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アニメ映画『海獣の子供』渡辺歩監督&芦田愛菜インタビュー

アニメ映画『海獣の子供』渡辺歩監督&芦田愛菜さんインタビュー|この世の中には言葉では表現できないものがたくさんある

「彼女以外に考えられない」

——そんな中で、芦田さんの演技はいかがでしたか? そもそも、なぜ安海琉花役に芦田さんだったのでしょうか?

渡辺:かねてより、琉花というのは「どんな子なんだろう、どんな声で喋るのかな?」というのは、スタッフはもちろん、キャラクターデザインの小西賢一さんといつも話をしていたんです。

正直、いろんな想像ができたんですけど、ある日テレビかラジオで、可愛い声が聞こえてきたんですよ(笑)。

芦田:(笑)。

渡辺:芦田さんが活き活きと朗読をしているのを聞いて、「この子だ! この声だ!」と。

調べてみたら、「芦田愛菜……!」と(笑)。ハマる時っていうのはそういうものなんですよ。琉花の声はパンと来ました。

そうなると他の声が入ってこないんですよ。最初からオーディションは考えていなかったですし、彼女に断られたらどうしようと思って(笑)。

そう思ってから、小西さんに小声でね、「この子が琉花にピッタリだよ」と言ったんです。少し懐疑的な彼を残して僕はスタジオを出たんです。残って作業しながら、きっと芦田さんの声を聴いたんでしょうね。後からメールが来て「彼女以外に考えられない」と(笑)。

——(笑)。みなさんのお墨付きだったわけですね。

芦田:嬉しいですね、そう言っていただけて。

——芦田さんは、声だけの演技というのは、苦労した点もあったかと思います。

芦田:そうですね。アフレコの時ってブースに一人で入ることが多いんですけど、今回は監督が一緒に入ってやってくださったんです。

渡辺:お邪魔したなあ(笑)。

芦田:(笑)。監督の作品に対する想いだったり、琉花の気持ちだったり、そういうことをたくさん伺うことができました。

演技の方向性をチェックしたときに、「もっとこうした方が良かったですか?」と、たくさんコミュニケーションを取らせていただいて。すごくキャラクターづくりがやりやすかったです。

監督が思われている琉花と、私が思っている琉花がどんどん重なっていくような気がして、すごく演じやすかったです。

——琉花はどうやって演じていこうと思っていましたか?

芦田:この映画は正解を求めるものじゃないのかなと思いました。明確な答えが出るものじゃないというか。

琉花も私と同じ、等身大の14歳で、上手く自分の思っていることを伝えられなかったり、自分に素直になれなかったりします。

琉花がいろんな出来事に直面して、分からないと思ったり、迷ったり、悩んだりしたことは、私も同じように難しいと思ったり、悩んだりしています。だから、感じたことを大切にできればいいなと思いました。

そんな琉花に寄り添っていったので、等身大の14歳として琉花を演じられたかなと思います。

——等身大の感じは観ていてすごく感じました。監督も意識されたのでしょうか?

渡辺:危惧していたのは、変に作り込んじゃうと琉花らしさが失われることでした。周到に準備をしてもらうよりは、そのまま来てもらおうと。

普段喋っている延長線上で、この時期の彼女の持つ不安定さも含めて表現できればと思っていました。またそれを“演じない演技”として高度に成立させることが芦田さんならできると思っていましたので。

録りながら思っていたんですけど、これは「ひとつの記録」だなと。ちょうどこの時期の芦田愛菜さんを声という形で記録することになる。これは重要な記録になるのではないかと。

僕は本当にそういう意味ではあまり作り込んで臨んでいませんね。準備をそんなにしないということが最大のポイントでした(笑)。

——(笑)。

渡辺:本当に僕は出たとこ勝負だったんです。どういう形になるかまったくわからなかった。

本当に2人でポンとスタジオに入って、せーのでやって。その場の直感を大事にしましたね。

そこで感じたのが、芦田さんの感受性の高さです。等身大の14歳の琉花をちゃんと感じ取っていただけました。それだけでディレクションというか、キャスティングに関しては成功しているのではないかなと。

本当に琉花がそこにいるような感じ。その人が目の前に立っているわけで、シーンの意図だけ伝えれば、あとはもう琉花が自然に動き出す……。

その感覚は僕も新鮮だったし、彼女に教えられた部分ですよ。僕とちょっと解釈が違うとしても、むしろそれが答え。何度かテイクを重ねても、結局彼女が最初にやったのが良かったりするんですよ。

——なるほど。芦田さんは自由に演技できましたか?

芦田:そうですね。思った通り、私が考えている琉花で演じさせていただけました。自由にというと、またちょっと違うような気もしますけど(笑)。

監督からも色々アドバイスを伺って、もう1回やり直してという感じでした。わりと自由にやらせていただいた気がします。

渡辺:芝居としてはかなり高度なんですよ。演じてないような形で演じるというのは、とても難しいんです。

だから、つくづく良い人に受けていただけたなと(笑)。芦田さんじゃなかったらどうなってたんだろうという思いもします。本当に感心しながら、僕は色々教えていただきましたよ。

——そういうこともあるんですね。芦田さんは勉強になったことはありますか?

芦田:すごく新鮮でした。等身大の役というのは新鮮な部分もありましたし、監督が中で一緒に入ってやってくださるというのもはじめてでした。

すごく安心するし、だからこそこだわらせてやらせていただきました。

渡辺:ジャマだったらまずいかなと思ってました(笑)。

芦田:そんなことないです! 思ってらっしゃることがすごく伝わるのでやりやすかったです。

渡辺:音を立てないようにそっとしてました(笑)。大丈夫かなと(笑)。

(C)2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会
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