この記事をかいた人
- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
——「LUPIN THE ⅢRD」シリーズの作品は『ルパン三世』のメインキャラクターがそれぞれ主人公になっています。とうとう今回は不二子の番ですが、他のメインキャストのみなさんからは何か言われましたか?
沢城:銭形警部役の山寺さんに「今度、不二子の収録あるらしくて楽しみにしています」と言ったら、「俺出てる?」って言われて(笑)。
「聞いていないということは俺出てないんじゃないの?」と言われて、「嘘、そんなことある!? 確認してみます」って確認したら出てないという(笑)。そういうことはありました。
このシリーズって、まず次元大介のお家が建って、次に石川五ェ門というお家が建って、という感じなんです。
栗田さんから、今回のシリーズでみんなが前任を引き継ぎつつも、「浪川大輔の五ェ門」「沢城みゆきの峰不二子」というお家が建つようなものだから、今回どういうお家が建つのか楽しみだと仰っていただけて。
私もそういうものになったらいいなと思っています。
——今のお話の家で表現するなら、不二子に家はいらないのかもしれません。
沢城:本当ですね。これっていうのが無いのが彼女らしさ。監督によって不二子像がそもそも違うじゃないですか。
賢い不二子が好きな方、可愛い不二子が好きな方、不二子を描く監督によって好きな不二子像が違うんだなというのが毎年よく分かるシリーズです。
今回の不二子はそれをぎゅっと凝縮して、いろんな顔がシーンごとに見える。でも最後はどこにいくのか。
そう考えると、不二子には家は必要ないのかもしれませんね(笑)。
——実は2014年のトムス・エンタテインメントの50周年のイベントも取材を担当させていただいた過去がありまして。栗田さん、浪川さん、沢城さんで一緒に『ルパン三世』で登壇されていましたね。
沢城:そうですね。みんなでイベントに出ること自体があまりないので覚えています。
私、黒いワンピースで、今回の映画の不二子さんみたいなヒールを履いていていたと思う。そして、私と浪川さんが凍りついていた気がする(笑)。
おそらく峰不二子役としてイベント出るのが初めてだったんじゃないかな。それで緊張していたんだと思います。
——イベント中も緊張していると仰っていましたね。あの頃から峰不二子と出会ってご自身で変わられた事はありますか?
沢城:そうですね……。あの時から峰不二子役というよりは「峰不二子先生のかばん持ちの沢城みゆきです」という気分なんです。もうそろそろ卒業しないといけないんですけどね。
でもずっとそのスタンスは変わりません。みんなが大好きな不二子ちゃん、みんなが素敵だと思っている不二子ちゃんのそばで、こんなに長く生活させてもらうなんて幸せですよね。
彼女に良いお弁当が出るから私にも良いお弁当が一緒についてくるみたいな、そういう感じ。不二子さんのおかげで、私まですごく大事にしてもらえる場が増えました。
「峰不二子役の」と言っていただけるだけで、今まで座ることができなかったソファにも「どうぞどうぞ!」って言っていただけるというか。
その中でも若干の居心地の悪さみたいなものと並走しながら、やっぱり彼女が見せてくれる、私一人じゃ行けなかった世界がいっぱいあって、ありがたいことですね。
——連れて行ってくれたみたいな感じですか?
沢城:世界各国のどの飛行機にも、どの自動車にも、どの電車にも乗れるチケットを彼女は持っているんです。あちこち連れて行っていただいたような気がしますね。
——もちろんご自身の力もあると思うんですが。
沢城:そうだったら良いんですけどね(笑)。
——いつも謙虚でいらっしゃるその姿勢があるからこそ、役がやって来てくれるんじゃないかなと思います。
沢城:私だって、「はーい、不二子ちゃんです!」って言いたいんですけどね(笑)。私が不二子さんを演じているうちに間に合えばいいんですけど。
でも、せっせと彼女のために努力をして、何年経っても彼女の後を追いかける、まめなカバン持ちとして不二子さんが好きでいてくれたらいいなと思っています(笑)。
そこは自信があります。彼女のことをよく見ている、彼女のことを大事にしてきたっていう自負はありますけどね。
——マネージャーみたいなものですね。
沢城:そうです。彼女的にそんなに好きじゃないと思うこと、男の人たちから要望されてやらなきゃいけないことがあると思うんです。
そんなときも「そういうお仕事なんで、ひとつよろしくお願いします〜!」とお願いするのが私の立場。
——後輩的に「不二子さん、今日もやっちゃいますか!?」みたいな?
沢城:そうそう! 女としてそばにいるから、男の人から来た「セクシーなものをお願いします」という要望に、「やってやりますか!」「もうちょっと足出しておきますか!」みたいに持ち上げている感じですね。
——(笑)。では最後に、ズバリ、不二子の好きなところを聞いてみたいのですが。
沢城:好きなところか……。あれ、私そんなに不二子さんのこと好きじゃないかなぁ(笑)。
——なんと……!
沢城:うーん、困っちゃいますね。やっぱり、彼女を許したくなっちゃうところがものすごく大事なんですよ。本当に大事。許す対象だから好きとはまた違うかもしれません。
あえて挙げるとしたら、今作でも言っているんですけど、「できもしない嘘はつきたくない」っていうところは好きかもしれませんね。
どんな状況下にあっても自分の性分に合わないことはしない。もしかしたらできなくて本人が一番苦しいのかもしれないんですけどね。
そこの迎合しなさは、私からするとカッコ良い男前な姿に見えているのかもしれません。彼女は最終的に自分で全部責任を取ろうとしますから。
簡単なものは全部ルパンに振っちゃったりするけど、『LUPIN THE IIIRD』シリーズに関しては、「てめえの命の責任はてめえで取る」という潔さに憧れますよね。
私たちが生きている現実って、いろんなもののしがらみがたくさんある中で生きていますよね。そのしがらみは、時に絆と呼ばれたりもするから決して煩わしいだけのものではないんですけど、そこに迎合しない様というのがカッコ良いですよね。
[インタビュー/石橋悠]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。
5月31日(金)より新宿バルト9ほか限定劇場公開
共同配給:ティ・ジョイ、トムス・エンタテインメント
不二子は逃げていた。父親が横領した5億ドルのカギを握る少年ジーンとともに。二人はジーンの父・ランディを襲った殺し屋ビンカムに命を狙われていた。
呪いの力によって人の心を操るビンカムから一度は逃げ延びるが、拘束されてしまう不二子とジーン。ビンカムの鋭利な爪が今、不二子に襲い掛かる――!
原作:モンキー・パンチ
監督・演出・キャラクターデザイン:小池健
脚本:高橋悠也
音楽:ジェイムス下地
クリエイティブ・アドバイザー:石井克人
【声の出演】
栗田貫一、小林清志、沢城みゆき、宮野真守
【製作・著作】
トムス・エンタテインメント
【アニメーション制作】
テレコム・アニメーションフィルム