アニメ映画『海獣の子供』渡辺歩監督&芦田愛菜さんインタビュー|この世の中には言葉では表現できないものがたくさんある
何をしていても答えを求められる現代。学生なら学業の成績、社会人なら仕事の成果。行動には結果が求められる。
物語もそうだ。ハッピーエンド、バッドエンド。「どういったストーリー?」と人から聞かれれば、「○○な話」と答えなければいけない。
果たして、その答えは正解なのか?
この夏、2019年6月7日に公開されるアニメ映画『海獣の子供』は、今まで観てきた作品とは全く違っていた。
編集者として恥ずかしい限りだが、『海獣の子供』を説明しろと言われても、上手く表現する事ができないのだ。
ただ、作品を観れば一目瞭然だと、そう言う他はない。作品を観れば、いや、“体験”すれば、心の中に何かが生まれ、育まれる。そんな不思議な体験をしたのだ。
その体験を共有すべく、本作の監督を務めた渡辺歩さん、安海琉花役の芦田愛菜さんにお話を伺った。
それぞれがそれぞれに出会う体験を共有する、答えのない物語の世界に足を踏み入れていこう。
不思議な気持ちに包まれる
——試写を拝見させていただきましたが、一言では説明できないほどの圧倒的な映像美でした。お二人は本作や原作漫画をご覧になって、どう感じましたか?
芦田愛菜さん(以下、芦田):絵がすごく繊細だし綺麗で、雰囲気が好きだと思いました。映画にも通じるんですけど、水の動きがダイナミックで気持ち良くて、生きているような気がするというか。水の表現がとても綺麗だと感じました。
原作に登場する海の中のシーンなどを読んでいると、どこか海の中にいる気持ちになるんです。不思議な気持ちに包まれて、白黒なのに色が付いているようにも感じました。
渡辺歩監督(以下、渡辺):僕は原作を連載当時から読んでいたので、最初に映画化を聞いたときには「何と無謀な挑戦を」と思いました(笑)。
二つ返事で引き受けるべきかどうか悩みましたね。ビジュアルに落とし込むという構想がなかなか思いつきませんでした。ものすごい情報量、これ以上ないくらいの到達点に行った作品ですからね。
ですから、そこににじり寄るためには相当過酷な戦いになるだろうと。
アニメ用に簡単に情報を落とし込む、要約してはいけない作品だなと思いました。どれだけ原作に近づけられるかが鍵でした。
だからこそ描く価値があるのかなと。挑むような想いでしたね。挑戦だと思ってからは覚悟が決まりました。
先ほど芦田さんがおっしゃった通り、それぞれどんな生物がそこにいるのかや、水が意志を持って動いている様を描けるのがアニメーションである最大の利点ですね。
——そして、監督のキャリア的には、珍しい作品になりましたね。
渡辺:そうですね。僕はどちらかというと、ファミリー向けというか、見やすさや分かりやすさを大事にする作品を多くやってきました。非常にシンプルな描写で動きやストーリーを見せるやり方ですね。
今回は、絵の情報が非常に濃密なので……。なかなか苦労しました。