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- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
異例のロングランで国内外で多大なる影響を与え続けている映画『この世界の片隅に』。第2次世界大戦中の広島を舞台に、北條すずと家族の温かい共同生活する様子は、これまでにあまり類を見なかった戦時下の物語を描き出しました。
そんな『この世界の片隅に』が、ついにNetflixにてSVOD独占配信開始。より多くの感動を与え続けることは間違いないでしょう。
そして、この作品に出会ったことで新たな脚光を浴びたのが北條すずを演じるのんさん。2018年3月24日に行われたAnimeJapan2018のステージに立ったのんさんに、今だからこそ語れる『この世界の片隅に』と彼女の物語をお伺いしました。
――まずは、アニメジャパンのステージに登壇された感想をお願いします。
のん:すごく楽しかったですね。アニメーションのお祭りに参加するのが初めてだったので。声優さんたちと並んでステージに立つというのが、すごく嬉しかったです。
――緊張は?
のん:すごく緊張していましたね。今までは、片淵須直監督とご一緒することが多かったんですけど、こういうときに1人で立つのって、けっこう心細いんだなと思いました(笑)。
――(笑)。『この世界の片隅に』は息の長い作品になっていますね。
のん:国内の劇場公開はまだ続いていて、今回のNetflixでの配信によって、もっと遠くにいる人にも観てもらえる機会が増えるんじゃないかと思っています。それがすごく嬉しいですね。
まだ観たことないっていう方にもNetflixで観てもらえたら、すずさんに会っていただけるんじゃないかなって思います。
――本作に参加して、ご自身は何か変化はありますか?
のん:本当にこんなに長く愛される映画に出られたというのは、役者冥利に尽きます。今年に入って新たにイオンシネマさんで上映されることが決まったりしていて、「これはどういうことなんだろう?」とビックリすることがたくさんあって。片淵監督もまだ舞台挨拶を続けられています。
自分の中でこれから先も、いくつになっても特別な作品になると思っています。
『この世界の片隅に』に関わってから、ご飯に気を遣うようになりました(笑)。今までは作品に関わって、仕事が楽しいという感覚くらいで、お家にいて普通に生活、洗濯したりご飯作って食べたりっていうことを特別に楽しいと思ったことがなくて。
すずさんと出会って、『この世界の片隅に』という作品に関わらせていただいてから、お家で家事をするのが楽しくなってきました。それはすごく大きいかなと思います。
――『この世界の片隅に』が大ヒットした理由でご自身どう考えられていますか?
のん:やっぱり戦時下の広島が舞台ということはあるんですけど、すずさんたちの生活にフォーカスされているところが一番大きいのかなと思いますね。
みんなでご飯を食べて「美味しい」とか「不味い」とか、そういうのをみんなで感じる、生活の中での楽しさというのは、どこにいる人にも年齢関係なく感じられることなんじゃないかなと思います。
――のんさんは特にこの作品と長く付き合っています。最初に参加された時と今とでは、作品の印象は変わっていますか?
のん:印象が変わるということは、あんまりないですね。ただ、監督が本当に丁寧に細部に至るまでこだわってらっしゃるので、見るたびに画面の端々に監督のこだわりを発見できるんじゃないかなと思います。
――のんさんは『この世界の片隅に』は何度かご覧になってるんですか?
のん:何度かは観ていますね。新しい劇場で公開されるときやこういうイベントがあるときは見なおします。
――本作以外にも、ご自身が出演されている作品は、改めて見返したりしますか?
のん:自分が出演しているのを見ると、ちょっと恥ずかしいなと思ってしまいますが、宣伝していく時にはしっかりと作品をアピールできるように見返します。時間をおいてからはあんまり見ないかもしれないですね。
最近は恥ずかしくても、ちょっと見てみた方が良いかなと思って、冒頭だけとか、飛ばしずつみたいに見ています。
――(笑)。でも『この世界の片隅に』は、最後まで見られる?
のん:そうですね。2016年に公開されて今まで公開されていてその間ずっとこの映画と付き合っているので。PRする為には見返さなくてはいけないかなという時があります。
――見返したときに「今ならこう演じるな」と感じることは?
のん:それはたくさんありますね。演じることをやってる上で、作品を見返して「あっ」て思うのは毎回です。
声優さんって声だけで表現しないといけない。身体表現は使えないので、テクニック的な部分でこうだったのかなとかは考えたりします。
でもすずさんに関しては、すずさんという人が私ともう一人いるという、仲間みたいな感覚で。
役者としてはもう一度やり直してみたいということは毎回どの作品でも思うんですけど、自分の演技というより、すずさんとして見ているという感覚の方が強いです。
――今回は改めてNetflixで配信ということになるんですけど。このタイミングで改めて作品を見るとしたら、どういうところに注目して欲しいですか?
のん:まだご覧になったことがない方は、一度作品の空気に触れていただけたら幸せな気分になったり、衝撃的なことがあったり、生きていくということに何か感じてもらえると思います。
Netflixで見られるということで、細くいろんな部分が見られると思いますね。
止めてもう1回見たり、好きなシーンを繰り返し見ることもできるので。気軽に『この世界の片隅に』を研究できる気がします。
すずさんと周作さん(北條周作、CV:細谷佳正さん)が喧嘩するシーンがすごく気に入っているので、そこは注目してみて下さい。
――ちなみに、のんさんはNetflixはご利用になられていますか?
のん:はい。
――いつもどんな作品を見ていますか?
のん:いつも映画を見ています。『グッド・プレイス』(2016)というドラマにもハマっています!
――Netflixはのんさんも利用中ということですね(笑)。
のん:はい。
――舞台挨拶で色んな所に行かれたかと思います。思い出に残っていることはありますか?
のん:メキシコに行ったんですけど、すごく楽しかったですね。グアナフアトという所に行って、映画を監督と一緒に公開しに行きました。そこでメキシコの評論家の方とかに感想を聞く機会もあって。お客さんの反応も聞けたりしたんです。
その反応が日本での反響とか感想と同じというか、似た反応をしていただいたのがすごく嬉しかったですね。それを聞いて、この作品はどこにいる人にも響く作品なんじゃないかって嬉しく思いました。
――それだけ大きな作品に関わるというのはどういう心境なのでしょうか?
のん:『この世界の片隅に』が映画化されるという時に原作を読ませていただいて、パイロット版の映像を見せていただいたんです。その原作と映像を見たときに衝撃を受けて「絶対私がやる!」という風に思って。
もっとたくさんの人に見てもらわなきゃっていう使命感みたいなのはあった気がします。
――海外で人気になると思っていました?
のん:人気になるとかそういうことは考えないです。みんなに見られるべきだ! みたいな思い込みというか(笑)。そういうのはすごくありました。
――この作品はのんさんにとってどんな作品になりましたか?
のん:特別な作品になりました。今までもこれからもずっと自分の心の中に残っていくと思います。
見てくださった方の中にもずっと色あせずに続いていく作品なんじゃないかと思っています。そういう素晴らしい作品に関わらせていただいたということは、私が役者をやっていく上でとても大きなことだと感じています。
――ありがとうございました。
[インタビュー/石橋悠]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。
配信:3 月 15 日(木)、Netflix にて SVOD 独占配信中
配信国:日本、アメリカ、カナダ、バングラディッシュ、ブータン、グアム、インド、ラオス、ニューカレドニア、北マリアナ諸島、モルディブ、マーシャル諸島、モンゴル、ミャンマー、ネパール、パキスタン、サイパン、スリランカ、東ティモール、ロシア、トルコ、クロアチア、セルビア、ボスニア・ヘルツェコビナ、スロベニア、ポーランド、チェコ、スロバキア
※そのほか一部地域での配信も予定
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
美術監督:林孝輔
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
監督・脚本:片渕須直
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
製作:「この世界の片隅に」製作委員会