アニメ映画『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』峰不二子役・沢城みゆきさんインタビュー|不二子さんは世界各国どこにでも行けるチケットを持っている
友人にも「峰不二子みたいだよね」と言われた
——沢城さん自身、不二子みたいな生き方をしてみたいと思いますか?
沢城:全然興味ないです(笑)。毎朝温かいお味噌汁とご飯で生きていきたいです。
——(笑)。自分の中で共通点などありますか?
沢城:あったらいいんですけどね。前に増山さんとお話しした時に「不二子って盗むことが好きだから、盗んだら、はい、おしまいなの」って仰ったんです。なるほどなと思って、それを大事にやってきました。
この前、音響監督の清水さんと話した時に、「本当に沢城さんは手に入れたいものを何でも手に入れてきたね」って言われてはっとしたんです。
例えば、「いつの日か報道を読みたい(※1)」「いつの日か母になりたい(※2)」といった想いがあって、それはどちらも周りの方々の多大な協力があって叶いました。
ただ、ひとつひとつ私の中ではそれなりに大変な思いをしてそのそばまで行かせていただきましたし、清水さんもそんな深い意味で言ったわけではないんですけど……。
周りの人からすれば、「沢城さんは、欲しいものは何でも手に入れている」と見えているんだなと思って(笑)。
友人に話したら「峰不二子みたいだよね」って笑いながら返されて、「うわっ」って最近思いました(笑)。
※1:いつの日か報道を読みたい
沢城さんはテレビ朝日の「報道ステーション」や「サタデーステーション」などで、報道のナレーションを担当している。
※2:いつの日か母になりたい
沢城さんは2014年に結婚、2018年に第一子を出産した。
——それだけ努力しているということでは?
沢城:どうでしょうね。私は自分の努力というより、周りの環境がお膳立てしてくださったことが大半なんです。任せようと思っていただけたことがあっての今だと思います。
残念ながら謙遜ではなく、そうやってひとつひとつをやらせてきていただいてきました。
不二子さんもそうですよね。今思うとよく26歳に峰不二子をやらせようと思えたなって(笑)。
あの時はいっぱしの大人のつもりで、何の過不足もなく「ちゃんとやらなくちゃ、もう出来るんだから」と思っていたんですけどね。
今振り返ると「努力賞だよ、よく頑張ったよ」って本当に自分で自分を褒めてあげたいと思うんです。
それもやっぱり中谷さん含めプロデューサー勢が「沢城にやらせよう」と思ったから実現したことです。
——ちょっと気になったんですが、ご友人に言われたときの「うわっ」というのはどういうニュアンスだったんですか?
沢城:根本的な業が、一緒なのかと初めて共通点を見つけた気がして……。
足が長いとか、胸が大きいとか、顔が小さいとか、そういうぜひ似ていたいところじゃなくて、よりによって欲の部分かと(苦笑)。残念すぎるなと思いました。
「不二子さんのそばにいたい」と思っているはずなのに、「本質的な自分の欲」みたいなものの根本が不二子さんと一緒、と言われたような気がして嫌だなと思いました(笑)。
——不二子も軽々とやっているように見えて、実はすごい努力をしているのかもしれません。
沢城:もしかしたら毎日半身浴して、毎日スクラブして、クリーム塗って、とかやってるかもしれないですよね(笑)。
——男性を手玉に取るために今まで人知れぬ努力をしていたかも。
沢城:すみません、改めます(笑)。
許せちゃう何かが魅力
——不二子という女性は半世紀以上、セクシーの代名詞として、日本のあらゆる年齢、老若男女問わず、様々な人に愛されていると思います。その理由はどこにあると思いますか?
沢城:女性と男性で、素敵だと思うところがそもそも違うのかなと思っています。
ただ、セクシーという代名詞になる程度には、全員からそう思われている要素があるなと。
簡単に言うとルックスが素敵。単純にパーフェクトな主体であるということが第一だと思います。
あとはやっぱり許せちゃうっていうこと。何度も言うようなんですけど、マドンナ的な要素が彼女をそこにずっといられる存在にしているんじゃないかなと。
だってどんなにボディがすごくても、中身が素敵じゃないと、そこにはいられないじゃないですか。なんだか許せちゃう何かが、ずっと彼女をそこに君臨させているんじゃないかと思います。
でも、やっぱり不二子さんが描かれ始めて40〜50年経っているので、最初に描かれていた「素敵な峰不二子」って、果たして今の10代の方からして素敵なのかと、今とっても興味があります。
「もしかしてこのまま行くと、化石になっちゃうセクシーなのかも?」とも思っていて。
時代と乖離していく彼女の素敵さ。そこがこの先、どうしていくのかとも思ったり。逆に時代の流れとは関係なくセクシーっていうものは、そもそも変わらないのかなとか。
芝居も時代によってだんだん変わっていきますよね。流行りの女の子も変わり続けていくので、私もいつまでも増山さんを踏襲したままの不二子さんで行くのか、少しずつでも色が変わっていくものなのか、考えないといけないのかもしれません。
ただその中で変わらない、許せちゃう何かが魅力なのかなと思っています。