野上武志×才谷屋龍一×伊能高史×葉来緑、さらに弐尉マルコ、槌居とガルパンコミック作家大集結! ガルパンコミック作家座談会【後編】
前編、中編と大ボリュームでお送りしてきたガルパンコミック作家座談会も、いよいよ後編。今回は『ガールズ&パンツァー』の聖地・大洗でのロケハン話や、ガルパン作家としての興味の方向性、それぞれの作品の今後の展望などを伺います。
さらにいつもの4先生に加え、弐尉マルコ先生(『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!』)、槌居先生(『ガールズ&パンツァー リトルアーミー』『ガールズ&パンツァー リトルアーミーⅡ』)も登場! ガルパンコミック作家大集結で贈る特濃ガルパン話、最後までお楽しみください!
アニメの砲撃“音”をマンガで“見せる”ための革新的表現
――みなさんの作風的に描きやすい、扱いやすいキャラクターを教えてください。
才谷屋龍一先生(以下、才谷屋):やっぱりエリカでしょうね。最初に脚本を読んだ段階で、エリカってわかりやすいヒールだったので、すごいやりやすかったですね。優花里もやりやすかったです。逆にやりにくかったのは、みほかな。自分から動かないから。
全員:あ~。
葉来緑先生(以下、葉来):特に黒森峰時代のみほは、なかなか見えない部分が多いですからね。
才谷屋:そうなんですよね。そこは補完してやっていくしかないなと。
野上武志先生(以下、野上):私が一番便利だと思ったのは、アンチョビです。
伊能高史先生(以下、伊能):あ、意外なチョイスですね。
才谷屋:アンチョビはけっこう『リボンの武者』で使われていますよね。いろんなところに出てくるというか。
野上:なにしろ『リボンの武者』の企画成立当初は、本編キャラクターで出していいのがアンチョビくらいだったんですよ。
葉来:確か、最初は一切出さない予定だと伺っていましたが。
野上:ですので、本編と服装を変えてバーテンダーの姿で出したら、みなさんに楽しんでいただけたようで、嬉しかったですね。
――伊能先生はどのキャラですか?
伊能:キャラクターがたくさん出てくるじゃないですか。だから最初は自分の中で、好きとか嫌いとかは作らないようにしようと思いました。それがやっていくうちに段々と、脇のキャラのほうに愛着を持つようになりましたね。前に出されるのは隊長とかの人気キャラが多いので、それよりも脇のキャラクターをちょっと前に出してあげるみたいな描写のほうが、やりやすいし楽しいかなと思います。
――具体的に使いやすかった脇キャラは? あるいは手に馴染む、描きやすかったキャラとか。
葉来:描きやすいのはそど子じゃないですか?(笑)
野上:伊能先生には一番使い勝手のいいやつがいるじゃないですか! ボコ!
才谷屋:あははっ、ボコか! 書き文字にもなっちゃったしね(笑)。
葉来:あの書き文字はいろんなところで使われそう(笑)。
野上:すごいブレイクスルーを伊能先生は果たしたんですよ。砲撃音が全部ボコで作られているという。
伊能:砲撃音を「ボコ」にして、そこにボコを配置したんです。
才谷屋:あれはブッ飛んでましたね(笑)。
伊能:音だけはアニメに敵わないというか、どうやっても表現できない部分なので、逃げの一手なんですけど。
野上:全部手描きですよね?
伊能:実はあれは、3Dを使っているんですよ。ボコの動く3Dモデルをアシスタントさんに作ってもらって。
才谷屋:3Dなの、あれ!?
葉来:逆にビックリだよ! くれ!
野上:それ、めっちゃ時間かかるやつじゃないですか!
伊能:面白いかなと思って。
フラッパー編集部・遠藤編集:『ガールズ&パンツァー 劇場版 Variante』の第3巻に、伊能さんの3D制作過程をおまけで載せているんですけど、こんなものまで3Dで作って絵にしていたのかというのがあって、「マジか!」と思いましたね。背景ひとつ作るのに、テーブルの上の食器まで全部3Dで作っていたのは驚きました。
伊能:一度作ってしまえば使い回しができるので、かなりラクなんです。素材とか、いくらでも供給しますから。共有しましょう。
野上:私が以前、実験で作った時は、もう10年以上前の技術でしたからね。今だったらもっとラクにできるんだろうな。
伊能:今だと本当に、だいぶ使い勝手がいいですよ。
葉来:素材を貰っても、使いこなすのが難しいし、結局時間も手間隙もかかるよね……。
――葉来先生の扱いやすいキャラクターは?
葉来:僕はやっぱり、『はじめての戦車道 Blitz』でずっと梓ちゃんを主人公にして描いてきたので、梓ちゃんが一番描きやすくはありますね。まともで振り回される苦労人が描きやすいんですよ。エリカ嬢もそうですけど、アッサム様とか。
『戦車道ノススメ』の第11話で、大洗の隣町にあるダイダラボウ(大串貝塚ふれあい公園)と歴女チーム主人公でラーテ(ドイツで計画された陸上戦艦)の話を描いたんですけど、エリカ以外にまともな人がひとりもいないって状況になっちゃって(笑)。
葉来:しかもこの話を地元の方が喜んでくれたみたいで、江口又新堂さんや和泉屋米穀さんの協力のもと、大洗から等身大パネルを持っていってダイダラボウの前で記念撮影した写真を送ってくれました。感動でむせび泣きましたよ。
通ってみたいガルパン世界の高校
――みなさんがどこかの学校に入れるとしたら、どこを選びますか? 乗りたい戦車も教えてください。
才谷屋:BC自由学園ですかね。ARL44に乗りたいなぁ。
葉来:それに乗りたいからBCに行くんですね(笑)。
才谷屋:いやぁ、『マジノ戦』の時に、本当にARL44を出したかったんですけど、レギュレーション的に出せないっぽいから諦めて。そうしたら『最終章』に出てきたから、ぜひ乗りたいですね!
――野上先生はどちらですか?
野上:食べ物が美味しいアンツィオしかないでしょう!
伊能:美味しいものに困らない感じですよね。
野上:みんなおやつ食べてるし、制服もかわいいですし。
伊能:着るんですか!?(笑)
――自分は美少女化されているということで(笑)。
才谷屋:あ~、女になっちゃうんだ(笑)。
野上:おじさんとしてあの世界に入っちゃいけないんです! 惑星ガルパンには存在しない生き物ですから!
全員:惑星ガルパン!(笑)
――伊能先生は?
伊能:学校自体はどこでもいいんですけど、戦車道はぜひやってみたいですね。競技として追求してみたいです。
――乗りたい戦車はありますか?
伊能:どんな戦車でも乗りたいし、役割もひと通りやってみたいんですよ。僕、葉来緑先生から「器用貧乏」って言われているんです。食材に例えると「万能ねぎ」って。
才谷屋:万能ねぎ! 色々使い回せるみたいな(笑)。
野上:なるほど!(笑)
葉来:それさ、何年前の話!?(笑) めちゃくちゃ気にしてるみたいだけど、伊能くんが何でも出来るから「万能だよ!」って誉めようとして、万能だと芸がないから「伊能くん、万能ねぎだよ!」って言っただけだよ!? でもず~っと引き摺っちゃったみたいだね、ごめんなさい(笑)。
――戦車の搭乗員では、たしか装填手が万能なんですよね。すべての役割ができることが求められるという。
野上:はい。一番伸びしろがある役割ですね。みんな怪我するし。
才谷屋:入れ替わりができるようにね。
伊能:だから僕も、どれでもこなせるようにはしておきたいですね。
――葉来先生は?
葉来:学校はやっぱり大洗ですね。大洗の街がかなり気に入っているので。乗りたい戦車は、劇中だと『最終章』で出てきたルノーFT。劇中以外ならラーテに乗りたいです。
才谷屋:動かせるんですか!?(笑) どうやって動かすんだ、あれ!?
葉来:中に入ってみたいんです。40人くらい入れますよね。それだけいたら、サボっててもバレなそうだし(笑)。
伊能:そう考えると、僕も大洗が好きですし、行ってみたい学校は大洗かなぁ。
大洗にロケハンに行って大洗で入院!?
――その大洗ですが、作品を拝見すると、先生方がかなり丹念にロケハンをされているように感じます。
葉来:店主さんと直接会って話をしないと出てこないネタはあります。パネルとお店でもお話を作りたいし、むしろ店主さん出したいなぁ、と。
――アニメで通ったルートは、実際はこうなっているというネタだって、そこに行ってみないとわからないじゃないですか。
――大洗のロケハンの想い出がありましたら教えてください。
才谷屋:一番申し訳ないのは、無印(『ガールズ&パンツァー』)を描いていた頃はまだ大洗に行ったことがなかったんですよ。
葉来:へぇぇ~! 意外ですね。
才谷屋:アニメが始まる前ですから、大洗にもまだ今の賑わいがない状態で、その頃の大洗の様子をネットで調べたりしながら第2巻冒頭の聖グロ戦を描いているんです。だから実は街の描写とかもけっこう適当なところもあって。
言い方は悪いですけど、当時ネットで見ていた大洗は寂れた感じというか。あれから比べると、今の大洗は全然違うんですよ。だから、大洗のホームページとかを見て描いていた頃が懐かしいし、今やここまでになったんだなというのを感慨深く見てますね。
今では自分もそれなりに行っているから、街の人たちと触れ合ったりして馴染みもできまして。梅原屋さん(総合衣料品店)とか、ジョイショップ タグチさん(玩具店)とか、和泉屋米穀店さんとか。だから自分も街に対して貢献できないかなと考えますね。
それで『マジノ戦』の時に、作中には大洗の街自体は出てこないんですけど、何かしら恩返しをしたいなという気持ちもあって、扉絵を全部大洗の街で描かせていただきました。
――数ある聖地の中でも、大洗だけの特色ではないかと思うのですが、「大洗女子学園優勝おめでとう!」ののぼり旗が街中にひるがえっているじゃないですか。だから実際の大洗の街をそのまま描けば、TVアニメ最終話後の風景になるんですよね。
葉来:ほかではやろうと思っても絶対できないことですよね。
――大洗シーサイドホテルの壁面に、今も弾痕が描かれていたりとか。
才谷屋:そうそう! ついてますよね! あれは大爆笑しました(笑)。
葉来:僕、出来立ての時に見に行きました!
伊能:僕は大洗は、平日を狙ってこっそり行ってます。
才谷屋:平日がベストですね!
伊能:大洗に行く人は、電車の場合は駅から商店街を通って大洗磯前神社というルートが鉄板なのかなと思うんですけど、それ以外を巡って作品内で色々取り上げたいなと思っています。大貫町のほうを描いてみたりとか。
伊能:あと実は僕、大洗に行った時に尿管結石をやってしまいまして。
才谷屋:えっ!?
葉来:そうなんですよ。入院したんですよ。矢上裕先生とか仲間内で連絡網まわして見舞いに行こうかと思いました。
才谷屋:大洗で入院!? なにやってんですか!?(笑)
伊能:大洗海岸病院というところに一晩入院したんです。
葉来:めちゃくちゃ美味しい(笑)。大洗で誰かが入院みたいなネタが描ける(笑)。
野上:なかなか得難い(笑)。
才谷屋:いい経験してますね!(笑)
伊能:恥ずかしい……。それと、いつも写真をたくさん撮るんですけど、唯一残念なのは、俯瞰の画がなかなか撮れないんですよ。
葉来:そこはドローンだよ!
伊能:ドローンしかないかなぁ。大洗マリンタワーからは撮れるんですけど、それ以外となるとなかなか難しいんです。
――作品内には上からの視点がけっこうありますが、どうやって描かれているのですか?
伊能:あれはGoogle マップとかを見ながら。
才谷屋:あ~、なるほど!
野上:便利ですよね、Google マップ(笑)。
伊能:本当に便利です。アシスタントさんが全員大洗に詳しいわけではないですから、Google マップを見ながら「この通りを走っているんだよ」とか説明しています。
葉来:僕も大洗には何回も行っているんですけど、泊まったのは2回くらいしかないんですよ。この前は大勘荘さんにようやく泊まれて、宿の人とも初めて会ったのにずっと前からの友達かのようにマニアックな話をして(笑)。それからサメさんチームのBAR「どん底」のモデルになったスナックに行って、ラム酒いっぱい飲んでベロベロになって帰ってきました(笑)。
才谷屋:ドルフィンに行ったんですか!? いいなぁ~。
葉来:だから大洗に行くたびに、挨拶に行く店も増えますね。大洗まいわい市場で野菜を見てたら、けっこう年配のおばあちゃんが「明日の誕生日イベントは秋山優花里で、武部沙織じゃないから間違えないで」って若い子に教えてたりとか(笑)。
才谷屋:大洗の生き字引だったおばあちゃんが、いつの間にかガルパン生き字引に(笑)。
野上:このように、私が大洗に行かなくても、周りの人たちがどんどん大洗に詳しくなっていくんです。そういった皆さんは裏路地から市井の人々のことまでなんでも知っているわけですよ。そんな方々がよく私に話しかけてくれるのでおとなしく拝聴していますと、「なんで行ってないの!?」扱いをされるんです。
私はずっと机の前で原稿を描いているだけなのに、大洗の噂話や「あそこでこんな愉快なことがあったよ」といった話が、次から次へと入ってくるわけですよ。不思議ですね(笑)。
才谷屋:ネタが向こうからやってくる(笑)。
これから見てみたいもの
――『ガルパン』には数多くの、まだ使われていない設定があります。全国大会のトーナメント表に書かれていた学校で、未登場のところもまだまだありますが、気になる設定や、見てみたいものはありますか?
才谷屋:『最終章 第1話』でBC自由学園が紹介されたように、ほかの学校がこれからどう出てくるのか、どんなキャラクターがいるのか、どういう戦車を扱っているのかっていうのは一番気になりますね。具体的にどの高校が気になるかって言われると、「いやもう全部!」って感じなんですけどね(笑)。
『最終章 第1話』で桃ちゃんがトーナメントの抽選をした時に、それらしきキャラがいっぱいモブで出てましたもんね。これはきっとどこどこの学校だろうって、ツイッターとかでかなり特定されてますけど(笑)。それがこれからどう描かれるのか、すごい楽しみです。
――野上先生はいかがですか?
野上:その質問は『リボンの武者』の次の展開に関わる案件になりますので、回答もなかなか難しいですね。今はまだ使われていない設定で、水島監督やスタッフに確認を取り、アニメのほうで今後描きそうにないところを探している真っ最中です。
オリジナルでキャラクターを立てる場合は、ガルパン世界の命名方針が「わかりやすく」だと判明してきましたので、たとえばあの高校だったら、あの国の文学作品や絵本というふうに探して、「よし、『ニルスのふしぎな旅』で行くか!」みたいな。
葉来:あ、ニルスは良いラインですね! ほかには『スプーンおばさん』とか?
――それを言ったら、ビゲン高校を『小さなバイキング ビッケ』にしたのは命名方針通りだったと思うんですけど(笑)。
野上:あははっ!
伊能:みほは自分の戦車道を見つけたわけですが、そうなると西住家の西住流との決着というか、落としどころが気になりますね。要はお母さんとの関係をどうするのか。そこは見たいところですね。
あとは、みほが黒森峰にいた頃や、大洗対黒森峰の決勝戦でも、味方の戦車が危機の時には助けに行くというみほの価値観が提示されているじゃないですか。なので例えば、絶対に勝たないといけないような状況で、対戦相手側が危機に陥った時に、みほだったらどうするんだろうとか。
――きっと助けに行くでしょうね。
伊能:そうですよね。そういう、価値観が問われるような場面をぜひ見たいなと思います。それと、世代交代ですね。『最終章』で終わったとして、その次の話を要望された時にどうするんだろうなと。
葉来:自動車部なんてほとんど抜けますからね。
才谷屋:ツチヤしか残らない、みたいな。
伊能:どの作品でも、世代交代ってすごい難しいテーマじゃないですか。『ガルパン』は大きなタイトルになったから、『最終章』の次をやるとなった時に、アニメスタッフの方々はどうするのかなって思います。
才谷屋:別の学校でやるっていう可能性はあるかもしれませんね。
――高校にこだわらず、大学や実業団という道もあるのかなと。本家たる外国勢もいるはずですから、戦車道世界大会編みたいな展開とか。
才谷屋:あ、それでもいいと思いますよ。
伊能:面白いですね。
――葉来先生は、見てみたいものは?
葉来:『最終章』はたぶん、三年生の卒業までの流れだと思うから、どんな感じできれいに終わるのか。世代が替わろうが、大学生編をやろうが、やっぱりこの時代が輝いていると思うんです。
なので僕のマンガはギャグ寄りのコメディにして、時が止まっているんです。『劇場版』後の夏の終わりから冬に行くまでを、違うルートで何度も攻めるとか、そんな感じになっちゃうんですよ。
伊能:何回もクリスマスがやってくるとか。
葉来:クリスマスにも各校ごとの、さらにはチームごとのクリスマスがあるので大丈夫です!(笑)
ガルパンコミック今後の展望
――最後に、ご自身の作品の今後の展望を教えてください。
才谷屋:ちょうど『フェイズ エリカ』が終わりまして(『コミックウォーカー』にて最終話公開中)。実は、自分がこの企画のプロットを書いた段階の話だと、第11話で終わっているんですよ。今回の第12話そのものが、担当さんとの打ち合わせから生まれたお話なんです。
継続高校と戦って、勝ってめでたしめでたしなんですけど、そこで終わらせるとほとんど『マジノ戦』と同じような感じになるので、そうではない方向というのを考えたんです。
ただ、話をアニメにつなげなきゃいけないんですよ。黒森峰vs継続の試合はアニメ本編の1年前の、第62回戦車道全国大会に向けた練習試合の話だったから。第11話から第12話を経て、アニメにつながる話になったかなと思います。エリカの髪の長さが変わった理由なども盛り込んであるので、「なるほどね」って思ってもらえたら嬉しいですね。
そして4月23日に、『フェイズ エリカ』の最終巻の第3巻が出ますので、そちらのほうもぜひよろしくお願いします!
『ガールズ&パンツァー フェイズ エリカ』
才谷屋龍一/原作:ガールズ&パンツァー劇場版製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス フラッパーシリーズ
最新第3巻は2018年4月23日(月)発売予定
野上:『リボンの武者』についてはラストに向けてがんばる感じですね。
コミカライズ作家として、キャラクターの立ち位置になって考えることに面白味を感じている最中です。キャラクターの掘り下げは、あくまでもアニメでの水島監督の描き方が正解ではあるんですけど、スピンオフ作品では、あえて別の観点の解釈ができる。これはコミカライズ作家の限界であり、と同時に公式で二次創作をさせていただくというありがたい経験なのかなという気がします。
『ガールズ&パンツァー リボンの武者』
野上武志×鈴木貴昭/原作:ガールズ&パンツァー製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス フラッパーシリーズ
第8巻好評発売中
最新第9巻は2018年5月23日(水)発売予定
伊能:ようやく後半戦に入れたので、まずは完結まで、なんとしても持っていきたいなと思っています。最初、連載にあたってタイトルが全然決まらなかったんですけど、遠藤さんがたくさん候補を持ってきてくださったんですね。その中から『Variante』を選んだんです。
「Variante=別物」とはっきりわかるタイトルだったので、これで行きましょうと。別解釈のものということで、最近はちょっと思いきってやらせていただいています。キャラクターを魅せるところに特化させたいなと思っています。
――この、黒板への寄せ書きひとつで、いいエピソードを作られているのは驚きました。
伊能:あっ、ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。
才谷屋:いろいろネタが放り込まれておりますので、隅々まで見てもらいたいですね!
葉来:コミックスだと、拡大して見たくなるよね。スマホみたいに。
――あと、これが好きなんですよ。桃ちゃんの攻撃は、ローズヒップにだけは絶対に当たるという。
伊能:そんな設定を勝手につけちゃおうかなと(笑)。3時間後くらいに当たるみたいな。
それと、ちょうど『最終章 第1巻』のBD・DVDの発売日と同じ日に『Variante』の第3巻も発売されたんですけど、巻末に総作画監督の杉本功さんからイラストとコメントをいただきまして、非常に嬉しかったです。これはぜひ見ていただきたいですね。
『ガールズ&パンツァー 劇場版 Variante』
伊能高史/原作:ガールズ&パンツァー劇場版製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス フラッパーシリーズ
最新第3巻好評発売中
葉来:『ガルパン』は戦車などの戦場映画以外にもネタがたくさんあって、元ネタをチェックするのが楽しいんです。いろんな作品との出会いにもなっていると思うんですよ。秋山優花里の両親の名前から調べて『坂の上の雲』を観ると、ものすごく面白いじゃないですか。
BC自由学園やサメさんチームを理解するために『ベルばら』や『宝島』を観てみたら、「フランス宮廷は想像以上にドロドロしてるな……」とか「いま観ても……いま観るとさらにシルバーかっこいい!」とか感じました。そういうところから拾った細かいネタも含めて、これから紹介していければなと思っています。
僕の作品は一話完結形式で、毎回1輌ずつ戦車を紹介していくスタイルなんですけど、一見関係ないオムニバスの話が最後にひとつの大きな話になるという展開の話が好きなので、できればやりたいなという野望があります。最後はすごく長い話で、今までの登場人物がオールスターで全部出て、「これまでの話は全部伏線だったのか!?」みたいなことをやってみたいんですよ。ただ、それを考えたのが最近なので、最初からそういう構成にはなっていません(笑)。
あと、前に『はじめての戦車道』でエクレール様を出したことがあるんですけど、『リボンの武者』で野上先生のOK貰っているし、槌居先生にも交渉して、こっちもコミカライズキャラでクロスオーバーをやれたら楽しいですね。いや、それ以前に私もオリジナルキャラ欲しいなぁ……。ギリシャ風の高校出したいなぁ……。
ともあれ、そのあたりもフリーダムなのがオムニバスの強みだと思います。ほぼアドリブでリアルタイムにネタが突っ込まれます(笑)。日常中心になりますが、いろんなタイプの話を作りたいと思ってます。これからも自分自身が『ガルパン』で観たい話を自由に作っていけたらなと思います。
『ガールズ&パンツァー 戦車道ノススメ』
葉来緑/原作:ガールズ&パンツァー劇場版製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス フラッパーシリーズ
第2巻好評発売中
最新第3巻は2018年5月23日(水)発売予定
ラストは弐尉マルコ先生、槌居先生から!
――『ガールズ&パンツァー』をコミカライズする上で、楽しいところ、大変なところを教えてください。
弐尉マルコ先生(以下、弐尉):ガルパンがダイスキなので、何を描いても楽しいです。でも一人で作画しているので大変です。
――悪ノリ表紙やキャラ名の効果音、死んだ目をはじめ、『らぶらぶ作戦』おなじみのネタも数多くあります。特にお気に入りのネタなどはあるのでしょうか? また、アニメ公式や声優にいじられたなど、反響で印象的だったものはありますか?
弐尉:全部お気に入りですが、どれもオリジンではないし、クドくないように気を付けています。ミニペパにペパロニ役の大地葉さんが萌えておられたご様子に、我々が萌えたことがありました。
――モノマネ芸人がやり過ぎると、曲にその印象が付き過ぎて、本家が歌った時に笑いが起こってしまって困るというようなことがあるようです。ダージリン様がギャグキャラ化してくるなど、パロディを描く上でのさじ加減の難しさなどもあるのでしょうか?
弐尉:一番頭を悩ませているところで、特にダージリン様に関しては不本意なことになっています。
『らぶらぶ作戦』は、ガルパンファンに対してはより深くガルパンのキャラと世界観を愛でていただき、未見の方に対してはキャラを窓口としてガルパンという作品へといざなう導線のようなものでありたいと考えています。そのため、キャラクターの持つベクトル、方向性には逆らわず、しかし最終的にギャグ漫画なので笑いを取るためにほんの少し曲げます。
ガルパンのキャラクターと世界観はありがたいことに、元からややギャグ方向に向いているので、その手法であまり世界観が崩れず、そんなに苦ではないのです。しかしダージリン様はさじ加減が最も難しく、これは自分だけのせいではないとは思いますが、おかしな印象を与える一因となってしまったことに胸が痛みます。ガルパンを見る時は『らぶらぶ作戦』のことはいったん忘れて頂くのがベストだと考えます。
――ほかのスピンオフ作品についても感想をお聞かせください。
弐尉:『戦車道ノススメ』と『劇場版 Variante』が、『らぶらぶ作戦』ではどうしても手掛けられない「戦車ネタ・大洗町ネタ」に取り組んでくれて、なんだか救われた気分になりました。『リトルアーミーⅡ』では西グロ登場の次ページの『らぶらぶ作戦』でダージリン様がはっちゃけていらしたのが思い出深いです。また、『リトアミ』とともに『リボンの武者』や『マジノ戦』もいちど次回予告でネタにさせて頂きました。その節はありがとうございました。
『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!』
弐尉マルコ/原作:ガールズ&パンツァー製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス アライブシリーズ
第9巻好評発売中
――『ガールズ&パンツァー』をコミカライズする上で、楽しいところ、大変なところを教えてください。
槌居先生(以下、槌居):楽しかったところは小学生時代のみほが描けたところですね(笑)。大変なところはやはり戦車でした。連載前からミリタリーはかっこいいと思っていたのですが、人に説明するほどの知識がなかったので連載しながら勉強しました。
――『ガールズ&パンツァー リトルアーミー』『ガールズ&パンツァー リトルアーミーⅡ』それぞれの制作ウラ話を教えてください。
槌居:アニメ放送4か月前からの連載スタートだったのもあり、『リトルアーミー』ではみほが戦車道を嫌いになったトラウマを描くのだと思ってプロットを作っていたのですが、引き金になったのは黒森峰にいた頃だとわかり、軌道修正した思い出があります。おかげでバッドエンドの物語にならずに良かったかもしれません。
――中須賀エミをはじめとしたオリジナルキャラクターのデザインで気を付けたことは?
槌居:オリジナルキャラクターは本編となるべく被らないように気を付けたのと、引っ込み思案のみほを動かすためにエミ・瞳・千紘はアクティブなタイプの子にしました。
アニメイトオンラインショップでの購入はこちら
――スピンオフ作品の難しさや、ほかのスピンオフ作品の注目点、そして『リボンの武者』第8巻での“共演”について感想をお聞かせください。
槌居:やはりアニメ本編が本家で、スピンオフはそれを崩さないように動かないといけないと思うし、とはいえ作家さんが描くので、ずれや解釈の違いが生まれたり、そこが難しいと思います。
ほかのスピンオフ作品の注目点は、どの作家先生もガルパン愛が強いところですね。ほかのアニメ作品と比べてガルパンならではって感じがします(笑)。共演に関しては素直にとても嬉しいです。こういうふうに動くのかと新鮮に感じますね。
『ガールズ&パンツァー リトルアーミー』
槌居/協力:鈴木貴昭・グラフィニカ/原作:ガールズ&パンツァー製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス アライブシリーズ
全2巻好評発売中
『ガールズ&パンツァー リトルアーミーⅡ』
槌居/協力:鈴木貴昭・グラフィニカ/原作:ガールズ&パンツァー製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス アライブシリーズ
全3巻好評発売中
『ガールズ&パンツァー 最終章 ハートフル・タンク・アンソロジー①』
弐尉マルコ・槌居ほか/原作:ガールズ&パンツァー製作委員会
株式会社KADOKAWA MFコミックス アライブシリーズ
好評発売中
[取材・文/設楽英一]
発売情報
『ガールズ&パンツァー最終章 第1話』Blu-ray・DVD
バンダイビジュアルより2018年3月23日(金)発売
【Blu-ray 特装限定版】
7,800円(税抜)
アニメイトオンラインショップでの購入はこちら
【DVD】
5,800円(税抜)
アニメイトオンラインショップでの購入はこちら
ガールズ&パンツァー最終章
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(C)GIRLS und PANZER Film Projekt
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(C)Takashi Ino
(C)Hagi Midori
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