劇場OVA『あさがおと加瀬さん。』高橋未奈美×佐倉綾音インタビュー|カバーソング収録で二人が体験した裏話も
高嶋ひろみ原作による劇場OVA作品『あさがおと加瀬さん。』が6月9日(土)より、新宿バルト9・池袋HUMAXシネマズほかにて期間限定公開中!アニメイトタイムズでは、本作の主演を務める山田結衣役の高橋未奈美さんと、加瀬友香役の佐倉綾音さんにインタビューを実施。
山田と加瀬さんへの想いや作品の見どころ、カバーソング収録時の裏話まで詳しくお聴きしました!
『あさがおと加瀬さん。』とは
女子高生同士の「ピュア」な恋と青春を描いた、高嶋ひろみによる人気漫画「加瀬さん。」シリーズがアニメーションになって劇場公開!
「どうか加瀬さんが、私の事を好きでありますように———…。」高校生の山田は、緑化委員の内気な女の子。同じ学年の加瀬さんは、陸上部のエースで美人な女の子。山田が植えたあさがおをきっかけに、言葉を交わしたことがなかった二人の距離が少しずつ縮まっていく。恋と青春の輝きだけを、ギュッと詰め込んだ物語。
山田結衣役:高橋未奈美さんプロフィール
12月20日生まれ、神奈川県出身。主な出演作に『食戟のソーマ』(田所恵役)、『エロマンガ先生』(山田エルフ役)、『ウマ娘 プリティーダービー』(エルコンドルパサー役)など。
加瀬友香役:佐倉綾音さんプロフィール
1月29日生まれ、東京都出身。主な出演作に『ご注文はうさぎですか?』(ココア役)、『僕のヒーローアカデミア』(麗日お茶子役)、『新幹線変形ロボ シンカリオン』(速杉ハヤト役)など。
『あさがおと加瀬さん。』は一緒に観に行ったら付き合いたくなるデートムービー
ーー本作で演じられた山田と加瀬さんはどんなキャラクターですか?
高橋未奈美:山田は大人しいんですけど、学校の中庭の草花を雨の日も風の日も休まずに大事に育てている根気強い人で、何かを続けられる継続力を持っているキャラクターなんです。でも人に対しては引っ込み思案だったり。
恋愛に対しては疑問に思ったことをすぐに質問できるような、真っ直ぐした心を持った人だと思います。
佐倉綾音:加瀬さんは運動もできて、人間もできていて、神様に二物も三物も与えられた人だなという印象なのですが…それでいて、何か特別とても輝いている訳ではない、クラスでも目立つ存在ではなかった山田に惹かれて、恋をして。
その山田に色々なものを貰いながら、またどんどん成長していくキャラクターだなと思いますね。
ーー完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
高橋:とにかく映像と音楽が相まって、お芝居しているだけでは感じられなかった情景がリアルに伝わってきて。
終わったあとはすごく素直に「この作品に参加できてよかったな」と思える素敵な作品になっていました。
佐倉:高橋さんと一緒に観ていたんですけど、なんとも言えない空気が二人に漂って。
「これはカップルで観に行ったら大変なことになるぞ」と思いながら観ていたら、担当者さんが「これはデートムービーにしたいんです」と言って。一緒に観に行ったら付き合いますね。笑
高橋:でもなりますね本当に。これはもう付き合ったなって思います。笑
一喜一憂している加瀬さんにキュン
ーーお互いのキャラクターの好きなところを教えてください。
佐倉:山田は、人のせいにしないところ。何かちょっと自分にとってネガティブなことが起きても、「しょうがない」とか、「また明日」とか、「加瀬さん人気だもんね」とか。
そんなふうに自分の中でちゃんと消化できるところがすごく素敵だなと思いつつ、少し心配になるというか。その感覚は忘れないでいて欲しいけど、もうちょっと楽に生きさせてあげたいなって思ってしまいます。
高橋:神〜。笑 加瀬さんは何かを解決しようという意欲が好きです。逃げないでちゃんと向き合おうとするところがすごくカッコいいなと思いました。
ーー佐倉さん演じる加瀬さんは中性的なイケメンキャラという印象でしたが、演技中に意識されていたことはありますか?
佐倉:イケメンに演じようというよりは、等身大のひとりの人間として見ていた面が多かったので、演じていて「加瀬さんイケメンだな」とはあまり思わなかったですね。
どちらかというと、「一生懸命に山田にこっちを向いてもらおう」とか、「一緒に居て嬉しい、楽しい、好きなことがとても幸せ」というポジティブな面と、それから打って変わって、山田の様子がおかしいときに少しすねたり、へこんだりする面。
そういう人間としての感情のバイオリズムが出たらいいなと思って演じていました。
高橋:加瀬さんは可愛いんですよね、すごく。心の揺れ動きの振幅が大きくて、そういう感情で一喜一憂している加瀬さんの姿にキュンとさせられましたね。
山田と加瀬さんに共感したことは?
ーー作品をご覧になって、山田と加瀬さんに共感を覚えたことはありましたか?
佐倉:着替えとかは見てたかも。私、修学旅行の前日から体調を崩すタイプの子だったので、同性の着替えシーンを見る機会があまりなくて。体育の着替えとか、チラッと見てました。
高橋:逆に私は山田と一緒で、人の着替えは見れなかったです。一緒にお風呂に入るのも得意じゃなくて。修学旅行に行った記憶がないくらい、そういうシーンを見ないようにしているところはありますね。
佐倉:意外。すごい見てそうなのに。
高橋:見ませんよ!笑 私すごい潔癖だったんですよ。
佐倉:なんかすごく人に近づいていくイメージがあるし、そういう女の子たちと遊んでいるイメージ。
高橋:基本的に人に触られるのがすごく苦手で、回し飲みとかもできなくて。今はちょっと緩和されたんですけど、高校とかは回し飲みする人しかいないみたいな。笑
オープンな人たちが多い学校だったので、仕方なくやって慣れて。でもいまだに回し飲みは好んではしないです。人のことを意識しがちなのかも。
ーー修学旅行での着替えシーンのあと、山田と加瀬さんが距離を置く場面もありましたね。
高橋:それこそ思っていることがそれぞれ違うので、山田からすると改めて「加瀬さんって女の子なんだ」ということを意識したシーンだと思うんですけど、それと同時に、「自分の身体と吊り合わない」という劣等感みたいなものは感じていましたね。
佐倉:加瀬の方は、自分が何かしてしまったのか、でも覚えが特にないから、「付き合っているんだし、原因があったら言ってくれればいいのに」という理不尽さを感じていて、モダモダと足踏みをするような感じだったのかなと。
高橋:「こんなくだらない事で」となってしまうのは分かるんですよね。だからといって「ちょっと私の身体に劣等感を覚えまして、申し訳ございません」とは言えないし。笑
私もたぶん山田と同じで「明日でいいや」ってなっちゃうタイプ。
佐倉:私はすぐに解決したいタイプだなぁ…。
高橋:加瀬さんタイプですね。笑
ーー本予告の最後には加瀬さんが頭を突っ込んで山田の布団の匂いを嗅いでいるシーンもありましたが、あれは男性目線で見ても共感できるかなと思いました。笑
佐倉:あれは男性でも共感できるんですか?
高橋:人の匂いを嗅ぐって女の子もしますよね。
佐倉:高橋さんはそうなんだ。笑
高橋:すぐ匂い嗅いじゃうんです私。素敵な人だなって思ったら、すれ違ったときにいい匂いを想像して「スー」って匂い嗅ぐの。笑
佐倉:私は逆の意味で匂い嗅ぐかも。くさくないかなって。
高橋:え!私はいい匂いを想像して嗅いでるから…。こういう違いもあるんですね。笑
名シーンは加瀬さんのストーカー宣言?
ーー特に印象に残っている好きなシーンはありますか?
佐倉:飛行機の中で二人が後ろで手を繋ぐシーンがとても好きで。袖をクイっとする山田の手を、なぜか背中側から手を回して加瀬が手を繋ぐんですよね。
「なにそのムーブ」と思って。笑 そのムーブはなかなかできないぞって。
高橋:私は屋上で加瀬さんが「私、ストーカーなの!」って元気に言うシーンが好きです。あそこで改めて、加瀬さんがすごく山田を好きだということを分からせてくれるシーンというか。「ずっと見ててくれたんだ」という嬉しさもありましたね。
佐倉:そうやって言える時点でストーカーじゃない気がする。
高橋:加瀬さんらしいというか、健康的な。
佐倉:あのシーンは原作でもすごく好きなシーンですね。
ーー普段の生活で女の子にキュンとするのはどんなときですか?
高橋:「今日新しい洋服着てきたんだ♪」って言われただけで「可愛いね♪」ってなります。笑
佐倉:ハードル低い。笑 でもちょっとわかるかも。何気なく喜んでるときとか、いいなって思います。あとは物理的に距離が近づいたらドキッとするし。
高橋:こないだの撮影の時に佐倉さんがすごく近くにいて、目の綺麗さにキュンとしました。「目が綺麗じゃ〜」ってなって。笑
佐倉:なんで千鳥さんみたいになってるの…? 笑
高橋:私の中で佐倉さんは二次元なんですよ。だからすごいキュンとする対象ですね。
佐倉:でもさっき「近づくのはあんまり…」って言われて、ちょっとヒヤッとしました。
高橋:大丈夫です!笑 なんか想像以上に緊張してしまうんですよ。だから苦手というか。ドキドキしている自分を想像できちゃうから、人に近づかないようにしているんです。
佐倉:惚れっぽいの?笑
高橋:惚れっぽい!すぐ惚れちゃう。笑
佐倉:撮影で「近づいてください」と言われたとき、高橋さんは全然近づいて来なかったんですよ。嬉々として近づいてくるタイプなのかなと思ったら、そうでもなくて。
でもこっちからスっと近づいたら逃げはしないんですよね。いつもみたいに賑やかに「うぎゃ〜!」って言うのかなと思ったら、「えへへ…。」って、リアクションが意外としおらしくて大人しいなと。こんなギャップがあるんだなと発見しました。笑
高橋:借りて来た猫のように。笑
『小さな恋のうた』はエッジが効きすぎ!? カバーソング収録時の裏話
ーー本作では『明日への扉』(主題歌CDに収録)と『小さな恋のうた』(カバーソング&オーディオドラマアルバムに収録)をお二人で歌われていますね。
佐倉:『明日への扉』は私が先に収録して。私は高橋さんの歌を聴いたことがなかったので、どんなふうに歌うのか本当に想像がつかなくて。でもきっと加瀬が先に録ったら山田はついてきてくれるんだろうなと。
スタッフさんとは、どの距離の人にその歌を届けるのかというのをディスカッションしながら録っていたんですけど…『小さな恋のうた』はエッジが効きすぎていて、レコーディングと呼んでいいのかわからないような状況だったんですよ。
高橋:初めてブースに二人で入って、手持ちのマイクで歌って。
佐倉:だいたいピッチとかタイミングを直せるように一人ずつ収録をするんですけど、二人で同じブースに閉じ込められて、手持ちのマイクを渡されて「録ります」と言われて。そしてその前の段階では、「歌をあまり聴いてこないでください」と言われてて。
高橋:「練習してこないでください」って言われたんですよね。笑
佐倉:「なんとなく知ってるでしょ。じゃあもう聴いてこなくていいです」と言われて、疑問に思っていたら、そのまま閉じ込められて歌って、色々試行錯誤して。
今度はブースの外に出て「ミキサー室で録ろう」と言われ。そこでスピーカーから音を流して、二人でまた手持ちのマイクで録って。
高橋:周りにスタッフさんたちも一緒にいて。みんなが楽しそうに歌っているのを見ているみたいな。笑
佐倉:普段は何回か録ったものを直しつつ使うんですが、今回は最初に録ったものが使われているんですよ。
高橋:なかなか変わったキャラクターソングになっていると思います。笑
佐倉:一応テイク5くらいまで録ったけど、「いやダメ、どんどん慣れて熟れ感が出てる」と言われ、テイク1を使われるという。笑
高橋:「どんどん音程が合ってきちゃっている」って。歌ってそういうもんじゃないの!? って私たちは思っていたんですけど。笑
ーーお二人が歌われた『小さな恋のうた』を聴かせていただいて、本当に“ありのまま”の感じが出ていてとても新鮮でした。笑
高橋:私たちからしたら“ありのまま”のものを出されて、ちょっと恥ずかしいような気もしますね。
佐倉:途中から、もう煮るなり焼くなり好きにしてくれって、まな板の上で寝そべっている感じで。笑
でもスタッフさんが自信満々で、「テイク1が良い」という話をしているんですよ。
高橋:なんか熟れ感のある派と、フレッシュ感のある派で意見が分かれてて、私たち歌い終わって「なんだったんだ、あのレコーディング…」となっているときに、みんなが「フレッシュさが…」「リアルさが…」「いやでも…」っていう会議を見ることがあまりないんですけど、私はすごく恐縮しながらその様子を聴いていて。
佐倉:私はニヤニヤしながら、その恐縮している高橋さんの様子も含めて楽しんでいました。笑
高橋:あんなふうに曲を歌ったのは初めてでした。笑
佐倉:あとはあまりないんですけど、レコーディング時に歌詞と楽曲と一緒に、その曲についてと、その曲をどういうふうにレコーディングしたいかというイメージをスタッフさんがプリントに書いてきてくれていて。そこに「実際に山田と加瀬さんが一緒に歌っているような姿を記録したい」ということが書かれていたんです。
そのプリントが分かりやすく、熱がすごく感じられたので「こんな熱量のあるスタッフさんと一緒だったら、きっとどんなふうにやっても、いいものに仕上げてくれるだろう」という安心感があったので、最初のテイクも安心して預けられました。ちょっと面白い出来上がりになっていると思います。
山田と加瀬さんの心の声が込められたソロ曲も
ーー カバーソング&オーディオドラマアルバムに収録されているソロ曲『あ〜よかった』(歌:高橋さん)と、『走れ!』(歌:佐倉さん)にはどんな想いを込められましたか?
高橋:『小さな恋のうた』は、「二人がリアルにカラオケに行ったら」という感じだったんですけど、『あ〜よかった』は、山田の考えていることや「加瀬さんと出会えてすごい幸せだな」という心の声が乗ったらいいなと思いながら歌わせてもらいました。
キャラクターでJ-POPを歌うことがこれまでなかったので、不思議な気持ちというか。自分がカラオケで歌うときって、自分の好きなふうにキーを合わせて歌ったりとかするけど、山田の気持ちになってJ-POPを歌うことはすごく新鮮でした。
佐倉:私はもともと「ももいろクローバーZ」の『走れ!』が好きで知っていて全部覚えていたので、準備は非常にスムーズに済みました。
『明日への扉』があって、高橋さんは楽曲を伸び伸びと歌われるんだろうなというところで、『小さな恋のうた』を収録するのも聞いていて。
『走れ!』はどうしようかなと思っていたときに、楽曲がちょっとロックアレンジっぽいというか、カッコいい感じになっていたんですね。それならと、「カラオケで山田にカッコつけて、山田への気持ちを歌に乗せながら口説く」みたいなイメージで歌いました。
高橋:ヒュ〜!笑
佐倉:ヒュ〜!じゃない!笑
多幸感に包まれる『あさがおと加瀬さん。』の世界観
ーーお二人にとって『あさがおと加瀬さん。』はどんな作品になりましたか?
高橋:自分の中で、この作品に関われたことがすごく幸せだなと思えるものになりました。オーディションで初めて作品の魅力を知って、周りの人やスタッフさんの愛や熱がこもった環境でやらせてもらえて。
あとは作品を観て、とにかく幸せな気持ちにさせてくれるものに出会えたことが、全て含めて幸せだなって思わせてくれる作品になりました。
佐倉:私はもともと読者だったので、そういう意味でもちょっとドキドキしながら関わっていて。というのも、百合作品というようやく最近認知度の上がってきたジャンルのアニメ化がどういうふうにメディアミックスされるんだろうとなったときに、色んなやり方があると思うんですけど、その中でも私は理想のアニメ化だったなと思います。
変にキャピキャピさせることなく、それでいて青春や二人のキラキラはとても上品に残っているし、爽やかに表現されている。読んでいたときに思い描いていた声が画から聴こえてきて、ファンとしてひと安心したなと。
加瀬として声を吹き込むことができて、とても幸せだなと思っています。
ーー最後に、『あさがおと加瀬さん。』を観る方々へメッセージをお願いします。
佐倉:まず劇場で観られるということで、好きな人と観に行くもよし、お友達を連れて観に行くもよし、ひとりでドキドキを独り占めしながら観に行くもよしです。
この、ちょっと小っ恥ずかしい。けど、観たあとにとても多幸感に包まれる作品をぜひ色々な形で楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。
高橋:期間限定ではあるんですけど、一緒に行く人との繋がりを感じられるような作品だと思うので、ぜひ劇場の大きいスクリーンで観ていただければと思います。
身近な人とすごく喋りたいなと思ってもらえたり、ひとりで観ても「あの作品良かったよ」と言ってもらえるような、私たちも自信を持っておすすめできる作品になりました。
原作新刊の『さくらと加瀬さん。』の方にもドラマCDが付いているので、色んな媒体で、色んな場面で『あさがおと加瀬さん。』を余すことなく楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。
ーー素敵なお話ありがとうございました!
インタビュー・文:吉野庫之介 撮影:鳥谷部宏平
作品情報
期間限定上映『あさがおと加瀬さん。』
2018年6月9日(土)より、新宿バルト9・池袋HUMAXシネマズほかにて期間限定公開
※上映劇場の詳細は公式サイトへ
<STAFF>
原作:高嶋ひろみ
監督:佐藤卓哉
キャラクターデザイン:坂井久太
コンセプトボード:平間由香
美術監督:橋本和幸
色彩設計:岩井田洋
撮影監督:口羽毅
編集:後藤正浩
音楽:rionos
主題歌:『明日への扉』 歌:山田結衣(CV:高橋未奈美)&加瀬友香(CV:佐倉綾音)
アニメーション制作:ZEXCS
配給:ポニーキャニオン
<CAST>
山田結衣:高橋未奈美
加瀬友香:佐倉綾音
三河:木戸衣吹
井上先輩:寿美菜子
先生:浅野真澄
コーチ:内山夕実
?:落合福嗣