映画『リズと青い鳥』の山田尚子監督、原作・武田綾乃先生が女子の心の機微について語った特別トークイベントをレポート!
映画『聲の形』で第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション賞などを受賞した京都アニメーションの最新作『リズと青い鳥』が4月21日より全国公開となります。
本作は、高校生の青春を描いた武田綾乃の小説『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』をアニメーション映画化した作品です。吹奏楽部でオーボエを担当する鎧塚みぞれ(よろいづかみぞれ)と、フルートを担当する傘木希美(かさきのぞみ)の2人の少女の儚く美しい一瞬を切り取った青春ストーリーが描かれています。
2018年4月4日(水)に舞台挨拶付き完成披露上映会が実施され、多くのファンにお披露目された本作ですが、この度、4月11日(水)に、山田尚子監督と原作者の武田綾乃先生が登壇するトークイベント付き特別試写会がスペースFS汐留で実施されました。
アニメ監督と小説家、ふたりの女性クリエイターが、本作で描かれるような女子の心の機微について、ガールズトークを展開! 本稿ではこちらの模様をお届けします!
みぞれと希美をフィーチャーした理由とは?
会場の拍手に包まれながら山田監督と原作者の武田先生が登壇。さっそく、本作を観ての感想が語られました。
まず、武田先生は「この映画は青春の色々な要素をギュッと詰めたような感じで、観終わった後の余韻と、その余韻を求めてまた観たくなるような作品だなという印象を受けました」と語っていました。
それを受けて山田監督は「武田先生の文章に非常に透明感があって、匂いもして、素晴らしいものなので、それを何とか映像に落とし込めるように頑張りました」と回答。
そして、本作でみぞれと希美をフィーチャーした理由として山田監督は「武田先生が書かれている新作プロットを読ませていただいた時に、久美子(『響け! ユーフォニアム』の主人公、黄前久美子)の話と並行してみぞれと希美の話があったんですけど、それを見たときに女の子の秘密を覗き見してしまった様な気分になって……」と話し出します。
さらに「なかなか口に出すことはなさそうな羨ましい思いだったり、好きだなって思いだったり、嫉妬だったり、という感情を包み隠さず、綺麗事にせずにしっかりぶつけて描いてらっしゃるというのにすごく興味が湧きました。なかなかこんな切り口で作品を作ることなんてないんじゃないかな? と思い、是非やってみたいと思いました」と作品に対する思いを熱く語っていました。
ガラス越しにみぞれと希美を覗くみたいな気分
作品を作る上でこだわったところとして、山田監督は「人には知られたくない女の子同士の思いを隠し撮りさせてもらったかのような映画」を目指したそうです。
「カメラを持って、みぞれと希美の近くに寄って行ったら2人がパッと逃げてしまいそうな気がしたので、遠くから遠くから覗くことを意識しました。気持ちとしてはガラス越しに彼女たちを覗いているみたいな気分ですね。」と、作品の作り方の工夫が語られました。
オーボエは“自分の世界がある”印象、フルートは“引っ張っていく人”の印象
本作の主人公はオーボエ担当のみぞれと、フルート担当の希美ですが、この2人の関係性と、それぞれの楽器の特徴について武田先生から面白い見解が語られました。
武田先生曰く「オーボエはダブルリードの楽器で、人数が少な目な学校が多いんです。でも、フルートって(演奏の時に)前に座る学校も多いですし、花形という感じがあります。
オーボエは“自分の世界がある”という印象、フルートは“引っ張っていく人”の印象があります。フルートはメインのフレーズをこなして受け止めるし、音楽に豪華さを付け足すという役割があって色々な仕事をしてくれるので、そこらへんもキャラクターの造形に関係があるかもしれませんね(笑)」となかなか興味深い話題が飛び出します。
クリエイターのお2人から夢を目指す若者に向けてアドバイスが!
続いて、山田監督、武田先生から若い人たちに向けて“夢を形にする”ためのアドバイスが語られました。
まず、山田監督からは「物作りというのはこうだと決めてしまうのはもったいない」という言葉が送られました。「自分から出たもの、何かを出した時点でもう作品というものは出来上がっていて、それに制限は無くて、“表現したい!”という思いがポジティブであれば、それは作品になる。なのでやりたいことは諦めずに掴みに行きましょう!」と力強いアドバイスが送られました。
とはいうものの、こういうお話を人前でするのは初めてだったらしく、少し照れ臭そうにしている山田監督の姿が印象的でした。
続いて武田先生からは「私の創作の原点は学生時代に友人が自分の本を読んでくれたことで、その子のためにずーっと本を書き続けているんです。人に見せて誰かがいいね! って自分の才能や努力を認めてもらった瞬間に生まれるものがあって、その生まれた感情をずっと抱え続けていけばどんなに辛いことがあっても夢を持ち続けていけるのかなという気がしています」
と、お2人らしい素敵なアドバイスが送られました。最後に、会場の皆さんへのメッセージが送られ本イベントは終了しました。
●武田先生
「本作は本当に見た後の余韻が誰かに共有したくなる様な作品なので、観て「わー、素晴らしい!」と思ったら友人と一緒にまた同じ空気感を共有していただけたらと思います。よろしくお願いします」
●山田監督
「女の子たちの成長痛というか、思春期の心の揺れというか、なかなか表に出せない秘密というところにフォーカスしている作品です。きっと皆さんの心にもあるものじゃないかなぁ? と思うので是非楽しんでいただけたらなぁと思います。本日はどうもありがとうございました!」
[文・撮影/古瀬敏之]
作品情報
劇場アニメ『リズと青い鳥』
4月21日 ROADSHOW
配給:松竹
【INTRODUCTION】
少女の儚く、そして強く輝く、美しい一瞬を――。
高校生の青春を描いた武田綾乃の小説『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』がアニメーション映画化。みぞれと希美、2人の少女の儚く美しい一瞬を切り取ります。制作は、映画『聲の形』で第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション賞、東京アニメアワードフェスティバル2017アニメオブザイヤー作品賞劇場映画部門グランプリなどを受賞した京都アニメーション。そして、監督・山田尚子、脚本・吉田玲子、キャラクターデザイン・西屋太志、音楽・牛尾憲輔ら、映画『聲の形』のメインスタッフが集結。
繊細な人の心を映し出してきた制作陣による、
――誰しも感じたことがある羨望と絶望。そしてそれらを包み込む、愛。
この春、あなたの心に「響く」一作をお届けします。
【あらすじ】
あの子は青い鳥。広い空を自由に飛びまわることがあの子にとっての幸せ。だけど、私はひとり置いていかれるのが怖くて、あの子を鳥籠に閉じ込め、何も気づいていないふりをした。北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当する鎧塚みぞれと、フルートを担当する傘木希美。高校三年生、二人の最後のコンクール。
その自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。
「なんだかこの曲、わたしたちみたい」
屈託もなくそう言ってソロを嬉しそうに吹く希美と、希美と過ごす日々に幸せを感じつつも終わりが近づくことを恐れるみぞれ。「親友」のはずの二人。しかし、オーボエとフルートのソロは上手くかみ合わず、距離を感じさせるものだった。
【スタッフ】
原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』)
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン:西屋太志
美術監督:篠原睦雄
色彩設計:石田奈央美
楽器設定:髙橋博行
撮影監督:髙尾一也
3D監督:梅津哲郎
音響監督:鶴岡陽太
音楽:牛尾憲輔
音楽制作:ランティス
音楽制作協力:洗足学園音楽大学
吹奏楽監修:大和田雅洋
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:『響け!』製作委員会
配給:松竹
【キャスト】
鎧塚みぞれ:種﨑敦美
傘木希美:東山奈央
中川夏紀:藤村鼓乃美
吉川優子:山岡ゆり
剣崎梨々花:杉浦しおり
黄前久美子:黒沢ともよ
加藤葉月:朝井彩加
川島緑輝:豊田萌絵
高坂麗奈:安済知佳
新山聡美:桑島法子
橋本真博:中村悠一
滝 昇:櫻井孝宏
【前売券情報】
数量限定 特製クリアファイル付き 前売券発売中!
各劇場にて販売開始価格:一般:1500円(税込) 小人:900円(税込)