『プロメア』今石洋之監督&中島かずきさんインタビュー|「“熱い”ことそのものを目的にしてしまうと、きっと良くない作品になってしまう」名言が生まれる制作現場の熱きアニメ屋魂
5月24日より全国公開予定の映画『プロメア』。今石洋之監督と、脚本の中島かずきさんという『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』など、数々の熱いアニメを生み出してきたコンビが再びタッグを組んで送り出す、全世界のアニメファン待望の最新作です。
その公開も迫る中、アニメイトタイムズでは、今石洋之監督と脚本の中島かずきさんのお二人にインタビューする機会を得ることができました。
『プロメア』についての話題を中心に、『キルラキル』や『グレンラガン』に関連した様々なお話が飛び出した本インタビュー。歴代のTRIGGER作品が好きなファンにとってはたまらない内容になっていますので、ぜひお見逃しなく!
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脚本は何度も破り捨てられていた!?
――まず、本作が企画された経緯と、映画という媒体を選択した理由についてお聞かせください。
中島かずき(以下、中島):『キルラキル』(※1)の後、二人で次に何を作るかという話になった時、「次の作品は劇場版にしよう」という話になり、プロデューサー側から要望があったこともあって、劇場アニメということは早い段階で決まっていました。
今石洋之(以下、今石):そうですね。僕自身も、オリジナルの劇場作品をやってみたかったという想いもありましたし、自然とそういう流れになりました。
※1:キルラキル
2013〜2014年にかけて放送されたTVアニメ。アニメーション制作会社TRIGGERの初TVアニメ作品でもある。主人公・纏流子が父の仇を探す末にたどり着いた本能字学園で、極制服という人知を超えた制服を身にまとった生徒会たちとの戦いに挑むストーリー。破天荒なストーリーも相まって、視聴者の心を揺さぶる熱い展開で国内外で多くの支持を得ている。
――企画が立ち上がったのは、どのくらいの時期だったのでしょうか?
中島:『キルラキル』が終わった半年後くらいですね。だから結構な長期間になります。
今石:その間に僕は『宇宙パトロール ルル子』(※2)が始まって、それが終わってからもう一度こちらに戻ってきています(笑)。
中島:僕も『ニンジャバットマン』(※3)が終わっていますから、二人とも後から始まったものが先に終わっているという(笑)。
※2:宇宙パトロール ルル子
2016年に放送されたTVアニメ。TRIGGER設立5周年を記念して制作された作品。とあることから宇宙パトロールを任せられることになった中学生の少女・ルル子の奮闘と恋模様が描かれる。今石洋之氏が監督・シリーズ構成を務め、後に『SSSS.GRIDMAN』をヒットさせることになる雨宮哲氏も第2監督として制作に参加している。
※3:ニンジャバットマン
DCコミックスより刊行中の『バットマン』を題材とした2018年公開の劇場アニメ。バットマンが日本の戦国時代にタイムスリップし、歴史改変をもくろむジョーカーたちとの戦いを描いた作品。日本のクリエイターが中心となって制作され、中島かずき氏は脚本を担当している。
――『プロメア』の世界観は、どのような発想から生まれたものなのでしょうか?
中島:公開前なので話せることが限られてしまうのですが、作中に登場する「プロメア」という設定のアイディアを最初に思いついたのが始まりですね。これについては、実際に映画を観ていただけば分かると思います。
そこから発展する形でバーニッシュや、それを止めようとするバーニングレスキューという設定、それぞれのキャラクターのぶつかり合いといった流れができていきました。
今石:僕としては爽快感のあるアクション映画を作りたいと思っていたので、中島さんの案を聞いて、それにすごく合致する設定だなと。
僕と中島さんで作品を作る場合、ストーリーやキャラクター面はほぼ中島さんにお任せしているんです。僕がやるのは、気に入らない時に(脚本を)破ることくらい(笑)。
なので、実は中島さん原作の作品をアニメ化しているような感覚も若干あるのかもしれません。
とはいっても、完成した原作をアニメ化するのとは違って、一緒に作っていくことができるので、とてもストレスは少ないですね。
――現在のテーマが生まれるまでの、きっかけのようなものはあったのでしょうか?
中島:これもネタバレになってしまうのでお話できないことが多いのですが、実は最初に目指していたのは『ヒックとドラゴン』(※4)なんです。
人外と人間の出会いをジュブナイル的に描くという。ただ、その時想定していた要素はもう97%近く残っていなくて(笑)、かなり当初の予定と違う形になりましたね。
※4:ヒックとドラゴン
イギリスの作家・クレシッダ・コーウェルによる小説と、それを原作とした2010年公開のアニメ映画。バイキング一族の少年・ヒックと、もっとも危険とされたドラゴン・ナイト・フューリーが次第に心を通わせていく様が描かれる。
――コンセプトや方向性は、割とすんなりと決まったのでしょうか?
中島:いやいや、いつものように二転三転しましたよ。
『グレンラガン』(※5)や『キルラキル』の時も、ある程度アイディアが形になってきたところで検討稿を出すんですが、すると今石さんが「違う!」と破り捨てるのがお決まりになっているんです。
『グレンラガン』の時は、「こんなもんじゃ俺の魂のドリルは回らねぇんだよ!」って……。
今石:何か、毎度自分の台詞が更新されている気がするんですが……(笑)。
一同:(笑)。
中島:ただ今回は一度提出した段階で、自分でも何か違うなと思っていたので、あえて自分から破って書き直して提出したんです。
けど、それも「原稿は燃えても俺の魂は燃えねぇ!」と火を点けて燃やされましたからね。そういうやりとりを、3・4回は繰り返したと思います(笑)。
※5:天元突破グレンラガン
2007年に放送されたTVアニメ。その後、2008年と2009年に劇場アニメ化も行われた。地下で暮らすシモンとカミナの二人が、ある日、巨大な顔のロボット・ガンメンと謎のドリルを見つけたことをきっかけに、世界を支配していた獣人たちとの戦いに挑んでいくストーリー。シモンの成長や宇宙規模の戦いの勃発など、複合的な魅力で、ロボットアニメファンだけでなく、多くのアニメファンを虜にしている。
――『グレンラガン』や『キルラキル』の時と同じくらいのやり直しがあったということでしょうか?
中島:いや、その2作品の時以上ですね。いつもよりも2ターン分くらい多く掛かっていて、かなりの難産だったのは確かです。
今石:中島さんだけに何度も直させるのは申し訳ないので、今回は自分も絵コンテをすべて書き直してるんです。ただ、そうなると当然台詞の直しも発生するので……。
中島:結局、こっちの作業がまた増える(笑)。
――本作は2017年にアメリカで行われたAnime Expoにて発表されましたが、作品作りをする上で海外を意識した部分はあったのでしょうか?
今石:そこはあまり主眼ではありませんでしたから、自分は特別意識はしていないですね。
中島:僕は考えていましたよ。というのも、キャラクターの名前で漢字を使うのを止めたんです。
『キルラキル』の時は、“纏流子”とか、どうやって訳すのかと翻訳家を苦労させましたからね。今回はグローバルにすべてカタカナを使っています(笑)。