仲谷鳰先生書き下ろしによる朗読劇で描かれたキャラクターの意外な一面とは?アニメ『やがて君になる』“遠見東高校 生徒総会”レポート│高田憂希さん&寿美菜子さんが「hectopascal」で体現する侑と燈子の想いと距離感
2018年10月から12月にかけて放送されたTVアニメ『やがて君になる』(原作:仲谷鳰先生)。本作のスペシャルファンイベント“遠見東高校 生徒総会”が、2019年5月26日(日)に世田谷区民会館(ホール)で行われました。
イベントには、小糸侑役の高田憂希さん、七海燈子役の寿美菜子さん、佐伯沙弥香役の茅野愛衣さんに、男性陣から槙聖司役の市川太一さんと堂島卓役の野上翔さんを加えた5名が登壇。まさしく“生徒総会”といった趣のステージで、声優陣と作中の名場面を回想したり、原作の仲谷先生書きおろし台本による朗読劇などのコーナーでファンを楽しませました。
本稿ではこのイベントより“昼の部”の模様をお届けします。
【登壇者】
高田憂希さん(小糸侑役)
寿美菜子さん(七海燈子役)
茅野愛衣さん(佐伯沙弥香役)
市川太一さん(槙聖司役)
野上翔さん(堂島卓役)
安月名莉子さん(オープニング主題歌アーティスト)
まるで槙のような市川さんの作品への熱量
今回のイベントの進行役は高田さんが担当。“生徒総会”らしく会長・燈子役の寿さんの号令で幕を開けると、その後も“生徒総会”の体で進行。
最初の議題(コーナー)は、「生徒会選出 やが君 ベストときめきシーンについて」となりました。ここでは声優陣がそれぞれテーマに沿った作品の名場面を選出、最終的にだれの選んだシーンがファンのみなさんの共感を呼ぶことができたか投票で決めていきます。
先陣を切ったのは高田さんで、選んでいたのは第2話「発熱/初恋申請」より“夕暮れの踏切での侑と燈子ふたりの語らい。そして燈子から侑への不意打ちのキス”の場面。
途中、市川さんと野上さんによるキスに至るまでの実況が入りつつも、侑と燈子のあまりに切実な想いに会場は息が詰まるような空気になりました。
この場面は選出した高田さんだけでなく市川さんも候補に出していたそうですが、高田さんは「槙くんが見ていたらこういうナレーションになっていたのかな」と先ほどの熱のこもった実況についてコメント。
ほかにも行為に至った後にお互いを見つめあうふたりや、そんなふたりの様子を見て訝しがる街の人々の描写、ふたりを美しく彩る夕焼けなども話題に。
最初からクライマックスと言えるほどの盛り上がりを見せたところで、お次は第4話「好きとキスの距離/役者じゃない」より、侑の「いいですよ、別に(キス)しても」のセリフから始まるキスシーンその2!
生徒会室でふたりきりになったところで行為に及ぶというもので、燈子の睫毛が長いなと侑が思う場面です。槙が忘れてしまった筆箱を取りに戻り、その現場を目撃してしまうのですが、侑の「槙くんのかな?」と言うセリフに、市川さんがその場で「そうです……」と相槌を打つと、会場から笑いが起こりました。
このシーンを選んだのはそんな槙を演じる市川さん! 本編の収録中に出てきた単語“エロ峠(※)”の生みの親だけあり、原作の仲谷先生のこだわりのシーンであることを熱く語りました。
しかしエロ峠が生まれたのはこのシーンではなくもっと先のシーンらしく、ここはまだ六合目。一番の峠は第9話「位置について/号砲は聞こえない」の体育倉庫のシーンなのだとか。
※エロ峠:市川さんが収録中に何気なくつぶやいた一言。キャストをはじめ、スタッフの間でも用いられている。主に、侑と燈子がイチャイチャするシーンで「わりと今日はエロ峠でしたね」「峠を越えていきましょう」のように使われている
続いて野上さん選出の、第7話「秘密のたくさん/種火」で燈子が侑をみんなの前で呼び捨てにする一幕。燈子、侑、沙弥香3人の関係値が変わりつつあることについて、野上さんはお互いに名前を呼び合う様をみて「青春だな」と思っていたそう。
ここで茅野さんから『やがて君になる 佐伯沙弥香について』(以下、『佐伯沙弥香について』)第2巻の話題が……!! このスピンオフ小説は沙弥香の一人称で進むため、彼女がどのようなことを考えて行動しているかが詳らかになっています。その為、燈子が侑を呼び捨てにした際の沙弥香の心中も描かれています。
ほかにも、堂島が生徒会メンバーの緩衝材になっていることや、槙視点の小説も見たいとの話から高田さんが「『やがて君になる 槙聖司について』(の刊行も)待ってます!」と発言して笑いが起きたりなど、賑やかな時間に。
お次は第8話「交点/降り籠める」より、沙弥香が中学時代に好きだった先輩から駅で声をかけられ「それじゃあ、さようなら」と別れを告げる一幕です。
開幕時の自己紹介では『佐伯沙弥香について』を読んでからイベントに臨んだと話していた茅野さん。このシーンを演じてやり遂げたと感じたそうですが、『佐伯沙弥香について』の1巻をアフレコ前に読んでいたら感情が篭りすぎていたかもしれないと振り返っていました。
高田さんが『佐伯沙弥香について』は沙弥香自身が言葉を綴っているようだと話すと、茅野さんは「家で思わず朗読してしまう」ことを告白。「(『佐伯沙弥香について』を読んでいると)私は沙弥香なんじゃないか」と錯覚するほどなのだとか。
最後は、寿さんが選んだ第11話「三角形の重心/導火」での女性陣のお風呂シーン前後。
「ふたりきりで入らせるのは嫌!」という沙弥香の抱えるもやもやした想いや人前で服を脱ぐ際の駆け引き、実際の入浴中までかなりの長尺が割かれていました。
途中「槙くん見てる?」との高田さんの言葉に市川さんが「ここは見れないよ!」と返す一幕が見られつつ、侑の胸が思ったよりあることに「合宿って、すごい……!!」と興奮した様子を見せる燈子のセリフで終了。
寿さんは沙弥香の葛藤のシーンから使ってもらえるとは思っていなかったそうですが、収録時のエピソードとして「ここだけはSFもののバトルのようなイメージで」演じて欲しいとディレクションがあったことを明かしました。
ほかにも侑が服を脱ぐ際の颯爽としたSEについての話や、燈子の「合宿って、すごい……!!」の“すごい……!!”や「侑……エロい…!!」の“エロい”など、このたった3文字のセリフには、特に様々な想いが込められていたそうで、かなりこだわって収録したことを言及しました。
そしていよいよ決選投票! 拍手による投票が行われると、特に共感を得たのは高田さんチョイスの「踏切での初めてのキス」と市川さんチョイスの「生徒会室でのキスシーン(槙くんが見ていたところ)」。
最後に特に共感を呼んだふたつのシーンだけで投票を行いましたがそれでも決まらず、最後はスタッフ陣の判断に委ねられました。
その結果、市川さんが選んだ生徒会室でのキスシーンに決定! 他のキャストから「流石だわ~」といった声も聞こえてきており、市川さんの作品への愛がこの結果を招き寄せたと言えるでしょう。