映画『ドラゴンボール超 ブロリー』野沢雅子インタビュー|今の世の中でも3分の1くらいが悟空みたいな人だったらすごくいいと思うんです。
12月14日(金)から公開となる映画『ドラゴンボール超 ブロリー』。劇場版20作品目となる本作では、かつて劇場版キャラクターとして、圧倒的な強さで観る者を震撼させた最強のサイヤ人「ブロリー」が鳥山明の手掛けるストーリーに登場します!
アニメイトタイムズでは本作の公開を記念し、孫悟空役の野沢雅子さんにインタビューを実施。悟空とともに人生を歩んできた野沢さんが考える声優論や、キャラクターへの想いについて語っていただきました。
役者になってから今日まで疲れを感じたことがないんです。
ーー時代が進んだこともあり『ドラゴンボール超』は過去作品と比べるとバトルの迫力が数段パワーアップしていて、表現の幅も広がりましたよね。
野沢:広がりましたね。一番初めの頃と今のアニメを見比べると全然違うと思います。頭の中では「なんとなくこんな感じだった」くらいだと思いますが、えらい違いですよね。
ーーそんな『ドラゴンボール超』シリーズ初のナンバリング作品が「ブロリー」となるわけですが、劇場版作品にブロリーが登場するのは24年振りなんですよね。
野沢:実は前にブロリーが登場した作品のことは覚えていないんですよ。ビデオは持っているので、見ればすぐわかるんですけど、私はあえて見ないんです。その方がブロリーに出会ったときに新鮮だから。
ブロリーに対して「このやろう!」と思うのだって、前の経験で「ブロリーはこのくらい悪いやつだ」と覚えていたら感情も変わってきてしまいますから。
ーー確かに。今回の映画の中でも悟空とブロリーは初対面という設定になっていますからね。今作のブロリーにはどんな印象を受けましたか?
野沢:悟空としては「根っからの悪いやつではない」と感じました。心底悪いやつもいる中で、ブロリーは違っていたと思います。
ーーバトルも大迫力で興奮しました!特に今回は悟空もブロリーも叫んでいるシーンが多かったと思いますが、戦った後は疲れませんでしたか?
野沢:アフレコが始まってから叫びっぱなしでした。今回ブロリーとの戦いがすごかったから、私の中でこの映画は全部がバトルだったんじゃないかと思うくらいで。「あれ、なにかセリフ言った?」という感じなんですけど、見るとちゃんと言ってるんですよ(笑)。
でも私、役者になってから今日まで疲れを感じたことがないんです。
ーーすごいですね!健康法として仙豆を食べていらっしゃるとか?(笑)
野沢:仙豆は食べますよ(笑)。特に気をつけているということはないんですけど、365日毎日やっていることがあって。
お風呂に入って、シャワーでうがいをするんです。本当はコップでやればいいんですけど、私はシャワーでやっていて。そうすると、喉についている1日のホコリが取れたと思うんです。あとはぬるま湯を鼻から吸って口から出して、鼻の中も洗って。それをずっと続けています。
言い方ではなく、気持ちで役に入り込むことが最も必要なことだと思います。
ーー今作には悟空の父親のバーダックと、母親のギネも登場していましたね。
野沢:映画に登場するのは初めてなのでビックリしました!私たちは台本を先にいただくので自分なりのイメージは描くんですけど、今回は裏切りが多いから「うわっ!こうなるんだ!」と。
ーーバーダックとしての野沢さんの演技も感動的でした。
野沢:ありがとうございます。バーダックはほとんど登場しないキャラクターなので、演じるのは久しぶりでした。
ーー悟空との演じ分けはどのようにされているんですか?
野沢:私は演じ分けということをしたことがないんですよ。自分の中で絵の中にスッと入っていく人ですから、悟空が喋ったら素直にパッとそこに入って喋っています。
ーー役に入り込んでいるからこそ、視聴者としても野沢さん=孫悟空だと思えて。今は多くのアニメが放送されていて、声優さんのお仕事の幅も広がったと思うのですが、野沢さんから見て若い世代の声優さんたちの演技はどう映っていますか?
野沢:今声優をやられている方はお上手だし、良い感性をしていると思います。だから私が一つ言いたいのは「口先だけでうまくセリフを言おう」ということだけはやめてほしいということです。
今は皆さん器用ですから「役に合わせないと」と思っているかもしれないけど、それは二の次でいいんです。「役になりきる」ということを本番までに持っていくことが一番だと思います。
例えば「なんだあのセリフは!」と言われても、気持ちが乗っていれば、私はそれでOKだと思うんです。だからハートでキャラクターに入り込んで、実際に喋っているように言ってくれればいいなと。
ーー野沢さんは声優として悟空のように人から愛されるキャラクターを作るにはどのような要素が必要だと考えられていますか?
野沢:皆さんに愛されるというのは、私が悟空の中に入り込んで、悟空として喋っているからだと思うんです。
それを「こういうふうに声を入れよう」と考えてしまうと、悟空らしくなくなってしまいますから、基本のところで自分が悟空になっていて。
言い方ではなく、気持ちで役に入り込むことが最も必要なことだと思います。
ーー気持ちが大切なんですね。今作はブルマ役が鶴ひろみさんから久川綾さんにバトンタッチされて最初の劇場版作品となりますが、本当にブルマの気持ちが引き継がれているなと感じました。
野沢:やはりみんなの中には長年一緒にやってきた鶴の声が残っているんですよ。何かにつけて鶴の話が出てきて。
みんなに「残念な亡くなりかただったけど、この辺で鶴の話をするのはやめよう。みんなの中に鶴は残っているから。久川さんが一生懸命受け継いでくれているんだから」と話したら、みんなもわかってくれて。
久川さんも彼女なりに一生懸命近づいて、自然と気持ちのうえで私たちの一家の中に入ろうとしているんです。だから私たちはそれを自然と迎え入れて、表に言葉として出せたらいいなと思っていました。
彼女もすごく努力したと思うんですよ。大変なんです、役者をしてみると。一家ができているところにポッと入ってくる訳ですから。それも2、3年ではなく、長年かけてできた一家に。そこに入ってくるのは大変ですよ。素晴らしいことだと思います。
これからも『ドラゴンボール』を続けていくとしたら、久川さんはうまく私たちの一家に入ってきてくれると思います。
今の世の中でも3分の1くらいが悟空みたいな人だったらすごくいいと思うんです。
ーー野沢さんがこれまで悟空を演じてこられて特に印象に残っているシーンはありますか?
野沢:パッと頭に浮かんでくるのは、スノの家で悟空がトイレに入っている時にレッドリボン軍が攻めてきたシーンです。銃を撃ってドアに穴が空いて、悟空が出てこなくて。「うそ、主役って死ぬの?」と思ったんです。
そしたら、ギィ〜とドアが開いて「いってぇ〜…」と言いながら悟空が出てきて。銃弾が当たったら普通痛いでは済まされないですからね。「すごいわ、この子」と思って(笑)。そのシーンが大好きで印象に残っています。
ーー(笑)。野沢さんの中では強敵との派手なバトルシーンよりも、少しコミカルなシーンの方が印象深いんですね。
野沢:悟空は本当に単純で「明るくて世の中が平和であったらいい」と思っていて。その平和を脅かすような敵が出てきたりすると「それはダメだ!」と言って戦う。悟空のそういう性格が大好きです。
悟空は常に鍛えていますけど、それは平和のために鍛えている訳ですから。今の世の中でも3分の1くらいが悟空みたいな人だったらすごくいいと思うんです。
ーー今はフリーザみたいな人も多いですからね(笑)。
野沢:多いですよね。テレビを見ていて、どうしようもない悪いことをしている人を見ていると「ドラゴンボールを見てごらんよ!」と思います。
ーーでもフリーザもTVシリーズの「力の大会」で第7宇宙のメンバーとして悟空たちと一緒に戦って、少し変わりましたよね。
野沢:悟空としても「フリーザも色々わかってきてくれて、自分の方に近づいてきてくれている」と思っています(笑)。
悟空は芯から人を憎むということをしないんです。「それは良いことじゃねえぞ!」という感情が常にあって、だからやっつける訳で。それを分からせるための戦いなんです。
ーーTVシリーズは3月までの放送で一度最終回を迎えていますが、まだまだ先があるように思えますね。
野沢:私は『ドラゴンボール』は永遠に続くような気がするんです。鳥山先生も乗っていると思うんですよ。
私は鳥山先生から頂いて宝物にしている言葉があって、「物語を書くときに、野沢さんの声が聞こえてきて腕が動くんです」と。
もうなんて表現したらいいのかわからないくらい最高の言葉なんです。
ーー最高ですね。最後に映画を楽しみにしている『ドラゴンボール』ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
野沢:本でも映画でも何でもそうなんですけど、とにかく楽しんで入り込んで見て、それで見終わった後に、いくつもなんて欲張ることはなく、何か一つ残ればいいと思っているんです。
それで次の作品のときにまた一つとなれば、「自分もああいうふうになろう!」「こういうことをやっていこう!」というものが増えていって、とても良い世の中になると思うんですよね。
人間いくつも見ようと思っても、どこか薄れてしまうものですから。一つでいいんです。
インタビュー・文:吉野庫之介 撮影:相澤宏諒
作品情報
■タイトル 映画『ドラゴンボール超(スーパー) ブロリー』
12月14日(金)公開
■上映方式:通常版、IMAX(R)、MX4D(TM)、4DX(R)
■スタッフ
原作・脚本・キャラクターデザイン:鳥山明
監督:長峯達也
作画監督:新谷直大
音楽:住友紀人
美術監督:小倉一男
色彩設計:永井留美子
特殊効果:太田 直
CGディレクター:牧野 快
製作担当:稲垣哲雄
■声の出演
野沢雅子
堀川りょう
中尾隆聖
島田敏
久川綾
古川登志夫
草尾毅
山寺宏一
森田成一
宝亀克寿
水樹奈々
杉田智和
■主題歌:「 Blizzard 」三浦大知(SONIC GROOVE)
■製作:「2018 ドラゴンボール超」製作委員会
■配給:東映
■配給協力:20世紀フォックス映画
■STORY
これは、新たな〝サイヤ人〟の物語。
「力の大会」後の平和な地球。宇宙にはまだまだ見た事のない強者がいると分かった悟空は、更なる高みを目指して修業に明け暮れていた。そんなある日、悟空とベジータの前に現れたのは、見たことがないサイヤ人“ブロリー”。惑星ベジータ消滅とともにほぼ全滅したはずの“サイヤ人”がなぜ地球に?再び地獄から舞い戻ったフリーザも巻き込み、全く違う運命をたどってきた3人のサイヤ人の出会いは、壮絶な闘いへ――。
「ドラゴンボール超 ブロリー」公式サイト
「ドラゴンボール超」公式ツイッター(@DB_super2015)
作品情報
■タイトル 映画『ドラゴンボール超(スーパー) ブロリー』
12月14日(金)公開
■上映方式:通常版、IMAX(R)、MX4D(TM)、4DX(R)
■スタッフ
原作・脚本・キャラクターデザイン:鳥山明
監督:長峯達也
作画監督:新谷直大
音楽:住友紀人
美術監督:小倉一男
色彩設計:永井留美子
特殊効果:太田 直
CGディレクター:牧野 快
製作担当:稲垣哲雄
■声の出演
野沢雅子
堀川りょう
中尾隆聖
島田敏
久川綾
古川登志夫
草尾毅
山寺宏一
森田成一
宝亀克寿
水樹奈々
杉田智和
■主題歌:「 Blizzard 」三浦大知(SONIC GROOVE)
■製作:「2018 ドラゴンボール超」製作委員会
■配給:東映
■配給協力:20世紀フォックス映画
■STORY
これは、新たな〝サイヤ人〟の物語。
「力の大会」後の平和な地球。宇宙にはまだまだ見た事のない強者がいると分かった悟空は、更なる高みを目指して修業に明け暮れていた。そんなある日、悟空とベジータの前に現れたのは、見たことがないサイヤ人“ブロリー”。惑星ベジータ消滅とともにほぼ全滅したはずの“サイヤ人”がなぜ地球に?再び地獄から舞い戻ったフリーザも巻き込み、全く違う運命をたどってきた3人のサイヤ人の出会いは、壮絶な闘いへ――。