「僕らだから歌える唄がある」──国境、民族、ジャンル、すべてを超えたFLOWだからこそ奏でられる音楽の旅|FLOWインタビュー
アニメファンから絶大な信頼を得るロックバンド・FLOWが、4月10日に3年ぶりのオリジナルアルバム『TRIBALYTHM』(トライバリズム)をリリースする。
新曲に加えて『テイルズ オブ』シリーズテーマ曲「風ノ唄」、「INNOSENSE」、「BURN」、ソーシャルゲーム『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』テーマソング「PENDULUM」、10年ぶりの日本武道館単独公演のために作られた「ONENESS」など全14曲が収録。さらに初回特典のBlu-ray Discには日本武道館のライブ映像がノーカット完全収録と、贅沢な内容だ。
デビュー15周年イヤーに開催された“アニメ縛り”ツアー、今年1月30日に開催された日本武道館公演などで「ジャンルの壁を壊していきたい」と語っていた彼ら。今作には、その信念も詰められている。どんな思いで制作に向かったのかを教えてもらった。
日本武道館公演を振り返って
──『TRIBALYTHM』(トライバリズム)という言葉はいつから意識されていたんでしょうか。
TAKE:活動の中でおのずとみえてきたテーマ、指標ですね。簡単に言ってしまうと、共存や共生という意味なんですが……2年前に日本青年館で開催した「FLOW THE CARNIVAL 2017〜アニメ縛り〜」という一日だけのスペシャルライブの開催が、それに気づくキッカケになりました。
アニメとの融合によって、初めての人たちもワンマンに足を運んでくれて。“いろいろな人種”がひとつの場所、音で楽しめた。去年まわった全国ツアー(FLOW 15th Anniversary TOUR 2018「アニメ縛り」)でも、それを改めて感じましたし、バンドとしては15周年という期を経て、3世代ロックじゃないですけど、子どもから大人まで世代を越えて見てもらえていて、それは“種族を越えている”といえるなと。
さらに、海外でもライブをやらせてもらえるようになって“国境も越えてきた”。FLOWの音楽の傘の下ではみんなひとつになれる。それが自分たちの活動の指針なんじゃないか、と思うようになったわけです。
種族・仲間(トライバル)、みんなでひとつになっていく意思(イズム)、それを自分たちの音楽でひとつにしていく(リズム)。それが今回のアルバムの『TRIBALYTHM』です。
──1月30日に行われた「FLOW LIVE BEST 2019 in日本武道館~神祭り~」で、まさにその『TRIBALYTHM』を感じました。
TAKE:あの日も日本中……世界中からいろいろな世代のひとが来てくれていて。『TRIBALYTHM』が形になったのが、あの武道館のステージだったんじゃないかなと思っています。
──話が少し前後しますが、ここで改めて日本武道館公演の感想をおうかがいさせてください。
KEIGO:10年振りに武道館公演をできたということがまず大きくて。一歩一歩積み重ねていた月日を形にできた感覚がすごくありました。それと、さっきTAKEも話してましたけど、今のバンドの指針“ジャンルをぶっ壊してFLOWの音楽でひとつになる。そんなバンドになりたい”という思いを形にできたなと。「ONENESS」をはじめ、みんなで一緒に歌った光景は一生忘れられないと思います。
KOHSHI:高みを目指して切磋琢磨してきた経験と、いろいろな意味で隔たりを壊し続けていた10年間をちゃんと消化できたライブができたと思うし、FLOWのライブを知らないグレーゾーンの人たちにも会えた良い機会だった。「15年間やってきたバンド」であることをああいう晴れ舞台で見てもらえたのがすごく良かったなと思います。
GOT’S:10年振りということもあって、もっと集大成のようなライブになるかなと思ったんですが……非常に良い道のりの途中になったというか。アニメ縛りという振り切れたライブでアニメファンの人たちにもライブに来てもらうことができて、武道館にはアニメが好きな人も元々FLOWが好きな人もみんな集まった。それがアルバムに続いていく感じがした。今後のツアーとかも楽しみになりましたね。
IWASAKI:積み重ねてきたものは伊達じゃなかったなと感じた一日でした。現場力というか、そういうものがついたんじゃないかなと。いまごっちゃん(GOT’S)が言ってたように……曲の内容としては自分たちの集大成ではあったんですけど、次に向かっていく力のほうが大きく投影されていて。次につながる良い一日になったなと思いました。終わったあと “もういっかいやりたい”と思いましたね。
TAKE:お客さんみんなと積み重ねて作ってきた“FLOWライブ”を普段通りにやりたいというのがテーマだったんです。武道館というだけで特別じゃないですか。逆説的にそこを特別にしないというか、いつも通りの姿でいつも通りのライブをやるということが形にできてよかったなと。
すべてのキッカケとなった「風ノ唄」
──曲について詳しく教えて下さい。オープニングの「TRIBALYTHM –Intro-」はケルト音楽をはじめ世界中のリズムとメロディが入っていますが、どういったアイデアだったんでしょうか。
TAKE:『TRIBALYTHM』というタイトルを決めたあとに作りはじめたんです。まさに新しい旅立ちというか。それを高々に掲げるファンファーレというイメージで、世界各国のリズムを取り入れながら、アコースティックなサウンドとデジタルな音の壁を取っ払って融合していく──というものを表現しました。
──曲中に出てくる「TRIBALYTHM」という言葉は、どなたが言ってるんでしょう?
TAKE:全世界でお世話になっている現地のスタッフさんに「TRIBALYTHM」のボイスデータをいただいて。メキシコ、ブラジル、ペルー……地球の裏側からやってきました。その声を入れる事で“『TRIBALYTHM』の旅がはじまる”ことを表現しました。
──そこから続けて名曲「風ノ唄」へと入っていきます。この位置に「風ノ唄」があるのは、それだけ大きな存在の曲なんだろうなと。
TAKE:アルバムのテーマの最初のキッカケの曲だと思うんです。『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』オープニングテーマであり、ファンタジーというテーマがあったからこそ、初めてバグパイプをフィーチャーして、新しいFLOWサウンドとして取り入れることができた。作品との出会いによって新しい道が開けて。作品のテーマである “人と天族の共存”にもシンパシーを感じています。幕開けに適任の曲なんじゃないかなと。
──「サンダーボルト」のなかにも「風ノ唄」という言葉が出てきますね。「サンダーボルト」では北欧楽器が登場します。
TAKE:バンジョー、マンドリン、アコーディオンをフィーチャーしているんです。今回はTHE CHERRY COKE$というバンドのMASAYAさん、MUTSUMIくんに協力してもらいました。
──へえ! じゃあ他の曲にもお二人が参加されているんでしょうか?
TAKE:入っています。「BELIEVER」でバンジョーを入れてもらって、ラストの「TRIBALYTHM –Outro-」にも参加してもらいました。 “その国を想起できる”という世界観の強い楽器を入れて、“国境を越える”という今回のテーマを表現しました。
──本当に多彩な曲が収録されていますね。
TAKE:でもやっぱり軸になったのは『テイルズ オブシリーズ』の3曲ですよね。「風ノ唄」「BURN」「INNOSENSE」。その3曲がアルバムのなかに柱としてあって、「風ノ唄」などのシングル、直近の「音色」「Break it down」「ONENESS」が入って……。
──「ONENESS」は武道館のために作られた曲ではありますけど、豪華著名人が参加したMVを見たことでFLOWの存在を知ったという方もいるんでしょうね。
GOT’S:あのめちゃくちゃ豪華なMVね。
TAKE:我々のメッセージが入った曲でもあり、次に向かっていくための曲でもあります。アルバムの中でも、自然とそういう役割になりましたよね。
──個人的には4曲目のエモーショナルなロックナンバー「火花」がすごく好きなんですが、どんな思いで作られたんでしょうか。
KOHSHI:俺も好きですね。エモい曲で。あの曲は……アルバム制作作業の真っただ中にできた曲でした。(TAKEの)曲を聴いてエモく歌いたいなと思って作った曲です。
──信号に例えた<今「赤から進め!」と青に>という一説がFLOWらしいなと思ったんです。燃えるような赤はFLOWのイメージカラーですよね。武道館も真っ赤に染まりました。
TAKE:ね。もう登場のテーマカラーが赤に定着しましたよね。
GOT’S:燃え尽きないように気を付けます(笑)。
──大丈夫ですよ!(笑)
熟した曲も収録したい
──「火花」「BELIEVER」など、アルバムのなかには<世界>という言葉が散らばっています。アルバムのテーマにつながる言葉ですが、これは意識的に書かれたんでしょうか。
KEIGO:「BELIEVER」に関していうと、2016年の全国ツアーのときに披露していた曲なんですよ。この曲は“FLOW WORLD TOUR 2015 極”で初めてのワールドツアーを経て思ったことを書いているんです(ベストアルバム『FLOW ANIME BEST 極』をひっさげて行われた世界ツアー)。だから自然と出てきた言葉ではあります。
──「アイオライト」もそのあたりに書かれた曲で、ライブで披露されていましたよね?
KOHSHI:そうです、めちゃくちゃ知ってますね(笑)。
GOT’S:未発表の曲をライブでやるってあんまりないんですよ。インディーズのころはありましたけど、最近はなかったよねぇ。ツアー「風ノ陣」「炎ノ陣」でそれぞれ2曲ずつライブ初披露して、他の2曲はライブテイクで出してるんだけど(「アミダ」「EGO」)。あれはなんでやろうって話になったんだっけ?
TAKE:ライブで育てた後で曲をレコーディングしたかった。大体作ってすぐレコーディングしちゃうから、お客さんと成長させて熟した曲が入っててもいいんじゃないかということで書き下ろしたんですよ。当時ライブに来ていた人は「いつ音源化されるんだろう」と思ってたと思う(笑)。
──その2曲が、いい形で今回のアルバムにフィットしましたね。
TAKE:アルバムの流れを作っていく中で「BELIEVER」と「アイオライト」がピースとしてうまくハマったんです。活動の中で形になってきたものがこの1枚になったなと思いました。
──ではもう一方の「アイオライト」についても教えて下さい。
KOHSHI:“航海を導くもの”という意味のパワーストーンがあるんです。それが「アイオライト」という石なんですけど。
──まさに今回のアルバムのテーマにぴったりです。他にも人生の羅針盤という意味もあるんですよね。そういったこともあって、hideさんの「ROCKET DIVE」の一節が入っているんでしょうか。
KOHSHI:そうです、よく知ってますね……(笑)。俺を導いてくれたhideさんがいたからこそ、今がある。その思いをアルバムに入れられたのは良かった。ただ、ぶっちゃけてしまうと、当時の「アイオライト」はこういう歌詞ではなかったんです。時を経て、このタイミング、このアルバムだからこそ、この歌詞を書いてもいいんじゃないかと思って書きなおしました。
──まさに熟したからこそできた曲なんですね。
KOHSHI:育ちましたね。自分でもそう思います。当時そのまま出していたら全然違う歌詞でした。
──今作では異色といえるような、シンプルなパンクサウンドが特徴的です。
TAKE:これだけ他の曲でストリングスを入れて、音を重ねまくって航海しているのに、最後は3ピースで終わるっていう(笑)。急にバンドだけのミニマムな音になって次に進んでいく……というのがよくないですか?
──良いです!
TAKE:アルバムだからこそ表現できる音のやり方になりました。
──あとニルヴァーナの代表曲のタイトルを模した「Smells Like 40 Spirit」。影響を受けたバンド名に加えて「プリントゴッコ」「なめ猫」……とその世代の人がクスりとするワードが並んでいます。この時期ということもあって、平成の“まとめ”のような雰囲気もありますね。
TAKE:なるほど、たしかに。ニルヴァーナからは30歳、年をとってますけどね(笑)。
KOHSHI:30代のときに書いた「Smells like thirty spirit」っていう曲があるんです(2008年発売4thアルバム『アイル』収録)……40代になったので、40代版をどこかで書きたいなと。そしたらTAKEのデモからゴリゴリのミクスチャーサウンドの曲が出てきて“おお、懐かしい”ってところから、これで書ける!と。それで懐かしい言葉を羅列しました。今の10代、20代の子は分からないと思うんですけど……(笑)。
──そうですよねえ(笑)。その部分についてはどう思われてるんでしょうか。
KOHSHI:「こういうものもあったんだよ!」と分かってもらえたら……(笑)。
KEIGO:同じ40代のひとはめっちゃ楽しめると思う。
──あと……YAMAHA MD8の名前が出てきてるんですが、これはもう廃盤になっているMTRで、当時曲作りに使用されていたんでしょうか……?
GOT’S:当時これでデモテープを作ってたんです(笑)。
TAKE:ダブルラジカセのあとMD4になってそのあとにMD8になったんですよね。
KOHSHI:当時はすごく助かっていた。
IWASAKI:しかもデジタルで録れるっていう。
TAKE:今は音楽が多様化していますが、その時代、その時代で聴いてきたものってあるじゃないですか。「自分たちが好きなものを好きなように形にしてしまうのはありかも」ということで、この曲ができたんです。それで音も当時の感じを再現するようにして、ドンシャリな音にしてもらって(※低音がドンドン、高音がシャリシャリ聴こえること)。俺たちの世代の人たちは「懐かしいねこれ」って思うだろうし、10代、20代の子たちが聴いたら「なんかこれ新しいね」って発見もあるだろうから。そういうところでも「越えていく」というテーマを表現できるんじゃないかなと思ってます。
──世界中のサウンドが入った曲、壮大な曲、さらにはシンプルなバンドサウンドからドンシャリの利いたヘヴィな曲まで……このサウンドの幅の広さは、デビュー16年目のFLOWだからこそ表現できるものですよね。
TAKE:そうなんですよね。「ブラスター」でデビューして、「ドリームエクスプレス」が出て、急に「流星/シャリララ」がくると。そのあと「GO!!!」「DAYS」がきて、いよいよなんだこれは、と(笑)。デビューして5年くらいは周りから「何をやりたいのかが分からない」「全部曲が違う」って言われることが多くかったんですが……。
今思い返せば、全部やりたかったことなんですよね。ジャンルに捉われない音楽も、活動の仕方もそうだし……。10年、15年と続けたことで「これがFLOWだ」と判子が押せた。すごく良いタイミングだったんだと思います。
──そういう意味では集大成ともいえますよね。
TAKE:そうですね。ある意味、当時からやっているベクトルは変わってないというか(笑)。そういうミクスチャーのありかたもいいんじゃないかなと思うんですよ。
──『TRIBALYTHM』をリリースしたその先の理想形の未来というのはどんなものになるんでしょうか。
TAKE:いろいろな垣根を越えてFLOWの音楽の傘の中でみんなが楽しめる空間を提供していく、ってことだと思います。何かに固執したり……「こういう風に進んでいくんだ!」って狭い目標ではなくて、FLOWだからこそ間口を広げてできることってあるだろうなと思っていて。それを形にしていきたいなと。
新たなストーリーがここから作られていく
──ツアーはどうなりそうですか?
TAKE:トライバルらしくこういうもの(アクセサリー)をつけて……上半身はハダカですね。
KOHSHI:(ひらめいたように)ああ、いいねぇ……!
──そんな原始的な雰囲気になるんですか!?
KEIGO:イメージを自らぶっ壊していく、それがFLOW!
TAKE:あははは。それは冗談としても、武道館の延長といいますか。ネクストをこのアルバムを持って表現できるといいなと思っています。
──では最後に、新リーダーに就任したIWASAKIさんから締めの一言をお願いします。
IWASAKI:……ん? え、俺!?
KOHSHI:リーダーになるとこういうときに突然くるんだよ……。
TAKE:最後まで気が抜けなくなっちゃう(笑)。
一同:(笑)
IWASAKI:えーっと……。今の自分たちがまるまる詰まった自信作です。自分たちの新たなストーリーがここから作られていくと思うので、自分たちもすごく楽しみだし、ツアーを見にこられるお客さんも楽しんでほしいなと。
笑って楽しめる、そこに至るまでの努力ってみんな必要だと思うんです。その笑うための努力を自分たちも頑張るからみんなも頑張って一緒に笑顔になろうぜというか……。その空間のひとつがライブで、ひとつの教材としてアルバムがあって、勉強の材料として特典のブルーレイ(日本武道館ノーカット映像)があると思ってもらって……聴いてもらって現場に来てもらえればより一層楽しんでもらえると思います。
[取材・文:逆井マリ]
アルバム情報
発売日:2019/04/10 発売
価格:7,480円(税込)
仕様:CD+Blu-ray
品番:KSCL-3143
≪収録内容≫
【CD】
01.TRIB ALYTHM -Intro-
02.風ノ唄
03.Break it down
04.火花
05.PEN DULUM
06.サンダーボルト
07.INNOSENSE
08.音色
09.BEL IEVER
10.Smells Like 40 Spirit
11.BURN
12.ONEN ESS
13.アイオライト
14.TRIBALYT HM -Outro-
【Blu-ray】
・150分を超えるライブ映像完全収録
・15th Anniversary Final「FLOW LIVE BEST 2019 in 日本武道館 ~神祭り~」ドキュメンタリー
・・・等
発売日:2019/04/10 発売
価格:3,240円(税込)
品番:KSCL-3145
≪収録内容≫
01.TRIB ALYTHM -Intro-
02.風ノ唄
03.Break it down
04.火花
05.PEN DULUM
06.サンダーボルト
07.INNOSENSE
08.音色
09.BEL IEVER
10.Smells Like 40 Spirit
11.BURN
12.ONEN ESS
13.アイオライト
14.TRIBALYT HM -Outro-