Iris(アイリス)さんインタビュー|『ガンダムビルドダイバーズ』EDを歌うことになって母国・マレーシアも大パニック? その心境と喜びを語る
劇場版『コードギアス 反逆のルルーシュ』のテーマソングでアニソンデビューを果たしたマレーシア出身のIris(アイリス)さん。Iris(アイリス)さんは日本テレビ『ネプ&イモトの世界番付』の日本横断ヒッチハイクの旅で一躍脚光を浴び、2016年に念願のアーティストデビュー。
6月6日にリリースされた5枚目となるシングルのタイトル曲「明日へ」は、人気TVアニメ『ガンダムビルドダイバーズ』のエンディングテーマを飾っています。
日本に住んで3年が経ち、流暢に日本語を話せるようになったIris(アイリス)さん(日本語含む6言語で会話ができるそう)。「明日へ」では透明感のある歌声で<一人じゃないから 心配いらない どんなに辛くても 僕がいるよ>と寄り添うような言葉を届けていますが、みんなと同じように悩んだり落ち込んだりすることも当然あると言います。
それでも心から「みんなに元気になって欲しい」と思い、前向きなうたを歌うことには、天性の明るさと強さを持った彼女ならではの考えがありました。
「私の曲を聴いて癒されたら嬉しい」
──日本に来て3年経ちましたが、今の心境はどうですか?
Irisさん(以下Iris):う~ん。複雑な気持ちですね。もう3年なのかまだ3年なのか。ワクワクの気持ちもあるんですけど、心配もあるんです。
心配なのは、マレーシアのことなんです。両親がどんどん年上になっていく。家族のことも心配だけど、日本で頑張っていきたいと思ってる……凄く複雑です。まだ親孝行できてないから。
──Irisさんの思う親孝行とは?
Iris:いつもお母さんが「あなたが幸せだったらそれは親孝行だよ」って言ってくれてるんです。でも私はお父さんのお母さんのそばにいて何かしてあげたいなってずっと思っていて。お母さんも寂しいだろうなって。
──凄くいいご両親なんですね。そういう気持ちって絶対伝わってると思います。
Iris:ありがとう。そう思いたいですね。
──複雑な気持ちもある。それでも日本で頑張ってるのは、アーティストとして日本で成功したいって気持ちが強いからだと思うんです。Irisさんが歌いたいこととはどんなことですか?
Iris:日本に来て思ったことは、みんながストレスを抱えて生活していること。特に東京の人。朝ギュウギュウの電車に乗って、遅くまで大変だろうなって。しかも仕事が終わったあとも飲み会があったり……上下関係にも厳しいと聞きました。
みなさん仕事を頑張ってて、仕事以外のプライベートがないみたいな感じが伝わってきて……。
「もうちょっとリラックスしていいよ。大丈夫だよ。考えすぎないで」って気持ちを歌で伝えたいなって。私の曲を聴いて癒されたら嬉しい。
──「ひとを元気にさせたい」って想いは昔から持っていたんですか?
Iris:特に日本に来てからですね。その気持ちが強くなりました。マレーシアにいるときは女優として映画などに出演していたので、気持ち的にはちょっと違うというか……。
昔から日本が大好きだったんです。マレーシアにいるときから、日本に留学をしたいって思っていて。テレビ番組のお話がきたときは、もう「やった~!」って。
番組を通じて日本の人と知り合って、日本を知っていくなかで、「みんなにもっと元気になってもらいたい!」って思うようになりました。
「いまが辛くても良い未来はきっとあるよって」
──新曲「明日へ」はどんな気持ちで歌われた曲ですか?
Iris:凄くポジティブ。みんなにポジティブになって欲しいって。だから私もポジティブな気分で歌いました。
──寄り添うような優しい歌詞が印象的ですが、歌詞を見たときはどんなことを思いましたか。
Iris:私自身も明日のことは分からないけど……辛いことも嬉しいことも、明日に向かっていくための準備だと思うんです。
今が辛くても良い未来はきっとあるよってことを伝えている、良い歌詞だなって。私も応援されたような気分になって、励まされました。
──『コードギアス 反逆のルルーシュ』の「赤だけが足りない」とは違った曲調ですよね。
Iris:全然違いますよね(笑)。「赤だけが足りない」は歌詞が凄く難しくて、言葉の意味を理解するまで大変だったんです。でも今回の歌詞は分かりやすくて。うまく伝えられたような気がします。
──Irisさんは色々な国の言語をご存じですが、日本語は独特の響きを持っていると思うんです。歌うときに気を付けることはありますか?
Iris:日本語は人間性が出る気がするんです。この間中国語の曲を歌ったんですけど、発音が凄く楽で。日本語の曲はなんでこんな難しいんだろうって(笑)。
やっぱり日本語のひとつひとつの言葉が凄く固くて、発音もあって……リズムに乗せるのが大変です。1フレーズに感情をのせるのが難しい。
──例えばこうやって会話してるときってIrisさんの頭の中では言葉の変換があったりするんです?
Iris:できるだけ日本語で考えるようにしています。でもたまに分からないときは「どうやって伝えればいいんだろう」って悩みます。微妙なニュアンスが違うから難しい。
──それって恐らくストレスにもなると思うです。でもIrisさんはいつも笑顔じゃないですか。日本語は人間性が出る……とも言ってたんですが、Irisさんの声はとても優しくて明るくて。その秘訣って何なのかなと。
Iris:笑顔のほうがみんな嬉しいかなって。だって、ずっと悲しい顔をしていたり、落ち込んでいたりすると……そういうパワーってうつってしまうと思うんです。なるべくみんなに笑顔になって欲しいから、元気でいます。ただ1人のときは泣いたりもします(苦笑)。泣き虫です。
「私がガンダムの曲を歌ってるということでマレーシアではパニックに」
──『コードギアス 反逆のルルーシュ』に引き続いてアニメーションのタイアップ曲になりますが、アニメはお好きですか。
Iris:大好きです! マレーシアにいたときは兄と一緒にずっとアニメを観ていました。マレーシアには現地で作っているアニメがあまりなくて、日本のアニメが流行ってるんです。
私は『犬夜叉』がいちばん好きで、DVDを買って何回も観てました。歌を好きになった理由も、日本のアニメソングの影響なんです。
アニメを観ていた時に歌が心に響いて、歌を好きになって。まさか自分が日本にこられて、日本のアニメの主題歌を歌えるようになるなんて……。信じられないです。『コードギアス 反逆のルルーシュ』の映画を観たときも感動しました。
──マレーシアでは日本のどんなアニメが流行ってるんですか?
Iris:世代によって違うんですけど、お兄ちゃんの世代は『ポケモン(ポケットモンスター)』、『デジモン(デジタルモンスター)』。よく一緒に観てました。私より下の世代の人は『NARUTO』『ONE PIECE』ですね。
──「ANIME」は世界共通言語ですね。
Iris:そうですね。本当に日本のアニメは素晴らしいと思います。
──アニメソングが心に響いた理由はなんだと思いますか?
Iris:アニメを観ると、ストーリーの中に入っていって、キャラクターをすごく好きになってしまうんです。アニメソングはアニメの内容と凄く合っているので、気づいたらアニメソングも好きになっていました。
オープニングは明るくてポジティブなイメージ、エンディングテーマはちょっと切なさがあって心に残るんです。そういうところが好きですね。
──『ガンダム』シリーズもやはり流行ってるんですか?
Iris:はい! お兄ちゃんがガンプラが大好きなんです。凄く細かい作業をして、カラーリングもして。マレーシアは太陽が強いから外で乾かして、家の棚に並べていました。それが初めて『ガンダム』を知ったキッカケです。
──じゃあ、お兄ちゃんに『ガンダムビルドダイバーズ』のエンディングを歌うことになったと伝えたときは……。
Iris:大興奮でした! 私よりも喜んでいたかもしれない(笑)。お兄ちゃんにフェイスブックでガンダムが好きなマレーシア人たちが集まるグループがあることを教えてもらったんです。
そしたらマレーシア人の私がガンダムの曲を歌ってるということで、マレーシアではパニックになっていて(笑)。それくらいマレーシアでガンダムは人気があるんですよ。
シンガポールの『C3 AFA Singapore』で『コードギアス 反逆のルルーシュ』の曲を歌ったんですけど、そのときにマレーシアのファンのかたも来てくれていたんです。「いつかマレーシアでもライブをやって欲しい」って言われたことが心に残っています。
──マレーシアでやはりライブをやりたいですか?
Iris:夢です。マレーシアで私の曲を歌いたい。家族にも聴かせたいです。
──Irisさんのなかで、日本の文化をマレーシアに伝えたいみたいな気持ちもあるんでしょうか?
Iris:あります! 日本は凄く良いところだって伝えたい。日本人は凄く優しくて、お寿司も美味しいよ~!って。
──逆にIrisさんが日本人に伝えたいマレーシアのことってありますか?
Iris:日本の方ってマレーシアのことをツインタワー(ペトロナスツインタワー)しか知らないんです……。
あと、日本の人はマレーシアの物価がとても安いというイメージがあると思うんです。日本から見たら確かに安いとは思います。でもマレーシア人にとっては決して安くはないし、生活も大変で。
でも、そういう一面もあるんですが、基本的にマレーシアはリゾート地で凄くのんびりできる場所なんです。多民族の国で、色々な文化が混ざってる国。それぞれの国の習慣や文化を覚えなければいけないから大変は大変だけど、みんな強い心を持ってるんです。共通する強さを持っている。
──そういう気持ちの強さがIrisさんにもあるんですね。
Iris:そうなのかな? 自分だと分からない(笑)。
“前向きな明日の、未来を信じていこう”がテーマ
──2曲目のミディアムナンバー「BLUE」はどんな思いで歌った曲ですか?
Iris:今回の3曲は前向きがテーマなんです。「BLUE」はもうちょっとスロウな感じですけど。歌詞は「明日を向いて歩いていこう」という意味です。
──<永遠に愛が繋がる この地球(ほし)へ>って言葉がエモーショナルに響きました。歌うときにマレーシアへの想いも込められたのかなと思ったんですがどうでしょう。
Iris:星の話ではないんですけど、帰り道などに大きな月を見たとき「お父さんお母さんも同じ月を見てるのかな」って思うんです。
距離はあるけど、同じ月を見てるかもしれないって思うと「同じ地球にいるんだな」って感じられるというか。マレーシアは時差が1時間だけですし、同じ月を見られていると思うんです。
そう思うことで励みになるから……そういうことを考えながら歌いました。
──3曲目の「Put the past away」は「BLUE」と同じ作詞・作曲家の方が手がけられてるんですよね(作詞・美緒/作曲・奈緒)。「BLUE」とは少し変わって、爽やかな曲調ですね。
Iris:そうなんです。曲調はもうちょっと元気な感じです。「Put the past away」も凄く前向きな曲。
過去のことは忘れて大丈夫だよ。前に進むのがいちばん大事だよって歌ってる曲で。私も日本にきて色々なことがあったし辛いこともいっぱいあって……忘れたいと思っても、忘れられないこともあるんです。
でもこの歌詞を読んで、そのことを考えるより、もっと別のことに目を向けたほうが楽になれるんじゃないかなぁって。
──前向きがテーマということでしたが、3曲とも「明日へ」という言葉が似合いますね。「BLUE」には<今日を照らした光は明日へ伸びる影を作る>、「Put the past away」には<今日という日が美しい過去にある>と、それぞれ明日に続く言葉があって。ポジティブに生きる方法を歌ってるというか。
Iris:そうですね。このシングルは“前向きな明日の、未来を信じていこう”ってことがテーマになっています。みんなに元気になって欲しい。
──先ほど日本語で歌うことは難しい……とおっしゃっていましたが、レコーディングは楽しかったですか?
Iris:この3曲はすごく歌いやすかった。日本語のレコーディングは難しくて泣いてしまうこともあるんです(笑)。うまく歌えなくて凄く悔しくて泣いてしまう。
前回の(「赤だけが足りない」プロデューサーの)浅倉大介さんは凄く優しく説明してくれて。今回は別のプロデューサーさんだったんですけど、凄く順調で泣かなかった(笑)。
──良かった(笑)。ミュージックビデオは極寒のなか撮影されたそうで……。
Iris:長野の山奥で撮影したんです。東京を真夜中に出発して朝5時くらいから撮影したんですけど……。本当に寒かった!(笑)
服装は凄く風の通るスカートだから……。川に足を入れて撮影もしたんですけど、その時も本当に寒かった……。でも空気が凄く綺麗でリフレッシュもできたし、楽しかった!
──いつもはどうやってリフレッシュしてるんですか? Irisさんが元気をチャージする方法というか。
Iris:美味しいご飯を食べる! 食いしん坊なんです(笑)。
和食が大好きです。本当に日本は美味しい食べ物が多い!
──(笑)。いちばん好きな食べ物はなんですか?
Iris:時期によって違うんですけど、カレーが好きです。日本のカレーって凄く繊細。色々な国の文化が混ざってる味がします。
マレーシアで食べるインド料理はもうちょっとラフでストレートなんですよ。「これインド料理だ!」ってすぐ分かるんですけど、日本は旬の野菜もたくさん入ってて深みがあって凄く美味しい。
──確かに日本は四季がハッキリしてて、旬のものも移り変わりますしね。
Iris:そう! だから毎月楽しめるんです。だから悲しい気分になったときは美味しいご飯を食べに行きます。
──聴いている人とっては、Irisさんの歌が心の栄養になっているんだと思いますよ。
Iris:心の栄養……?
──心のごはんというか。
Iris:心のごはん! それは嬉しい! ありがとうございます(笑)。“心のごはん”たくさん食べて、みんな元気になって下さい!
[インタビュー/逆井マリ]
リリース情報
【発売日】
2018年6月6日(水)
【品番】
SRCL-9807
【価格】
1,400円(税込)
【収録曲】
01.明日へ
★TV「ガンダムビルドダイバーズ」エンディングテーマ
02.BLUE
03.Put the past away
04.明日へ (Instrumental)