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アニメ映画『プロメア』今石洋之監督&脚本・中島かずきインタビュー

『プロメア』今石洋之監督&中島かずきさんインタビュー|「“熱い”ことそのものを目的にしてしまうと、きっと良くない作品になってしまう」名言が生まれる制作現場の熱きアニメ屋魂

アクションものをマンガで描く難しさ

――主人公のガロについては、『グレンラガン』のカミナに見た目が似ているという声もあったのではないかと思うのですが。

今石:これは既に何度かお話していることなんですが、僕が直情的な主人公を作ると、大抵このパターンになってしまうんです(笑)。厳密にいうとカミナとは髪型も少し違うのですが。

中島:ツンツン(の髪型)が好きなんだよね。

今石:ええ。僕はキャラクターの外面と内面ができるだけ一致している方がいいと考えていて、外交的なキャラは髪型が外側に跳ねさせたりすることが多いんですね。

自分の描いたラフの段階ではほぼ同じなんですが、それを見たデザイナーの方がアレンジしていくことによって違いが出てくるんです。

中島:元の今石さんのラフからブラッシュアップを加えていった結果、錦織さんならカミナ、コヤマさんならガロが生まれた、という感じですね。

あとは実年齢的にはそう変わらないんですが、精神的にはガロの方が若く描いているので、世界の捉え方や見え方というのも変わってきます。

――お二人の作品は、ストーリー展開が熱い一方で、最後が切ない終わり方をする作品が多い印象があるのですが、何か終わり方にこだわりがあるのでしょうか?

中島:僕自身としては、「この話をやる限りは、ここまでいくよね」という考えに基づいての決着点なので、そのあたりはあまり意識していないですね。

決して切ない話にしようという意図はなくて、その作品ごとのテーマのキャラクターにもっとも合った結末を考えているつもりです。

今石:それまで積み上げてきたストーリーを、どう納得いく結末に落とし込めるかというところはいつも何度も話し合っていて、どれも納得いく形で終われているので、自分たちとしては違和感はないんですよね。

中島:ただそれはTVシリーズでの手法ですから、映画となると見る方の肌触りも少し変わってくるかもしれません。

TVは3ヶ月〜半年くらい描いてきたキャラクターとの別れですが、映画は二時間だけという、一夜限りのアバンチュールですからね(笑)。

――少し個人的な話になってしまうんですが、自分は中島さんが以前編集長を務められていた『スーパーロボットマガジン』を毎月購読していました。巨大ロボットというのは、アニメだと一つのジャンルといっていいほどに定着していると思うのですが、マンガだとヒットさせるのが難しい印象を受けます。この違いについてはどのように考えられていますか?

中島:巨大なものが動いて戦うというのはやっぱりアニメの方が向いているんです。マンガは止め絵の世界なので、巨大感を表現するのにはそこまで適していないと思っていて。

最初に永井豪先生と石川賢先生が『マジンガーZ』と『ゲッターロボ』をヒットさせてはいるのですが、アニメでロボットものが定着して以降はなかなか難しい。マンガでもヒットしているロボットものはなくはないのですが、本当に数が限られます。

今石:実は僕も、素人の頃にアニメとマンガの世界を行き来していた人間なので分かるのですが、マンガだとメカアクションのディティールを描写するのが難しいんです。

例えば、ミサイルポッドを発射するのに装甲が開くシーンがあったとして、アニメなら1秒半くらいの演出で済みますが、マンガでインパクトを出そうとするとそれだけで2ページ近く使ったり、大ゴマにしたりと、アニメに照らし合わせると5分くらいの尺が必要になるんです。この差というのはかなり埋めがたいと感じていました。

中島:あとは音やSEが入ることによるカタルシスもありますし、どうしてもアニメと比べるとマンガの表現には限界がありますからね。

――そうしたSEやBGMに加えて、演出や脚本など様々な要素が組み合わさることで「熱さ」という表現が生まれているのではないかと思っていて。『グレンラガン』や『キルラキル』も、すごく緻密な計算の上で作られた作品なのではないかとも感じていました。

中島:いや、実は我々としては、熱い作品として作ろうという意図はまったくないんです。

キャラクターの感情のピークをここに持ってくることで、お客さんも一緒に盛り上がってくれるだろうということは考えますが、あくまで重要なのは、ドラマやキャラクターの感情の動きを、どれだけ上手く描けるかということです。

我々としては、ただ面白い作品を作ろうとしているだけなので。

――純粋に面白い作品を追い求めた結果が、そうした「熱い」作品になっていたと。

今石:そうですね。おそらくですが「熱い」ことそのものを目的にしてしまうと、きっと良くない作品になってしまうのではないかと思います。

中島:自分たちが面白いと思ってやっていることが、傍から見ると「熱い」という風に見えるということなのかなと。

――見る側のいろいろな感情の昂ぶりが複合的にあわさることで、「熱い」という感情が生まれることにつながっているのではないかなとも思いました。お二人が仕掛けた色々な要素が、様々な炎になっていくつも吹き上がって、熱を生み出すというか。

中島:確かに、そう言われると納得できるかもしれませんね。

例えば『キルラキル』の最終話での「人は人、服は服だ!」という台詞も、そこだけを切り取って見るとごく当たり前のことしか言っていないのですが、全26話のドラマを付き合ってくれたお客さんには心を揺さぶられる台詞になっているんです。ああいうことがしたくてアニメを作っている面もありますね。

今石:僕も『キルラキル』では、あのシーンのためにこれまで作品を作ってきたんだなという気がしましたね。

ああしたシーンの演出がしたいからこそ、アニメの監督になったんだなと。当時のアフレコ会場は大爆笑していましたが(笑)。

中島:『キルラキル』の最後のアフレコは皆本当に盛り上がってたよね。僕は一人で涙してましたけど(笑)。

今石:笑いあり、涙ありの現場でしたね(笑)。

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