『劇場版 幼女戦記』初日舞台挨拶レポート│戸松遥さん演じるメアリーとの死闘に悠木碧さん「身を引き締めて掛からないと負けるぞ」
KADOKAWAホビー書籍編集部から刊行中のカルロ・ゼン先生原作の人気ライトノベル『幼女戦記』。本作の劇場アニメ化となる『劇場版 幼女戦記』が、2019年2月8日(金)より公開スタート。同日には公開を記念した初日舞台挨拶が、東京・EJアニメシアター新宿にて開催されました。
イベントにはターニャ・デグレチャフ役・悠木碧さん、上村泰監督、菊島憲文プロデューサーが登壇し、作品にまつわるトークが展開されました。
10稿に及ぶ議論を重ねた末に出来上がったこだわりのシナリオ
上映終了後に行われた今回の舞台挨拶には、「ここぞ!」という場面で流れるメインテーマともいえるBGM「Saga of Tanya the Evil」の壮大な音色をバックに、悠木さん、上村監督、菊島プロデューサーの3人が登壇。作品にまつわる様々な質問に答える流れで、トークは進行していきました。
まず、本作が制作されることになった経緯を尋ねられた菊島プロデューサーは、「TV版の時にすごく大きな反響をいただいて、その頃からすでに続編の話はありました。ただ、何分凄まじくカロリーの高い作品なので、まずは(TV版が)終わってから考えようと。それからTV版が終わった後、2期にするか劇場版にするかという話になった時、音響だったりアクションシーンの迫力というのを考えると、劇場版が良いのではないかという結論になりました」と、TVシリーズとの天秤の末に劇場版を選んだという経緯を明かします。
そんな劇場版の話が、主演である悠木さんに伝わったのは比較的後になってからのようで、本作でも音響監督を務める岩浪美和さんから、別の作品の収録の際に「幼女戦記が完全新作で映画をやるらしい」という話を唐突に聞き、度肝を抜かれたという出来事があったのだとか。
劇場版の内容については、TV版の続きをやるということはすぐに決まったものの、原作のどこまでを描くのかが定まるまでには、かなり時間が掛かったそう。そのため、脚本が出来上がるまでに半年以上もの期間がかかり、その稿数は10稿にも及ぶ数になっていたという、こだわりの末に完成したものであることも明らかにされていました。
ターニャVSメアリー、悠木さんが戸松さんと初めてのガチバトル!?
本作のアフレコの時期は9月頃という、劇場アニメとしては遅めのタイミングとなっていたようで、「なかなか始まらないね」と、ヴィーシャを演じる早見沙織さんと話していたという悠木さん。
劇場版では、ターニャのライバル的な存在として、戸松遥さん演じるメアリー・スーが登場し、死闘を繰り広げることになりますが、これまで悠木さんと戸松さんは仲のいいキャラクター同士を演じることが多かったため、ここまで本気のバトルでの掛け合いは初めてのことだったのだとか。
「戸松さんは瞬間的なお芝居をされるイメージなので、身を引き締めて掛からないと負けるぞ」と、悠木さんもかなりの気合を入れて収録に臨んでいたそう。しかし、アフレコが終わった直後には、二人で仲良くお弁当を食べていたという、プロの役者ならではの切り替えの早さを感じさせるエピソードが披露される一幕も。
また女性のキャスト陣が集まってご飯を食べた時には、本作からの参加となる田村睦心さん(ビビ役)が「碧ちゃんが怖かった」と感想を述べていたほど、ターニャを熱演する悠木さんの姿に衝撃を受けていた様子。その際に悠木さんは、「私が怖いんじゃなくてターニャが怖いんだよ」と即訂正していたことも明かし、笑いを誘います。
一方の制作現場は、戦場さながらの過酷な状況となっていたようで、制作の終盤にはほとんどのスタッフに、作中の登場人物たちと同じようなクマができていたほど。
「浮ついてしまうので、制作中は『これはいけるんじゃないか』ということは極力考えないようにしている」と語った上村監督でしたが、あらためて出来上がったものを客観的に見ると、すごいものが出来上がったという、確かな手ごたえを感じ取ることができたようです。
トーク中には、劇場版で初登場する帝国の国歌について言及される一幕もあり、上村監督や菊島プロデューサーがいろいろな国の国歌を聞いてイメージを固め、音楽を担当する片山修志さんにお願いする形で出来上がったものなのだとか。
実は国歌の収録の際には、悠木さん自身の発案で、真剣なものと、ターニャらしい「煽り」を全開にしたものの2バージョンが収録されていたのですが、実際に使われたのは真剣な方のバージョンだった様子。
そんな国歌に関して、「いつかお客さんみんなと一緒に国歌が歌えたら」との発言が悠木さんから飛び出すと、応援上映の実施の可能性についても触れられ、拍手喝采が沸き起こることに。悠木さん自身も、応援上映にノリノリの様子でしたが「メアリーへの応援だらけになるんだろうな」と、ターニャへの応援の少なさを心配し、客席の爆笑を誘っていました。
最後は、3人からファンへのメッセージがそれぞれ贈られる形で、舞台挨拶は締めくくられました。
菊島憲文プロデューサー:
よくここまで育ってくれた作品だと思います。すべてはみなさんの応援のおかげです。
今はまだ子供のターニャですが、その将来も映像で表現していきたいという思いがあるので、今後とも応援のほどよろしくお願いします。
上村泰監督:
非常に濃密な作品なので、あの時何をしていたんだろう、あの戦闘シーンをもう一度見たいと思ってくださるようであれば、もう一度劇場に足を運んでいただければと思います。
悠木碧さん:
私自身も非常に楽しくアフレコさせていただいた作品が、ようやく皆さんの元に届けられたかと思うとうれしいです。とくに作画や音を担当されているスタッフの方々は、劇場での公開期間が短く感じるくらい、本作に膨大な時間を費やして作品を作ってくれていると思います。
私は、たくさんの人が見てくだされば、その人たちが割いてくれた時間の分、作品の価値も上がってくれるような気がしていて。何度も劇場に足を運んで、ウチの優秀な兵士たちを労っていただければなと(笑)。是非またこの戦場に足を運んでいただいて、日常では「どうしてこうなった!」と嘆いていただければと思います。
[取材・文/米澤崇史 撮影/鳥谷部宏平]
作品情報
『劇場版 幼女戦記』
劇場公開中!
INTRODUCTION
統一暦1926年。
ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐率いる、帝国軍第二〇三航空魔導大隊は、
南方大陸にて共和国軍残党を相手取る戦役を征す。
凱旋休暇を期待していた彼らだが、本国で待ち受けていたのは、
参謀本部の特命であった。
曰く、『連邦国境付近にて、大規模動員の兆しあり』。新たな巨人の目覚めを前に、
なりふり構わぬ帝国軍は、自ずと戦火を拡大してゆく……
時を同じく、連邦内部に連合王国主導の多国籍義勇軍が足を踏み入れる。
敵の敵は、親愛なる友。
国家理性に導かれ、数奇な運命をたどる彼らの中には、一人の少女がいた。
メアリー・スー准尉。
父を殺した帝国に対する正義を求め、彼女は銃を取る。
STAFF
原作:カルロ・ゼン (「幼女戦記」/KADOKAWA刊)
キャラクター原案:篠月しのぶ
監督:上村泰
キャラクターデザイン・総作画監督:細越裕治
脚本:猪原健太
副監督:春藤佳奈
服飾デザイン:谷口宏美
魔導具デザイン:江畑諒真、月田文律
銃器デザイン:秋篠Denforword日和、大津直
エフェクトディレクター:橋本敬史
美術監督:上田瑞香
色彩設計:中村千穂
撮影監督:頓所信二
3DCGIディレクター:高橋将人
編集:神宮司由美
音響監督:岩浪美和
音楽:片山修志
アニメーション制作:NUT
配給:角川ANIMATION
製作:劇場版幼女戦記製作委員会
CAST
ターニャ・フォン・デグレチャフ:悠木碧
ヴィーシャ:早見沙織
レルゲン:三木眞一郎
ルーデルドルフ:玄田哲章
ゼートゥーア:大塚芳忠
シューゲル:飛田展男
ヴァイス:濱野大輝
ケーニッヒ:笠間淳
ノイマン:林大地
グランツ:小林裕介
ド・ルーゴ:土師孝也
ビアント:小柳良寛
ドレイク:高岡瓶々
ウィリアム・ドレイク:森川智之
エドガー:福島 潤
ビビ:田村睦心
メアリー:戸松遥
ロリヤ:チョー
ヨセフ:稲垣隆史