舞台『怜々蒐集譚』稽古場レポート&溝口琢矢さん、藤原祐規さんインタビュー!

男と男、男と女――愛憎入り交じる想いや不思議な謎に迫る! 舞台『怜々蒐集譚』稽古場レポート&溝口琢矢さん、藤原祐規さんインタビュー

2019年2月16日(土)より、東京・新国立劇場 小劇場にて、大正ミステリーコミック『怜々蒐集譚』(著:石原理)を原作とした映画&舞台がスタートします。

本作は、“キネマ(映画)”としてあらかじめ撮影されたエピソードの映像と、“キネマ”と同じキャストが舞台上で演じる“キノドラマ(舞台)”の連動興行。別々のエピソードが堪能でき、同じ期間、同じ会場で公開される短編映画作品と演劇公演の両方を観賞することによって、より補完的に深く作品を楽しめるという斬新なスタイルとなっています!

本稿では、いよいよ初日を迎える舞台稽古場の模様をレポート。さらに、メインキャストを務める溝口琢矢さん、藤原祐規さんのお2人にインタビューも実施しましたので、併せてご紹介します。

細やかな演出と、凜とした稽古場の集中力!

時は華やかなる大正時代、傑出した才能を持ち、雪山で遭難した小説家・烏鷺。その未発表原稿が、かつては誰よりも親しく、そして婚約者を烏鷺に奪われたことで訣別したはずの同業者・乙貝の家で発見されます。

一方、街には人をかどわかすという、赤い焔(ほのお)をまとったような女が。その女が抱えた想い、そして、乙貝が烏鷺の原稿を所有していた理由とは?

人の想いは時に不思議な出来事を呼び覚まし、謎をまとう……人気挿絵師・出泉と新人編集者の南、歌舞伎役者の葛葉が、愛憎絡んだ人の想いが織り成すさまざまな謎に迫る大正浪漫ミステリーとなっています。

この日の稽古は、南役の溝口さんと出泉七朗役の藤原さん、乙貝役の相馬圭祐さんが相対する場面から。

まっすぐで生真面目に疑問を投げ掛ける南を演じる溝口さんと、着物と羽織をまとい腕組みをしながら、ひょうひょうと答える出泉七朗を演じる藤原さん。開始早々、稽古場には凜とした空気が流れ、皆さんの集中力が感じられます。

演出の八鍬健之介氏からは、立ち位置を含め細かなイメージ、セリフを発するタイミングなど1つずつ丁寧な指導があり、そのつど動きを止めて芝居の輪郭をつかんでいく2人。

そこに登場した乙貝を演じる相馬さんは、3人で作る場面での演出意図、処し方など、乙貝についての解釈を八鍬氏とディスカッションしながら、さまざまにアプローチを変えて、同じ場面を何度か繰り返し、納得のいく形を模索していきます。

直前のセリフからの空気感を残した余韻、言葉のニュアンスなど、キャスト全員がその役“らしさ”を求めて、少しずつ深く掘り下げていく様子は、まるで木彫りでの彫刻作業のように驚くほど緻密!

八鍬氏と相馬さんが所作について談義している中、そのかたわらで溝口さんと藤原さんが何やらクスクスと笑顔まじりで芝居の打ち合わせをしている姿も。

真剣な中にも座組の温かいつながりが感じられ、打ち解けた様子が伝わってきます。

続いて、話し込む南(溝口さん)と出泉(藤原さん)のところへ、さっそうと現れる歌舞伎役者・葛葉を演じる味方良介さんとの場面へ。

襦袢をヒラリとはためかせ、艶やかな雰囲気の味方さんは、溝口さん、藤原さんのシリアスな会話を引き取り、粋で鮮やかに登場する葛葉そのもの。稽古場の雰囲気もまた、変化していきます。

熱量の込め方、目線の位置、セリフのトーンの調整など演出が付くたび、どんどん質問したり、聞いたことをすぐに取り入れて別アプローチで試したりと、柔軟で積極的な姿勢の味方さん。本番でどのような“葛葉”が観られるのか、今から楽しみです!

その後も尽きることなく続く真剣な稽古では、制作スタッフ、キャストの皆さんがこまめに話し合い、確認し合う場面が多く見受けられ、本番への期待に満ちた熱気があふれていました。

溝口さん演じる南の性格は「僕がふだん大切にしたい部分」、出泉は演じる藤原さんと思考回路の違う自由奔放な人物☆

ここからは、新人編集者・南役の溝口琢矢さんと、人気挿絵師・出泉七朗役の藤原祐規さんのインタビューをお届け!

――まず、出演が決まったときの心境をお聞かせください。

南役・溝口琢矢さん(以下、溝口):原作を読んで、南くんは普段の僕に近いなと思いました。

僕が南くんの性格で好きだと感じたところは、“誠実でまっすぐ、仕事が好き”という部分。そこは僕自身が大切にしたいと思っている事なので、気持ちが惹かれました。出演が決まって、ただただ、うれしかったです。

出泉七朗役・藤原祐規さん(以下、藤原):原作を拝読したことがなかったので、「出泉とはどんな人間なのだろう」という興味から始まりました。読み終えた段階で「出泉は、とっても(物語の)軸にいる人だ……」と知り、身が引き締まる思いでございました。

――ご自身が演じられる役柄の印象はいかがでしたか?

溝口:原作と(本作の)脚本とで、作品のイメージが変わらないことに驚きました。舞台になっても世界観は変わらず、また、その世界観の中にいる南の真面目さも、しっかりと脚本の中に組み込まれていました。

原作で抱いた南への印象が、脚本の南でも変わっていないことに胸がワクワクしました。

藤原:僕が演じる出泉は、自分の思考回路と違う自由奔放な人間だと感じました。ひょうひょうとしていて、ともすると他人に理解されない言動をとったり、おおよそ常人の感覚ではなし得ない言動をサラリとやるんです。

そうなると、「その根幹にあるものは何なのだろう」という部分がとても難しく。まさに今、稽古をしながら、演出の八鍬さんとご相談して探している最中です。

――映画と舞台の連動興行は、なかなかない試みだと思います。見どころを教えてください!

溝口:全体を通しての見どころだと、普段舞台で活躍されている出演者の方々の“映像の中での芝居”を見られることだと思います。(映画と舞台が)同時に行なわれるので、映像と舞台の芝居の違いを楽しんでいただけるのではないでしょうか。

今回、舞台演出の八鍬さん、映画監督の武島(銀雅)さんのお二方で意見をすり合わせ、僕らキャストにも「このようにしたい」など、細かく伝えてくださいました。

映像では目線だけを動かすなど、なるべく自然でフラットな作品を作り上げ、一方の舞台では、お客様に生でお伝えするので、熱量の出し方も変わってきます。そういった点が大きな見どころだと思います。

藤原:まず、映画と舞台が同時に上演されるというのは、僕の知る限りなかったのでとても新しい試みだと思いました。例えば、舞台が終わった後に映画化などはあるように思いますが、同じ場所で交互に、映画を上映した後の空気を持ったまま、舞台をやるというのがとても新鮮だなあと感じます。

次に、1つのストーリーを映画と舞台で違う視点から追い掛けるので、そういった意味でもとても面白い試みで、見どころだと考えました。

――本作では、“人の想いが生んだ謎”が軸になりますが、日常で個人的に謎を感じたり、腑に落ちなかったことは、今までにありますか?

溝口:僕は子供の頃、疑問に思ったことを父に「これ何?」と聞くと、「まずは調べてから聞きなさい」と言われて育ったんです。そこから今に至るまで、何かあるとすぐに調べたくなります。そこで分からなかったことは頭のどこかに覚えておき、一旦忘れるようにしているので、あまりそういった点では腑に落ちないという出来事はないですね。

もちろん、お芝居の部分ではいろいろと理解したいことは出てきますが、幸せなことに現場には沢山の先輩がいて、自分が考えても分からないような困った時には手を差し伸べてくださる方々が多いので、謎だったり、悩んで(気分が)落ちたり、ということはないです。

藤原:洗濯をすると、なぜか靴下が片方だけ無くなります。洗濯が終わって、干す時に片方だけいない。結果、見つからないまま引っ越しなどで大掃除しても、結局出てこない事があるんですよ……それが謎だなって(笑)。

一同:(爆笑)。

――逆に、変なタイミングで見つかることありませんか。

藤原:あります、あります! ベッドの下にたくさんあったり(笑)。なので僕、仮説を立てたのですが、“靴下隠し”みたいな妖怪がいて、僕の靴下を隠しているんじゃないかと思っています。なぜベッドの下に靴下があるのか……そこが妖怪“靴下隠し”の巣なんじゃないか、ということに落ち着きました(笑)。

――では、公演に向けてファンの方へメッセージをお願いします。

溝口:キネマ&キネドラマ連動興行ということで、「どっちを観れば良いか、どちらから観始めれば良いか」と思われるかと思いますが、「どっちから観ても大丈夫!」とお伝えしたいです。映像と舞台の内容は時間軸も違いますし、片方だけでも楽しめます。

個人的には両方観ていただいて、よりいっそうこの作品を楽しんでいただきたいと思いますが、安心してご自身のタイミングでお越しください。

藤原:原作ファンの方は、原作の持つ美しい描写、古き良き時代の日本の空気感をとても好まれていらっしゃるのではと思います。舞台でも、それを具現化できると良いなと思います。そして、根幹のテーマが、とても濃い「人の行き過ぎてしまった想い」という部分もあり、それを舞台上で僕ら役者が熱量や思いをぶつけ合って、生(ライブ)の良さを表現したいと思い、理想的な形になればと考えています。

また、原作を知らない方でも楽しめる作品になっているので、そこに向けて頑張ります。ぜひ、劇場に観に来てくださるのをお待ちしております。

なお、インタビューに同席していた三宅優プロデューサーからは、キャスト決定の際、「原作者の石原理先生に溝口さんの写真をお見せした瞬間、『よくぞ、こんなに南くんのイメージにぴったり合う人を探してきましたね』と喜んでいらした」とのコメントも!

南だけでなく、他キャスト全員の配役についても同じリアクションで、顔合わせに訪れた時も変わらず期待されていたそう。石原先生も納得のベストメンバーがそろう本作、今から公開が待ち遠しいかぎりです。

[取材・文/加藤日奈]

Zu々プロデュース公演『怜々蒐集譚』概要

<公演期間>
2019年2月16日(土)~2019年2月26日(火)

<会場>
新国立劇場 小劇場
〒151-0071 東京都渋谷区本町1丁目1番1号
https://www.nntt.jac.go.jp/guide/access/

<出演者>
南(みなみ):溝口琢矢
出泉七朗(いでいずみななお):藤原祐規
幽興斎葛葉(ゆうきょうさいくずは):味方良介
乙貝紅葉 (おとがいこうよう):相馬圭祐
烏鷺公外(うろこうがい):相葉裕樹(※キノドラマは、声のみ)
来島(くるしま):鯨井康介 他

<企画>
Zu々

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