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映画『ヴェノム』日本語版吹替声優・諏訪部順一インタビュー

映画『ヴェノム』日本語版吹替声優・諏訪部順一さんインタビュー|諏訪部さんが主人公・エディになれた瞬間とは?

今や世界的なアメコミの人気スーパーヒーローとなったスパイダーマン。その好敵手(ヴィラン)のひとりである「ヴェノム」が映画として全国のスクリーンにやってきます。

今回は、映画『ヴェノム』の魅力に迫るべく、主人公のエディ・ブロック(演:トム・ハーディ)の日本語吹替版の声優を担当した諏訪部順一さんにインタビューを実施しました。

エディに対する想いはもちろんのこと、映画に対する想い、演者としての想い、アメコミへの想い、たくさんの想いについて語っていただきました。

感情の高ぶりがおさえられなかったエディ役

——まずは、『ヴェノム』への参加が決まった時の感想をお聞かせください。

諏訪部順一さん(以下、諏訪部):とても嬉しかったです。マーベル・コミックの作品に登場するヴィランの中でも、ヴェノムは非常に人気の高いキャラクターですからね。スピンオフ的に単体の映画として制作されているという話は以前から知っていました。

それにまさか、日本語吹替という形で関わることができるとは。身悶えするような喜びがありましたね(笑)。

大作ということもあり、作品名が伏せられた状態で事務所に話が来まして。ボイステストに参加したところ「ヴェノム」と判明しビックリ。結果、本国であるアメリカからOKが出れば本決まりになると言われ……。

返事が来るまでドキドキものでした。

——本国チェックというのは緊張しますね(笑)。

諏訪部:「本国からダメが出てしまったので、今回の話はなかったことにしてください……」なんて言われても困りますからね。この心の高ぶりをどこにぶつければいいんだ! と、ヴェノム以上に大暴れしていたかもしれません(笑)。

——実際に日本語吹替版をご覧になっていかがでしたか?

諏訪部:とても面白かったですね。エンタテインメント性の高い映画だと改めて思いました。自分が収録を行った際は、まだ映像が完成していないパートもあったので、これが完成形か!と胸に込み上げるものがありました。

今回トム・ハーディさんは、エディ・ブロックをとても表情豊かに演じられています。コミカルなニュアンスのシーンもたくさんあって。これまで彼が演じてきたキャラクターとは趣を異にするようなタイプです。

ボイステストに臨む際、トム・ハーディさんが出演されている作品の日本語吹替版を参考がてら何作か改めて見返してみました。渋い、太い、低音、ワイルド、タフ、無骨、時に朴訥…そういったイメージがこれまでの彼の吹替声のイメージでしょうか?実は自分が当初イメージしていたものもそういう感じで。

しかし、ボイステストに臨んだ際に求められたのは、これまでのイメージや外見の雰囲気に引っ張られず、あくまでも本作の中で演じられている「エディ・ブロック」を表現すること。想定していたよりも「もっと高めの声で」というディレクションがつきました。

正直、いささかの不安を感じながら演じはじめたのですが、そういう邪念もいつしか消えて(笑)。完成品を試写で観た際、ヴェノムとのコントラストもしっかりついた、本作におけるキャラクター性が非常にわかりやすいエディ・ブロックになっていたように思いました。あくまで個人の感想です(笑)。

字幕版をご覧いただけるとトム・ハーディさんの演技や声のトーンがよく分かると思います。日本語吹替版と併せて、両方お楽しみいただきたいですね。

その人物が話していると思える瞬間

——映画の吹替などにも参加されているご自身については、どのように分析されていますか?

諏訪部:幼少の頃から映画が大好きで、学生時代は自主制作映画もやっていました。ですから今でも、映画は自分の中では特別なものだったりします。

第三者の視点から自分が関わった作品を観る時は、心の高揚感はありつつも分析は冷静ですね。自分の演技に関しては特に厳しくジャッジする感じです。客観的に、純粋にエンタテインメントとして楽しむことは正直難しくて。経験を次に活かせるように即、反省会です。

——洋画の吹替もやってみたくて声優になられた部分もあったそうですね。

諏訪部:自分的には、この仕事をはじめるまで、声のお仕事といってまず一番に浮かぶのは外国映画やドラマの吹替でした。子供の頃から親しんできましたので。

しかし、事務所に所属し活動を始めると、ナレーションやラジオパーソナリティ、イベントMCなどから仕事が広がっていって。アニメなどのキャラクターボイスを頻繁にやらせていただくようになったのは30代になってから。おそらく、今日においては多岐に渡る声の仕事の中で、一番最後にやったのが海外実写作品の吹替だと思います(笑)。

お声がけをいただいても、スケジュールが合わず涙を飲んだ作品はこれまでいろいろありましたので、今回は本当に素敵なご縁に恵まれたなと思っています。

——吹替ならではの楽しさは何でしょうか?

諏訪部:実際に生きた人間が演じているものに声を当てるのは面白いですね。

外国の映画の吹替は、まず翻訳の段階で言語という大きな壁を越えなければなりません。

そうして出来上がる台本上のセリフですが、原語とは発音も違えば、言葉の数も違います。翻訳もそのあたりは意識して下さってはいますが、すべてがうまく整っているわけではなく。俳優の口の開き加減や表情などに合わせ、視聴者が違和感を感じないように日本語を寄り添わせていく吹替の作業。映像の方がこちらに寄せてくれることは絶対にないですからね(笑)。いろいろと神経を使うところは多いです。

だからこそ、自分の演技や声がしっかりとハマった時はとてもうれしいですね。その俳優さん個人もですが、それ以上に、その方が演じられている作中のキャラクターをきちんと表現できるよう、常に試行錯誤です。

諏訪部さんから見たトム・ハーディ

——『ヴェノム』で、トム・ハーディさんの演技のお好きなところはどんなところですか?

諏訪部:表情がとても豊かなところですね。顔や体の動き、話す口調や声のトーン、振り幅大きく感情を表現しながらエディ・ブロックというキャラクターを作られています。

今回改めて、素敵な俳優さんだなと思いました。

彼がこれまで出演した作品で演じてきたキャラクターたちと比較すると、『ヴェノム』のエディはちょっと異色かもしれませんね。軽妙さが本当に出色で。大変なことに巻き込まれて、あたふたしているところなどは、女子目線だと「カワイイ」となるはずです。宣伝的にはバイオレンスやホラー感を前面に打ち出していますが、そういう見方もできる作品だと思います(笑)。

——トム・ハーディさんが出演されている作品でお好きな作品ってありますか?

諏訪部:最近の作品ですとやはり『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が浮かびますが、ほとんど喋らないんですよね(笑)。

自分はクリストファー・ノーラン監督の作品が結構好きでして。『ダークナイト ライジング』では非常にインパクトのある悪役を演じていましたよね。とてもインパクトのある役でした。でも、あれが一番好きかというと、ちょっと違うかなぁ(笑)

——僕は『インセプション』が好きでしたね。色男な姿もよかったです。

諏訪部:確かに! それもありましたね。タフ&セクシーみたいなクセ者感は真骨頂というか。ひとつ選ぶことはできないので、では今日のところはそれで(笑)。

一同:(笑)。

みんなが求める正義と悪

——諏訪部さんは元からアメコミはお好きだったんですか?

諏訪部:基礎知識的なものはありますが、そこまでディープに詳しいわけではありません。フィギュアをコレクションしているような詳しい人間が周りにいたりはしますが。

マイ・ファースト・『スパイダーマン』は、1978年にテレビ放送がはじまった東映制作の日本の特撮です。当時東映は、マーベルとキャラクター使用契約を交わしていたんですよね。宇宙から来た悪の侵略者軍団と戦うという設定で。変形する巨大ロボット・レオパルドンに乗って敵の怪人を倒すんですよ。

スパイダーマンがもともとはアメリカの作品だということを知ったのは結構後になってからで。マーベル・コミックには他にもヒーローがたくさんいて。それこそ、八百万の神々のような(笑)。そういう世界観はとても面白いと思いました。同様に、強力な敵・ヴィランも大勢いて。

慣れ親しんだマンガが、ハイエンドな映像によってエンタテインメント作品として世に送り出される。より多くの人に作品の魅力が伝わるといいですよね。

日本でも近年、そのような動きは少なくないですよね。原作ファンのみなさんに喜んでいただけるような作品がたくさん現れることに期待したいです。自分も観てみたい作品がいろいろあるので。

——なるほど。今回はヴィランが主人公になるということで、今の時代を写しているなと思いました。そういう部分を感じられたりはしましたか?

諏訪部:確かに、一点の曇りもない真っ白な正義というものは、なかなか現実味がないような気がしますね。何事にも清濁はあるというか。正義か悪かの判断は、立場によっても変化してくるものです。

ですから、ブレのない根源的な欲求に従って行動しているヴィランの方が、ともすれば、より多くの人から共感を得られたりするのかもしれませんね(笑)。

——ある種人間って本当はこうあるべきみたいなところも見えたような気がします。

諏訪部:ヴェノムは、人間が生物として本来持っていた野生を解き放つような存在かもしれません。理性というリミッターを外すような。エディとヴェノムは一体になることによって、それぞれの足りないピースを補うバディのような存在になっていくのか。はたまた、一方的にどちらかに飲み込まれてしまうのか。本作の見どころですね。

——では最後に。昨今ではアメコミの作品が映画化されることが多くなっていると思います。アメコミの魅力とアメコミ原作の映画の魅力は、ご自身でどう感じていますか?

諏訪部:アメコミに登場するキャラクターは、悩みを抱えている人物が多い気がします。

自分のあり方、社会のあり方、様々なものに対して苦悩しながら戦っている印象です。完全無欠の正義ではなく、正しくあろうと努める姿が感動を呼ぶのではないでしょうか。

それと同時に、ヴィランに憧れを抱く人もたくさんいます。痛快なまでの思うがままっぷりを観ることで、日常で感じる抑圧からしばし解放されスッキリするんでしょう。いずれにせよ、現代社会が抱える様々な問題を少なからず反映している作品群だと思います。

多様な個性を容認、尊重することを是としながらも、マイノリティに対する差別や迫害はなかなか無くなりません。数多登場するキャラクターたちは個性の塊。彼らに親しむことを通じて、「みんなちがってみんないい」的な、真の意味でのダイバーシティ(多様性)時代がやって来るといいですね。

[インタビュー/石橋悠]

『ヴェノム』作品情報

11月2日(金)全国ロードショー!

STORY

《誰もが望む、歴史的偉業》を発見した<ライフ財団>。それは、世界を変えるはずだった――。

正義感溢れるジャーナリスト、エディ・ブロックは、そのライフ財団が人体実験で死者を出しているという噂を突き止めるために取材を試みるも、人体実験の被験者との接触により、“シンビオート”(地球外生命体)に寄生されてしまう。

この意思を持った生命体が語りかける声が聞こえ始めたエディの体には、とてつもない変化が起きていた。彼の中で解き放たれた<悪>が、体を蝕み、増殖していく――。

エディと一体となったヴェノムは、「俺たちは――ヴェノム」と名乗りをあげ、ヴェノム誕生の時がついに訪れた!

■タイトル:『ヴェノム』 原題:VENOM 全米公開:10月5日
■監督:ルーベン・フライシャー (『L.A. ギャング ストーリー』『ゾンビランド』)
■脚本:スコット・ローゼンバーグ&ジェフ・ピンクナー(『アメイジング・スパイダーマン2』)、ケリー・マーセル(『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』)、ウィル・ビール(『L.A. ギャング ストーリー』)
■キャスト:トム・ハーディ(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』)、ミシェル・ウィリアムズ(『グレイテスト・ショーマン』)、リズ・アーメッド(『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』)、スコット・ヘイズ、リード・スコット

『ヴェノム』公式twitter(@VenomMovieJP)
『ヴェノム』公式Facebook
『ヴェノム』公式サイト

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