、今までにできなかったことが、いっぱいできた気がします。

――無茶を承知で言えば、このメンバーで開催するライブを見たいですね(笑)。

マーティ:非常にやりたいです。ありえない話ではないですよ?(笑)。

デモ曲を作った数は百回以上!? マーティが曲作りのルーツを打ち明ける

――マーティさんは全ての楽曲の収録に立ち会われたのでしょうか?

マーティ:0から100まで常にいました。本番のレコーディング前の準備段階から立ち会ってました。

――長期間のプロジェクトだったということでしょうか?

マーティ:モチベーションが高い頑張り屋が多いから、長時間だったんですけど、あっという間でした。僕からの色々なリクエストにも、みなさんトライしてくれましたね。

――具体的に、どのようなリクエストがあったのでしょうか?

マーティ:普段とは違った歌い方をしてみるとか。例えば9mm Parabellum Bulletの卓郎さん(菅原卓郎氏)は、シャウトを全くしないんですけど。でも彼なりのシャウトのトライが非常に珍しかったから、それを歌ってもらったり。

逆にCrossfaithのKoieさんは、シャウトの職人じゃないですか。だからそれ以外のハモリのパートとかでは僕も言いたい放題言って、色々試してもらいました(笑)。本当に頑張ってくれて、感動しましたね。

普段の現場では出せないものを、とにかくみんな満足するまでトライしようという感じでした。収録では、デモと違ったことをいっぱい頼んだんですけど、さらに良いものになって返ってきました。

――マーティさんの曲作りの姿勢や、アプローチの原点はどこにあるのでしょう?

マーティ:僕の原点は、とりあえずなんでもアリというところ。最初の段階では何度も何度もギターを弾いて、それを必ず録音する。後日、冷静になってもう一回聞くんです。何が良い曲になりそうかを選ぶときに、弾くことより聞くことの方が大事なんですね。

「このフレーズがカッコいい」とか弾いている達成感じゃなくて、「この部分を聴いたら、ちょっとゾクゾクする」という聞いている時の気持ち。例えこれを100回繰り返したとしても、良い曲が出ない時もあるんですよ。

――マーティさんはよく“いいじゃん”というフレーズを使うと思うんですけど、その“いいじゃん”を拾い上げていくんですね。

マーティ:そうです、“いいじゃん”ですね(笑)。一曲を作るのに、デモ曲も10回以上ブラッシュアップをしているので。

――そうすると、デモ曲とはどのくらい変わっていくのでしょうか?

マーティ:大げさではなく、「The Perfect World」はデモを何百個も作ってます(笑)。最初はプログレっぽい曲だったんですけど、 とてもボーカル向きのメリハリが強い曲になりました。

ファン必聴のアルバムが誕生した

――アニメを観た感想をお願いします。

マーティ:一番印象的なだったのは、アニメというより、映画を観ているとような感覚があったこと。それは多分、キャラクターがすごくしっかり作られているからかな。次に何が出てくるのかとても興味が湧いたし、考えさせてくれました。『B: The Beginning』には映画と変わらないような物語の深さがあって、僕が子供のころに観ていたカートゥーンとは全く違った印象でしたね。

――確かに、それぞれのキャラクターには現実にいてもおかしくないような細かい描写や設定があり、まるで海外ドラマを観ているような感覚になります。

マーティ:あともう一つ好きだったのが、自分の予想が必ず裏切られるということ。予想よりもさらに面白い展開になるから、毎回ビックリさせられましたし、感動しました。エンディングも、とてもカッコ良かったですね。

――本編には残酷な描写も含まれていますね。

マーティ:それも音楽を作る上で、表現したかった部分です。そういったグロテスク部分も印象的なんですけど、実はそんなに多くあるわけではないんですね。全体的にグロいアニメだとは絶対に思わないのですが、インパクトのあるグロさは確かにある。

僕はそういうコンセプトも音楽に表現したかったんです。例えば「The Blackened Light」は攻撃的で、バイオレンスを感じるような曲なんですね。アニメと同じように、あのメリハリが表現できないかと考えたんです。

――アニメを観てこの曲を聴くと、また印象が変わりますし、繰り返し楽しめますよね。

マーティ:そう言ってもらえるのは非常に嬉しいです。僕はアルバムが完成してから、もう一度アニメ観ましたけど、再発見が多かったですね。本当にアニメに相応しい楽曲だなと思いました。

歌詞もタイトルも意味が本当にアニメにリンクしている。アーティストのみんながアニメをちゃんと観てくれて、ちゃんと理解して、ちゃんとエンジョイしてくれています。どの楽曲を聴いても深くアニメが楽しめるようになっているので、ファン必聴のアルバムだと思いますね。

――最後に、アニメやイメージアルバムを楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。

マーティ:僕はアニメの曲を何回も作ったことがあるんですけど、これほど深く入り込んでアニメのストーリーやイメージを考えながらフルアルバムを作るのは初めてでした。すごくやりがいのあるチャレンジでしたし、歌ってくれた人たちや演奏してくれた人たちの魅力がたっぷり出ている楽曲だと思います。ぜひみんなにも楽しんで欲しいですね。

――ありがとうございました。

[取材/岩崎航太 文/島中一郎 撮影/Re-Zi]
 

アルバム情報

「B:The Beginning THE IMAGE ALBUM」

 

Netflix世界190ヵ国で配信されるプロダクションI.G制作のオリジナルアニメ『B: The Beginning』のイメージアルバム。マーティ・フリードマンがプロデューサー、ギタリストとして全曲参加。

アニメ主題歌として起用される楽曲には、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)とKenKen(RIZE, Dragon Ash)が参戦! その他にも豪華アーティスト参加のロックアルバム !

≪収録曲≫
01. The Perfect World
02. The Blackened Light
03. Giving Up The Ghost
04. Wasted Tears
05. Before The Beginning...CHAOS
06. Spirit Never Fading
07. Hero In The Night
08. RESCUE
09. Beautiful Freak
10. Catch Me In The Mayhem
11. The Perfect World(Guitar Version)

作品情報

Netflixオリジナルアニメ
『B: The Beginning』(英題 B:The Beginning)

配信:2018年3月2日(金)、Netflixにて全世界同時配信
エピソード:約23分/全12話
原作:中澤一登×Production I.G
監督:中澤一登、山川吉樹
プロデューサー:黒木類
シリーズ構成・脚本:石田勝也
キャラクターデザイン・総作画監督:中澤一登
美術デザイン:伊井蔵
メカニックデザイン:常木志伸
プロップデザイン:津坂美織、冨田収子
色彩設計:境成美
美術監督:田中孝典
3DCGディレクター:磯部兼士
撮影監督:荒井栄児
音響監督:長崎行男
音楽:池頼広
編集:植松淳一
制作:Production I.G

◆主題歌
「The Perfect World」
アーティスト:マーティ・フリードマンfeat.Jean-KenJohnny,KenKen
プロデューサー:藤本コウジ、マーティ・フリードマン

◆キャスト
キース・風間・フリック:平田広明
黒羽:梶裕貴
星名リリィ:瀬戸麻沙美
エリック・トガ:東地宏樹
ボリス・マイアー:稲葉実
吉永カエラ:小清水亜美
ブライアン・ブランドン:豊永利行
マリオ:田中進太郎
ジャン・アンリ・リシャール:後藤敦
ギルバート・ロス:森川智之
皆月:石川界人

【ストーリー】
王立警察特殊犯罪捜査課へと戻って来た天才捜査官キース・フリックは、ある事件の犯人を追っていた。凶悪犯罪者ばかりを狙う連続殺人鬼、通称『Killer B』。

犯行現場に必ず刻み込まれた『B』の文字は人々の注目を集め憶測を呼んだ。『B』それは彼女のためのメッセージ。『ぼくはここにいる……』その身を異形に変え、黒羽は届かぬ思いを刻み続ける。キースと黒羽、互いに見知らぬ二人の運命は、やがて一つの陰謀へと飲み込まれていく――

『B: The Beginning』公式サイト

(C)Kazuto Nakazawa / Production I.G
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