野上武志×才谷屋龍一×伊能高史×葉来緑のガルパンコミック4作家が『ガールズ&パンツァー最終章 第1話』を語る!ガルパンコミック作家座談会【前編】
大ヒット作品『ガールズ&パンツァー』が、ついに『ガールズ&パンツァー最終章』全6話をもって完結。ラストランに向けた最初のエピソードとなる第1話は2017年12月9日より劇場上映され、またもやファンの期待を超える内容で楽しませてくれました。2018年3月23日にはいよいよBlu-ray・DVDも発売されるため、より深く第1話を味わい尽くせるようになります。
そこで今回は、『ガールズ&パンツァー劇場版』の際に野上武志先生(歴女チーム・バレー部チーム・ネット戦車ゲームチームキャラクター原案協力、『ガールズ&パンツァー リボンの武者』)を招いて行った劇場版Web上コメンタリーをさらに拡大!
野上先生に加え、才谷屋龍一先生(『ガールズ&パンツァー』『ガールズ&パンツァー 激闘!マジノ戦ですっ!!』『ガールズ&パンツァー フェイズ エリカ』)、伊能高史先生(『ガールズ&パンツァー 劇場版 Variante』)、葉来緑先生(『はじめての戦車道』『はじめての戦車道 Blitz』『ガールズ&パンツァー 戦車道ノススメ』)が大集合。ガルパンコミック作家ならではの目線で『最終章 第1話』を語っていただきます!
前回の野上武志先生の記事もご参照いただいた上で、どうぞお楽しみください。
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――今回、冒頭の砲撃音の大きさに驚きませんでしたか?
伊能高史先生(以下、伊能):いきなりあんこうマークへの着弾から大音量ですごかったですね。
才谷屋龍一先生(以下、才谷屋):TVアニメの第1話も聖グロ戦から始まりましたし、野上さんの『リボンの武者』の第1話もそんな感じでしたよね。
野上武志先生(以下、野上):短編マンガとかでよく使う手法ですけど、最初に掴みでアクションシーンを持ってきて、そこから戻すっていうやつですね。『最終章』もすごく基本に忠実な作り方なんだなと(笑)。
才谷屋:アニメもそうなんですけど、地味なシーンから始まる作品も多いじゃないですか。順番に並べるとそうなりますし。それを、盛り上がるところからちょっと前に持ってきて、「あれ、なんでここから始まるんだ?」っていうフックを作って導入に戻すみたいな。よくやりますよね。
葉来緑先生(以下、葉来):1話切りとか3話切りとかありますから。面白いところを最初に見せて惹き込まないと、つらいのかな。
野上:マンガもそうだし、どのメディアでも同じですよ。まずはいかに最初の5秒間、10秒間でお客さんの心を掴むかという話ですから。
――ちなみに、みなさんは『最終章 第1話』を最初にどちらでご覧になられましたか?
伊能:我々3人(伊能、野上、葉来)はアクタスさん発行の『ガールズ&パンツァー 最終章 スタートしました スタッフお疲れ様でした本』の座談会企画で呼んでいただいた時に見せていただきました。
葉来:実は僕はさらに遡って、アフレコレポートマンガの時に。だから(2017年の)夏なんですよ。キャラ表はありましたが、実際に動いているビジュアルは半分はラフのままでした。そもそもアフレコレポートマンガの依頼をされた時点で、重大なネタバレを電話でいくつも聞きました(笑)。初見は、『最終章』をものすごく楽しみにしていたファンとしては残念でしたが、マニアとしては制作中の映像が観れて大満足でした。
――アクタスさんでご覧になられた時はいかがでしたか?
伊能:まだ音がなかったのと、画も動きがそれほど入っていなかったんですよ。なので公開後に映画館に観に行きました。
才谷屋:僕はスタッフ向けの試写会で観たんですけど、率直な感想としては、物足りない(笑)。いやもう続きが気になって! とにかく情報が凝縮されているんですよ。試写会が終わった後に、ひとつ前の試写会で観ていたスタッフの人たちが試写室の向かいの飲み屋さんに集まってるから来ないかと誘われたので、「行きます!」と。
そうしたらそこで杉本(功/キャラクターデザイン・総作画監督)さんが「マークⅣが橋を降りた後に、車長のお銀がどこにいたか」という話とかをされていて、自分は観ていてもわからなかったので「ええ~っ、マジすか!?」みたいな。スピードが速いから、1回観たくらいじゃわからない情報量で、「こりゃもう1回観に行かないとダメだな」って思いましたね。
野上:目には入っているんだけど、脳で処理しきれていないわけですよね。
葉来:新キャラも相当多いですから。
――まずは新キャラのひとり、フリントですが、何かありましたらお願いします。
葉来:フリントの歌(「大洗の海賊のうた」)を、生で聴いたっていう自慢くらいしかないんですけど。
――エピソードとしては最強じゃないですか!
葉来:いや、僕もファンのひとりとして、アフレコマンガも越権行為だと思うので、あまりこちらから話すことはないんですよ。仕事だから、現場で楽しめる余裕はなかったんですけど、目の前でフランス語の「玉葱の歌」の合唱と、フリントの歌の収録は見ました。
――その2曲とも、今後イベントで歌うことはまずないでしょうから、唯一の機会ですよ。
野上:あのフランス語の合唱をもう1回再現できるとは思えませんね(笑)。
――続いてラムですが、驚いたことにパンツァージャケットのポケットにもスキットルを入れているんですよ。
才谷屋:細かいですよね。
野上:良かったですよ。アニメのほうでちゃんと、ノンアルコールと言いつつどう見ても飲酒シーンというのをやってくれたので、ようやくこちらに来ていた「キャラクターに酒を飲ませるなんて許せない!」というお叱りがなくなって。
全員:あははっ!
才谷屋:ブドウジュースですよね(笑)。
――カトラスは、ガルパン初のメイドキャラだと思うんですよ。デザイン的にメイドのアイコンを揃えたキャラって唯一じゃないですか?
才谷屋:メイドキャラか。なるほど。
葉来:公式イラストとかで、メイドの格好をしている聖グロリアーナとかは出てますけどね。
野上:設定ではバーテンダーとなってますけど、メイドバーのメイドですよね。
葉来:アフレコマンガを描く時に、カトラスの設定資料を貰って描いたんですけど、目の下が隈だって気付かずに、下まつ毛だと思って描いちゃったんですよ。後で知って「ああ~っ!?」て。
才谷屋:色で表現しているから、線画だとわからないですよね。
――ムラカミはいかがでしょう?
葉来:相当コアなファンついてますよ。萌えとは一切関係ない感じで(笑)。
伊能:思い切ってますよね。
――絶対こういうキャラって、使い勝手がいいじゃないですか。力仕事にしても、やられ役にしても。
葉来:クロコダイン役(笑)。弐尉(マルコ)先生あたりがいい料理しそう。「ここは先に行け!」みたいな。
伊能:既にクロコダイン役(笑)。
――早速やられてますね。投げのタイミングの取り方とか、技的にはほぼ合気道で、白兵戦でも西住殿は強かったという。
野上:ここで衝撃の事実が出てきたわけですね。
伊能:避けるのが上手い(笑)。
野上:ということは、みほさんは飛んでくる弾を見て避けていることが判明したわけです。つまり、戦車道は安全なんですよ! みんな弾が見えてるから!
全員:あははっ!
――正月に大洗に行った時に、ウスヤ精肉店さんが隣に大きなテントを立てて、ドリンクサービスをやっていたんですよ。
葉来:BARベロベロって名前でしたよね。
――そうです。そこでこのハバネロクラブをかまされました。
伊能:いかがでしたか?
――麻子パターンです。ひと口飲んで「辛い~!!」ってなって、その後はもうジュースジュースです。あの辛さを知っているので、このシーンの恐ろしさがリアルにわかるという。あと、お銀はいかがでしたか? やはりジョン・シルバーという感じでしたか?
才谷屋:まぁそうですよね。
野上:ある一定以上の世代の人には元ネタがわかっちゃうやつですね。
葉来:ナイフ使いのグレイは……銀子に憧れている灰子はどこにいるんだろうと思いましたよ。
才谷屋:帽子についてる赤い羽根が、募金のっていうのが面白いですよね。
葉来:あれはネタにさせていただきました。パイプも飴らしいですね。
BC自由学園の3人にキャラデザの方向性の極意あり!?
葉来:出た、キューカンバーサンドイッチ!
野上:こうして見ると、キュウリってわかりますね。
葉来:マンガで描くために調べたんですよ。当時のイギリスでは、キュウリが高級な食べ物で、輸入に頼っていたから貴族しか食べられなかったらしいんです。そこで薄くスライスしたやつを酢漬けにして、バターを塗ったパンに挟んで食べるんですけど、これはイギリス料理なのに美味しかったです。
野上:イギリスに去年行った時に、けっこういいビジネスホテルに泊まったんですけど、ヨーロッパの同じグループのホテルにはあったビュッフェの生サラダとかがまったくなくて、キュウリしかないんですよ。
才谷屋:伝統なんですかね。
野上:なぜ海を越えるとこうなるのか、驚くほど差がありました。
伊能:今でもそうなんですね。
才谷屋:まほのこの新制服はカッコイイですよ!
野上:これはドイツに留学しているっていう状況ですよね。ドイツの戦車兵の兵科色の、ピンク色がパイピングされている戦車服を踏まえた上でのデザインになっているわけですけど、それが5フレームくらいしかない中に描かれていて、みなさんが妄想を繰り広げるわけですね(笑)。
才谷屋:情報が多過ぎる(笑)。
葉来:これで大学編を想像するわけですね(笑)。
才谷屋:雪が降ってるのに、みんな薄着だな(笑)。
野上:そう言えばそうですね。
才谷屋:アンツィオ戦の時の制服そのまんまですよね。冬服がないのかな。
葉来:継続高校の子たちは寒くないんだろうなっていうのはわかるんですけど。
才谷屋:知波単学園は新しい制服みたいのが出てきましたよね。
伊能:観戦しているシーンにありましたね。戦術会議とか開いてる。
才谷屋:「突撃」しか言わないじゃん、お前ら! みたいな(笑)。
葉来:勇気凛凛。『ムテキング』ですか(笑)。
野上:これでもお嬢様学校なんですよね。
葉来:ミッコとアキは、サウナに入る時に髪を解かないんだなって、素朴な疑問はありましたね。なので自分のマンガでも髪は解きませんでした。
――サウナに弦楽器持って入っていいのかなって、すごく思ったんですけど。
葉来:斎木(伸生/フィンランド軍研究家・ミリタリー監修)先生も言ってました。僕、マンガでA7V(ドイツ初の突撃戦車)をサウナにしたんですけど、「いいんですかね」って聞いたら「それ以前にサウナに楽器持っていくことがおかしいから!」って直接言われました(笑)。
――あ、いよいよ出てきました。
野上:また、でっかいのを。
才谷屋:すごい食べてるよなぁ。この人も意外と華さん体質なのかも。どんだけ食べても太りません、みたいな。
葉来:でも若干ふともも太いですよ。押田が細いのかな?
――野上先生にお聞きしたかったのですが、『リボンの武者』でBC自由学園のリーダーとして先にアスパラガスを出されて、今回マリーを見ての感想はいかがでしたか?
野上:マリーたち3人を見た時に、ようやくアニメ側の「どういう風にキャラを作るのか」という文脈がわかったので、逆に安心しましたね。『リボンの武者』でBC自由学園のキャラクターを作った時は、「専門分野ではボケられない」という言葉があるんですけど、どうしてもミリオタとして、歴史マニアとして難しいところから元ネタを引っ張ってこようとしてしまうんですよ。
でも、アニメでの水島監督たちのキャラデザの方向性が「もっとわかりやすくやる」ことだとわかったので。「なるほど、こういうことか! 次はこういう風にすればいいんだ!」というのがわかったわけです。
ワンカットに全力投球するミリタリー監修
伊能:へぇ~、こんなキャラクターが。
――無限軌道杯のポスターに「後援 戦車道OG会・戦車道淑女の会」と書いてあるんですよ。それじゃないですか?
葉来:麻子のおばぁとかは、関わりないんですかね? この三老は気になるなぁ。
野上:後ろにさらっとあるのはライレーの9ファルコンでしょうね。
才谷屋:ルクリリがひょこっと出てるのがいいですね。
葉来:ルクリリって口調がよくわからないんですよ。ちょっとしか喋らないから。野上先生のマンガを見ると、オレンジペコが様付けで呼んでるから2年生なのかなって。
伊能:ローズヒップがすごいつまらなそうな顔してますね。
才谷屋:ほんとだ。走れないから(笑)。
野上:しかもこれ、正座してるんじゃないですか?
才谷屋:床に座らされてる?
野上:酷い絵面だな(笑)。
葉来:気がつかなかった。これ床だ。まぁ『劇場版』ラストでは胡坐とかかいてましたから、アッサムあたりに叱られた後だと思います(笑)。
――知波単学園の学生服ですね。こうやって色々なキャラクターが画面に出てくることが、コミカライズの際にはありがたい感じですか?
伊能:そうですね。
葉来:ありがたいです。
才谷屋:ひと通り並んでるとね。
葉来:このワンカットだけで、ちょっとキャラクター性が出てるじゃないですか。だから個性を拾う時に、特にこのカメラの子とかわかりやすいし、右端の久保田もかわいいですね。
才谷屋:久保田は声が大地葉さん(ほかにペパロニ、ムラカミの声も担当)なんですよね。
野上:声優さんが約50人、キャラクター数も名前が判明しているキャラだけでも約70人もいるのに、この時間内で全員に「この子はこういうキャラなんだ」という手がかりを1フレーム1フレームに遺していく手腕はすごいですよ。
――プラウダも勢揃いです。
葉来:左の子はアリーナじゃなかったんですね。右端がアリーナだ。
才谷屋:右の4人がKV-2に乗っていたキャラクターたちかな。
葉来:左のメガネっ子は前からいますもんね。
伊能:左端の2人が、TVシリーズで降伏勧告に来た子ですね。
才谷屋:戦車帽被ってるやつはちょっとわからないな。
野上:吉川(和篤/ミリタリー監修)先生がここに全力投球したカットですね。だからすべてに根拠があるんです。
才谷屋:そうそう。テントとかね。
伊能:食器とかも?
野上:全部です。
葉来:全部が語っているんですね。このラクレットチーズとかが。
野上:ここが終わったら吉川先生、「僕の仕事はこれでおしまい。帰る」とかそんな感じだったと仰っていました。
才谷屋:その全力投球したネタが、フィルムでは数秒で終わったっていう(笑)。
――さて、サメさんチームのマークⅣですが。
野上:「やりやがったな!」って感じですね。どうしても戦車モノって、回が進むにつれて強い戦車、もっと強い戦車っていうふうにしていきがちなんです。そこにいきなり「コレで出てきました。戦車道はコレでも戦えます」っていうのがわかったわけですよ。ほかのマイナー戦車やら失敗作戦車でも、今から出せるというのを証明したわけですから。
葉来:逆に、スペック的に弱い戦車のほうが、めっちゃ活躍しますからね(笑)。後から出たほうが強い、みたいなのはあまり通用しないので。結局大洗も聖グロリアーナには勝っていませんし、テンプレ通りにはいかないんじゃないかなと。ぶっちゃけ、僕は大洗は今回優勝しないんじゃないかなと思っています。
――大洗廃校と違って、桃ちゃんの大学合格だけならなんとかなりそうですし。
葉来:理由が理由だけにね。
才谷屋:なにかもうひとネタ捻ってくるとは思うんですよ。
葉来:隠し玉はいっぱい用意しているとは思うんですけど、負けるんじゃないかという不安感がすごい。
才谷屋:話的にもうひと捻りあるんじゃないかな。
野上:そしてサメさんチーム5人ですね。お銀のパイプはお菓子のパイプなんですよね?
葉来:よく縁日で売られているハッカパイプ説と、パイプ型の飴説と、どっちなんだろうと思って。パイプ型の飴だったら、ゴミがつきそうですけどね(笑)。
野上:さぁ、3人出てきましたね。
才谷屋:これ、どんなキャラクターなのかいまだにわかってませんからね。全部が嘘でしたっていう話だから、じゃあBC自由学園のキャラクターの性格は本当はどうなんだっていう話ですよ。
才谷屋:FT-17。
葉来:ハートがかわいいですね。
――ハートとかのトランプマークを見た時に、『激闘!マジノ戦ですっ!!』のマジノ戦車のマークを連想したんですよ。
才谷屋:あーっ、なんか本当にありがたかったです。校章とマークの位置は逆なんですけど、こちらの設定をちょっと活かしてくれたのかなって。
葉来:あえて逆にしたんじゃないですか?
才谷屋:そうだと思うんですよ。違いを出すために。でも本当に嬉しいなという感じです。
才谷屋:ARL44ですね。『マジノ戦』でこれ出したかったなぁ。
野上:『最終章 第1話』を観てから、『萌えよ!戦車学校』でこれの開発史のマンガを描くことになったんですよ。戦中には計画していたものの、実際に出てきたのは戦後らしいですね。
才谷屋:設計図は大戦中に出来ていたって感じですよね。
野上:だから戦車道のレギュレーション上はOKという。
伊能:アクタスさんに、3Dプリンターで出力したものがありました。プラモデルがないらしくて。
才谷屋:『マジノ戦』の企画段階で、これを出したかったんですよ。マジノの戦車って弱いのばっかりだったから、何かフックになるやつが欲しいなと思って。
葉来:フランスのかっこよくて強い戦車ってだいたい戦後ですもんね。レギュレーションに合わなくなっちゃう。
野上:レギュレーションなんてものは、レギュレーション自体が動くんだよ! 鈴木さんの話なんですけど、日本人はルールが確定している中でがんばる傾向にある。でも戦車道はヨーロッパ系の競技だから、あくまで紳士の競技でしかないので、ルールはけっこう改変するものなんだと。
F1で日本のターボエンジンが猛威を揮ったら、翌年からターボ禁止というようにルール自体を動かすから、戦車道もそんな感じでって言われたんですね。だからルールの中でやっていこうじゃなくて、いかにルールを変える側に行くかというのをやらなきゃいけません。
BD・DVDを買ってコマ送りで見ないと追いつかない情報量!?
伊能:ここ、映像がすごかったですね。
才谷屋:これ、なんでしたっけ? 元ネタの映画がありましたよね。
伊能:『戦場にかける橋』です。
野上:クワイ川ですね。知っている人たちは観ればわかるやつですね。
――珍しく秋山殿が大パニックなシーンです。
野上:そりゃあ秋山さん、ここはもう半泣きでしょうね。完全に欺瞞情報に引っかかっているわけですから。
――作劇としても面白いですよね。秋山殿が偵察に行くというのがパターンになっていたのを、逆手に取られるっていう。
野上:この辺りに、戦車道大会のルールに対するアプローチの仕方が出てくるわけですよね。つまり、ルールに書かれていないことなら何をやってもOKで、その状況において何をするか。ファンのみなさんの間でも、戦車道のルールについては熱い議論が交わされていて、そこにルールにまつわる描写が提示されたことによる、みなさんの反応が見ていて面白いなと思いました。
――BC自由学園の制服デザインなんですけど、『最終章 第1話』のパンフレットを見ると、島田フミカネさんのインタビューに「マンガで既出のデザインの香りを残した」みたいなことが書かれているんです。確かにこの帽子のシルエットなどは、まさしく『リボンの武者』のBC自由学園の帽子から来ている感じがするんですよ。さらに面白いのが、今度は『リボンの武者』のほうで、生まれ変わったBC自由学園の新しい制服として『最終章』のこれを採用するというような描写があって、すごいことをやったなと思いました。
葉来:いやでも、いつアスパラガス隊長が伸びて出てくるかなって期待しているんですけど(笑)。
全員:あははっ!
伊能:サメさんチーム、落ち着いてますよね。
野上:とても初めてには見えません。
葉来:戦車の練習してないですよね。
伊能:この子たち、廃校騒動の時は何してたんでしょうね?
才谷屋:あははっ!
葉来:船底だから関係ないのかな?
野上:たぶん知らなかったんじゃない? 情報が来てないと思うよ。
――有刺鉄線で塞がれている怪しい区画に、お役所も命懸けでは行かないですよ。
葉来:学園艦が解体される時に見つかる、みたいな(笑)。
葉来:海賊旗が描くの大変そうだな。
野上:ラクラク。一番いいのは、シルエットにすればいいんですよ。
葉来:あー、シルエット!
――意外とこのカッターナイフが、かわいいけど物騒みたいな。
葉来:ウサギさんチームのマスコット、非公式ですが首狩りウサギ(ボーパル・バニー)も包丁持ってますから。
野上:こっちはゴルフボール付き孫の手か。よくありますよね(笑)。
才谷屋:なんでカッターなんですかね?
葉来:なんででしょうね。ゴルフボール付き孫の手はなんとなく笑っちゃうんですけど(笑)。
野上:旗をどう処理するのかなと思ったら、お銀が出てきて確保すると。
――なぜこの時、2人出てきたんでしょうか?
才谷屋:確か、横からムラカミが出てきたんですよね。ムラカミがどこに行ったのかなっていうのは観ていて思いましたけど。
――これでマークⅣの見せ場は終わりですかね?
野上:いやいや、いくらでもこの後まだ何かできるでしょう。
才谷屋:そこはまさに第2話が楽しみなところですけどね。
才谷屋:あ、お銀が戻ってるな。へぇ~。
葉来:早い。
野上:これはBlu-rayを買わなきゃいけないやつですね。
才谷屋:Blu-rayを買って、しっかりとコマ送りして確認しないと(笑)。吉川さんが『劇場版』の時、全部コマ送りしてチェックしてたって言ってましたよね。すごいなと思って。
才谷屋:「撤退!」ですね。
葉来:全6話で新キャラもたくさんいるし、今までのキャラの見せ場も考えると、どうなるんだろうって感はありますね。早く続きが観たいです。
――最後に感想をひと言ずつお願いします。
才谷屋:いやぁ~、第2話が楽しみですね! 早く続きが観たいなって感じです。1回観ただけじゃ全然わからないから、Blu-rayを買ってコマ送りでどうなっているかを逐一チェックして、続きも早く出てほしいです。
野上:『最終章 第1話』を観た後の、周囲のガルパンおじさんたちの感想を聞くほうが楽しかったです。観ているところがみんな違うんですよ。私もまだ1回しか観ていないので、頭に入っていなかったシーンも多いんですけど、それを熱く涙混じりに語るおじさんたちがたくさんおりまして、「こっちのほうが面白いぞ!」と(笑)。この後も楽しみです。
伊能:戦う理由をどうするんだろうという点が一番気になっていたんですけど、河嶋のためにみんなが戦う、試合に出るというのが『ガルパン』らしい動機付けで、納得いく感じでしたね。ぜひ、サメさんチームが河嶋を熱く語る尺とかが欲しいですね。何があったのか、みたいな。
――逆にそこは、作家のみなさんのために残してくれた部分かもしれませんね。
葉来:僕の頭の中では勝手に出来上がっているんですけどね。『エリートヤンキー三郎』スタイルで、桃ちゃんはサメさんチームに勝手に崇拝されていると(笑)。
伊能:なるほど。勘違いされているんだ。
葉来:何かすごいことをやったに違いないって。チキンレースでそのまま崖に突っ込んだとかで、「さすが桃さん、度胸はすげぇぜ!」って。
伊能:あとは音響が素晴らしかったですね。最初にアクタスさんで観た時は、砲撃音とかまったくないままだったんですけど、映画館で観て「これはすごい!」って改めて思いました。そして映画館を出た後、ポスターを見たら「表紙詐欺かな」みたいな。
全員:あははっ!
伊能:すっごいシリアスな表情で、PVとかもシリアスな感じだったから、そういう話かなと思ったら……って感じでした。
野上:コミカライズで言えば、弐尉マルコさんの『もっとらぶらぶ作戦です!』ですよね。毎回どういうふうに表紙詐欺してくれるのかっていう(笑)。あれが一番、水島イズムに近いと思います。
葉来:僕の場合、自分のマンガが短編オムニバスで主人公も変わるんですけど、『最終章』があるから冬には絶対に行けなかったんです。17話、18話でサメさんチームとBC自由学園を描いたんですけど、『最終章』よりちょっと前の話ということにして、ほかのキャラと絡ませたりしたんですよ。今後、冬の描写がどうなるかは不明ですけど、僕もいちファンとして『最終章』はずっと楽しみにしているし、この人気がずっと続いてほしいから、『最終章』の最後が前・中・後編になってもまったく構いません。
――ありがとうございました! 次回はそれぞれのコミカライズについて、先生方に制作秘話を語っていただきます!
[取材・文/設楽英一]
発売情報
『ガールズ&パンツァー最終章 第1話』Blu-ray・DVD
バンダイビジュアルより2018年3月23日(金)発売
【Blu-ray 特装限定版】
7,800円(税抜)
<特典>
・吉田玲子書き下ろし短編小説
・特製ブックレット(48P)
・スマホゲーム「ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!」DL特典シリアルコード
☆5河嶋桃(Pコートver)+虹ボコ付き
<映像特典>
☆特典ディスク(Blu-ray)
・『ガールズ&パンツァー 最終章』第1話 劇場上映記念特番(2017年12月12日放送)
ストーリーテラー:蝶野正洋/ナレーション:中上育実
・『ガールズ&パンツァー 最終章』第1話 舞台挨拶(新宿バルト9、ユナイテッド・シネマ水戸収録予定)
出演:渕上舞、茅野愛衣、尾崎真実、中上育実、井口裕香、井澤詩織、佐咲紗花(新宿のみ)
・大洗町秋祭り2017「商工感謝祭」(2017年11月3日開催)
出演:景浦大輔、伊丸岡篤、中西としはる
・第21回 大洗あんこう祭(2017年11月19日開催)
出演:渕上舞、茅野愛衣、尾崎真実、中上育実、井口裕香、佐咲紗花、蝶野正洋
・歴女チームin高知/坂本龍馬 書簡貸出セレモニー&トークショー with 劇場舞台挨拶(2018年1月14日開催)
出演:仙台エリ、森谷里美、井上優佳、大橋歩夕
・秋山優花里の戦車講座~戦車の誕生編~
・杉山プロデューサーが行く ボービントン戦車博物館取材記①
・ガルパンダンスムービー「SEN-SHA」PV&メイキング映像
出演:毛利愛美、笠井海夏子、瀬間彩海、岡本莉音、反田葉月、蝶野正洋
・ノンクレジットOP・ED
・PV・CM集
<音声特典>
・DTS Headphone:X(TM)(本編音声) ※普通のヘッドフォンを使い、5.1chの音場感を再現!
・キャストコメンタリー
出演:渕上舞(西住みほ役)、佐倉綾音(お銀役)、米澤円(フリント役)、高森奈津美(ラム役)、大地葉(ムラカミ役)、七瀬亜深(カトラス役)
・ミリタリーコメンタリー
出演(予定):鈴木貴昭(考証・スーパーバイザー)、岡部いさく(軍事評論家)、田村尚也(軍事監修)、齋木伸生(軍事監修)、吉川和篤(軍事監修)、杉山潔(プロデューサー)
<仕様>
☆キャラクター原案・島田フミカネ描き下ろしジャケット
【DVD】
5,800円(税抜)
<映像特典>
・秋山優花里の戦車講座~戦車の誕生編~
・ノンクレジットOP・ED
・PV・CM集
<音声特典>
☆キャストコメンタリー
出演:渕上舞(西住みほ役)、佐倉綾音(お銀役)、米澤円(フリント役)、高森奈津美(ラム役)、大地葉(ムラカミ役)、七瀬亜深(カトラス役)
<仕様>
☆キャラクター原案・島田フミカネ描き下ろしジャケット
『ガールズ&パンツァー リボンの武者』
野上武志×鈴木貴昭/原作:ガールズ&パンツァー製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス フラッパーシリーズ
第8巻好評発売中
戦車道以上になんでもアリの強襲戦車競技(タンカスロン)に単騎で挑む楯無高校ムカデさんチーム。彼女たちが起こす熱風は、次々と戦車道の強豪校を巻き込み、ついには聖グロリアーナ女学院のダージリンが強襲戦車競技の闇鍋パーティーともいえる“大鍋(カルドロン)”を提案。つわものたちによるノンストップの激闘が幕を開ける!
『ガールズ&パンツァー フェイズ エリカ』
才谷屋龍一/原作:ガールズ&パンツァー劇場版製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス フラッパーシリーズ
最新第3巻は2018年4月23日(月)発売予定
黒森峰女学園の逸見エリカを主人公にしたスピンオフ。西住まほに憧れ、戦車道の名門・黒森峰女学園中等部へ入学したエリカが、同じ戦車道チームの1年生・西住みほと出会い、みほの戦車道に疑問を抱く第1巻。高等部に上がったエリカたちも出場した、黒森峰女学園と継続高校の試合を描く第2巻。どちらも手に汗握る展開!
『ガールズ&パンツァー 劇場版 Variante』
伊能高史/原作:ガールズ&パンツァー劇場版製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス フラッパーシリーズ
最新第3巻は2018年3月23日(金)発売予定
メガヒット劇場版アニメの行間を紡ぐ、超濃厚コミカライズ。徹底した現地取材に基づく背景美術の細やかさはアニメ以上! キャラクターの思惑や戦車戦の作戦の流れ、各車輛の動きなども丸わかり! 各エピソードの前後も補完されており、これを読めば劇場版がさらに楽しめること請け合い!
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『ガールズ&パンツァー 戦車道ノススメ』
葉来緑/原作:ガールズ&パンツァー劇場版製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス フラッパーシリーズ
第2巻好評発売中
ガルパンキャラが戦車のうんちくを語るコメディ。毎回登場するチームが変わるオムニバス形式で、大洗保有の全車輛を紹介し終えた後は、アニメ未登場の戦車も続々紹介! コメディといいつつ、アニメの幕間のエピソードも入れており、とりわけ自動車部の有能さは本作で大変よくわかります!
ガールズ&パンツァー最終章
ガールズ&パンツァー公式ツイッター (@garupan)
月刊コミックフラッパー オフィシャルサイト
野上武志ツイッター (@takeshi_nogami)
才谷屋龍一ツイッター (@xxsaitaniyaxx)
伊能高史 on Twitter (@matarou123)
葉来緑ツイッター (@hagimidori)
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(C)GIRLS und PANZER Finale Projekt
(C)Takeshi Nogami,Takaaki Suzuki
(C)Ryohichi Saitaniya
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