青山吉能さんが初の地元・熊本公演で紡いだ手紙を全文公開『Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME - ~ PART III KADODE~』熊本夜公演レポ
2019年1月。いよいよ彼女たちの門出(KADODE)がハジマル。
2018年からスタートした『Wake Up, Girls!(以下、WUG)』のファイナルライブツアー「Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME -」もとうとう最終章へと突入した。
『Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME - ~ PART III KADODE~』が2019年1月5日、リーダー青山吉能さんの地元である、九州は熊本県の熊本・市⺠会館シアーズホーム夢ホール 大ホールからスタートするのだ。
本稿では、『Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME - ~ PART III KADODE~』の初回公演となった熊本の夜公演の模様を届けたい。
地元に錦を飾る青山吉能さんはワグナーのために、「手紙」を綴ってきた。会場全体が感動に包まれ、万雷の拍手が降り注いだその瞬間を、アニメイトタイムズでは全文文字起こしで伝えたいと思う。
【Wake Up, Girls!メンバー】
吉岡茉祐さん
永野愛理さん
田中美海さん
青山吉能さん
山下七海さん
奥野香耶さん
高木美佑さん
神曲連発のセトリ
この記事が公開されるのは、2019年1月12日(土)の大阪2daysの前だろう。熊本開催ということで、多くのワグナーがまだライブを見ていない可能性もある。ということで、本記事に関してはセットリストは3曲を除き、非公開というライブレポートとしてはある意味挑戦的な内容で執筆することにした。
セトリはライブを楽しむ上で重要な情報。全てを伝えてしまっては、これかの楽しみが半減してしまうかもしれない。彼女たちの「KADODE」をぜひ、新鮮な気持ちで見守ってほしいと願うばかりだ。
では、ライブ本編の話に入ろう。
ファイナルライブツアーのオープニング曲を振り返ってみると、「SHIFT」、「スキノスキル」という『WUG』にとって最新の楽曲から始まっていた。
最先端の『WUG』を魅せる。このコンセプトのもと、ライブがスタートしていたように思う。
では、Part3となる「KADODE」はどんな楽曲からライブがスタートするのだろうか。
吉岡茉祐さんは事前に公開されたブログで、「パート3は、原点回帰&さらなる挑戦」と綴っていた。
原点回帰。素晴らしいフレーズだ。これは一体どんなライブになるのだろうか。
時計に目を落とすと、18時。彼女たちの熊本公演の千秋楽がはじまった。リーダー・青山吉能さんの「HOME」である熊本の熊本・市⺠会館シアーズホーム夢ホール 大ホールは、一曲目から絶景だ。
彼女のカラーである水色が7割以上。最高の景色で彼女たちを出迎えた。
ユニットとしての推しは勿論大切。ただ、地元に錦を飾るために仕上げてきた青山吉能さんの「KADODE」を祝うことはそれと同等に大切ということだろう。最高のムードの中、7人はパフォーマンスを繰り広げる。
ちなみに、今回の影ナレは吉岡茉祐さんが台本を担当。また、ワグナーなら誰しも知っているあの人物が声で出演している。完全に仕上がった状態でライブの中に入ることができるのも「KADODE」の魅力だろう。
セットリストは非公開だが、MCは全開でお届けしよう。オープニングで2曲を披露した後の挨拶は以下だ。
「(今年)おみくじを2回引いたんですけど、2回とも大吉だったんですよ!今日は楽しんでいきましょう!」(高木美佑さん)
「これが(2019年)『WUG』ちゃんのライブ初めです!たくさん叫んで帰って下さい!」(山下七海さん)
「(熊本での昼公演を終えて)本当、よっぴーが愛されてるなって感じるんだよな〜。『WUG』のライブ初めが熊本でよかったです!」(田中美海さん)
「心の底から叫ぶと一年中いいことが起きるらしいよ?今、吉岡さんが作ったんだけどね(笑)ライブ初めに私たちを選んでくれてありがとうございます。絶対後悔させません」(吉岡茉祐さん)
「皆さん来てくださってありがとうございます!お正月一瞬でしたね。ワグナーさんと過ごす時間も(楽しすぎるので)一瞬で過ぎてしまいます。この時間を大切して、笑顔を交換していきたいです!」(永野愛理さん)
「夕飯にだご汁をおかわりしちゃいました(笑)。美味しいものに力をもらったので頑張ります!」(奥野香耶さん)
「うふふ。昼よりもリラックスしてる自分がいる(笑)。今日の昼公演、デビューのワンフェスを思い出すくらい緊張したの。私、初夢でさぁ、熊本公演の夢を見たの。そしたら、絶対あり得ないって分かってるのに大ブーイングだったの〜(涙)。『帰れー!!ブーーー!!!』みたいな。だから地獄のようなお正月だった(笑)」(青山吉能さん)
「(会場を見渡して)そんなことないじゃん!!」(吉岡さん)
「だよね!最高!!!(大歓声)不安だったけど、皆さんの笑顔を見たら元気が出ました!付いてきてくれますか?(大歓声)よろしくお願いします!!」(青山さん)
非公式ユニット「チーム西日本」
MCが終わり、彼女たちの新しい一歩を祝う「KADODE」は更に盛り上がりを魅せていく。いつもキレキレのダンスを披露して、ステージでのパフォーマンスを牽引する永野さんが突如シュートダンスを披露するなど会場を煽ったかと思うと、バラードに突入する。
今回の「KADODE」は「純度100%。混じりっけなし」の人気ナンバーを詰め込んだストーリー性のある“特上幕の内弁当”と言ったところだろうか。
そして、この日の一曲目が終わった時点からあることを思っていた。
熊本公演の千秋楽は、これまで度々経験してきた夏のツアーと同じ様な感覚があった。彼女たちと会場のグルーブ感。例えが難しいのだが、単純に音圧とパフォーマンスが違うのだ。
吉岡茉祐さんは「もっと!もっと!もっと!盛り上がれるでしょ?」というメッセージを表情と歌声で伝え会場を煽る。会場が合唱するシーンで彼女が耳に手を添えるパフォーマンスが印象的である。
田中美海さんはナチュラルすぎる笑顔が次々と溢れてくる。普段のパフォーマンス中はクールな一面を魅せる彼女が、天真爛漫な表情を浮かべている。
パフォーマンス中、メンバーそれぞれが永野愛理さんと隣になると目を合わせて笑顔を交換する。
そんな贅沢な光景が目の前に広がっていたのが、今回の熊本公演である。
ライブが中盤に突入すると、青山吉能さん、吉岡茉祐さん、山下七海さんによる非公式のユニット「チーム西日本」による楽曲が披露された。
青山吉能さんたっての希望により、彼女たちの愛する後輩のユニット『Run Girls, Run!』のハジマリの曲をカバーした。「カケル×カケル」だ。
吉岡さんが林鼓子さんのパート、青山さんが森嶋優花さんのパート、山下七海さんが厚木那奈美さんのパートを歌い上げる。センターはセンターが。リーダーはリーダーが。そして、『Green Leaves Fes』で共演を果たした“Wななみ”だ。
神前暁さんが書き下ろしたロックテイストで疾走感の溢れるナンバーを3人が歌う。故郷を離れ新しい一歩を踏み出してきた彼女たちともリンクする楽曲であり、非常に心を揺さぶられる時間となった。
あっという間に時間は過ぎ、今回の“プリンセス”青山吉能さん演出によるソロコーナーに突入する。ここで、会場全体の涙腺が崩壊した。
青山吉能さんからあなたへ
「チーム西日本」での「カケル×カケル」を披露した後、青山吉能さんは前日の朝3時に書き上げたというワグナーへの手紙を読み上げた。
「皆さん、お元気ですか?私は元気です。ついにやってきた熊本公演。はじめての凱旋。皆さん楽しんでますか?美味しいものは食べましたか?熊本のこと好きになってくれましたか?私はみんなが好きになってくれたこの街が、生まれ育ったこの街が・・・大嫌いでした。
このことは結構知っている人もいるんじゃないかな。この活動を始めてから上京するまでのたくさんの挫折は今でも鮮明に思い出せます。理不尽に負け続ける日々。そのほとんどが私が熊本に住んでいるせいでした。当時の私は自分に一杯一杯で、その中で色んな方々が動いてくださっていたことに気付かず、ただただ、恨みが募るばかりで。いつしか、仕事を終えて熊本空港に着く度に、『帰ってきてしまった』と思うようになってしまいました。
ワグナーさんの前では、私は元気で面白くておちゃらけた自分でいたかった。だから、あてのない感情は全部母にぶつけて、たくさん母に涙を流させてしまいました。毎週の送り迎えも毎日のお弁当もお礼の一つも言わず、口を開けば悪態ばっかりで、たくさんたくさん迷惑を掛けました。
本当にごめんなさい。
それから今、上京して4年ほど経ちました。全く慣れません。美味しいお店も全然知りません。電車はとっても難しいです。その度に、熊本のほとんどの駅はホームが一つしかないことはありがたいなぁって思うし、皆に教えた美味しいもんじゃのお店も、皆に秘密だけど美味しいパスタのお店も、熊本にはあるんだなぁと恋しく思います。
そして、あてのない感情、もやもやは誰にもぶつかることなく、あてもないまま消えてしまう。それが上京でした。
当たり前の日常は決して当たり前じゃありませんでした。いつだって側にいてくれたこの地を、少しでも嫌いになってしまったことを私はすごく後悔しています。ここに帰る家。『HOME』がある。そのことをこれからも絶対に忘れないで生きていきたいです。
そして、私にはもう一つ大切な『HOME』があります。『Wake Up, Girls!』という存在です。小学校からの夢を叶えてくれた七瀬佳乃ちゃん。メンバーという最大のライバルで最大の仲間。ここまで支えてくれたたくさんの愉快なスタッフさん。そしてワグナーという最高の家族。1人では絶対には辿り着けなかった景色をたくさん見せてくれてありがとう。私にたくさんの『HOME』を届けてくれてありがとう。私をここまで育ててくれて本当にありがとう。
本当に、本当に、本当にありがとう。
3月まで私は絶対に後悔したくない。だから、私は心の限りたくさんの感謝を伝えていきたいです。ここで過ごした一瞬、一瞬があなたの宝物になりますように。
これ以上書くと、最後のMCで言うことがなくなってしまうので。
最後に、私の大好きな“熊本”に来てくれて本当にありがとう!」
2019年1月5日 青山吉能
Wake Up, Girls!のリーダー・青山吉能
万雷の拍手が熊本を愛する彼女に降り注ぐ。そして、青山さんは感謝の気持ちを込めて、ソロ曲「わたしの樹」を歌いはじめた。
出だしはアカペラだった。
涙で歌声が詰まる青山さんを鼓舞するように、水色のサイリウムが一つ、また一つと灯っていく。そして、最後には6人が登場し、全員で「わたしの樹」を歌い上げた。
『WUG』のオーディンション以前から合唱部に所属していた彼女。人一倍歌に関しての自信を持ちつつも、様々な苦労があったと以前語っていた。
だが、そうした壁を打ち破った彼女は、とても魅力的で彼女らしいオリジナルの歌唱方法を手に入れた。明るく天真爛漫でおちゃらけたキャラクターをそのまま逆(失礼!)にした女神のような艶があるファルセット。独特なコブシやシャクリ。時折飛び出すがなり声も癖になる。
吉岡茉祐さんが情熱と力強さで『WUG』の楽曲をリードしているのであれば、青山吉能さんは脆そうで、儚く、それでいて芯の強さを感じさせるような歌声。そういった『WUG』の根幹を担っていたように思う。
彼女のファルセットが響く時に会場を見渡してみると、気持ちよさそうに耳を澄ましているワグナーが多く見られる。この景色が僕も好きだった。
せっかくの機会なので、青山吉能さんについてもう少し書こう。
彼女は歌声や字と同じ様にステージでの所作が美しい。僕自身ダンス経験がないため、うまい表現ができないのだが、とにかく目を奪われる。特にそれが顕著になったのは、3rdライブツアー以降な気がしている。
仕事柄ライブ中はステージ全体を俯瞰して見るように務めていても、思わず目が止まるのは彼女の笑顔とパフォーマンスだったりするのだ。リーダーということもあり、インタビューではいつも締めのコメントをもらっていた。その度にいいコメントを出してくれたことも編集者として、素直に感動していた。
「私がしっかりしなきゃ!」そういった彼女の健気に真面目に努力する彼女をワグナーは愛しているのだろう。
言葉の結晶
KADODEで初お披露目となった新衣装で再登場する『WUG』。ホワイトとグリーンのグラデーションが美しい。
そして、ここで2019年1月23日にリリース予定の「Wake Up, Best!MEMORIAL」に収録される約1年ぶりの新曲、「言葉の結晶」が披露された。
タイトル的に「言の葉 青葉」や「雫の冠」を予想していたが、メロディを聴いてみると、すぐにピンときた。広川恵一さんの楽曲だ、と。イメージとしては、鈴木萌歌がセンターになって以降の『I-1 club』に近い印象を受ける楽曲だ。
転調や7拍子。アーティスト『WUG』の実力を十二分に引き出すために用意されたかのようなメロディラインとコーラスワーク。おそらく過去最高難易度の楽曲なのではないだろうか。
吉岡茉祐さんが事前に発信していた挑戦とは新曲の披露ということだったに違いない。
皆さんも生きていって下さい!!!
ライブ本編が終了し、アンコールに突入しても「KADODE」のセットリストは豪華の一言だった。『Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME - ~ PART III KADODE~』というタイトルに相応しい楽曲ばかりが並んだ今回のライブ。ワグナーならずとも参加必須だと言えるものに仕上がっていた。
会場入りの前、市電の前で乗り方やどっち方向に進むのかが分からず、花畑町駅の前でオロオロとしている僕に、子ども連れの女性が優しい声で話し掛けてくれた。
僕が行き先を伝えると親切に乗り場や時間まで教えてくれた。こういった優しさ、暖かさが熊本の県民性であり青山さんの原点なのかもしれない。
わたしの樹。ナンジャモンジャの木。
本名であるヒトツバタゴの花言葉は清廉。心が清らかで私欲がないことを指す。弱さを隠さずにさらけ出すことができる強さ。まさに彼女にピッタリな言葉ではないだろうか。
彼女たち7人は全国それぞれの「HOME」を通じて、さらに一回り大きくなるだろう。
この日、7人で歌った「わたしの樹」。
記録にも記憶にも残る「彼女たちの樹」が大きく、大きく育つことを心から祈っている。
最後のMCで吉岡茉祐さんが青山吉能さんをセンターへと導いた。そして、彼女が恥ずかしそうに口を開いた。
「私の故郷・熊本楽しんでくれましたか!(大歓声)声が大きい!皆ってすごいな〜。皆が私のこと褒めてくれるんだけど、違うんだよ。隠せないの!色々なことを。『皆聞いて〜!聞いて〜』って感じなの。でも、言いたくないみたいなところもあったりとか(笑)。最近全然ないけど、お渡し回とかで推しであればあるほど冷たい対応をしたりみたいな(会場大爆笑)。皆試された人たちだなって思います。
でもね、今日はちゃんと自分の気持ちを伝えようって。そう思ってお手紙を書いてきました。やっぱり、結成してから2〜3年くらいはこんなところ2度と帰ってきてやるか!って思ってたの。お母さんにもたくさんあたったりして。でも、離れてみて気づいた皆の温かみがあるなって。皆も熊本のあたたかさに触れて、後世に伝えてください。
私!皆に出会えて本当に幸せなんです!本当に!『言いたいことがあるんだよ!好き好き大好きやっぱ好き!』
大好きなメンバーと裏でメソメソ泣いてるスタッフさん!そして、客電を点けて!!皆の顔がちゃんと見えない!!こんなにたくさんの皆に囲まれて夢を叶えることができた私は、本当に本当に幸せの極みでございます!
いよいよはじまったPart3これから全身全霊で生きていくので、皆さんも生きていって下さい!!!今日は本当にありがとうございました!」
熊本公演では彼女たち7人による合唱も披露された。美しく響き渡る歌声はきっと、会場に集まったファンの記憶に残る旋律になったと思う。
[文・川野優希]
Wake Up, Girls!FINAL LIVE ~想い出のパレード~
■タイトル
Wake Up, Girls!FINAL LIVE ~想い出のパレード~
■日 時
2019年3月8日(金)
開場17:30 開演18:30
※開場・開演時間は変更になる場合がございます。
■会 場
埼玉・さいたまスーパーアリーナ
■主 催
エイベックス・ピクチャーズ株式会社
■内容
声優ユニット「Wake Up, Girls!」によるFINAL LIVE
※内容は変更になる可能性があります。
■出演者
Wake Up, Girls!(吉岡茉祐、永野愛理、田中美海、青山吉能、山下七海、奥野香耶、高木美佑)
※出演者は予告なく変更となる場合がございます。
※出演者変更に伴うチケットの払戻しはいたしません。
Wake Up, Girls!公式HP
Wake Up, Girls!公式Twitter(@wakeupgirls_PR)