アニメ映画『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』峰不二子役・沢城みゆきさんインタビュー|不二子さんは世界各国どこにでも行けるチケットを持っている
『ルパン三世』の原作者、モンキー・パンチ氏の突然の訃報。TV、ラジオ、SNS、様々な場所でニュースとなり、業界内外問わず、多くの人々が故人を偲んでいました。
彼の偉業は、今後も人々に語られ、受け継がれ、新たな『ルパン三世』が描かれ続けていくことでしょう。
今回ご紹介する作品もそのひとつ。『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』に続く、スピンオフ第三作目となるアニメ作品『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』が2019年5月31日より、全国の映画館で公開となります。
主人公となるのはもちろん峰不二子。2011年から峰不二子を演じている沢城みゆきさんにお話を伺いました。
「私は不二子さんのかばん持ち」と語る沢城さん。約8年間に渡って峰不二子のそばに寄り添っていたからこそ見えた、峰不二子の姿がそこにはありました。
※取材はモンキー・パンチ氏の訃報前に行っています。
二人の子どもに挟まれる不二子
——まずは、台本を読んだ時の感想を教えてください。
沢城みゆき(以下、沢城):シナリオが上がった段階でプロデューサーさんが嬉しそうに手渡してくださって(笑)。正直なところ、画と相談だなというシーンがいくつかありました。
具体的にいうと、どういう表情をつけるか、どういう演出になるかで、シーンの意味合いが随分変わるなと思った部分が多かったんです。
なので実際画がどう上がってくるのか、収録当日が楽しみになったという感じでした。
——今回はジーンという男の子と行動を共にする場面も多く、男の子と不二子という組み合わせが新鮮だと思いました。子どもとの会話や、やり取りを通して、普段の不二子との違いは意識されましたが?
沢城:そこは明確に音響監督の清水さんからの演出が入りました。不二子とジーンはすごく大真面目に会話しているのに、第三者から見ると面白おかしいという風に作りたいということで、「なるほど」と思って。
なのであくまでも不二子さんの隣にいる私としては、大真面目にイライラしたり右往左往をしたりすることを、とにかく一生懸命に調整していきました。
どういう映像になっているのか、上がってきたものがご覧になる皆さんに面白く見えていたらいいなと思っているところですね。
いつでも自分のことも相手のことも懐柔できる不二子が、その枠外にいる人間と接したらどうなるのかを今回はハイライトとして見せていきたかったんです。
——宮野真守さんが演じているビンカムはどのように見えましたか?
沢城:ジーンは年齢的にも子どもなんですが、ビンカムも子どもなんですよね。ただ、そこに明確な違いというか、段階の違いがあるように思いました。
ジーンって意思を持っている子どもなんですけど、ビンカムって意思を持っていない子どもなのかなって。もう少し言うと、“意思を持っていなかった子ども”なんです。
そこの差が二人の子どもの命運それぞれに出ているんです。何とも言えない後味でした。
私もこの数年ずっと考えているんですよ
——沢城さんから見て、今回の不二子はどうでしたか?
沢城:私からすると、不二子さんはすごく遠くにいる人なんです。ギリギリ遠くに見えている感じでずっと演じています。
今回も結局、距離としては変わりません。ジーンが登場することによってイレギュラーな不二子さんが見られた点はありましたね。
もうひとつ言うと、さらに謎めいてしまった、とでも言いますか……。近くに来てさらに遠くに行ったような感覚。さらに振り幅が大きくなった印象があります。
一瞬「この人でもイライラするんだ」と思ったんです(笑)。もうちょっと近くで見られたのかなと思ったら、最後の最後にはとうとう消えてしまった。そんな印象さえある感じですね。
脚本の高橋さんがどう思って今回の不二子さんを描いたのかは私には分からないですけど、私の読後感としてはそういう感じでした。グッと振り幅を大きく振って消えていったという感じですね(笑)。
——そのミステリアス具合も不二子の奥深さが出ているのではないでしょうか。
沢城:不二子さんって、理解できないからみんなが追いかけたいところがあるんです。それが彼女独特の可愛さみたいな部分で、嫌な奴にはならないすごいバランスの人なんです。
今回の不二子さんに関して、高橋さんはそれを暴こうと思って描いてなさそうです。結局、私たちの手のひらの上で全部を眺め回せる女の人ではないんでしょうね。
——TVシリーズや以前の作品と比べて、今回の映画では峰不二子をどのように演じようと思いましたか?
沢城:ルパン役の栗田さん(栗田貫一さん)がよく仰るんですけど、金曜ロードショーは“ファミリールパン”、小池さんのシリーズは“ダークルパン”と呼んでいて(笑)。
このレンジができたことによって、今までのファミリールパンもただファミリーなだけじゃなくなって。それが良かったと仰ったんです。
ダークルパンをやる時って、描き手も演じ手もリミットを外して、いい顔をしない。そういう真っ向からやっても大丈夫っていう闘技場の感じがするんです(笑)。
ファミリールパンって、みんなで同じ振りのダンスがあって、照明が当たって、すごく自分のいいところをたくさん見てもらう感じがします。
ダークルパンはそういう感じじゃない。もうちょっと闘技場感があって何をされるか分からない。こっちも何を仕掛けるかわからないという中で、ドキドキしながらアフレコしているような差があります。
——なるほど、台詞回しにもセクシーさがあったような気もします。
沢城:そもそものセクシーの定義って非常に難しいと思うんです。ともすると、ちょっと頭が弱い感じに「ねぇ、ルパンぁ〜ん」って言ってしまうような感じでもセクシーと捉えられますし。
でも増山さん(増山江威子さん、先代の不二子役の声優)が演じる不二子ちゃんは、「なんだよなんだよ、そんなに言うならやってやるよ」と周りの男性が思ってしまうマドンナ的な輝きがあったんです。
やっぱり、それはやろうと思ってできるものじゃなくて。私もこの数年ずっと考えているんですよ。
セクシーの定義ってとっても難しいんですが、ダークルパンになった時は、いわゆるすごくいい香水の匂いがするセクシーさではなく、もっと本能的に色っぽいのが香ればいいかなとは思っています。